騎士王マルス ～始まりの歌～

序章 目指せ！夢の楽園

０年目 ようこそ、地獄

岩から生まれたばかりの、ゲル状の生き物たちが そこに居た。

その生き物は、時間が立つと、多種多様に進化していく。
足が生えるものも、２足歩行や、４足歩行、６足歩行、ムカデのような足を持つものまでいる。
翼が生えるものも、鳥のような翼、虫のような翼、竜のような翼。
中には、進化の過程で翼があるが、飛べないものもいる。




そんな中、生まれたばかりの ゲル状の彼は、空を見つめ、じっくりと考えていた。





この世界の空は、血のように赤く美しい。
大地は岩や砂が入り交じり、風化した骨や、生物の血が、大地に砂の恵みをもたらす。


ときおり聞こえる 断末魔は、別の生命を育み、乾いた世界に希望を与える。




そんな彼の目の前に、突如、大きな扉が現れた。

扉が開き、その奥からは、湿った空気が流れ込み、乾いた世界に潤いを与える。




周囲に居た 生物たちは、一斉に扉の奥を目指す。

生まれたばかりの彼も、扉の向こうの世界に興味を持った。
早く生まれた兄たちや、進化が進んでいた弟たちは、扉の向こうへと移動を始める。



　（僕も早く、向こうに行かなくちゃ！）


しかし、生まれたばかりの彼には、門を目指す手段がない。
地面を這いつくばるように、門を目指すうちに、生えかけの手足は退化していく。


身体は、這いつくばりやすように、細長く進化し、周囲の岩や砂で体を傷つけないように、鱗で覆われる。

移動は、断然に早くなり、遅れを取り戻すために急いだ。






しかし、残念なことに、彼が門に辿り着く頃には、門は閉じられてしまった。



門を閉じた張本人の、二足歩行の生物たち２匹が、話をしている。

「アルル、隠密の指輪を発動して、地獄にある遺跡まで目指すよ。」

「その遺跡の場所は？」

「ルシファー先生は空を飛んでいたそうだから、詳しい場所は覚えていないそうなんだけど、周囲を高い山で囲まれていたそうだよ。」

「だったら、山を目指して進めばいいのね。」



二足歩行の生物たちは、お互いの手をつなぐと、気配が消えた。



地べたを這いつくばる彼は、急いで二足歩行の生物たちの足に登り、落ちないように巻き付いた。
この２匹についていけば、門の先に行けるかもしれない。もう一度、あの世界を見てみたい。

彼は、そう考えた。
生まれたばかりの乾いた岩ばかりの世界に未練などあるはずもないのだろう。



二足歩行の生物は、足に巻き付くようにしがみつく、彼に気づく。


「エイト、足に蛇の赤ちゃんが巻き付いてるよ。」

「ほんとだ。地上からついてきたのかな？」

「なら、一緒に連れて帰ろうよ。」

「そうだね。こんな地獄に置いていくのは可哀想だもんね。」



二足歩行の生物は、話しながら歩き出す。


「だったら、名前を付けなきゃね。チョビスケなんてどう？」

「・・・ちょっとないかな。ミッドなんてどうかな。伝説の蛇龍から名づけたんだけど。」

「いいね。今日から、この蛇はミッドだね。」

「よろしくね。ミッドちゃん、私はアルルだよ。」


二足歩行の別の一匹が、彼の体を持ち上げた。

　（よろしくね。アルル。）



しかし、彼の言葉は、二足歩行には伝わらないようだ。

ミッドと名前をもらった彼は、二足歩行のアルル達に連れて行ってもらうことになった。