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それはもう、ものすごく剣の才能が
「ない」男がいました。
それなのに毎日ひたすら素振りを
繰り返す男はまわりから嘲笑される
ことも多々あります。
しかし、剣を極めることを
夢見ていた男は剣以外にたい
する興味を失っていたので
あまり気にしていませんでした。
だが、ついに自分の限界を知った
男は剣以外も始めることに
なります。
男の名前は「マクル」。
後に「大賢者」と呼ばれる者である。
「989、990……」
もくもくと腕を振り続ける男。
「995、996……」
まるでゴーレムのように
たんたんと動く様は
その男一人だけで
世界が完結しているような
そんな美しさを感じさせる。
「999、1000」
そう呟いた彼はピタリと
素振りを止めた。
息切れの一つもおこさずに
たたずむ姿はどこか人間味が
なく人によっては気持ちが悪い
とさえ思ってしまうだろう。
だが、よく見るとうっすらと
汗を流していることから
彼も生きているのだと分かる。
「……今日はこれくらいに
しておくか」
一日のルーティンを終えた
男はまるで興味を失ったかのように
訓練場をあとにする。
だが、その後ろ姿は充実感で
満たされていたのだった。
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