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013 交渉
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「魔王が何の用だ。人間に宣戦布告したと聞いてるが」
「それは誤解だ。単刀直入に言う。俺は今、国を創ろうとしてる。まあ、といってもそれは最終目標だけど。それで、家や街をつくる為に君が必要なんだ」
「それがなんで私と関係がある?」
「そこで技術者として働いてもらい。もちろん、タダでとは言わない君の――」
「断る。私はここから離れるつもりはない」
そういって彼女は背を向けた。
彼女の名前はファイル。
将来、勇者の聖剣を創るのも彼女だ。
腕前は確かで、それに――強い。
まあ、今関係ないが。
だが俺には原作知識がある。
彼女が望むもの知っている。
だが――。
まずは俺のことを話すのが筋だな。
ファイルは木を伐採しはじめた。
「それで仲間と一緒にきたのか」
「ああ、よくわかったな」
「そんな強い魔力を漂わせてたら誰でもわかる」
「……そんなに?」
「この島にも魔物はいたが、全員逃げ出した」
そういえば森の中で魔物を見かけることはなかった。
……これからは気を付けるか。
それより――。
「――何してる?」
「お手伝い」
俺は、ファイルからひょいとクワを取って、巻き割りしようと構えた。
彼女が驚いて目を見開く。
「……できるのか?」
「見といてくれ」
手ごろな木を置き、そして――真っ二つに――とはならなかった。
なぜなら、やりすぎて粉々になったからだ。
「……え?」
「魔力を入れすぎだ。振り下ろす力だけでいい」
「ふむ――こうかな? ――お、できた」
「下手だ」
「ははっ、そうかも」
それから俺たちはたわいもない会話をした。
だがファイルは絶対に着いて行かないと。
俺も、それ以上誘うことはなかった。
彼女の願いを叶えれば、間違いなく来るだろうが、それを盾にするのは違う。
今回ばかりは、さすがに卑怯だと思ったからだ。
奥には小さな小屋があった。
原作で見た形と同じ。
それを見ていると、ファイルの目が少し心配そうにしているのがわかった。
「何もしないよ。安心してくれ」
「……そうか。確かに悪い魔王には見えない。だが私はここから離れるつもりはない」
「ああわかっ――」
「デルス様!」
「魔王様!」
するとそこにシュリとアリエルが現れる。ファイルは警戒するが、俺は双方に大丈夫だと伝える。
「魔族か」
「ああ、アリエルとシュリだ」
「お見知りおきを。アリエルでございます」
「シュリです。魔王様すみません、心配て来てしまいました」
もしファイルが俺に攻撃を仕掛けている所を見ていたら大変なことになっていただろう。
このタイミングで良かった……。
「構わない。彼女はファイル、僕――まあ古い友人みたいなものだ」
「友人? 私が――」
「ならば私たちの愛すべき一人なのですね! この度は歓迎致します! 一緒に最強の国を創りましょう!」
「私は行かないよ。ここから離れたくない」
「え? そ、そうなのですか? 魔王様?」
「ああ、当てが外れたよ。でも、仕方がない」
シュリが、洗脳しますか? と目で訴えかけてきた。俺は却下する。
ここに来るまではそれもありかなと思っていた。
だがファイルの顔を見て気づいた。それは、良くないと。
「シュリ、彼女に渡してくれ」
「いいのですか? 彼女は来ないと――」
「構わない」
そういって、シュリは鞄から丁寧に瓶を渡す。
「……なんだこれは?」
「完全回復と浄化聖水だ。小屋で眠っている妹さんに飲ませれば、一日もあれば治る」
「完全回復……だと? いや、それよりなんで妹のことを――」
「俺は魔王だ。何でも知ってるからね」
ファイルの妹は、ドワーフの一族がまだ認知されていない時に襲われ、呪いの魔法を受けた。
珍しくもないイベントだ、俺もそんな気持ちでここへ来た。
