104 / 114
最後の戦い
第96話:最初で最後のゲーム
しおりを挟む
『地球』その言葉に反応したのは、もちろんアイレとヴェルネルのみ。何かの魔法、妖術、鉄箱《マリス》に取って代わる魔法具ではないかと、残りのメンバーは不安を覚えたが、シンドラ《レムリ》はご丁寧にも補足した。
「あら、ごめんなさい。私ったらどうも言葉足らずなことがあって驚かせちゃったみたいね」
手を口に当てながら、まるで貴族のように振舞う。
「……お前、どうして地球を知ってる?」
「あら、そうそう、言い忘れていたわ。私は頭の中を覗くのが得意なの、この身体《レムリ》の深い記憶を読ませてもらったわ、なんて素晴らしい惑星なんでしょう! 地球に帰ったら私も自分《レムリ》のママとパパに挨拶しなきゃね? それはそうと、あなた達がまさか異世界人だったとは驚いたわ、魔界以外にも世界があるだなんて、私もまだまだ無知ね、さて……」
アイレの質問に答えた後、少し真顔に戻り、
「ここであなた達を殺すのは、とてもとても簡単なことなのだけれど、それだと面白みがに欠ける。だって私の魔力で震えあがっているし、どうせなら楽しんでから、この惑星を終わらせようかと思って、そうね……。――地球の言葉でいうと、ゲームかしら? ねぇ、楽しんでくださる?」
シンドラ《レムリ》は不思議なことを言いはじめた。『ゲーム』。聞きなれない単語に、アイレとヴェルネル以外は怪訝《けげん》そうな顔をしている。しかしアズライトは、その間もルチルの名前を心の中で何度も叫んでいた。どうして、なぜ、レムリは応えてくれないんだ。道中でレムリとクリアに聞いていたが、魔力を感じないとのことだった。不安は……拭えない。
「さて、観客《オーディエンス》どもが静かすぎてつまらないわ、これ使い方合ってるかしら? ――そろそろ始めましょう!」
シンドラ《レムリ》が使い慣れない言葉で、声高々に叫んだ。”何かがはじまる” 不安を感じて、アイレが誰よりも早く動いた。神速《ディビーツ》を詠唱して、その場にいた誰の目にも留まらない速度で。
しかし、アイレがシンドラに到達する前、地面一体が黒い転移魔法で覆われた。これは……。
それを何度もくぐったことのあるアズライトだけが気付いた。
「ルチル……!?」
小さく囁くように叫んだ瞬間、その場にいた全員が地面を落下するかのように転移魔法で強制的にその場から消えた。後を追うようにシンドラ《レムリ》もその転移に入る。
アイレたちは次々と別の場所から現れると、空中から地面に落下した。幸いそれほどの高さではなかったので、全員無事だったが、フェローだけは肩を怪我していたので、よろめいた。
クリアがシンドラの隙を見て、フェローの肩に手を当てながら、魔法で回復させようとしているが、魔族と人間のハーフという種族の垣根《かきね》が邪魔をしていて、なかなか思うようにいかない。その様子を申し訳なさそうに何度かアームがチラチラと見ていた。
それからすぐ、その場にいた全員が周囲をキョロキョロと見渡した。そこには……アイレたちが知っている人物たちが集められていた。
大勢のルクレツィア兵士とオストラバ王国の兵士。そしてヴルダヴァ、ベレニ、……。アイレが旅をしていた途中で、見知った国の紋章だらけだった。全員がキチンと戦闘の準備をしているようで、甲冑を着て武器を持っている。ザっとみても300人以上は下らない。
どこかの荒野のようで、少し大きな岩がポツポツと見える。まるで荒地だ。
これは一体なんだ? ここはどこだ。 アイレたちが一斉に心の中で同じ疑問を抱いた。
しかしそれは、その場にいた全員も考えていたようで、各国の兵士もキョロキョロとしていた。その中に、ガルダスとアゲートの姿もあった。
アズライトが気づき、驚いて声をかけようとした、そのとき、シンドラの声が全員の頭の中で響いた。
「見なさい、上よ」
レムリの言葉で発せられるその声は、無性に腹が立つ。全員が上を見上げたとき、シンドラ《レムリ》が空中で止まっていた。この世界で浮遊魔法を使えるのはただ一人、魔法使いレムリのみ。
すでに死んでいたはずだと思っていた人々は、その姿に感激したが、すぐにそれが間違いだったと気付く。
「こんにちは、私は……そうね、大魔法使いレムリです。知っているかしら?」
シンドラの偽の言葉に、唯一正体を知っているアイレたちが唇を噛む。この場で偽物だと叫んでもいいが、相手の出方を見た。
「ここにいる人たちは、私が独断と偏見で集めました。特に深い意味もありません。ただ、この場所を最後の戦場とします。大変喜ばしいことに、これがこの惑星で最後の争いとなるでしょう」
何を言っているんだ? あれが、魔法使いレムリ? 一体どういうことだ?
