伝説の商人たち ~エルフの商人レイオン~

黒山羊

文字の大きさ
34 / 42
鬼謀の星

32

しおりを挟む
~ミラルノ商店~

「なぜ騎士団は動かないんだ!
 ・
 ・
 ・
 すでに犯人が確定していることに対して、蒸し返したくないからなのか!
 職務怠慢にもほどがあるぞ!
 ・
 ・
 ・
 くそっ!」



店主ミラルノは、騎士団の対応が頭にきているのか、冷静さを欠いているようにも見える。


「そっちが、その気なら無理やりにでも動かせてやる!
 ・
 ・
 ・
 おい!誰か!」


ミラルノは使い走りを呼びつけると、指示を出した。

「いいか、上級貴族の家を回って騎士団を動かすように根回しをするんだ。
 騎士団のやつら、おそらく下級騎士出身のマルゲリータが大臣になったこともあり、横着をしているんだろう。
 あいつらに、何の為、誰の為の騎士団なのか、分からせる必要があるな。」

「了解しました。」


使い走りは ミラルノの指示を実行するために準備を始めた。




~ウィンター商店~

応接室で商談を終えた店主ベローチの元に、人相の悪い店番が駆け込んでくる。

「親分!」

「店では店主と呼べと言っただろ、で、何事だ?」

「え、あ、すみません、店主。
 それが店主の言った通り、ミラルノが動き出しました。
 いま、上級貴族に使いを出しているようですぜ。」


「ふふふっ、あいつらしいな。
 よし、我々も手を打とうじゃないか。」

「ミラルノ商店を追い込むんですね。
 しかし、なんですね。
 まさか、ハロルドのヤローと一騎打ちになるだなんて・・・。」

「ああ、まさかハロルド商店が生き残るとは考えてもいなかったな。
 しかし、レイオンとハロルドが同一人物だと考えれば、ごく自然な流れだろう。」



(・・・まあ、いまは中古の装備品の転売など迷走しているようだがな。
 いまのうちに、ハロルドを引き離すしかないな。)







~ハロルド商店~

店番をしていたハロルドの元に、ルルジアが馬車を引きやってきた。

「ハロルドさん、昨日分の納品に来ました。」

「ご苦労様です。
 で、如何ほどですか?」

「はい、装備品の修繕が36点の手数料と実費分の費用で合算して、金貨420枚ですけど・・・。
 装備品が無事に売れてからでいいですよ。」

「いえいえ、金貨420枚ですね。」

ハロルドは、ある程度予想していたのだろうか、小分けしてある袋を4つと金貨20枚を手渡す。
あまりにも素早い支払いに、ルルジアは困惑しているようで、ハロルドに声をかける。

「ハロルドさん、まだ売れてもないですし・・・。」

「いえいえ、この商品は私が買い取ったじゃないですか。
 ですから、ルルジアさんの・・・ドワルゴ商店の商売は完結ですよ。」

「で、でも・・・。」


ルルジアの様子に、ハロルドが不思議そうに声をかける。

「どうしましたか?
 何か、問題でもありましたか?」

「い、いえ、いままでミラルノ商店との取引では掛け売りだったので・・・。
 その、それに、家具も装備品も売れ残ることがあるし・・・。」

「ああ、そういうことですね。
 いいんですよ。私はシンプルに商売をしているだけですから。
 それに仕入れた装備品を売れるかどうかなんて、私の商才次第ですからね。」


ハロルドは、小さくガッツポーズを見せると馬車ごと店の前に横付けし、中新品・大特価!と書かれた値札を張り付けた。

「中新品・・・ですか?」

「ええ、中古の新品って意味です。」

「へえ、そんな言葉もあるんですね、勉強になります。」


メモをとるルルジアの様子を見て、笑いながらハロルドは答える。

「いま考えた言葉ですよ。
 ・
 ・
 ・
 あ、いらっしゃいませ!
 いつもニコニコ、ハロルド商店です!」

さっそく看板を見て冒険者が店に装備をもって入ってくる。

「これ、いくら?」


ハロルドは、冒険者が持っていた装備品を手に取り、値段をその場で付け始めた。
品定めが終わると、笑顔で冒険者に答える。

「はい、金貨12枚です。」

「おいおい、胸当てだけじゃねーぞ、この小手と脛当て、ナイフもだぜ。」


「ええ、セットで金貨12枚です。
 この値段は、大特価で値引き後なので、これ以上は値引きませんよ。」

「まじでか・・・。
 じゃ、じゃあ、この小型盾はいくらなんだ?」

「はい、これは魔法鉄で補強してある良品ですので、金貨20枚ですね。」

「魔法鉄で補強してあるのか。
 ・
 ・
 ・
 20枚、それでも破格に安いな。」


冒険者は何か安い理由を疑っているようだ。
ハロルドは、そんな冒険者に声をかける。


「ええ、この装備が安い理由は、中古の品だからです。
 ですが、この装備品を修繕したのは、職人集団として誉れ高き エリア3のドワーフたちで、彼らの技術ですから、装備の質に間違いはありません。」

「エリア山のドワーフと言えば聞いたことがあるな。
 ・
 ・
 ・
 よし、試しに買ってみよう!」

「ええ、エリア3のドワーフの修繕した品ですからね!
 きっと気に入ってもらえると思いますよ。」


ハロルドの大きな声は、周囲の冒険者たちの耳にも届いていたようで、店の前の馬車には、冒険者たちがゾロゾロと集まってきていた。
店の前の馬車で品定めをしていた冒険者たちに、ハロルドが声をかける。


「みなさーん、目利きをして選ぶのもいいですけど、早い者勝ちなので余分に買っておいても損はないんじゃないですか?
 一点ものなので、基本的に同じものが店に並ぶことはないですよ!」


「「「それもそうだな・・・。」」」



冒険者たちは装備品を次から次に買いあさっていく。
中には、贈答用として装飾が施されている高級装備品を買っていく貴族の姿もあった。

ルルジアは、ハロルドの手腕に驚きの表情を隠せない。


(さすがハロルドさんだわ。
 もうすでに払った分は回収してるわね。
 しかも、ポーションや消耗品もセット販売していってる・・・。)


「お客さん、いまだったら装備品を買ってもらった方限定で、ポーションが3つで2つ分の値段で買えますよ!
 装備で浮いたお金で買っちゃいましょうよ!
 ポーションは必需品だし日持ちもするし、何本あっても困ることはないですからね。」


「「「おお、言われてみればそうだな!」」」







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処理中です...