だが気づいたのだ。
人の命を利用すべきではないと。
アリエルもシュリもペールも色々変わってきている。
俺も、変わらないと。
「――行くぞ、シュリ、アリエル。それじゃあファイル。また」
「……本当にくれるのか? 魔王が? 何の見返りもなしに?」
「ああ、成分を調べてからでもいいが、問題はない。魔王の名にかけて保障しよう」
そして俺たちはその場を後にした。
◇
それから数日後、結局、家造りは全く進んでいなかった。
「魔王様、人間を連れてきて働かし、仕事が終われば返すのはどうでしょうか?」
「うーんでもアリエル、それはちよっと……」
お金を払うことも考えたが、さすがに魔王の国を創る為に呼ぶことはできない。
頓挫していたまさにそのとき――扉が開いた。
「魔王様、客人でございます。――先日のドワーフ様、二名です」
そこに立っていたのはファイルと、その後ろに隠れているそっくりな小さな赤髪、妹だった。
「本当に魔王だったとはな。おっと、この口の利き方はまずいか。――魔王様」
「何でもいいよ。それで、なんでここに?」
「恩は返す。遅くなったのは小屋を解体したり、荷物が色々あってな。――魔王様、私は余す事なく技術を提供しよう。求めるのは安全だ。その代わりも私は何でも手伝う。――もし人間と戦うことがあれば、武器でも」
するとファイルは片膝をついた、その横で、妹さんも。
「わ、私もです。――ありがとうございます。魔王様」
彼女は原作だと病気で死んでしまう。
だがその死をきっかけに勇者の仲間となり、復讐した上で魔王と戦うことになるのだ。
俺はそれが回避できただけでもいいと思っていたが、まさか来てくれるとは……。
だが俺は嬉しかった。
「――武器は今の所必要ないよ。でも、ありがとう。ファイル、そしてリリ。歓迎するよ」
「――一つ聞きたい。なんで名前を――」
「俺は魔王だ。何でも知ってる」
そういって手を差し伸べると、ファイルは笑った。
必要なピースはそろった。
これからは街作りを本格化していく。
――魔王の国の建設の始まりだ。
「それは誤解だ。単刀直入に言う。俺は今、国を創ろうとしてる。まあ、といってもそれは最終目標だけど。それで、家や街をつくる為に君が必要なんだ」
「それがなんで私と関係がある?」
「そこで技術者として働いてもらい。もちろん、タダでとは言わない君の――」
「断る。私はここから離れるつもりはない」
そういって彼女は背を向けた。
彼女の名前はファイル。
将来、勇者の聖剣を創るのも彼女だ。
腕前は確かで、それに――強い。
まあ、今関係ないが。
だが俺には原作知識がある。
彼女が望むもの知っている。
だが――。
まずは俺のことを話すのが筋だな。
ファイルは木を伐採しはじめた。
「それで仲間と一緒にきたのか」
「ああ、よくわかったな」
「そんな強い魔力を漂わせてたら誰でもわかる」
「……そんなに?」
「この島にも魔物はいたが、全員逃げ出した」
そういえば森の中で魔物を見かけることはなかった。
……これからは気を付けるか。
それより――。
「――何してる?」
「お手伝い」
俺は、ファイルからひょいとクワを取って、巻き割りしようと構えた。
彼女が驚いて目を見開く。
「……できるのか?」
「見といてくれ」
手ごろな木を置き、そして――真っ二つに――とはならなかった。
なぜなら、やりすぎて粉々になったからだ。
「……え?」
「魔力を入れすぎだ。振り下ろす力だけでいい」
「ふむ――こうかな? ――お、できた」
「下手だ」
「ははっ、そうかも」
それから俺たちはたわいもない会話をした。
だがファイルは絶対に着いて行かないと。
俺も、それ以上誘うことはなかった。
彼女の願いを叶えれば、間違いなく来るだろうが、それを盾にするのは違う。
今回ばかりは、さすがに卑怯だと思ったからだ。
奥には小さな小屋があった。
原作で見た形と同じ。
それを見ていると、ファイルの目が少し心配そうにしているのがわかった。
