53 / 114
エルフの集落
第48話:望んだ再会
しおりを挟む
「……ふん。儂はお前を知っておるぞ。傭兵のロック・フォーゲルだな。 意地汚い剣士気取りが、卑怯な手をつかいよって」
「その言葉そっくり返すぜおっさん。 魔法を使えなくして無抵抗な人を殺すつもりの当てが外れて焦ってんのか? 目的はなんだ?」
老兵がロックに吐き捨てる様に悪態を突いた。それを聞いたアイレがロックの代わりに老兵に言葉を返した。
それから老兵は考えてから口を開いた。
「……エルフは人ではない悪魔の手先だ。さてはお前等全員アゲート・シュタインに雇われたな。エルフを殺さない様にと最後まで足掻いて諦めたかとおもいきや
こんな罠を嵌めるとは、あやつめオストラバ王国に逆らうつもり」
「……アゲート・シュタインが足掻いてただと? どういう事だ?」
老兵の口から出た言葉はアイレ達にとって驚くべき事であった。この話しぶりからアゲート・シュタインは黒幕でないように思えるとアイレは疑問に抱いた。
「……ふん。見え透いた芝居をしよって」
「……思い出したわ。あなたレクルド・スウェーゲンね」
「知ってるのか? フェア」
「勿論だわ。エルフで知らない人はいない。あなたはエルフを悪魔の末裔と罵り、大勢の人を洗脳してエルフを葬り去った。その罪を償ってもらう」
フェアは老兵の正体を思い出すと吐き捨てる様に激怒した。他種族撲滅運動の過激派の中でも多くのエルフを虐殺したのが、このレクルド・スウェーゲンという事を。
殺気と共に魔力を高めると、片耳がピンと伸びた。それを見てレクルドが気付く。
「……ハーフエルフの混じり者が。エルフにも人間にもなれない貴様はこの世界に生きてる価値はない」
「黙れ!!!!!!!!!!!!!」
レクルドがフェアにそう吐き捨てるとフェアは我を忘れた様に魔法を詠唱しはじめた。その隙を逃さずレクルドは剣を振りかぶった。それに呼応してレクルドの部下も反応する。それに対してアイレがいち早く前に出てレクルドの剣を受けた。
「エルフに洗脳された哀れな人間め!」
「黙れ! お前は人間ですらない!」
レクルドはアイレに剣を捌き切られた瞬間に後方に飛んだ。その時、レクルドの部下の一人が魔法を詠唱した。
「レクルド様!」
名前を呼ぶと同時にレクルドとその部下の二人の姿が瞬時に消えた。残った部下はロック、ワイズ、ミットがいつのまにか殺していた。心臓を一突きで声すらあげれなかった様だ。
「ちっ逃がしたか!」
「ごめんなさい。私のせいだわ……」
アイレが悪態をついて、フェアは怒りを抑えられなかった様でレクルドを逃がしたと後悔した。
「いや、大丈夫だ。遠くへ逃げれる程の魔法は使えないはずだ。外に出よう」
すぐにロックが全員に言った。右手の剣にはレクルドの部下を殺した血が滴っている。それを見てアイレは少し動揺した。
人間同士の本格的な戦い初めてだ。
直ぐに全員で外に出ると、そこは火の海の戦場になっていた。予め作戦に組み込まれていたとはいえ、想定以上な状態であった。だが、そうでもしないと
魔法が使えないエルフ達の勝機はなかった。
魔法を使えないエルフ達は剣と盾を取り己の力で戦っていた、出来るだけ近距離で戦う事で魔法の援護をさせないようにしていた。グレースは魔法で具現化した矢を使って
出来るだけ後衛を狙っていた。 レクルドが指揮を取れていない事、魔法は使えないという事で油断していたのか相手も混乱していた。
「レクルドを探すのは後だ。まずは相手の魔法使いから狙え!」
ロックが全員に指示を出して、出来るだけ後ろから回り込むと魔法使いを狙って攻撃を繰り出した。グレースはロックの動きに気づくと
ありったけの魔力で魔法の矢を具現化して矢継ぎ早に放ち続けた。
指揮官を失い、事前と違う情報によってオストラバ王国の手練れは意外にも脆くロックの言う通りに次々と倒れていった。そしてアイレも
人としての感情を押し殺しながら、考える事をあえて停止する様に戦った。
――考えるな。考えるな。考えるな。やるべき事をやるだけだ。
圧倒的とは言えないが、間違いなくこのままいけばアイレ達の勝利は間違いと思った時。森の奥からレクルドが現れた。
フォンダトゥールを人質に取りながら。
「フォンダトゥール!!」
フェアがいち早く気づくと叫び、エルフ達もフォンダ様と声をかけた。
フォンダトゥールはこの集落の長であり、誰もが信頼している親の様な存在であった。その命はエルフの誰よりも重く尊い。
全員の動きが止まった。
「やはり、こいつが長か。武器を捨てろ。 儂は容赦はせんぞ」
そう言うと、首に剣先をめり込ませた。血が少し滴り、更にそれを見てエルフ達は動揺した。一人、また一人と武器を捨てた。
「傭兵如きが小癪な作戦を立てよって。だが、戦場では弱みがある方が負けだ。大人しくすれば人間、お前達は助けてやろう」
レクルドはアイレ達を見ながら静かに言った。
――ちきしょう。まただ。また助けられない。
「早く捨てろ!!!!!」
レクルドの激怒した叫びに呼応して、ロック達は全員武器を捨てた。
「ハーフエルフの小娘。まずはこいつからだ。お前等、早くしろ!」
レクルドの部下がフェアを掴んだ。
「やめろ!」
「黙れ小僧! フォンダトゥールがどうなってもいいのか?」
――俺は……俺は!!!
