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序章 目指せ!夢の楽園
1年目 ようこそ、味覚
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二足歩行の二匹にとって、この岩場の多い地形は動きにくいのか、岩場の陰を慎重にゆっくりと、周囲を見渡しながら歩いている。
二足歩行に進化した兄も、手が使えて自由が利くと自慢していたが、やはり何かしらの弊害があるのだろう。ミッドは、兄を思い出し、不憫に思った。
手足のない進化を遂げたミッドは、最初こそ困惑したが、這いずりまわることで、逆に自由に岩場の隙間なども簡単に移動できる。動くことに慣れてきたミッドは、先に進みたかったが、二足歩行とはぐれると、楽園にはたどり着けない気がして、先に進めない。
二足歩行が 2匹とも、ふと立ち止まる。
空を見上げたアルルが、口を開く。
「ねえ、エイト、地獄って、昼夜がないのかな?」
「そうだね。なかなか日が沈まないね。」
「それに、思ってたより、悪魔もいないみたいね。」
「それは、僕も思ったんだよ。迷宮の方が魔物も多かったよね。」
どうやら、もう一匹の二足歩行の名前は、エイトというらしい。
彼らは、【メイキュウ】という楽園からきたのだろう。
ミッドの想像通り、【メイキュウ】には、【アクマ】や、【マモノ】と言う、彼らの仲間が、たくさん生息しているに違いない。
ミッドの住んでいる【ジゴク】に比べると、湿った冷たい風は、子孫を残すのに、適しているのだと考えた。
ミッドは、風が冷たくなるのを感じた。
もうしばらくすると、周囲を闇が覆う時間だ。
この闇の時間は、彼らにとって安息の時間でもある。
強い生物は、子孫を残す準備をし、相手を見つけ子孫を残す。
弱い生物は、湿った空気から水分を集め、その水分に含まれる力で、いままでの経験を糧に進化を始める。
ミッドも、ゲル状の頃は自由に進化できたが、いまは形状が固定されてしまっている。
どんな姿に進化するか、いろいろと考える。
足を生やすことは、今の段階では、考えていない。
アルルたちのように、手があれば便利だと思う半面、這いずるときに手が邪魔になるような気もする。
(そうだ、羽があれば、空を飛ぶことができるんじゃないかな。)
ミッドは、羽を生やす姿をイメージする。
日が暮れはじめ、湿った空気が流れてくる。
二足歩行も、進む足を止め、地面に座る。
二足歩行で移動するのは、大変だから、自分のように這いずるように進化するのだとミッドは思った。
「エイト、四次元ポシェットの食料は、まだまだありそう?」
アルルがそう話すと、エイトは、何かいい匂いのものを取り出した。
「大丈夫。レヴィアが多めに入れていた食料があるよ。パーティ分以外にも入ってそうだね。」
「それなら、しばらくは問題なさそうだね。水も魔法の水差しがあるもんね。」
そういって、アルルは、器のような物に別の器から大量の水をとりだした。
「ミッドちゃんも食べるでしょ。」
アルルは、エイトからもらった、いい匂いのものを差し出す。
ミッドは、いい匂いのものを、アルルたちと同じように口にいれた。
匂いはいいのだが、口にいれると、その匂いも消えてしまう。
アルルや、エイトは、口に入れた後も、幸せそうにしている。
(そうか! 口の中でも匂いを感じるように進化すればいいんだ!)
ミッドは、気づいたが悩む。羽があれば、もっと早く、楽園へと迎えるかもしれない。
だけど、この匂いを感じる機能も捨てがたい。しかも、この進化の風を逃すと、次の進化の風は、いつになるか分からない。
ミッドは、悩んだ末に結論を出す。
アルルもエイトも、地面に座っている。地面を這う進化を選択したんだろう。
それなら、いま飛べなくても置いていかれる心配もないだろう。
ミッドは、味覚を獲得した。
(アルル、もう一度ちょうだい!)
言葉は伝わらないが、動作で意思を伝える。
「ミッドちゃん、おかわり?」
「アルル、もう一つ干し肉を取ろうか?」
「そうね。さすがに蛇は野菜を食べないよね?」
「だろうね。ちょっと待って。」
エイトは、さっきの【干し肉】という食べ物と、別の袋をとりだす。
「調合で使おうと思ってた、洞窟ネズミの死骸なんだけど、もう使い道がないから、ミッドにあげようか。」
「うえ。干し肉は、私があげるけど、ソレは、エイトがあげてよ。」
アルルは、干し肉をミッドに差し出す。
ミッドは、口の中に広がる、風味を満喫した。
(兄さんたちにも、教えてあげなくちゃ。まず進化するなら、口の中で匂いを感じる素晴らしさを!)
次に、エイトの差し出す、洞窟ネズミを口にする。
(・・・。)
ミッドは、言葉を失った。
なぜ兄弟は、口の中で匂いを感じるように進化しないのか分かった瞬間でもあった。
なんとも言えない、不快な苦みが口の中を襲う。先ほどの干し肉の幸せを帳消ししてしまうほどの苦みで、体内のものを全て口から吐き出したくなる。
しかし、食料の少ない、この世界で吐き出すなんてもったいないことはできない・・・。
ミッドは、理解した。
本当に、この世界を生き抜くために必要な能力を!
(次回の進化は、口の中の匂いを取り除くようにするとしよう。)
無駄な進化の時間を使ったようだ。
ミッドは、口の中の匂いを感じる能力を手放すことに決めた。
二足歩行に進化した兄も、手が使えて自由が利くと自慢していたが、やはり何かしらの弊害があるのだろう。ミッドは、兄を思い出し、不憫に思った。
手足のない進化を遂げたミッドは、最初こそ困惑したが、這いずりまわることで、逆に自由に岩場の隙間なども簡単に移動できる。動くことに慣れてきたミッドは、先に進みたかったが、二足歩行とはぐれると、楽園にはたどり着けない気がして、先に進めない。
二足歩行が 2匹とも、ふと立ち止まる。
空を見上げたアルルが、口を開く。
「ねえ、エイト、地獄って、昼夜がないのかな?」
「そうだね。なかなか日が沈まないね。」
「それに、思ってたより、悪魔もいないみたいね。」
「それは、僕も思ったんだよ。迷宮の方が魔物も多かったよね。」
どうやら、もう一匹の二足歩行の名前は、エイトというらしい。
彼らは、【メイキュウ】という楽園からきたのだろう。
ミッドの想像通り、【メイキュウ】には、【アクマ】や、【マモノ】と言う、彼らの仲間が、たくさん生息しているに違いない。
ミッドの住んでいる【ジゴク】に比べると、湿った冷たい風は、子孫を残すのに、適しているのだと考えた。
ミッドは、風が冷たくなるのを感じた。
もうしばらくすると、周囲を闇が覆う時間だ。
この闇の時間は、彼らにとって安息の時間でもある。
強い生物は、子孫を残す準備をし、相手を見つけ子孫を残す。
弱い生物は、湿った空気から水分を集め、その水分に含まれる力で、いままでの経験を糧に進化を始める。
ミッドも、ゲル状の頃は自由に進化できたが、いまは形状が固定されてしまっている。
どんな姿に進化するか、いろいろと考える。
足を生やすことは、今の段階では、考えていない。
アルルたちのように、手があれば便利だと思う半面、這いずるときに手が邪魔になるような気もする。
(そうだ、羽があれば、空を飛ぶことができるんじゃないかな。)
ミッドは、羽を生やす姿をイメージする。
日が暮れはじめ、湿った空気が流れてくる。
二足歩行も、進む足を止め、地面に座る。
二足歩行で移動するのは、大変だから、自分のように這いずるように進化するのだとミッドは思った。
「エイト、四次元ポシェットの食料は、まだまだありそう?」
アルルがそう話すと、エイトは、何かいい匂いのものを取り出した。
「大丈夫。レヴィアが多めに入れていた食料があるよ。パーティ分以外にも入ってそうだね。」
「それなら、しばらくは問題なさそうだね。水も魔法の水差しがあるもんね。」
そういって、アルルは、器のような物に別の器から大量の水をとりだした。
「ミッドちゃんも食べるでしょ。」
アルルは、エイトからもらった、いい匂いのものを差し出す。
ミッドは、いい匂いのものを、アルルたちと同じように口にいれた。
匂いはいいのだが、口にいれると、その匂いも消えてしまう。
アルルや、エイトは、口に入れた後も、幸せそうにしている。
(そうか! 口の中でも匂いを感じるように進化すればいいんだ!)
ミッドは、気づいたが悩む。羽があれば、もっと早く、楽園へと迎えるかもしれない。
だけど、この匂いを感じる機能も捨てがたい。しかも、この進化の風を逃すと、次の進化の風は、いつになるか分からない。
ミッドは、悩んだ末に結論を出す。
アルルもエイトも、地面に座っている。地面を這う進化を選択したんだろう。
それなら、いま飛べなくても置いていかれる心配もないだろう。
ミッドは、味覚を獲得した。
(アルル、もう一度ちょうだい!)
言葉は伝わらないが、動作で意思を伝える。
「ミッドちゃん、おかわり?」
「アルル、もう一つ干し肉を取ろうか?」
「そうね。さすがに蛇は野菜を食べないよね?」
「だろうね。ちょっと待って。」
エイトは、さっきの【干し肉】という食べ物と、別の袋をとりだす。
「調合で使おうと思ってた、洞窟ネズミの死骸なんだけど、もう使い道がないから、ミッドにあげようか。」
「うえ。干し肉は、私があげるけど、ソレは、エイトがあげてよ。」
アルルは、干し肉をミッドに差し出す。
ミッドは、口の中に広がる、風味を満喫した。
(兄さんたちにも、教えてあげなくちゃ。まず進化するなら、口の中で匂いを感じる素晴らしさを!)
次に、エイトの差し出す、洞窟ネズミを口にする。
(・・・。)
ミッドは、言葉を失った。
なぜ兄弟は、口の中で匂いを感じるように進化しないのか分かった瞬間でもあった。
なんとも言えない、不快な苦みが口の中を襲う。先ほどの干し肉の幸せを帳消ししてしまうほどの苦みで、体内のものを全て口から吐き出したくなる。
しかし、食料の少ない、この世界で吐き出すなんてもったいないことはできない・・・。
ミッドは、理解した。
本当に、この世界を生き抜くために必要な能力を!
(次回の進化は、口の中の匂いを取り除くようにするとしよう。)
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ミッドは、口の中の匂いを感じる能力を手放すことに決めた。
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