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エルフの集落
第49話:君の為なら
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ヴェルネルが現れた事にアイレとフェアは驚きで声も出なかった。
「まさか、レクルド・スウェーゲンがここにいるとは、手間が省けたな」
ヴェルネルは少しだけ嬉しそうに淡々と言った。
「……ヴェルネル?」
ヴェルネルがレクルドの首を切り落としてから嬉しそうにぼやき、フォンダトゥールがヴェルネルに気づいた。
フォンダトゥールもまたヴェルネルの事を知っている。
「フォンダトゥール、お久しぶりです。 そして……アイレ。フェア。君達がここにいるとは思わなかったよ」
ヴェルネルは平然としていた。アイレとフェアを見てそこまで驚く素振りはなかった。遠くの森にいたグレースは弓を構えてヴェルネルが敵か味方かわからず困惑していた。
それはロック達も同様であった。
「……ヴェルネルなのか……? やっぱり生きてたのか!?」
アイレは目を見開きながらようやく口を開いた。フェアは知らず内に涙を流していた。残り少ないレクルドの部下は指揮官の首が落とされた事で戦意喪失している。
「……ああ。こいつらは何だ?」
「……そいつらはエルフを殺す為に、この土地へ来たオストラバ王国の騎士団よ。 ヴェルネルあなたはどうやって生きていたの……レムリは……レムリはどこにいるの?」
フェアもようやくここで落ち着いて口を開いた。ヴェルネルもそうだが、レムリの事を気にあっけた。しかし、久しぶりの再会だというのにヴェルネルはあまり嬉しそうには見えない。
「レムリの為に僕はここにいるんだよ」
ヴェルネルが真っ直ぐな瞳でそう言うと、アイレ達の後方から誰かが現れた。その人物達はオストラバ王国の兵士を一人残らず瞬殺した。あるいは爆発して粉々に
あるいは首を綺麗に切断され。あるいは炎で消し屑に。
アイレもヴェルネルも知っている人物達。
「な、なんだ!?」
「誰だ!?」
突然の出来事にロック達やアイレ達は声を上げた。エルフ達もただそれを眺める事しかできなかった。
その人物達の正体は北のセーヴェルと首切りのユーク。そしてヴルダヴァでアクアを殺した、あのイフリート。
「ど……どういう事だよ。なんでお前達がここにいるんだ」
アイレはすぐに二人に気づくと大声で叫んだ。
「やっホーッ!」
「こんにちは。もう、こんばんわかしら?」
「誰だお前は?」
ユークは元気よく、セーヴェルは落ち着いて、イフリートはとぼけた顔をしている。
「ヴェルネル。彼らはあなたの仲間だというの?」
30年前に死んだはずのヴェルネル。そしてベレニを襲ったセーヴェルとユーク。ヴルダヴァを襲ったイフリート。
関係性も含めて、全てが理解できなかった。それはアイレも同様であった。
「仲間、か。 そうだな。 同じ思想を共有しているという点ではそうかもしれない」
「同じ……思想?」
「ああ。僕の最後をフェアは知っているだろう?」
「それは……勿論よ……」
フェアは思い出しながら静かに答えた。そこでアイレがアクアの事を想いながら
「おい、ヴェルネル。そいつらは罪もない人を沢山殺したんだぞ」
「……罪もない人間だと? ふざけるな! ならどうしてここにレムリはいないと思う
あの時、僕は理解に苦しんだ。どうして攻撃されているのかすらわからなかった。でも今は全てを理解している。腐った人間共が牛耳っている限りこの世界では同じ事が繰り返される。
復讐の為だけではない。この世界を正しい方向に導こうと僕は行動を起こした」
「ヴェルネル、教えてくれ。レムリは……もう死んでいるのか?」
アイレの心の中は引き裂かれる様な感情が渦巻いた。ユークとセーヴェルのみならず、アクアを殺したイフリートがヴェルネルの仲間だという事に。
ヴェルネルは感情を少し高ぶらせながら、話を続けた。
「ああ、アイレ。君には聞いてほしい。……あの時、僕が何があったのかを――」
そして、ヴェルネルはフェアも知らない、あの時の出来事を語った。
◇ ◇ 30年以上前 ◇ ◇
インザームとフェアはヴェルネルとレムリの最後を見る事ができず、そのまま去った。その後
無数の攻撃魔法が二人に降り注いだ。煙で見えなくなってもありとあらゆる攻撃は長い間続いた。