「何もしないよ。安心してくれ」
「……そうか。確かに悪い魔王には見えない。だが私はここから離れるつもりはない」
「ああわかっ――」
「デルス様!」
「魔王様!」
するとそこにシュリとアリエルが現れる。ファイルは警戒するが、俺は双方に大丈夫だと伝える。
「魔族か」
「ああ、アリエルとシュリだ」
「お見知りおきを。アリエルでございます」
「シュリです。魔王様すみません、心配て来てしまいました」
もしファイルが俺に攻撃を仕掛けている所を見ていたら大変なことになっていただろう。
このタイミングで良かった……。
「構わない。彼女はファイル、僕――まあ古い友人みたいなものだ」
「友人? 私が――」
「ならば私たちの愛すべき一人なのですね! この度は歓迎致します! 一緒に最強の国を創りましょう!」
「私は行かないよ。ここから離れたくない」
「え? そ、そうなのですか? 魔王様?」
「ああ、当てが外れたよ。でも、仕方がない」
シュリが、洗脳しますか? と目で訴えかけてきた。俺は却下する。
ここに来るまではそれもありかなと思っていた。
だがファイルの顔を見て気づいた。それは、良くないと。
「シュリ、彼女に渡してくれ」
「いいのですか? 彼女は来ないと――」
「構わない」
そういって、シュリは鞄から丁寧に瓶を渡す。
「……なんだこれは?」
「完全回復と浄化聖水だ。小屋で眠っている妹さんに飲ませれば、一日もあれば治る」
「完全回復……だと? いや、それよりなんで妹のことを――」
「俺は魔王だ。何でも知ってるからね」
ファイルの妹は、ドワーフの一族がまだ認知されていない時に襲われ、呪いの魔法を受けた。
珍しくもないイベントだ、俺もそんな気持ちでここへ来た。
だが気づいたのだ。
人の命を利用すべきではないと。
アリエルもシュリもペールも色々変わってきている。
俺も、変わらないと。
「――行くぞ、シュリ、アリエル。それじゃあファイル。また」
「……本当にくれるのか? 魔王が? 何の見返りもなしに?」
「ああ、成分を調べてからでもいいが、問題はない。魔王の名にかけて保障しよう」
そして俺たちはその場を後にした。
◇
それから数日後、結局、家造りは全く進んでいなかった。
「魔王様、人間を連れてきて働かし、仕事が終われば返すのはどうでしょうか?」
「うーんでもアリエル、それはちよっと……」
お金を払うことも考えたが、さすがに魔王の国を創る為に呼ぶことはできない。
頓挫していたまさにそのとき――扉が開いた。
「魔王様、客人でございます。――先日のドワーフ様、二名です」
そこに立っていたのはファイルと、その後ろに隠れているそっくりな小さな赤髪、妹だった。
「本当に魔王だったとはな。おっと、この口の利き方はまずいか。――魔王様」
「何でもいいよ。それで、なんでここに?」
「恩は返す。遅くなったのは小屋を解体したり、荷物が色々あってな。――魔王様、私は余す事なく技術を提供しよう。求めるのは安全だ。その代わりも私は何でも手伝う。――もし人間と戦うことがあれば、武器でも」
するとファイルは片膝をついた、その横で、妹さんも。
「わ、私もです。――ありがとうございます。魔王様」
彼女は原作だと病気で死んでしまう。
だがその死をきっかけに勇者の仲間となり、復讐した上で魔王と戦うことになるのだ。
俺はそれが回避できただけでもいいと思っていたが、まさか来てくれるとは……。
だが俺は嬉しかった。
「――武器は今の所必要ないよ。でも、ありがとう。ファイル、そしてリリ。歓迎するよ」
「――一つ聞きたい。なんで名前を――」
「俺は魔王だ。何でも知ってる」
そういって手を差し伸べると、ファイルは笑った。
必要なピースはそろった。
これからは街作りを本格化していく。
――魔王の国の建設の始まりだ。
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