4 / 7
外伝(新世界)
英雄の軌跡(1)
しおりを挟む
青年の名は、バナン
カザンの奴隷区に生まれ育った貧しい青年です。
彼は幼い頃から、力が強く、乱暴者だったと言われています。
と同時に、貧しき奴隷区の英雄でもありました。
英雄と呼ばれる理由は、彼が幼き少年だったころ、商人区で、腹をすかせた少女が盗みを犯しました。
盗んだのは、ごみ箱に捨てられていたパンです。
神殿騎士は、少女に、むち打ちの刑を命じました。
罪名は、捨ててあるものを盗んだ罪、でした。
捨てた人に対して、盗みを行ったという。通常では考えられない罪です。
少女は幼く、鞭で打たれれば死んでしまうでしょう。
処刑は日の出と共に始まります。
そこに、まだ少年だったバナンが現れてこう言います。
バナン「少女の盗んだパンは、私が盗んで捨てたものです。私の捨てた物を盗んだ少女を罰するのであれば、今後、私たちの生活を脅かす商人区の人たちにも罰を与えて下さい。もちろん、私は盗んだ罪を償います。」
裁判をした神殿騎士が言います。
神殿騎士「では、お前の刑は、鉄棒打ち10打擲だ。もし悲鳴を上げることなく耐え続けることができるのであれば、この少女は解放しよう。しかし、一声でも上げれば、むち打ちの刑は続行する。」
そう一方的に話すと、バナンは、その場で捕らえられ、懲罰代に縛られ、10打擲の鉄棒打ちを受けました。
鍛え上げられた大人でも、5打擲もすれば、死んでしまうような処刑です。
鉄棒の打ちつける音は、静かな朝の商人区全域まで聞こえたと言われています。
しかし、バナンは最後の瞬間まで、目を見開き、一声も上げることはありませんでした。
10打擲目を打ち終えると、神殿騎士はこう言いました。
神殿騎士「お前の声が聞こえなかったのは、気を失っていたからだ。少女は、むち打ちの刑にする。」
この一声に、奴隷区の見世物戦士が奮い立ちました。
しかし、装備のない見世物戦士と、重装備の神殿騎士では、戦いになりません。
騒ぎが大きくなり、いままさに、戦闘が起きようとしている時、一人の金色の鎧を着た神殿騎士が駆けつけました。
彼は、バナンを見てこういいました。
金色騎士「少女を解放し、この罪を与えた物にも同じ罪を与えよ。」
判決を下した神殿騎士は抗議しました。
金色騎士「その盗まれたパンは、私が、この少年に恵んだものだ。お前は調べもせずに権力を乱用した。その罪は、罰を与えた分だけ償う必要がある。」
金色騎士は、次に捕らえられている少女を指さします。
金色騎士「そこの少女は、この少年が約束をした結果、守ることができた。しかし罪は罪、誰かを罰せねばならない。
この取引を勝手に行ったものに比がある。罪人と勝手に交渉をした者の資格を全て、はく奪せよ!
これは、教祖オーランド卿の意向である。」
元神殿騎士「そんな、私は・・・。」
周りにいた神殿騎士が元神殿騎士を捕らえる。
別の神殿騎士「おい、自分で潔く罪を受けるか、縛られて受けるか選べ。元神殿騎士だし選ばせてやる。」
元神殿騎士「いや、待ってくれ、おい、仲間じゃないか。なあ。見逃してくれよ。」
別の神殿騎士「縛りつけろ。さるぐつわを噛ませてやれ、痛みに耐えれるはずだ。」
元神殿騎士「いやだーやめ・・・・・・・・・・・・。」
別の神殿騎士「ガレアス様、4打擲で死亡が確認されました。」
金色騎士「わかった。見世物は終わりだ!」
金色騎士が、そう号令をかけると、商人区の人々も、奴隷区の人々も、処刑場を離れました。
その場には、バナンと少女、金色騎士、そして数人の神殿騎士が残されます。
金色騎士「少年、名前は?」
バナン「聡明な騎士様。私の名前は、バナンです。」
金色騎士「バナン、君の名前は覚えておこう。もし私が困った時は助けてくれればいい。」
そういうと、金色騎士は、柄の部分に針鼠の飾りのついた一振りの長剣を、バナンに与えました。
幼い彼には、まだまだ使えないような大きな剣です。
バナン「ありがとうございます。あなたの役に立てるように、剣の腕を磨きます。」
