やらず嫌いの剣術バカ。やっと、魔法も始めるそうです。

3

訓練場で素振りをしていると

たまにバカにされることがある。


そいつらはだいたいどこぞの

道場でまぁまぁ才覚を現している

天才児だ。


俺とは違う「才能をもったやつ」


だからこそ俺みたいな人間を

嘲笑したくてたまらないのだろう。


別におかしなことではない。


自分より下の人間がいるなら

見下したくなるのは当然だ。


ただ、少し残念に思ってしまう。


ほとんど努力しないで俺より

強い斬撃を放てるなら

もっと鍛えて更なる高みを

目指してほしいものだ。



そうすれば剣術の発展に

繋がるというのに。



今も俺を指さして仲間と

談笑をするやつらを

見ているとそう強く思う。



俺には剣の才能はないが

耳は良い。



10メーテル程度の距離なら

意識すれば小声でも聞こえる。



だから、



「あんなに必死になって

バカみてぇ！」



「ずっと剣を振ってても

あんなに遅いのかよ！」



「あぁ、ほんとにダサいな。

とっとと止めて農民にでも

なればいいのに」


などと言われているのにも

気づいている。



普段ならあまり気にしない言葉。

だが、軽く卑屈になっていた

俺には結構響く言葉だった。






本当に止めてしまおうか。





才能が全てではないと

ある人物が言っていたが

俺はそう思えなくなっていた。



人生とは産まれたときから

ある程度決まっている。



どこまでいけるか何になれるか

なんてその最たるものだ。



俺はいくら鍛えても「剣聖」には

なれない。



だいぶ前には気づいていたが

目を背けていた事実に俺は

向き合うことにした。



一度、剣を手放そう。


今まで逃げるように黙々と

剣を振るってきた俺は

ついにそれ以外を始める

決心をしたのだった。