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24.殿下の黒猫、殿下を救う
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西の国に住む従兄弟は、時々叔母と一緒にやって来る。
そして、食事を一緒にするのだ。
それほど仲が良いわけではないのだが、年が近いからなのか、ヤツは昔から俺に絡んでくる。
面倒だが、仕方ない。
テーブルにつく。
「最近は婚約者と仲がいいんだって?」
とヤツが言う。
「別に、以前と変わらない」
「いや、最近はお茶会でも楽しそうに過ごしているし、オソロイの物を一緒に着けているそうじゃないか。学園で流行らせたんだって?義伯母さんが言ってたよ」
ヤツはニヤニヤと俺を見ている。
母上……余計なこと、言ってんなよ。
俺はイラっとして、ハーブ水を頼もうと手を挙げた。
すると、何の拍子か胸ポケットから俺の黒猫がグラスの中に落ちてしまった。
嘘だろ??
俺は焦った気持ちを顔に出さないようにグラスを下げ、黒猫を取り出しておくように指示をした。
あぁ!俺の黒猫!どうか無事でいてくれ!
その後も他愛もない話をしながら食事は続いた。
ヤツはなぜか、俺の婚約者の話を聞きたがった。
俺の婚約者の話はどうだっていいだろう!!
食事の後、俺は執事に呼ばれた。
「殿下。殿下のグラスの水に薬剤が混入していたようです」
「薬剤?」
「お腹が弛くなる程度のようですが」
「なぜ薬剤が……?」
「それが、その殿下の従兄弟様が、栄養剤だから入れるようにと使用人に命令したようなのです」
「?何のために?」
「……何のためになのかは、存じませんが……」
「分かった。それで黒猫は?大丈夫だったのか?」
「はい。でも、薬剤の入った水に浸かってしまったので、工房に点検に出した方が良いかもしれません」
「分かった。頼んでおいてくれ」
もし、腹が弛くなる薬剤入りの水を飲んでいたら……。
気が重くなるな。
アイツ、俺に嫌がらせか?
黒猫がグラスに入らなければ、俺はあの水を飲んでいたじゃないか!
『殿下は妬まれたりすることもおありでしょうから、その……お守りできたらと思いまして』
彼女の言葉を思い出す。
「黒猫に救われたな」
-ツヅク-
そして、食事を一緒にするのだ。
それほど仲が良いわけではないのだが、年が近いからなのか、ヤツは昔から俺に絡んでくる。
面倒だが、仕方ない。
テーブルにつく。
「最近は婚約者と仲がいいんだって?」
とヤツが言う。
「別に、以前と変わらない」
「いや、最近はお茶会でも楽しそうに過ごしているし、オソロイの物を一緒に着けているそうじゃないか。学園で流行らせたんだって?義伯母さんが言ってたよ」
ヤツはニヤニヤと俺を見ている。
母上……余計なこと、言ってんなよ。
俺はイラっとして、ハーブ水を頼もうと手を挙げた。
すると、何の拍子か胸ポケットから俺の黒猫がグラスの中に落ちてしまった。
嘘だろ??
俺は焦った気持ちを顔に出さないようにグラスを下げ、黒猫を取り出しておくように指示をした。
あぁ!俺の黒猫!どうか無事でいてくれ!
その後も他愛もない話をしながら食事は続いた。
ヤツはなぜか、俺の婚約者の話を聞きたがった。
俺の婚約者の話はどうだっていいだろう!!
食事の後、俺は執事に呼ばれた。
「殿下。殿下のグラスの水に薬剤が混入していたようです」
「薬剤?」
「お腹が弛くなる程度のようですが」
「なぜ薬剤が……?」
「それが、その殿下の従兄弟様が、栄養剤だから入れるようにと使用人に命令したようなのです」
「?何のために?」
「……何のためになのかは、存じませんが……」
「分かった。それで黒猫は?大丈夫だったのか?」
「はい。でも、薬剤の入った水に浸かってしまったので、工房に点検に出した方が良いかもしれません」
「分かった。頼んでおいてくれ」
もし、腹が弛くなる薬剤入りの水を飲んでいたら……。
気が重くなるな。
アイツ、俺に嫌がらせか?
黒猫がグラスに入らなければ、俺はあの水を飲んでいたじゃないか!
『殿下は妬まれたりすることもおありでしょうから、その……お守りできたらと思いまして』
彼女の言葉を思い出す。
「黒猫に救われたな」
-ツヅク-
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