騎士王マルス ～始まりの歌～

序章 目指せ！夢の楽園

２年目 ようこそ、念話

結局、あの後の進化で、口の中の匂いを感じる機能を進化させて、取り除いた。
たぶん他の兄弟からは大幅に遅れを取っただろう。



しかし、ミッドは そこまで気にしていなかった。

なぜなら、アルルもエイトも、いまだに二足歩行を続けていたからだ。


しかも、それだけではない。



アルルにいたっては、お腹を大きくする進化を遂げている。
栄養を蓄えているのだろうか？　動きが緩慢になり、一日の移動距離も大幅に少なくなってきている。
エイトは、そんなアルルを気遣いながら、ゆっくり移動する。
この１年で、ミッドは気づいたことがある。


それは、この群れの中で、一番自分が強いんじゃないか？　ということだった。


群れのリーダーと思っていたアルルも、他の生物に遭遇しないように移動を続けている。
たまに、エイトが群れを抜け出し、どこからか肉の塊を採取してくるが、たぶん他の生物の食べ残しだろう。
この２匹の主食は、アルルが岩に水をこぼして、そこから生える苔を食べているようだ。


（もし、意思の疎通ができれば、この２匹を使って楽園を早く目指せるかもしれない！）


ミッドは、次の進化を決めた。

この２匹と、意思の疎通をとることだった。





そんなある日、周囲を湿った空気が多い尽くす。


「アルル、久しぶりの夜だね。」

「ほんと、半年に１回はくるみたいね。」


どうやら、この２匹も、進化の闇が楽しみのようだ。

ミッドは、より多くの進化の風を浴びるため、岩場の上に登り、進化を始める。





そこで、ミッドは硬直する。


（まずい、大型の生物だ！）


ミッドを発見した、大型の生物は、ミッドの近くによって来る。

ミッドたち、地獄の生物は、長く生きれば生きるほど、体が大型化する。
３０ｃｍほどのミッドに対して、目の前の生物は、５ｍほどはあるだろう。


大型の生物は、長く伸びた舌を伸ばしながら、ゆっくりとミッドに近づく。

この世界で 食料にありつくことは、難しい、目の前の舌が長い生物は、小型の生物を逃すことなく捕食するように進化したのだろう。



ミッドは、死を悟った。


「エイト、ミッドが危ない！」

「滅炎の光の矢メルキド・フレイム（ＬＶ１２）」


ミッドの背後から、何本もの赤い光が大型の生物を襲う。


大型の生物は、身体を炎で焦がし、絶命した。



エイトが、ミッドを掴み、岩場の陰に戻る。



「アルル、大丈夫。硬直してるけど、ちゃんと生きてるよ。」

「よかった。もう勝手に遊びに行かないでよ！　次は助けないからね！」

「ミッドは、蛇だから分からないよ。僕らが責任を持って、連れて帰ってあげるからね。」

「言葉が通じないから、仕方ないよね。産まれてくる子には、心を鬼にして、しっかり教えないといけないね。」


２匹は、ミッドを地面にはなし、笑って食事をとる。





ミッドは、理解した。

本当に、この世界を生き抜くために必要な能力を！



（心を鬼に・・・。アルルは、変身型の生物なんだろう。エイトは、魔法を操る生物。いまは、言葉が通じないから生かされている。もし言葉が通じれば・・・。）



無駄な進化の時間を使ったようだ。

ミッドは、自分の意思を伝える能力を手放すことに決めた。