各国の兵士が上を眺めながら、騒めいた。その言葉の意味を瞬時に理解できたのはアイレたちを含めてほんの数名。
「詳しい説明は面倒なので、とにかく私を殺せばあなた達の勝利です。だけど、もちろん行く手を阻む者たちもいます。見事その敵を打ち負かし、私の喉元まで辿り着けば、あなた達は未来永劫、この世界で幸せに暮らせることでしょう」
「ですが、――このゲームに失敗した場合、この惑星は私が完全に消滅させます」
まるで、ゲームのボスキャラのように、嬉しそうに語る。レムリの記憶を盗み見ることで、地球の記憶からアニメのような言葉をスラスラと吐いた。それはシンドラの最初のお遊び。乗っ取った姿でどこまで出来るのか、力を試すかのようにワクワクしていた。
「それでは、言葉足らずですみませんが、さっそくはじめましょう!」
「あら、ごめんなさい。私ったらどうも言葉足らずなことがあって驚かせちゃったみたいね」
手を口に当てながら、まるで貴族のように振舞う。
「……お前、どうして地球を知ってる?」
「あら、そうそう、言い忘れていたわ。私は頭の中を覗くのが得意なの、この身体《レムリ》の深い記憶を読ませてもらったわ、なんて素晴らしい惑星なんでしょう! 地球に帰ったら私も自分《レムリ》のママとパパに挨拶しなきゃね? それはそうと、あなた達がまさか異世界人だったとは驚いたわ、魔界以外にも世界があるだなんて、私もまだまだ無知ね、さて……」
アイレの質問に答えた後、少し真顔に戻り、
「ここであなた達を殺すのは、とてもとても簡単なことなのだけれど、それだと面白みがに欠ける。だって私の魔力で震えあがっているし、どうせなら楽しんでから、この惑星を終わらせようかと思って、そうね……。――地球の言葉でいうと、ゲームかしら? ねぇ、楽しんでくださる?」
シンドラ《レムリ》は不思議なことを言いはじめた。『ゲーム』。聞きなれない単語に、アイレとヴェルネル以外は怪訝《けげん》そうな顔をしている。しかしアズライトは、その間もルチルの名前を心の中で何度も叫んでいた。どうして、なぜ、レムリは応えてくれないんだ。道中でレムリとクリアに聞いていたが、魔力を感じないとのことだった。不安は……拭えない。
「さて、観客《オーディエンス》どもが静かすぎてつまらないわ、これ使い方合ってるかしら? ――そろそろ始めましょう!」
シンドラ《レムリ》が使い慣れない言葉で、声高々に叫んだ。”何かがはじまる” 不安を感じて、アイレが誰よりも早く動いた。神速《ディビーツ》を詠唱して、その場にいた誰の目にも留まらない速度で。
しかし、アイレがシンドラに到達する前、地面一体が黒い転移魔法で覆われた。これは……。
それを何度もくぐったことのあるアズライトだけが気付いた。
「ルチル……!?」
小さく囁くように叫んだ瞬間、その場にいた全員が地面を落下するかのように転移魔法で強制的にその場から消えた。後を追うようにシンドラ《レムリ》もその転移に入る。
アイレたちは次々と別の場所から現れると、空中から地面に落下した。幸いそれほどの高さではなかったので、全員無事だったが、フェローだけは肩を怪我していたので、よろめいた。
クリアがシンドラの隙を見て、フェローの肩に手を当てながら、魔法で回復させようとしているが、魔族と人間のハーフという種族の垣根《かきね》が邪魔をしていて、なかなか思うようにいかない。その様子を申し訳なさそうに何度かアームがチラチラと見ていた。
それからすぐ、その場にいた全員が周囲をキョロキョロと見渡した。そこには……アイレたちが知っている人物たちが集められていた。
大勢のルクレツィア兵士とオストラバ王国の兵士。そしてヴルダヴァ、ベレニ、……。アイレが旅をしていた途中で、見知った国の紋章だらけだった。全員がキチンと戦闘の準備をしているようで、甲冑を着て武器を持っている。ザっとみても300人以上は下らない。
どこかの荒野のようで、少し大きな岩がポツポツと見える。まるで荒地だ。
これは一体なんだ? ここはどこだ。 アイレたちが一斉に心の中で同じ疑問を抱いた。
しかしそれは、その場にいた全員も考えていたようで、各国の兵士もキョロキョロとしていた。その中に、ガルダスとアゲートの姿もあった。