……それからヴェルネルはクルムロフ城から10キロ程離れた森で目を覚ました。右腕と左足を失ったまま血が止まらない状態であったが、微かに生きていた。
自分の力で立つ事はできず、このままでは数分後に確実に死んでしまう。その時、一人の女性がヴェルネルを助けた。ありったけの治癒魔法を使い
ヴェルネルと右腕と左足を止血すると、そのまま家に連れていき夜通し看病した。
ヴェルネルが生き死を取り戻したのは数週間後であった。その間も女性は献身的にヴェルネルに治癒魔法をかけ続け意識のないヴェルネルの口に食事を流し込んだ。
ようやく、話せるようになったヴェルネルは自分が助けられている事に理解した。森の中でベットで横になりながら献身的に自身を助けてくれる女性に気づいた。。
「……き、きみはいったい? 僕を助けてくれたのか?」
「ええ。今はゆっくり休んで。もう大丈夫よ」
「……ここは一体どこなんだ?」
「……あなたの事は有名だから知ってるわ。ヴェルネル。 転移魔法でこの森に移動してきたのよ。……勝手だけど、私の魔法であなたの記憶を見させてもらった。
……レムリさんがあなたの事を最後の力で転移させたのよ」
「レムリが……!? 僕を? そうだ。レムリは!?」
ヴェルネルはベットで起き上がる様に腰をあげたが、右腕と左足を失っているので満足に起き上がる事もできず更には痛みを感じた。
「無理しないで! 私が見た記憶ではレムリさんはもう……」
女性の言葉にヴェルネルは最後のレムリの姿が頭の中で蘇らせた。助かるはずもない絶え間ない攻撃魔法。その中でも自分を助けようと転移魔法を詠唱したレムリ。
「……ちきしょうちきしょうちきしょう! あいつら……なんでだ! なんで俺達を……」
ヴェルネルは残った左腕でベットを強く叩いた。攻撃をされた理由、レムリが殺された理由もわからないからだ。
「……私は全てを知っている。あなたを襲った一国の王族に仕えていたのよ。でも、裏で行っていた奴隷売買を知った私はそれに言及したおかげで国から追われる事になった。それで私はこの森に隠れていたのよ。
そこにあなたが現れた。それからあなた達が攻撃された理由も…‥‥知っているわ」
その女性は全ての理由を知っていた。人間は自分達を守るため、世界を守る為と言い聞かせてレムリを殺したという事を。ヴェルネルの目を良く見ながら、落ち着いて全てを放した。
「……そんな、わけのわからない理由で……レムリがいつか世界を壊すかもしれないだと!? そんなわけがないだろう!!!! レムリは……彼女は誰よりもこの世界を愛していた。
そんな彼女をよくも……よくも!!!!!!!!!!!!」
ヴェルネルは激怒した。誰よりもレムリの事を愛していた。この世界を愛していたからだ。
北のセーヴェルと同じように感情の高ぶりで魔力が抑えられずレムリが世界を壊すかもしれないという理由だけではなかった。
国の王族や権力者の中にはヴェルネルやレムリと言ったどこの国にも所属していない者を嫌っていた事も要因の一つとなった。いつかどこかで矛が向けられればは自国での地位が脅かされると。
勿論、奴隷制度に反対しているレムリを疎ましく思う王族もそれに賛同した。建前ではヴェルネルとレムリを称え、本音はひた隠しにして二人を保身のために葬り去ろうとした。
「……この世界の権力者の殆どは腐っているわ。私一人では何もできなかった。でも……ヴェルネル。あなたがいればこの世界はもっと良い世界になれる。
それに……レムリさんは生き返らせる事ができる」
「ど、どういう事だ!? レムリを生き返らせる事ができる!?」
「ええ、私とあなたがここで出会ったのは何か運命を感じるわ」
女性はヴェルネルを見ながら真剣な表情で決意を語った。
「レムリの為なら俺は何でもする。だが……この腕と足ではもう戦う事はできない……」
ヴェルネルは失った右腕と左足を見ながら涙を流した。この状態では満足に戦う事もできない。
「あなたが望むなら私は元に戻す事ができる。だけど、それには相当の覚悟が必要だわ。この世界に対して恐怖を与える事にもなる。
ヴェルネル。あなたにそれがきるの?」
「……俺はレムリを生き返らせる事が出来るなら悪魔にでも魂を売るつもりだ。
そしてレムリを殺した奴らを絶対に許さない」
ヴェルネルの言葉を聞いて、女性は心なしか微笑んだように見えた。ヴェルネルは続けて
「君の……名前はなんていうんだ?」
「私は……シンドラ。元エルフのシンドラよ」
tobe continued
「まさか、レクルド・スウェーゲンがここにいるとは、手間が省けたな」
ヴェルネルは少しだけ嬉しそうに淡々と言った。
「……ヴェルネル?」
ヴェルネルがレクルドの首を切り落としてから嬉しそうにぼやき、フォンダトゥールがヴェルネルに気づいた。
フォンダトゥールもまたヴェルネルの事を知っている。
「フォンダトゥール、お久しぶりです。 そして……アイレ。フェア。君達がここにいるとは思わなかったよ」
ヴェルネルは平然としていた。アイレとフェアを見てそこまで驚く素振りはなかった。遠くの森にいたグレースは弓を構えてヴェルネルが敵か味方かわからず困惑していた。
それはロック達も同様であった。
「……ヴェルネルなのか……? やっぱり生きてたのか!?」
アイレは目を見開きながらようやく口を開いた。フェアは知らず内に涙を流していた。残り少ないレクルドの部下は指揮官の首が落とされた事で戦意喪失している。
「……ああ。こいつらは何だ?」
「……そいつらはエルフを殺す為に、この土地へ来たオストラバ王国の騎士団よ。 ヴェルネルあなたはどうやって生きていたの……レムリは……レムリはどこにいるの?」
フェアもようやくここで落ち着いて口を開いた。ヴェルネルもそうだが、レムリの事を気にあっけた。しかし、久しぶりの再会だというのにヴェルネルはあまり嬉しそうには見えない。
「レムリの為に僕はここにいるんだよ」
ヴェルネルが真っ直ぐな瞳でそう言うと、アイレ達の後方から誰かが現れた。その人物達はオストラバ王国の兵士を一人残らず瞬殺した。あるいは爆発して粉々に
あるいは首を綺麗に切断され。あるいは炎で消し屑に。
アイレもヴェルネルも知っている人物達。
「な、なんだ!?」
「誰だ!?」
突然の出来事にロック達やアイレ達は声を上げた。エルフ達もただそれを眺める事しかできなかった。
その人物達の正体は北のセーヴェルと首切りのユーク。そしてヴルダヴァでアクアを殺した、あのイフリート。
「ど……どういう事だよ。なんでお前達がここにいるんだ」
アイレはすぐに二人に気づくと大声で叫んだ。
「やっホーッ!」
「こんにちは。もう、こんばんわかしら?」
「誰だお前は?」
ユークは元気よく、セーヴェルは落ち着いて、イフリートはとぼけた顔をしている。
「ヴェルネル。彼らはあなたの仲間だというの?」
30年前に死んだはずのヴェルネル。そしてベレニを襲ったセーヴェルとユーク。ヴルダヴァを襲ったイフリート。
関係性も含めて、全てが理解できなかった。それはアイレも同様であった。
「仲間、か。 そうだな。 同じ思想を共有しているという点ではそうかもしれない」
「同じ……思想?」
「ああ。僕の最後をフェアは知っているだろう?」
「それは……勿論よ……」
フェアは思い出しながら静かに答えた。そこでアイレがアクアの事を想いながら
「おい、ヴェルネル。そいつらは罪もない人を沢山殺したんだぞ」
「……罪もない人間だと? ふざけるな! ならどうしてここにレムリはいないと思う
あの時、僕は理解に苦しんだ。どうして攻撃されているのかすらわからなかった。でも今は全てを理解している。腐った人間共が牛耳っている限りこの世界では同じ事が繰り返される。
復讐の為だけではない。この世界を正しい方向に導こうと僕は行動を起こした」
「ヴェルネル、教えてくれ。レムリは……もう死んでいるのか?」
アイレの心の中は引き裂かれる様な感情が渦巻いた。ユークとセーヴェルのみならず、アクアを殺したイフリートがヴェルネルの仲間だという事に。
ヴェルネルは感情を少し高ぶらせながら、話を続けた。
「ああ、アイレ。君には聞いてほしい。……あの時、僕が何があったのかを――」
そして、ヴェルネルはフェアも知らない、あの時の出来事を語った。
◇ ◇ 30年以上前 ◇ ◇
インザームとフェアはヴェルネルとレムリの最後を見る事ができず、そのまま去った。その後
無数の攻撃魔法が二人に降り注いだ。煙で見えなくなってもありとあらゆる攻撃は長い間続いた。
……それからヴェルネルはクルムロフ城から10キロ程離れた森で目を覚ました。右腕と左足を失ったまま血が止まらない状態であったが、微かに生きていた。
自分の力で立つ事はできず、このままでは数分後に確実に死んでしまう。その時、一人の女性がヴェルネルを助けた。ありったけの治癒魔法を使い
ヴェルネルと右腕と左足を止血すると、そのまま家に連れていき夜通し看病した。
ヴェルネルが生き死を取り戻したのは数週間後であった。その間も女性は献身的にヴェルネルに治癒魔法をかけ続け意識のないヴェルネルの口に食事を流し込んだ。
ようやく、話せるようになったヴェルネルは自分が助けられている事に理解した。森の中でベットで横になりながら献身的に自身を助けてくれる女性に気づいた。。
「……き、きみはいったい? 僕を助けてくれたのか?」
「ええ。今はゆっくり休んで。もう大丈夫よ」
「……ここは一体どこなんだ?」
「……あなたの事は有名だから知ってるわ。ヴェルネル。 転移魔法でこの森に移動してきたのよ。……勝手だけど、私の魔法であなたの記憶を見させてもらった。
……レムリさんがあなたの事を最後の力で転移させたのよ」
「レムリが……!? 僕を? そうだ。レムリは!?」
ヴェルネルはベットで起き上がる様に腰をあげたが、右腕と左足を失っているので満足に起き上がる事もできず更には痛みを感じた。
「無理しないで! 私が見た記憶ではレムリさんはもう……」
女性の言葉にヴェルネルは最後のレムリの姿が頭の中で蘇らせた。助かるはずもない絶え間ない攻撃魔法。その中でも自分を助けようと転移魔法を詠唱したレムリ。
「……ちきしょうちきしょうちきしょう! あいつら……なんでだ! なんで俺達を……」
ヴェルネルは残った左腕でベットを強く叩いた。攻撃をされた理由、レムリが殺された理由もわからないからだ。
「……私は全てを知っている。あなたを襲った一国の王族に仕えていたのよ。でも、裏で行っていた奴隷売買を知った私はそれに言及したおかげで国から追われる事になった。それで私はこの森に隠れていたのよ。
そこにあなたが現れた。それからあなた達が攻撃された理由も…‥‥知っているわ」
その女性は全ての理由を知っていた。人間は自分達を守るため、世界を守る為と言い聞かせてレムリを殺したという事を。ヴェルネルの目を良く見ながら、落ち着いて全てを放した。
「……そんな、わけのわからない理由で……レムリがいつか世界を壊すかもしれないだと!? そんなわけがないだろう!!!! レムリは……彼女は誰よりもこの世界を愛していた。
そんな彼女をよくも……よくも!!!!!!!!!!!!」
ヴェルネルは激怒した。誰よりもレムリの事を愛していた。この世界を愛していたからだ。
北のセーヴェルと同じように感情の高ぶりで魔力が抑えられずレムリが世界を壊すかもしれないという理由だけではなかった。
国の王族や権力者の中にはヴェルネルやレムリと言ったどこの国にも所属していない者を嫌っていた事も要因の一つとなった。いつかどこかで矛が向けられればは自国での地位が脅かされると。
勿論、奴隷制度に反対しているレムリを疎ましく思う王族もそれに賛同した。建前ではヴェルネルとレムリを称え、本音はひた隠しにして二人を保身のために葬り去ろうとした。
「……この世界の権力者の殆どは腐っているわ。私一人では何もできなかった。でも……ヴェルネル。あなたがいればこの世界はもっと良い世界になれる。
それに……レムリさんは生き返らせる事ができる」
「ど、どういう事だ!? レムリを生き返らせる事ができる!?」
「ええ、私とあなたがここで出会ったのは何か運命を感じるわ」
女性はヴェルネルを見ながら真剣な表情で決意を語った。
「レムリの為なら俺は何でもする。だが……この腕と足ではもう戦う事はできない……」
ヴェルネルは失った右腕と左足を見ながら涙を流した。この状態では満足に戦う事もできない。
「あなたが望むなら私は元に戻す事ができる。だけど、それには相当の覚悟が必要だわ。この世界に対して恐怖を与える事にもなる。
ヴェルネル。あなたにそれがきるの?」
「……俺はレムリを生き返らせる事が出来るなら悪魔にでも魂を売るつもりだ。
そしてレムリを殺した奴らを絶対に許さない」
ヴェルネルの言葉を聞いて、女性は心なしか微笑んだように見えた。ヴェルネルは続けて
「君の……名前はなんていうんだ?」
「私は……シンドラ。元エルフのシンドラよ」
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