54 / 61
第54話 初めてのお友達
しおりを挟む
第二試験は実地試験だった。
等間隔に並べられたテーブルに、錬金術のための道具が一式揃っている。
ランダムに指定されたアイテムを様々な素材を使って作り出す。
金属、鉱石、植物、そして魔法石。
深呼吸をしながら、ベルク様を思い出していた。
『レナセール、試験で大事なことは何かわかるか?』
『技術でしょうか?』
『それも必要だが、一番は思考だ。幸い俺はレシピが浮かぶのでそこに労力は必要ないが、実際にするのでは大きく違う。しかしレナセール、君は手先が器用だ。実地試験は必ずあるが、素材選びはよく考えたほうがいい。そうすれば、必ず合格できる』
「レナセール、試験は始まっていますよ」
私は、素材をじっくりと選んでいた。
みんな試験が始まって一斉に選んで、そして作り出している。時間がないからだ。
「はい」
自分に自信はない。
でも私は、ベルク様のことを信じている。
彼が合格できるというならば、きっと大丈夫。
だから私は、出来るだけ時間を使って、じっくり素材を選んだ。
そして、一つ一つ丁寧に合成、錬成していく。
幸い私は魔法が得意だ。術式や魔法印使っている人よりも、何倍も工程が早い。
「――合成」
私は元々魔法が好きだったが、すぐに嫌いになった。
幼い頃は生きる為に使っていた。でも、色々あってから人を傷つける為に使わせられていた。
精神が疲弊し、何も考えられない日々が続いた。
だけど今は、未来の為に魔法を詠唱している。
それが、たまらなく嬉しい。
私は生まれ変わった。
それを教えてくれたのはベルク様だ。
『君の名前はレナセールだ』
絶対に――合格します。
◇
「――レナセール、第三試験へ移動してください」
「はい」
そして私は、ふたたび一番目に呼ばれた。
周りはもう笑っていない。どちらかというと、怒りすら感じられる。
わかっていたことだが、正直、悲しかった。
決してズルをしたわけじゃない。ただ、一生懸命に努力しただけだ。
でもいい、それを認めてくれるのは、ベルク様だけで――。
「すごいね。第一も第二もトップだなんて」
そのとき、廊下でトンっと肩を叩かれた。
驚いて顔を向けると、そこにいたのは、私の身長とさほど変わらない、ピンク髪の女の子だった。
綺麗な髪だ。肩下ぐらいまであって、目は青くて綺麗。
装いは黒いローブ、どこかで見たことがあるような。
あ、そ、そんなことより――。
「え、あ、ありがとうございます」
「いきなりごめんね。あなたの事を悪く言ってた人たちがみんな黙り込んじゃって爽快だったよ。止めようかなって思ったんだけど、変に騒ぐと余計に面倒なことなるかなって。だから、ごめんね」
「え、いえいえ!? とんでもない!?」
彼女は頭を下げていた。
何も悪くない。なのに、どうして。
そして私は、肩の金色の鷹の紋章に気づく。
思わず、声が籠れ出るほど驚いた。
「……セレスティ」
「あ、自己紹介が遅れたね。それに、私は二番目だったから、名前も知らないよね。ええと――」
世界には多くの魔術学校がある。
その中でも、トップクラスに有名なところは三つほどしかない。
そしてその中でも最高位とされている魔術学校が、王都に存在する。
血縁、魔法、剣術、すべてにおいてトップクラスでないと入学できない。
そして、レベッカさんの母校でもある。
卒業生のほとんどが、世界に歴史を残している事でも有名だ。
そしてこの事も知っている。
主席には、肩の金色の鷹の紋章をつけることが義務付けられていることを。
「私の名前は、エリニカ・クーデリー。セラスティ魔術高等学校の一年生で、氷魔法が得意かな? レナセールさんのことは知ってるよ。ベルク・アルフォンさんの元で働いているんだよね? 大会優勝したの冷風機も、レベッカの絆創膏も本当に凄い」
やっぱりそうだ。私は慌てて自己紹介する。
でもなぜ声をかけてきたのかわからなかった。
「ありがとうございます。でただ私は平民です。周りが、何と思うのかわかりませんので、離れていたほうが……」
「そんなの関係ないよ。あなたはすごく優秀で、それでいて周りの目をはねのける心の強さを持ってる。私は、自分の目で見たことしか信じない。ねえ、レナセールさん、良かったらお友達になってもらえませんか?」
そして彼女が、私の初めてのお友達になるのだった。
等間隔に並べられたテーブルに、錬金術のための道具が一式揃っている。
ランダムに指定されたアイテムを様々な素材を使って作り出す。
金属、鉱石、植物、そして魔法石。
深呼吸をしながら、ベルク様を思い出していた。
『レナセール、試験で大事なことは何かわかるか?』
『技術でしょうか?』
『それも必要だが、一番は思考だ。幸い俺はレシピが浮かぶのでそこに労力は必要ないが、実際にするのでは大きく違う。しかしレナセール、君は手先が器用だ。実地試験は必ずあるが、素材選びはよく考えたほうがいい。そうすれば、必ず合格できる』
「レナセール、試験は始まっていますよ」
私は、素材をじっくりと選んでいた。
みんな試験が始まって一斉に選んで、そして作り出している。時間がないからだ。
「はい」
自分に自信はない。
でも私は、ベルク様のことを信じている。
彼が合格できるというならば、きっと大丈夫。
だから私は、出来るだけ時間を使って、じっくり素材を選んだ。
そして、一つ一つ丁寧に合成、錬成していく。
幸い私は魔法が得意だ。術式や魔法印使っている人よりも、何倍も工程が早い。
「――合成」
私は元々魔法が好きだったが、すぐに嫌いになった。
幼い頃は生きる為に使っていた。でも、色々あってから人を傷つける為に使わせられていた。
精神が疲弊し、何も考えられない日々が続いた。
だけど今は、未来の為に魔法を詠唱している。
それが、たまらなく嬉しい。
私は生まれ変わった。
それを教えてくれたのはベルク様だ。
『君の名前はレナセールだ』
絶対に――合格します。
◇
「――レナセール、第三試験へ移動してください」
「はい」
そして私は、ふたたび一番目に呼ばれた。
周りはもう笑っていない。どちらかというと、怒りすら感じられる。
わかっていたことだが、正直、悲しかった。
決してズルをしたわけじゃない。ただ、一生懸命に努力しただけだ。
でもいい、それを認めてくれるのは、ベルク様だけで――。
「すごいね。第一も第二もトップだなんて」
そのとき、廊下でトンっと肩を叩かれた。
驚いて顔を向けると、そこにいたのは、私の身長とさほど変わらない、ピンク髪の女の子だった。
綺麗な髪だ。肩下ぐらいまであって、目は青くて綺麗。
装いは黒いローブ、どこかで見たことがあるような。
あ、そ、そんなことより――。
「え、あ、ありがとうございます」
「いきなりごめんね。あなたの事を悪く言ってた人たちがみんな黙り込んじゃって爽快だったよ。止めようかなって思ったんだけど、変に騒ぐと余計に面倒なことなるかなって。だから、ごめんね」
「え、いえいえ!? とんでもない!?」
彼女は頭を下げていた。
何も悪くない。なのに、どうして。
そして私は、肩の金色の鷹の紋章に気づく。
思わず、声が籠れ出るほど驚いた。
「……セレスティ」
「あ、自己紹介が遅れたね。それに、私は二番目だったから、名前も知らないよね。ええと――」
世界には多くの魔術学校がある。
その中でも、トップクラスに有名なところは三つほどしかない。
そしてその中でも最高位とされている魔術学校が、王都に存在する。
血縁、魔法、剣術、すべてにおいてトップクラスでないと入学できない。
そして、レベッカさんの母校でもある。
卒業生のほとんどが、世界に歴史を残している事でも有名だ。
そしてこの事も知っている。
主席には、肩の金色の鷹の紋章をつけることが義務付けられていることを。
「私の名前は、エリニカ・クーデリー。セラスティ魔術高等学校の一年生で、氷魔法が得意かな? レナセールさんのことは知ってるよ。ベルク・アルフォンさんの元で働いているんだよね? 大会優勝したの冷風機も、レベッカの絆創膏も本当に凄い」
やっぱりそうだ。私は慌てて自己紹介する。
でもなぜ声をかけてきたのかわからなかった。
「ありがとうございます。でただ私は平民です。周りが、何と思うのかわかりませんので、離れていたほうが……」
「そんなの関係ないよ。あなたはすごく優秀で、それでいて周りの目をはねのける心の強さを持ってる。私は、自分の目で見たことしか信じない。ねえ、レナセールさん、良かったらお友達になってもらえませんか?」
そして彼女が、私の初めてのお友達になるのだった。
162
あなたにおすすめの小説
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる