老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴

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最後の戦い

第96話:最初で最後のゲーム

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  『地球』その言葉に反応したのは、もちろんアイレとヴェルネルのみ。何かの魔法、妖術、鉄箱《マリス》に取って代わる魔法具ではないかと、残りのメンバーは不安を覚えたが、シンドラ《レムリ》はご丁寧にも補足した。

「あら、ごめんなさい。私ったらどうも言葉足らずなことがあって驚かせちゃったみたいね」

 手を口に当てながら、まるで貴族のように振舞う。

「……お前、どうして地球を知ってる?」
「あら、そうそう、言い忘れていたわ。私は頭の中を覗くのが得意なの、この身体《レムリ》の深い記憶を読ませてもらったわ、なんて素晴らしい惑星なんでしょう! 地球に帰ったら私も自分《レムリ》のママとパパに挨拶しなきゃね? それはそうと、あなた達がまさか異世界人だったとは驚いたわ、魔界以外にも世界があるだなんて、私もまだまだ無知ね、さて……」

 アイレの質問に答えた後、少し真顔に戻り、

「ここであなた達を殺すのは、とてもとても簡単なことなのだけれど、それだと面白みがに欠ける。だって私の魔力で震えあがっているし、どうせなら楽しんでから、この惑星を終わらせようかと思って、そうね……。――地球の言葉でいうと、ゲームかしら? ねぇ、楽しんでくださる?」

 シンドラ《レムリ》は不思議なことを言いはじめた。『ゲーム』。聞きなれない単語に、アイレとヴェルネル以外は怪訝《けげん》そうな顔をしている。しかしアズライトは、その間もルチルの名前を心の中で何度も叫んでいた。どうして、なぜ、レムリは応えてくれないんだ。道中でレムリとクリアに聞いていたが、魔力を感じないとのことだった。不安は……拭えない。

「さて、観客《オーディエンス》どもが静かすぎてつまらないわ、これ使い方合ってるかしら? ――そろそろ始めましょう!」

 シンドラ《レムリ》が使い慣れない言葉で、声高々に叫んだ。”何かがはじまる” 不安を感じて、アイレが誰よりも早く動いた。神速《ディビーツ》を詠唱して、その場にいた誰の目にも留まらない速度で。
 しかし、アイレがシンドラに到達する前、地面一体が黒い転移魔法で覆われた。これは……。
 それを何度もくぐったことのあるアズライトだけが気付いた。

「ルチル……!?」

 小さく囁くように叫んだ瞬間、その場にいた全員が地面を落下するかのように転移魔法で強制的にその場から消えた。後を追うようにシンドラ《レムリ》もその転移に入る。

 アイレたちは次々と別の場所から現れると、空中から地面に落下した。幸いそれほどの高さではなかったので、全員無事だったが、フェローだけは肩を怪我していたので、よろめいた。
 クリアがシンドラの隙を見て、フェローの肩に手を当てながら、魔法で回復させようとしているが、魔族と人間のハーフという種族の垣根《かきね》が邪魔をしていて、なかなか思うようにいかない。その様子を申し訳なさそうに何度かアームがチラチラと見ていた。

 それからすぐ、その場にいた全員が周囲をキョロキョロと見渡した。そこには……アイレたちが知っている人物たちが集められていた。
 大勢のルクレツィア兵士とオストラバ王国の兵士。そしてヴルダヴァ、ベレニ、……。アイレが旅をしていた途中で、見知った国の紋章だらけだった。全員がキチンと戦闘の準備をしているようで、甲冑を着て武器を持っている。ザっとみても300人以上は下らない。
 どこかの荒野のようで、少し大きな岩がポツポツと見える。まるで荒地だ。

 これは一体なんだ? ここはどこだ。 アイレたちが一斉に心の中で同じ疑問を抱いた。

 しかしそれは、その場にいた全員も考えていたようで、各国の兵士もキョロキョロとしていた。その中に、ガルダスとアゲートの姿もあった。
 アズライトが気づき、驚いて声をかけようとした、そのとき、シンドラの声が全員の頭の中で響いた。

「見なさい、上よ」

 レムリの言葉で発せられるその声は、無性に腹が立つ。全員が上を見上げたとき、シンドラ《レムリ》が空中で止まっていた。この世界で浮遊魔法を使えるのはただ一人、魔法使いレムリのみ。
 すでに死んでいたはずだと思っていた人々は、その姿に感激したが、すぐにそれが間違いだったと気付く。

「こんにちは、私は……そうね、大魔法使いレムリです。知っているかしら?」

 シンドラの偽の言葉に、唯一正体を知っているアイレたちが唇を噛む。この場で偽物だと叫んでもいいが、相手の出方を見た。

「ここにいる人たちは、私が独断と偏見で集めました。特に深い意味もありません。ただ、この場所を最後の戦場とします。大変喜ばしいことに、これがこの惑星で最後の争いとなるでしょう」

 何を言っているんだ? あれが、魔法使いレムリ? 一体どういうことだ?
 各国の兵士が上を眺めながら、騒めいた。その言葉の意味を瞬時に理解できたのはアイレたちを含めてほんの数名。

「詳しい説明は面倒なので、とにかく私を殺せばあなた達の勝利です。だけど、もちろん行く手を阻む者たちもいます。見事その敵を打ち負かし、私の喉元まで辿り着けば、あなた達は未来永劫、この世界で幸せに暮らせることでしょう」

「ですが、――このゲームに失敗した場合、この惑星は私が完全に消滅させます」

 まるで、ゲームのボスキャラのように、嬉しそうに語る。レムリの記憶を盗み見ることで、地球の記憶からアニメのような言葉をスラスラと吐いた。それはシンドラの最初のお遊び。乗っ取った姿でどこまで出来るのか、力を試すかのようにワクワクしていた。

「それでは、言葉足らずですみませんが、さっそくはじめましょう!」
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