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033 最強の国
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ベッドの横に、三つの国の大神官たちが揃っていた。
全員が相当な使い手で、原作で知っている奴らばかりだ。
そこにライフが加わり、そして俺もそっと手を翳す。
「――アリエル、お願い目を覚まして」
四人の回復魔力、俺はそれを支える役目だ。
目も開けられないほど白い光に包まれたかと思えば――。
「……あ、あれ、どうして皆さん、お揃いなのですか」
次の瞬間、アリエルが目を覚ました。
俺は思わず飛びついて、抱きしめる。
「ま、魔王様!?」
「アリエル、すまない。君のおかげで、俺の夢が叶ったよ」
「……デルス様、えへへ、よくわかりませんが、良かったです。」
理解もしていないだろうが、アリエルはそっと俺の頭を撫で続けた。
驚いたことに、勇者ソフィリアは協定を結んでいた国の最高治癒能力者が集結させ、アリエルを救えるかもしれないと言ってくれた。
俺も手伝い、それにライフが知っている魂の情報を入れることで完成したのだ。
それは、各国の秘匿魔法を集結させた、たった一度きりの死者蘇生魔法だった。
全てが終わり、ソフィリアは白馬に跨る。
メリットは、ソフィリアが助け出してくれていた。怪我もなく、さすが勇者だと思えた。
「もう行くのか」
「ああ、戦力を持ってきすぎたからな。それぞれの国も同じだろう。――しかしいいのか、リーエル国の処遇をこちらに任せてもらっても」
「逆だ。礼をいう。俺たちはまだ法整備が整ってないんでな。もしリーエル国の残りの連中が文句をいってきたら、俺が手伝うよ」
「はっ、魔王自らか。しかし不思議なものだ。貴殿は世界を脅かすと言われ続けて来たのに、こんなにも優しい魔王だったとはな」
「……そんなことはない。けど、これからそうありたいと願ってる。そのためにこれからも頑張るよ」
「ふっ、魔物の国か。争いのない国を、あなたなら作れるかもしれないな――それより本当にいいのか? 我が国と友好関係になるということは、もし脅威がせまれば手助けしてもらうことになるが」
そう、俺はオストラバ王都と手を組んだ。
だが歴史が証明している。彼らの国は平和だ。
とはいえ改変を繰り返しているベクトル・ファンタジーが今後どうなるのかはわからない。
それでも、俺は俺の道を突き進む。
「構わない。まあ、俺たちは人間は殺さないが、それでも良ければ」
「その心意気は我が国が真似すべきものだ。会談については追って連絡する。――では」
そういって、ソフィリアは颯爽と消えていった。
他の国とも協定を結び、リーエルが脱却した協定の中に、デルス街が組み込まれることになった。
会談が終われば、デルス街は国となるだろう。
四つの大国の協定を結んだ、最強の国の一つとなる。
これは、原作にはない。これでもう、誰かに襲われることもないだろう。
街では、俺の部下たちが待ってくれていた。
俺の決断にも快く応じてくれた面々だ。
もちろん、アリエルも。
彼女は人間を恨んでいなかった。それよりも、自分の死で戦争にならなかったことを嬉しく思っていた。
六封凶の本能はまだ完全に消え去ってはいない。彼らなりの苦難や苦労がこれからもあるに違ない。
だが俺は魔王デルス。俺を倒しうるのは勇者のみ。
それ以外なら、どんな困難にも負けるわけがないのだ。
そしてふたたび、六封凶たちが一斉に片膝を付いた。
まるで、俺がこの世界に転生したときのようだ。
「知の参謀ビブリア、これからもデルス様に忠誠を誓います。我が国、デルス国の繁栄のために」
「戦神のペール、同じく忠誠を誓います。デルス様の平和の為に、戦い続けます」
「守護のシュリ、どんな脅威も守り抜きます。この命尽きるまで、御身に尽くします」
「祝福のライフ、すべては私が癒します。デルス様の御心のままに」
「殺戮のベルディ、脅威は私が全て破壊する。もちろん、デルス様の言う通り、誰も殺さない」
そして――。
「転移のアリエル、私はデルス様の全てを守り、全てを統括します。これからもあなた行く先、未来まで私がお供します」
アリエルが、満面の笑みで言った。
もちろんレイヤ姫、吸血鬼族、蜥蜴族、ハーピー、ウィンディーネ、ドライアド、ゴン、ファイル、リリ、メリットもだ。
「これから他国との交流も増えるだろう。争いごともあるかもしれない。だけどみんなと一緒なら幸せになれると信じてくれる。本当の闘いはこれからだ。だが――よろしくな」
――俺たちのベクトル・ファンタジーは、始まったばかりだ。
全員が相当な使い手で、原作で知っている奴らばかりだ。
そこにライフが加わり、そして俺もそっと手を翳す。
「――アリエル、お願い目を覚まして」
四人の回復魔力、俺はそれを支える役目だ。
目も開けられないほど白い光に包まれたかと思えば――。
「……あ、あれ、どうして皆さん、お揃いなのですか」
次の瞬間、アリエルが目を覚ました。
俺は思わず飛びついて、抱きしめる。
「ま、魔王様!?」
「アリエル、すまない。君のおかげで、俺の夢が叶ったよ」
「……デルス様、えへへ、よくわかりませんが、良かったです。」
理解もしていないだろうが、アリエルはそっと俺の頭を撫で続けた。
驚いたことに、勇者ソフィリアは協定を結んでいた国の最高治癒能力者が集結させ、アリエルを救えるかもしれないと言ってくれた。
俺も手伝い、それにライフが知っている魂の情報を入れることで完成したのだ。
それは、各国の秘匿魔法を集結させた、たった一度きりの死者蘇生魔法だった。
全てが終わり、ソフィリアは白馬に跨る。
メリットは、ソフィリアが助け出してくれていた。怪我もなく、さすが勇者だと思えた。
「もう行くのか」
「ああ、戦力を持ってきすぎたからな。それぞれの国も同じだろう。――しかしいいのか、リーエル国の処遇をこちらに任せてもらっても」
「逆だ。礼をいう。俺たちはまだ法整備が整ってないんでな。もしリーエル国の残りの連中が文句をいってきたら、俺が手伝うよ」
「はっ、魔王自らか。しかし不思議なものだ。貴殿は世界を脅かすと言われ続けて来たのに、こんなにも優しい魔王だったとはな」
「……そんなことはない。けど、これからそうありたいと願ってる。そのためにこれからも頑張るよ」
「ふっ、魔物の国か。争いのない国を、あなたなら作れるかもしれないな――それより本当にいいのか? 我が国と友好関係になるということは、もし脅威がせまれば手助けしてもらうことになるが」
そう、俺はオストラバ王都と手を組んだ。
だが歴史が証明している。彼らの国は平和だ。
とはいえ改変を繰り返しているベクトル・ファンタジーが今後どうなるのかはわからない。
それでも、俺は俺の道を突き進む。
「構わない。まあ、俺たちは人間は殺さないが、それでも良ければ」
「その心意気は我が国が真似すべきものだ。会談については追って連絡する。――では」
そういって、ソフィリアは颯爽と消えていった。
他の国とも協定を結び、リーエルが脱却した協定の中に、デルス街が組み込まれることになった。
会談が終われば、デルス街は国となるだろう。
四つの大国の協定を結んだ、最強の国の一つとなる。
これは、原作にはない。これでもう、誰かに襲われることもないだろう。
街では、俺の部下たちが待ってくれていた。
俺の決断にも快く応じてくれた面々だ。
もちろん、アリエルも。
彼女は人間を恨んでいなかった。それよりも、自分の死で戦争にならなかったことを嬉しく思っていた。
六封凶の本能はまだ完全に消え去ってはいない。彼らなりの苦難や苦労がこれからもあるに違ない。
だが俺は魔王デルス。俺を倒しうるのは勇者のみ。
それ以外なら、どんな困難にも負けるわけがないのだ。
そしてふたたび、六封凶たちが一斉に片膝を付いた。
まるで、俺がこの世界に転生したときのようだ。
「知の参謀ビブリア、これからもデルス様に忠誠を誓います。我が国、デルス国の繁栄のために」
「戦神のペール、同じく忠誠を誓います。デルス様の平和の為に、戦い続けます」
「守護のシュリ、どんな脅威も守り抜きます。この命尽きるまで、御身に尽くします」
「祝福のライフ、すべては私が癒します。デルス様の御心のままに」
「殺戮のベルディ、脅威は私が全て破壊する。もちろん、デルス様の言う通り、誰も殺さない」
そして――。
「転移のアリエル、私はデルス様の全てを守り、全てを統括します。これからもあなた行く先、未来まで私がお供します」
アリエルが、満面の笑みで言った。
もちろんレイヤ姫、吸血鬼族、蜥蜴族、ハーピー、ウィンディーネ、ドライアド、ゴン、ファイル、リリ、メリットもだ。
「これから他国との交流も増えるだろう。争いごともあるかもしれない。だけどみんなと一緒なら幸せになれると信じてくれる。本当の闘いはこれからだ。だが――よろしくな」
――俺たちのベクトル・ファンタジーは、始まったばかりだ。
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