「早く殺れ!」
レクルドがそう言うと、部下は剣をフェアの首に向かって振りかぶった。その瞬間、アイレの右手と左手にダンジョンの武器が出現した。手にビリビリと感じ取った瞬間
アイレは脳に信号を送る時間の猶予も与えないまま体を動かすとレクルドの部下の首を落とした。
それに気付いて、他のレクルドの部下も声をあげた。エルフ達でさえも。
「な! 貴様よくも!!!! 死ね!!!」
レクルドは気付いた瞬間にフォンダトゥールの首を切り落とそうと力を込めた。ダンジョン武器を持ったアイレでさえも間に合わない距離であった。
それでも助けようと急いで動いた
レクルドの剣はフォンダトゥールの首を落とした。
と、誰もが思った時。
後ろから現れた男がレクルドの首を一撃で落とした。
レクルドの首はころころと転がり、部下の前で止まり全員が叫び声をあげた。血が噴き出し、そのままレクルドの体は倒れた。
その男の姿を見て、アイレとフェアは声すらあげれないほど驚いた。
銀色の甲冑を着込み、青く魔力に満ちた長い剣。綺麗な金色の短髪に
透き通った青い目が懐かしく思える。
アイレがこの世界に来てずっと会いたかった人物の一人
フェアがずっと忘れられる事ができなかった人物
ヴェルネルがそこに立っていた。
「その言葉そっくり返すぜおっさん。 魔法を使えなくして無抵抗な人を殺すつもりの当てが外れて焦ってんのか? 目的はなんだ?」
老兵がロックに吐き捨てる様に悪態を突いた。それを聞いたアイレがロックの代わりに老兵に言葉を返した。
それから老兵は考えてから口を開いた。
「……エルフは人ではない悪魔の手先だ。さてはお前等全員アゲート・シュタインに雇われたな。エルフを殺さない様にと最後まで足掻いて諦めたかとおもいきや
こんな罠を嵌めるとは、あやつめオストラバ王国に逆らうつもり」
「……アゲート・シュタインが足掻いてただと? どういう事だ?」
老兵の口から出た言葉はアイレ達にとって驚くべき事であった。この話しぶりからアゲート・シュタインは黒幕でないように思えるとアイレは疑問に抱いた。
「……ふん。見え透いた芝居をしよって」
「……思い出したわ。あなたレクルド・スウェーゲンね」
「知ってるのか? フェア」
「勿論だわ。エルフで知らない人はいない。あなたはエルフを悪魔の末裔と罵り、大勢の人を洗脳してエルフを葬り去った。その罪を償ってもらう」
フェアは老兵の正体を思い出すと吐き捨てる様に激怒した。他種族撲滅運動の過激派の中でも多くのエルフを虐殺したのが、このレクルド・スウェーゲンという事を。
殺気と共に魔力を高めると、片耳がピンと伸びた。それを見てレクルドが気付く。
「……ハーフエルフの混じり者が。エルフにも人間にもなれない貴様はこの世界に生きてる価値はない」
「黙れ!!!!!!!!!!!!!」
レクルドがフェアにそう吐き捨てるとフェアは我を忘れた様に魔法を詠唱しはじめた。その隙を逃さずレクルドは剣を振りかぶった。それに呼応してレクルドの部下も反応する。それに対してアイレがいち早く前に出てレクルドの剣を受けた。
「エルフに洗脳された哀れな人間め!」
「黙れ! お前は人間ですらない!」
レクルドはアイレに剣を捌き切られた瞬間に後方に飛んだ。その時、レクルドの部下の一人が魔法を詠唱した。
「レクルド様!」
名前を呼ぶと同時にレクルドとその部下の二人の姿が瞬時に消えた。残った部下はロック、ワイズ、ミットがいつのまにか殺していた。心臓を一突きで声すらあげれなかった様だ。
「ちっ逃がしたか!」
「ごめんなさい。私のせいだわ……」
アイレが悪態をついて、フェアは怒りを抑えられなかった様でレクルドを逃がしたと後悔した。
「いや、大丈夫だ。遠くへ逃げれる程の魔法は使えないはずだ。外に出よう」
すぐにロックが全員に言った。右手の剣にはレクルドの部下を殺した血が滴っている。それを見てアイレは少し動揺した。
人間同士の本格的な戦い初めてだ。
直ぐに全員で外に出ると、そこは火の海の戦場になっていた。予め作戦に組み込まれていたとはいえ、想定以上な状態であった。だが、そうでもしないと
魔法が使えないエルフ達の勝機はなかった。
魔法を使えないエルフ達は剣と盾を取り己の力で戦っていた、出来るだけ近距離で戦う事で魔法の援護をさせないようにしていた。グレースは魔法で具現化した矢を使って
出来るだけ後衛を狙っていた。 レクルドが指揮を取れていない事、魔法は使えないという事で油断していたのか相手も混乱していた。
「レクルドを探すのは後だ。まずは相手の魔法使いから狙え!」
ロックが全員に指示を出して、出来るだけ後ろから回り込むと魔法使いを狙って攻撃を繰り出した。グレースはロックの動きに気づくと
ありったけの魔力で魔法の矢を具現化して矢継ぎ早に放ち続けた。
指揮官を失い、事前と違う情報によってオストラバ王国の手練れは意外にも脆くロックの言う通りに次々と倒れていった。そしてアイレも
人としての感情を押し殺しながら、考える事をあえて停止する様に戦った。
――考えるな。考えるな。考えるな。やるべき事をやるだけだ。
圧倒的とは言えないが、間違いなくこのままいけばアイレ達の勝利は間違いと思った時。森の奥からレクルドが現れた。
フォンダトゥールを人質に取りながら。
「フォンダトゥール!!」
フェアがいち早く気づくと叫び、エルフ達もフォンダ様と声をかけた。
フォンダトゥールはこの集落の長であり、誰もが信頼している親の様な存在であった。その命はエルフの誰よりも重く尊い。
全員の動きが止まった。
「やはり、こいつが長か。武器を捨てろ。 儂は容赦はせんぞ」
そう言うと、首に剣先をめり込ませた。血が少し滴り、更にそれを見てエルフ達は動揺した。一人、また一人と武器を捨てた。
「傭兵如きが小癪な作戦を立てよって。だが、戦場では弱みがある方が負けだ。大人しくすれば人間、お前達は助けてやろう」
レクルドはアイレ達を見ながら静かに言った。
――ちきしょう。まただ。また助けられない。
「早く捨てろ!!!!!」
レクルドの激怒した叫びに呼応して、ロック達は全員武器を捨てた。
「ハーフエルフの小娘。まずはこいつからだ。お前等、早くしろ!」
レクルドの部下がフェアを掴んだ。
「やめろ!」
「黙れ小僧! フォンダトゥールがどうなってもいいのか?」
――俺は……俺は!!!
「早く殺れ!」
レクルドがそう言うと、部下は剣をフェアの首に向かって振りかぶった。その瞬間、アイレの右手と左手にダンジョンの武器が出現した。手にビリビリと感じ取った瞬間
アイレは脳に信号を送る時間の猶予も与えないまま体を動かすとレクルドの部下の首を落とした。
それに気付いて、他のレクルドの部下も声をあげた。エルフ達でさえも。
「な! 貴様よくも!!!! 死ね!!!」
レクルドは気付いた瞬間にフォンダトゥールの首を切り落とそうと力を込めた。ダンジョン武器を持ったアイレでさえも間に合わない距離であった。
それでも助けようと急いで動いた
レクルドの剣はフォンダトゥールの首を落とした。
と、誰もが思った時。
後ろから現れた男がレクルドの首を一撃で落とした。
レクルドの首はころころと転がり、部下の前で止まり全員が叫び声をあげた。血が噴き出し、そのままレクルドの体は倒れた。
その男の姿を見て、アイレとフェアは声すらあげれないほど驚いた。
銀色の甲冑を着込み、青く魔力に満ちた長い剣。綺麗な金色の短髪に
透き通った青い目が懐かしく思える。
アイレがこの世界に来てずっと会いたかった人物の一人
フェアがずっと忘れられる事ができなかった人物
ヴェルネルがそこに立っていた。
17
あなたにおすすめの小説
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
知識スキルで異世界らいふ
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~
楠富 つかさ
ファンタジー
ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。
そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。
「やばい……これ、動けない……」
怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。
「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」
異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~
うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」
これしかないと思った!
自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。
奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。
得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。
直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。
このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。
そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。
アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。
助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる