騎士王マルス ~始まりの歌~

黒山羊

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目指せ!王国騎士団長

4年生 マルスの決意

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4年生からは、選択武器に合わせての授業が始まる。

マルスは騎士剣を選択し続けるが、他の生徒は騎士剣以外に専攻を変えているようだ。
なぜなら、6年生の試験では、専攻武器での出場が義務づけられているので、マルスに勝利することは難しいと判断した結果だろう。
敗北することで、騎士団としての点数が低くなってしまう。そう判断したクラスメイトは、片手剣や騎士盾に専攻を替えたようだ。


もちろん逆に、騎士剣に移った生徒もいる。




事前に意思表示した、それぞれの指定された教室に移動する生徒たち、マルスは、騎士剣の生徒に割り振られた教室へ移動する。

そこには、ルナとリサ、ランドの姿があった。
マルスは、確認の意味も込めて質問してみる。


「まさか、4人だけ?」

「そうみたいね。私とランドは、そのまま騎士剣に残ったけど、他は 片手剣や、騎士盾に移動したみたいよ。」


リサは、ランドの頭を叩きながら話す。



「もう、リサ姉さん、やめてくれよ。」


ランドは、双子の姉のリサの手を払いのける。
リサは、手を払われたことに嫌な顔をするが、ルナを見て、ニヤついている。


「あの、私は片手剣を使えるようになったから、騎士剣を学ぼうと思っただけですから。」

「はいはい。マルスに ついてきたんでしょ。」

「そんなことはありません! それに、うちの実家には、騎士剣の魔装具もありますから。」

「ふーん。まあ、いいけど、ルナには負けないよ!」


女子達は ライバル心を、むき出しにしている。


ランドは、マルスに話しかける。


「男子は、俺たちだけだから、仲良く頑張ろうな。」

「そうだね。ところで、4、5、6年生は合同訓練って聞いてたんだけど、先輩たちは?」




リサと、ランドが同時に答える。

「「それなら、」」


「私が話すから、ランドは黙ってよ!」

「はいはい。」


別に普段通りの事なのだろう。
ランドは、あっさりと引いた。


「・・・よし。さっきさ、メリッサ先輩(5年生・特級騎士)が来て、全員が揃ったら訓練場へ来るように言われたんだよ。」

リサの話した内容に付け加えるように、ランドが補足をいれる。


「それから、防具をつけて 来るように言われたよね。かなり嫌な予感がするんだけどな。」




4人は重い足取りで訓練場へ移動する。
訓練場の扉をあけると、中のカーテンは閉め切られ、暗くなっていた。

ルナが質問する。


「リサ、本当にここなの?」

「えっと、ランド、訓練場だったよね?」

「そう言ってたと思うけどな。」


4人が訓練所に入ると、カーテンが一斉に開けられ、メリッサが、大きな声を出して歓迎する。


「ようこそ! 騎士剣専攻へ!!! あ、あれ!?」



思いのほか少ない人数に、メリッサが困惑している。
マルスが説明するように、口を開く。


「お久しぶりです。メリッサ先輩。今年の騎士剣専攻は、4人だけです。」

「そ、そんなに少ないの!?」


他の上級生も驚いている。
6年生の、ブルブ(白髪、赤目、身長は高めの男性)が話し出す。


「まあ、今年はマルスの実力が凄すぎるから、仕方ないな。その分、来年は騎士剣に大勢来るんじゃないかな?」

「そんなものですかね。」


メリッサは、がっかりしているようだが、それも仕方ないだろう。騎士剣と言えば、毎年 大人気の専攻種目で、6年生は15人。5年生は17人もいる。
今までは、約半数の生徒が選んでいる計算なのだが、今年の専攻人数が、4人だけである。
過去の事例からしても、圧倒的に少ないのは分かるだろう。


「まあ、メリッサの代には、マルス人気で、大幅な増員ができるんじゃないかな。」

「あの、質問をいいですか?」

ルナが手を挙げる。


「か、かわいい・・・。」

メリッサが、ルナに近づく。それを注意するブルブ。


「おい、メリッサ、4年生が怖がってるだろ!」


「あ、は、はい。すみません。では、質問をどうぞ。」

「はい。あの先輩方は、なぜ人数にこだわるのですか?」


「・・・?」


「あれ? 教官から何も聞いてないの?」

4年生は、首をかしげる。


「ああ、ブルノス教官か、ブルブ先輩の兄だけあって、適当ですね。」

「お、おい! それは秘密だって言ってるだろ!」


ブルブが 動揺する。

「では、5年生の私が教えよう。専攻教科は、言わば自主学習の要領で、それぞれの専攻科目の人たちで集まって技を高めあうんだ。もちろん、先輩騎士が教えに来てくれることもある。でね、人数が多い方がいいのは、3カ月に1回、それぞれの専科(専攻教科)から代表を決めて、投票で議長を決めるんだよ。その議長に発言権があり、訓練場の割り振りを自由に決めれるってわけ。だから、私たちは、人数が多い方が有利なんだよ。」

「投票の数が多くなるからですね。」

「その通り、さすがルナちゃん、可愛いだけあって、頭の回転も早いね!」

「それとこれは・・・。」

「リサ、何か言った!?」

「いえ、ランドです!」


ランドが慌てた顔でリサを見る。


「まあ、私たちが独占して使えるわけでもないんだけど、3限目の後は訓練場の後片付けがあるから、その時間には訓練場の割り振りを入れないんだけどね。」

頷いていたブルブが口を開く。

「いまのは おまけで、一番重要なのは、議長を務める専科には、議長手当として、専科の運営費に10%の上乗せの費用が発生するんだけど、そこが重要なんだ。」


「なぜですか?」

ルナが首をかしげる。


「なぜって、お金だよ! 専科は一人当たり、毎月金貨10枚の運営費用を学校から支給されるんだけど、いまの人数だと、
15名+17名+4名=36名
その人数、36×金貨10枚=360枚、その10%だと、金貨36枚になる。その金額があれば、新しい装備を購入したり、マルスみたいに武器を破壊してしまっても問題がなくなる。」


「・・・。」


「ラアラお姉ちゃんも、マルスも武器を惜しみなく破壊してたけど、あれは全部運営費から出ていたんだからね。ちなみに、練習用の騎士剣は、1本、金貨12枚もするんだよ。」

「すみません。」

「まあ、今年はマルスのおかげなのかな? 騎士剣専科の運営費に、匿名で金貨300枚の進呈があったから、まったく問題ないんだけどね。」


マルスは、なるべく武器を壊さないようにしようと心に決めた。
その後、4年生を祝う会があり、メリッサの提案で、来月の休みに全員で町に出掛けることになった。










~授業後・自室~

マルスは、授業が終わり、部屋に戻ると部屋を占領している軍略盤を見た。
ブックも今頃、軍師補佐官になる為に、必死に勉強をしているころだろう。それなのに、自分は、ラアラが居なくなってから本当に騎士団長になるための訓練に集中できているのか疑問に思った。専科の授業も、ラアラとやっていた訓練の方が効果があっただろう。
マルスは、1人きりの部屋で考えていた。


ガチャ!


勝手に ルナが入ってくる。


「どうしたの?」

「いや、その、マルスが、何か悩んでるみたいだったから・・・。」

「ありがと。」

「何を悩んでいるの?」

「うん。いまのままで本当にいいのか悩んでいたんだ。
騎士団長になる為の訓練も、まだまだ足りないような気がしているし、そもそも、騎士団長になることだけ考えて騎士剣の訓練や、戦術、魔法、いろいろ訓練をしてきたけど、騎士団長になったところで、黒の騎士団を倒す為に、勝手に騎士団を動かすこともできない。もちろん、国の防衛を考える必要もある。そう考えたときに、いまの自分のままでいいのか、何かを変えないといけないのか。それも分からなくなってきてしまって。
ごめん。自分でも何が言いたいのか分からないや。」


「うーん。マルスは考えすぎだよ。別にいいじゃん。騎士団長になって、騎士団を動かせないなら、国王になれば。」

「国王には なれないよ。ルナは、何も考えてないよね。」

マルスの言葉に、ルナがムキになる。


「なぜ?ダンテ国王も第3皇子だったけど、実力で国王になってるよ。」

「いや、一般人の僕と、第3皇子を比べても・・・。」

「そうだよね。あきらめるのは簡単だよね。じゃあ、全部あきらめちゃえば。」


「・・・。」


「マルスは、出来ることの中だけで、自分の理想を夢見てるんじゃない?」


「・・・。」


「そんなに何でもできるんなら、さっさとやればいいじゃん。私だって考えて行動してるんだよ。私の気持ちも分からないくせに!」



ルナは、持っていた布袋をマルスに投げつけて、部屋を飛び出していった。
マルスを元気づけようとして遊びに来たのだろう。可愛い刺繍のしてある袋には、クッキーが入っていた。

マルスは、追いかけようと思ったが、何て声を掛ければいいか分からず、追いかけることができない。いつの頃からだろう。マルスは、ルナを好きになっていたようだ。

だからなのか、ルナの言葉は、マルスに重くのしかかっていた。










~夕食時の食堂~

マルスは、ルナに会うのが気まずくて、時間ぎりぎりに食堂へ行った。
残されている食事は、2人分だ。
食堂のおばちゃんが、マルスに声を掛ける。

「マルスちゃん、ちょっといいかい?」

「どうしたんですか?」

「ほら、いつも一緒のルナちゃん、今日は訓練で怪我でもしたのかい?」

「えっ、何かあったんですか!?」

「いや、食堂に来てないみたいだったから。もしかしたら、訓練中に怪我でもしたのかと思って。」

「いえ、訓練中に怪我はしてないんですけど。」



食堂のおばちゃん達は、マルスの表情に何かを察した。

「マルスちゃん、お盆に配膳してあげるから、ルナちゃんに運んでおくれよ。」

「え、でも・・・。」

「ルナちゃんの部屋なら、おばちゃんが知ってるからさ。それから、ちゃんと話し合ってくるんだよ。」


マルスは、2人分の夕食をトレーに乗せてもらい、ルナの部屋へ向かった。




ルナの部屋は、上級騎士用の部屋で、廊下から広さが全然違う。廊下の幅も、マルスたちの部屋の前の廊下の3倍はありそうだ。


マルスは、ルナの部屋をノックする。


中からルナの声が聞こえる。


「ごめん。いまは誰にも会いたくない。」

「ルナ、さっきはごめん。僕も言い過ぎた。」


「・・・。」


「ルナ、君に言われたことに何も反論ができなくってさ、本当はすぐに追いかけたかったんだけど、追いかけることが出来なかった。」


「いいよ。もう。」

「それで、また考えすぎって言われるかもしれないけど、あの後もずっと考えたんだ。
でね、1つだけ、答えを見つけたんだよ。僕は、いままで誰かの為に騎士団長を目指してたんだってことが分かった。最初は、お母さんの為、次は、ラアラの為、それからは、目標もなくなっていた。」


「・・・。」


「そして、ルナに言われた気づいた。これからは、僕自身の為に、騎士団長を目指す。そして、国王を補佐し、周辺の国を統一するんだ。今後、争いの無い世界を築く為に。」


「どうして、そんな世界を作りたいの?」

ルナの声が扉のすぐ向こうから聞こえてくる。


「実はね、僕たち兄弟は地獄の門の先で産まれて育ってきた。そこは争いしかない世界で、常に闘争の連続だった。僕は、地上の楽園に戻れれば、皆が幸せに暮らし、闘争から解放されると思って必死で生きてきた。でも地上に戻っても、闘争の連続で、国同士で争い、いがみ合い、傷つけあって生きている。地獄と何も変わらないんだよ。そんな世界を変える為に、僕は騎士団長になる。」


ルナの部屋の扉が開く。

「本当にできると思ってるの?」

「いまは 出来ないことだけど、必ずやるよ。ルナも一緒にやらない?」


「うん。面白そうね。一生、マルスについて行くからね。」

「だったら、ルナには、一生背中を守ってもらうとするかな。」



ルナとマルスは、楽しそうに笑う。
2人の食事は冷めてしまったが、2人の心は、とても温かくなっていた。

その日、マルスは、上級騎士の部屋は、下級騎士の部屋の、3倍くらいの広さがある個室ということに驚愕した。










~次の休息日~

マルスが朝の訓練を終え、朝食をとる。そのまま、訓練所に迎い、訓練所に来ている後輩たちに、騎士剣術を指導する。いまのマルスの騎士剣術は、騎士団の中でも3本指に入るほどで、ムーンフェスト騎士団長より、指南許可証を発行されていた。
その後、自身の訓練もかねて、片手剣や、騎士盾の訓練も行う。
夕方になり、汗を流して、夕食をとり、部屋に戻ると、部屋の雰囲気が変わっていた。