アズライトが気づき、驚いて声をかけようとした、そのとき、シンドラの声が全員の頭の中で響いた。
「見なさい、上よ」
レムリの言葉で発せられるその声は、無性に腹が立つ。全員が上を見上げたとき、シンドラ《レムリ》が空中で止まっていた。この世界で浮遊魔法を使えるのはただ一人、魔法使いレムリのみ。
すでに死んでいたはずだと思っていた人々は、その姿に感激したが、すぐにそれが間違いだったと気付く。
「こんにちは、私は……そうね、大魔法使いレムリです。知っているかしら?」
シンドラの偽の言葉に、唯一正体を知っているアイレたちが唇を噛む。この場で偽物だと叫んでもいいが、相手の出方を見た。
「ここにいる人たちは、私が独断と偏見で集めました。特に深い意味もありません。ただ、この場所を最後の戦場とします。大変喜ばしいことに、これがこの惑星で最後の争いとなるでしょう」
何を言っているんだ? あれが、魔法使いレムリ? 一体どういうことだ?
各国の兵士が上を眺めながら、騒めいた。その言葉の意味を瞬時に理解できたのはアイレたちを含めてほんの数名。
「詳しい説明は面倒なので、とにかく私を殺せばあなた達の勝利です。だけど、もちろん行く手を阻む者たちもいます。見事その敵を打ち負かし、私の喉元まで辿り着けば、あなた達は未来永劫、この世界で幸せに暮らせることでしょう」
「ですが、――このゲームに失敗した場合、この惑星は私が完全に消滅させます」
まるで、ゲームのボスキャラのように、嬉しそうに語る。レムリの記憶を盗み見ることで、地球の記憶からアニメのような言葉をスラスラと吐いた。それはシンドラの最初のお遊び。乗っ取った姿でどこまで出来るのか、力を試すかのようにワクワクしていた。
「それでは、言葉足らずですみませんが、さっそくはじめましょう!」
2
あなたにおすすめの小説
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~
名無し
ファンタジー
突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。
自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。
もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。
だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。
グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。
人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。
独身貴族の異世界転生~ゲームの能力を引き継いで俺TUEEEチート生活
髙龍
ファンタジー
MMORPGで念願のアイテムを入手した次の瞬間大量の水に押し流され無念の中生涯を終えてしまう。
しかし神は彼を見捨てていなかった。
そんなにゲームが好きならと手にしたステータスとアイテムを持ったままゲームに似た世界に転生させてやろうと。
これは俺TUEEEしながら異世界に新しい風を巻き起こす一人の男の物語。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
知識スキルで異世界らいふ
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~
楠富 つかさ
ファンタジー
ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。
そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。
「やばい……これ、動けない……」
怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。
「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」
異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる