ドラゴン・ゾルダード~二つの魂~

ばくだんいわ

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プロローグ 1

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賑やかな夜の京。

夜の街を、紅い影が歩いていく。







高校生、天井九郎あまい くろうはここ最近、おかしな夢ばかり見るようになった。

それは一人の剣士の夢。

なぜこのような夢を、見るようになったかはわからない。

わからないがこの夢は妙にリアルで、夢かどうかもあやふやになってくる

しかし、これは夢だ。

第一、九郎ははっきりと記憶しているのだ。

自分がベッドにもぐりこんで眠りにつくのを。

ふっと気が付いたら、こうして夜の京都を歩いていた。




疲れてんのかな?

最近は高校の入学準備や、クラスに馴染もうと、それなりに神経使ったからな…





その剣士の名前は[天井 玖郎あまいくろう]と言う。


名前も一緒だが、姿形も自分にそっくりだった。

以前の夢で、水を溜めた水桶を通して、反射した顔を見たことがある

黒衣黒袴に丹色(にいろ=暗い赤土色)の羽織りを着用し腰まで伸ばした黒髪を一つにまとめて縛っているところやそ腰に差している大小の刀は〈現実〉とは違っていたが。

だが、決定的に違うのは氷のように冷たく引き締まった表情だ。

こんな風に引き締まった顔をしていれば幼い頃からのコンプレックスを感じていた「女の子みたい」とは言われないだろう。

とにかくその[玖郎]は凄腕の剣士で毎日、誰かと殺し合っていた。

それも決まって夜。

そして玖郎が住む世界は昔の日本。それも江戸時代の末期。

幕末とも言う。

なぜわかるのかと、聞かれても返答に困るが、なぜか九郎自身の記憶に、今は《安政八年》だと認識している。

あとはこの玖郎が、幕府直属の警察組織、【新撰組】の暗殺任務を請け負う、零番隊という特殊な部署に、所属していることも自身の記憶に刷り込まれている。 

ここからしてこれは夢なんだなと思うところである。


確か、警察組織が形になったのは、明治時代に入ってからだったというのを、学校の授業で習ったことがあるし、幕末に『新撰組』という武闘集団が実在していたのは知っていたが『零番隊』なんていうのは聞いたことがない。

九郎が知っている歴史とは微妙に違うのだ。





今宵も玖郎はどこかに出かけてゆく。

どれぐらい歩いただろう…?

誰かを探してるのかかなりの距離を歩いている気がする。


月がきれいだな…と思った


河原に着いたところで、目当ての人物を見つけた。

派手な着物を着ていて体格もがっしりといかにも強そうな大男だ。

それに対して玖郎の方は、小柄とも言うべき体躯で相手の大男とは正反対。



玖郎は、大男に声をかけた。

「過激派攘夷団体回天党党首、田中 信十朗殿とお見受けする」

「あん、なんだ。誰だ、貴様は?」

「新撰組零番隊、天井 玖郎」

「丹色にいろのだんだら羽織りに女子おなごと見紛みまごう体躯……。貴様、あの“人斬り玖朗”かっ!?」

零番隊では暗殺を主な任務にするというその特殊性から他との差別化を図るために、通常の新撰組隊士が着用する浅葱色のだんだら羽織りではなく血のように赤く暗い丹色の羽織りが支給されている。

「そう呼ばれていることもあるな……」

「その“人斬り玖朗”が、俺に何か用か」

「先日の旅籠屋強盗事件に貴殿が関与しているとの情報が入り、貴殿の始末に参上仕つかまつった…」

男の顔が一気に青ざめる

「じ、冗談じゃねぇ!!なんか証拠でもあんのか!?」

「……」

黙りこむ玖朗に男は幾分か安心したのか突然、態度は豹変し尊大な態度で玖朗を威圧する

「はん!証拠もねぇのに変な言いがかりつけてんじゃねぇぞ!クソガキがっ!」

「……本当に関与はされていないと?」 

「けっ!そうだよ!俺たちが計画したんだよ!最近、組織の活動資金も、底を尽きかけてたんでな!!」

「……」

「いや、楽な仕事だったぜ!仲間と夜中の旅籠屋に押し入って、中で寝てる奴らを皆殺しにしたあと、金庫から金を奪って逃げりゃいいんだからよ!まぁ、これも正義の為の尊い犠牲だ。死んだ奴らも浮かばれるだろうよ!」

(うわぁ~こいつ最悪……)

へっへっへっと下卑た笑いを浮かべる男に、夢の中とはいえ九郎は嫌悪感を覚えた。



対して玖郎の方は眉一つ動かさず、男をジッと見据えている。

「まぁ、聞いたからには、てめぇも生かして帰しはしないけどな!人斬り玖朗だかなんだか知らねぇけどな、てめぇみたいなガキが、俺様を殺すことなんざできるわけねぇんだよ!」

そう叫び、男は自分の刀を抜き、正眼に構えた。

「貴様のやったことは、正義でも何でもない、ただの殺戮だ……。」

玖郎は静かに呟き、冷静にじっと相手を見つめ、刀は抜かず、体を右半身と右足を前に出し、刀の柄に手を添えて構えた。



『あっ、この構えは確か……抜刀術ってやつだ……!』 

九郎は前に、テレビの特番で、居合いの達人が、藁わらを巻いた木の棒をこの抜刀術(居合い抜きとも言う)という技で試し斬りしていたのを思い出した。

しかし、この玖郎の構えとテレビで見た居合いの達人の構えとでは、少し違う。 

そもそも抜刀術というのは相手に襲われる時の反撃、または襲う事を想定している。

抜刀時の初撃にはかなりの速度があり伸びもあるのだか、片手打ちであるためどうしても両手の威力には適わない。

そのため護身用、あるいは危機回避のための技術であり、積極的に使うものではない。

よってその構えは自然と待ちの姿勢になる。

だが玖郎の構えは、右足を前に出してギリギリまで折り曲げ、左足を後方に伸ばして膝を地面にすれすれに構え、まるで肉食獣が獲物に飛びかからんとする構えだ。



「馬鹿が偉そうに正義を語るな。回天党?名乗るなら『悪党』と名乗れ」

(よく言った!玖郎!!)

九郎は心の中で玖郎を賞賛した

「このクソガキがぁぁぁぁぁぁ!!」

まさかの玖郎の侮蔑に、男は顔を真っ赤にしながら突っ込む

両者の間合いはおよそ、15m程。

男が動いたのと同時に、玖郎も動いた。


ギリギリまで曲げた右足のバネを使い、大男に向かって突進する。

一瞬のうちに大男の懐に潜り込む。


速い―――――っ!

だが、目で追えぬ速さではない。

かまわず得物を振り下ろす大男。

しかし、刀を振り下ろした先に、玖朗の姿はなかった。

りを見回す大男。

「どこを見ている」

その時、背後から声がした。



慌てて後ろを振り返ると、そこには居合いを構えた玖朗がいた。

「っ!?」


「……死ね」

大男が反応する前に、玖郎は刀を鞘から抜き放ち、腰から右肩あがりに斜めに斬り裂いた。

血飛沫を上げながら声も上げずに倒れる大男。


一方、玖郎は一言そう呟くと、返り血も浴びずに刀にこびりついた血糊を振り払い、それを鞘に収めて、玖郎は自分が斬り殺した大男には、一瞥もくれず、去っていく。


その姿を最後に、九郎は目が覚めた。
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