老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴

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最後の戦い

第100話:命を削ってでも

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「グレース……。少し休んで」

 止血は済んだが、すべての魔力を失い体力の限界を迎えたグレースは意識を失った。フェアは手を翳《かざ》して、魔法防御と物理防御を付与した。
 よほどの攻撃でないと、グレースを傷付けることは出来ない。

 それほどの防御魔法を今のフェアは無詠唱で掛けることが出来た。だが……比例した量の寿命は縮んでいる。

 ロックは首を失っても動き続けたが、心臓《コア》を破壊することでその歩みを止めた。それに気が付いたフェアは、シンドラのようにその場にいた全員の頭の中に声をかけた。

『心臓! 心臓を狙って! ダメージでは敵を殺せない!』

 その言葉が響き渡ると同時に、全員が敵の心臓に狙いを定めた。シェルも、アイレも、そして魔物と戦っていたレッグ、アーム、アイもその言葉に続く。

「聞いたかお前ら! 心臓を狙え!」

 混戦の最中、ガルダスが自軍に叫ぶ。続いてアゲートも、

「皆の者! あの声の通り心臓を狙え! 魔物も敵国の兵士も弱点は同じだ! 心臓の位置がわからない魔物は手あたり次第に場所を探れ!」

 激を飛ばす。兵士たちは言伝《ことづて》のように情報を連鎖させながら、徐々にその勢いと士気を高めて有利を作り出しはじめた。
 その声は当然、シンドラにも届いており、

「ふん、小娘の悪知恵がどこまで通用するかの」

 少しだけ気に食わないと足を組み替えて、まだ動かずに眺めていた。

「シェル!」

 そしてフェアの言葉を受け取ったクリアが、シェルに名前を叫んだ。

「ああ、聞こえた」

 それに対し、シェルもアクアから視線を動かさないまま、頷くように返事をする。クリアはフェローを横で守っている。アームの攻撃で肩を損傷してからからまだ動けずにいた。
 だがそれには明確な理由があった。アームの攻撃は敵の魔力を奪うといった特殊攻撃が付与されており、知らずうちにフェローは魔力をごっそりと吸い取られていた。けれども、魔族と人間のハーフのフェローは治癒力も遥かに高い。あとほんのすこし時間をかければ、ようやく動けるといった状態にあった。

「アクア、君は――喋れるのか?」

 シェルが剣を構えながら、アクアに対話を求めた。この場ではわからないが、ロックは自我をもちグレースと会話をしていた。だがアクアは詠唱するが、一切対話をしなかった。
 それには何か理由があるのか、それとも――

「話せるよ」

 生前と変わらない様子で、突然に応じる。シェルはその声に驚きふたたび心が揺れ動く。

「もう……やめてくれ。君はこんなことしたくないはずだ。操られているとはいえ、殺したくは……ない」
「私は覚えてる。――シェル、あなたはどうして約束を守ってくれなかったの?」

 質問には答えず、生者の記憶を巧みに操り、対象の心を揺さぶることに長けた死霊使《ネクロマンサー》いの能力が、シェルの心を深く突き刺す。
 アクアは続けて、

「ねぇ、凄く痛かったんだよ。心臓を突き刺されて、悲鳴も出なかった。気が付いたら地獄にいて、あなたに殺されたら私はまたあの苦しみを味わうことになる。あの世なんてないの、ずっと地獄で心臓を炎の矢で突き刺され続けるの……」

 まるで懇願《こんがん》るかのように、巧みに表情を変えながらシェルの心に訴え続ける。クリアが、

「あれはシンドラの仕業よ! 騙されないで!」

 声をかけた。卑劣極まりない魔法にいたたまれない。
 シェルは――動かない。動けない。アクアは続ける。

「ねぇ、シェル。私たちはいつも一緒だったよね。カルレ村を飛び出して、ずっと二人で何もかも乗り越えてきた。シンドラ様は確かに悪人だけど、仲間になればずっと一緒にいれるの。私のために仲間を裏切ってくれたんだよね? あともう少し、ここでフェローとクリアを殺そう? そしてシンドラ様と一緒に平和な暮らしを過ごしたい。私はこここにいる。ねぇ、私の姿を見て?」

 戦闘態勢をあえて解いて、無防備に両手を広げる。そして、

「目を反らさないで、私はここにいる。シェル、知ってるよね? 誰も守ってくれない。自分のことは自分で守るしかないんだよ。アイレだってそう、私のことを守ってくれなかった。シェルは違うよね? 私のことを守ろうとしてくれた。だから大切な仲間も裏切った。だから、信じて」

 ゆっくりと歩いて距離を詰める。それにシェルは戸惑う。

「アクア……僕は……」

 思わず、言葉が漏れる。アクアの言う通り、シンドラの命令を聞けばずっと一緒にいることが出来る。仲間をもう一度裏切ることで、永遠に二人で……。

「ほら、シェル。私は何もしない。そこにいるフェローとクリアを殺して、またあの頃に戻ろう?」

 アクアがシェルに手を伸ばす。少し遠くで倒れているフェローとクリアが、

「おいシェル、騙されんな! そいつはアクアの姿を纏《まと》っただけの敵だ!」
「そうよ! シェル! 自分をしっかりと強く持って!」

 叫んだ。シェルの心が揺れ動いているのを感じ取った。

「あの二人に騙されないで、前みたいにいっしy――」

 シェルは涙を流しながら、アクアが差し出してきた右手を切断した。痛みを感じていない様子で、舌打ちをしながら後方に跳躍して魔法を放った。

「ちぃ! 大人しく言うことを聞いてよ! 風《ヴォン・》の刃《ラム》」

 確実に避けきれないほどの無数のかまいたちが、シェルの体襲う。それをすべて最小限の動きで躱し、

「もうやめろ、お前はアクアじゃない。アクアは人を傷つけることなんてしない」

 今まで一番の速度で距離を詰めてアクアの心臓を一突きした。

「な……なんで、シェル……」

 アクアは口から血を吐き、涙を流す。

「黙れ、二度と喋るな」

 地面に倒れた。死体はその場に少し残り続けたが、突然に魔力の塵となり空中に消えた。

「アクア……」

 シェルが複雑な想いで眺める。すると、

『シェル、ありがとう。大好きだよ』

 頭にアクアの声が響いた。
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