いままで ガタガタ煩さかった窓は、お洒落な2重窓になり音がしなくなった。
隙間風が入っていた扉は、気密性の高い扉に変わっていた。
ギシギシ眠れなかった2段ベッドは、カーテン付きの広めのベッドに変わり、薄い布団と毛布ではなく、高級そうなフワフワの布団が敷いてある。
さらに、窓辺の花も、豪華な花瓶に美しい花に変わっていた。

匠の悪戯だろうか、唯一、残されたブックの軍略盤が、あきらかに浮いていて、部屋の雰囲気を、貧乏な空間に仕上げている。



マルスの後ろから、ルナの声が聞こえる。


「お帰り、今日から一緒に住むことになったから、宜しくね。」

「一緒に!?」


「どうしたの、あなた?」

「あなた?」


「そうだよ。この前、告白してくれたじゃん。」

「!!!?」

「今日から、マルスは、マルス=ダンテだから。」


「ダンテ? 国王陛下と同じ苗字?」

「そうだよ。だって、私の お父様だもの。」


「そ、そうなんだ。お姫様だったんだ。」

「うん。誰にも言ってないからね。ルーナ=メローザ=ダンテ。これが私の本名だよ。」

「ルーナって呼んだ方がいいの?」


「みんなの前では、ルナって呼んでよ。私も、マルスって呼ぶから。それから、明日の授業は、休校になるから、いまから お城に向かって、明日の朝から、私と一緒に お父様に会いに行ってよ。」


「明日は、本当に休校になるの?」

「うん。明日の朝一番で、食堂前の掲示板に掲示されるから、心配なら、メイガス校長先生に確認に行く?」


マルスは ルナを信じて、そのまま馬車に向かった。人生3回目の馬車は、見たこともないような豪華さで、8頭引きの6輪の馬車だった。しかも、左右に6名の近衛兵の護衛付きだった。











~お城の皇室用の客室~

マルスが泊まる 30畳ほどの客室では、逆に快適に過ごせるわけもなく、部屋のランプの消し方も、ベッドについているカーテンの使い方も、何も分からず戸惑った。


翌朝、まだ暗いうちから、、部屋を出て散歩をしてみる。途中、すれ違う兵士に何度も呼び止められたが、昨晩、ルナからもらった指輪を見せると、兵士は、敬礼し謝罪をしてきた。
マルスは、なんだか気まずくなり、最初の部屋に戻り、瞑想を始める。


しばらくすると、部屋の前で何人もの人が騒いでいるのが分かった。耳を澄ませて話を聞いている感じだと、王宮の魔法使いたちが、高い魔力を感じて、警戒しているようだった。
マルスは、瞑想を辞め、おとなしく待つことにした。



空が明るくなりはじめ、日が昇る頃に、ルナが部屋にやってきた。


「あれ、もう起きてたんだ。昨日は眠れた?」

「うん。でも、ランプの消し方が分からなくって困ったくらいかな。」

「あれは防犯の為に、24時間ついているんだよ。それで、カーテンを使って明かりを調整するのよ。」



マルスの常識とは違う世界のようだ。



「マルス、謁見の着替えを手伝おうと思って、みんなを連れてきたから、急いで着替えちゃってよ。お父様も、公務前だったら会ってくれるって話だから。」


マルスは、いままで着たことがない貴族の正装を着せてもらう。
騎士団の正装に似ているが、それよりも、圧倒的に豪華な感じを受ける。


服を着替え終わり、ルナと一緒に、ダンテ国王との謁見の為、謁見の間に向かう。




謁見の間で、10分程待つと、ダンテ国王が王座に座る。


「ルーナ、最初に一つ言っておかなければならない事がある。」

「はい。何でしょうか、お父様。」

「今回の婚約だが、破棄させてもらおう。」

「な、なぜですか!」



「それは、マルスの血筋にある。私も マルスの事を気に入っている。しかし、彼の血筋が問題なのだ。たとえ、第3王女と言えども、穢れた血を、王家に入れることは出来ない。」

「お父様、意味が分かりません。マルスは、ハンニバル家の騎士の子。何が問題なのでしょうか。」



「ル-ナ、マルスは、マルス=アテラティッツ=ハンニバル。30年ほど前に、この国を襲った、悪の根源である、メリクル=アテラティッツ=タイタンの孫にあたる人物だ。
このことは、レヴィア商会の台帳に、彼の署名が残っていた。言い逃れはできない。」

「では、お父様、私が王家でなくなれば、彼との婚約を許していただけるのですか。」



「それは、できない。ルーナは、仮にも第3王女である。
それに、ルーナ、よく考えるのだ。マルスは、お前に手を付ける前は、ムーンフェストの娘をたぶらかし、その娘が死亡したとたん、お前に手をだしている。国家転覆を考えている証拠だ。」

ルナは、涙を流し、首を横に振る。



そんな中、マルスが口を開く。

「確かに、私は、マルス=アテラティッツ=ハンニバル、父エイト=アテラティッツ=タイタンと、母アルメディシア=ハンニバルの子です。国王陛下、私の生まれる前に、そういった事件があったことは、知りませんでした。祖父に変わり、過ちを謝罪いたします。
しかし、私は ルーナや、ラアラ、ダンテ王国を騙そうと考えたことなど、一度もありません。
最初は、ルーナを・・・。騎士見習いの素直なルナを信頼のおける仲間と思い共に行動してきました。しかし、いまは、そんな ルナを愛しています。
その心に偽りはありません。たとえ国王陛下が、私の血を穢れた血と蔑まれたとしても、私の国に対する忠義も、彼女への思いも変わることはありません。」

「お父様! お願い!!」




「マルス、君の言いたいことは分かったつもりだ。しかし、婚姻を認めることは出来ない。
それから ルナ、もう騎士ごっこは終わりだ。明日から、この城からの外出は許さん。」


マルスの周りを近衛兵が囲む。


「分かりました。国王陛下。私は この場から立ち去ります。最後に、ルーナ姫に別れの言葉を告げる機会を与えて下さい。」

ダンテ王は、右手を動かし、近衛兵に合図を送る。




近衛兵は、マルスとルーナから距離を置く。



マルスは、涙を流し立ち尽くすルーナの肩を優しく抱きルーナの目を見つめて話しだす。


「ルーナ、泣かないで。必ず騎士団長になって、君を迎えに来るから。それまで待っていてよ。」

「でも・・・。」

「大丈夫。出来そうにないから、考えるんだろ。」


「うん。何年でも待つからね。約束だよ。」


マルスは、ルーナ姫の前に片膝をつき、手の甲にキスをする。

お互いに精一杯の笑顔で、別れを告げる。
ルーナは、泣かないように、こらえようとするが、涙が止まらないようだ。

マルスは、自分の白くキレイなハンカチを出し、ルーナの涙を拭う。



マルスは、立ち上がり、堂々とした態度でダンテ王に最敬礼をし、言葉を発する。


「国王陛下、私は必ず騎士団長になり、この場に戻ってきます。この国の為、心血を注ぎ、祖父の汚名をすすぎます。」


マルスは、近衛兵に囲まれながら、城の外へと連れて行かれた。







城の門で、近衛兵の1人が声を掛けてきた。


「マルス、頑張れよ。俺は 地獄の門を目指してた頃、お前の親父さんに助けてもらったんだ。」



他の近衛兵も話しかけてきた。


「実は、俺も助けてもらったことがあるんだよ。」

「ほんとかよ、俺もエイトさんに、助けてもらったんだ。」




近衛兵は、何か可笑しかったんだろうか、クスクスと笑い出す。


「まさか、近衛兵長も助けられてたんですか。ならマルスの味方ですよね。」

「俺が助けられちゃ悪いのかよ。 ・・・マルス、必ず騎士団長になって、ルーナ姫を幸せにしろよ!」





マルスは、近衛兵にお礼をいい、騎士養成所を目指した。



マルスは、急に大人になったように感じるほど、とても凛々しい表情をしていた。

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