このやり取りをみていた、奴隷区の住民から、行動も発言も素晴らしく、英雄と呼ばれるようになったと言われています。
~ END
カザンの奴隷区に生まれ育った貧しい青年です。
彼は幼い頃から、力が強く、乱暴者だったと言われています。
と同時に、貧しき奴隷区の英雄でもありました。
英雄と呼ばれる理由は、彼が幼き少年だったころ、商人区で、腹をすかせた少女が盗みを犯しました。
盗んだのは、ごみ箱に捨てられていたパンです。
神殿騎士は、少女に、むち打ちの刑を命じました。
罪名は、捨ててあるものを盗んだ罪、でした。
捨てた人に対して、盗みを行ったという。通常では考えられない罪です。
少女は幼く、鞭で打たれれば死んでしまうでしょう。
処刑は日の出と共に始まります。
そこに、まだ少年だったバナンが現れてこう言います。
バナン「少女の盗んだパンは、私が盗んで捨てたものです。私の捨てた物を盗んだ少女を罰するのであれば、今後、私たちの生活を脅かす商人区の人たちにも罰を与えて下さい。もちろん、私は盗んだ罪を償います。」
裁判をした神殿騎士が言います。
神殿騎士「では、お前の刑は、鉄棒打ち10打擲だ。もし悲鳴を上げることなく耐え続けることができるのであれば、この少女は解放しよう。しかし、一声でも上げれば、むち打ちの刑は続行する。」
そう一方的に話すと、バナンは、その場で捕らえられ、懲罰代に縛られ、10打擲の鉄棒打ちを受けました。
鍛え上げられた大人でも、5打擲もすれば、死んでしまうような処刑です。
鉄棒の打ちつける音は、静かな朝の商人区全域まで聞こえたと言われています。
しかし、バナンは最後の瞬間まで、目を見開き、一声も上げることはありませんでした。
10打擲目を打ち終えると、神殿騎士はこう言いました。
神殿騎士「お前の声が聞こえなかったのは、気を失っていたからだ。少女は、むち打ちの刑にする。」
この一声に、奴隷区の見世物戦士が奮い立ちました。
しかし、装備のない見世物戦士と、重装備の神殿騎士では、戦いになりません。
騒ぎが大きくなり、いままさに、戦闘が起きようとしている時、一人の金色の鎧を着た神殿騎士が駆けつけました。
彼は、バナンを見てこういいました。
金色騎士「少女を解放し、この罪を与えた物にも同じ罪を与えよ。」
判決を下した神殿騎士は抗議しました。
金色騎士「その盗まれたパンは、私が、この少年に恵んだものだ。お前は調べもせずに権力を乱用した。その罪は、罰を与えた分だけ償う必要がある。」
金色騎士は、次に捕らえられている少女を指さします。
金色騎士「そこの少女は、この少年が約束をした結果、守ることができた。しかし罪は罪、誰かを罰せねばならない。
この取引を勝手に行ったものに比がある。罪人と勝手に交渉をした者の資格を全て、はく奪せよ!
これは、教祖オーランド卿の意向である。」
元神殿騎士「そんな、私は・・・。」
周りにいた神殿騎士が元神殿騎士を捕らえる。
別の神殿騎士「おい、自分で潔く罪を受けるか、縛られて受けるか選べ。元神殿騎士だし選ばせてやる。」
元神殿騎士「いや、待ってくれ、おい、仲間じゃないか。なあ。見逃してくれよ。」
別の神殿騎士「縛りつけろ。さるぐつわを噛ませてやれ、痛みに耐えれるはずだ。」
元神殿騎士「いやだーやめ・・・・・・・・・・・・。」
別の神殿騎士「ガレアス様、4打擲で死亡が確認されました。」
金色騎士「わかった。見世物は終わりだ!」
金色騎士が、そう号令をかけると、商人区の人々も、奴隷区の人々も、処刑場を離れました。
その場には、バナンと少女、金色騎士、そして数人の神殿騎士が残されます。
金色騎士「少年、名前は?」
バナン「聡明な騎士様。私の名前は、バナンです。」
金色騎士「バナン、君の名前は覚えておこう。もし私が困った時は助けてくれればいい。」
そういうと、金色騎士は、柄の部分に針鼠の飾りのついた一振りの長剣を、バナンに与えました。
幼い彼には、まだまだ使えないような大きな剣です。
バナン「ありがとうございます。あなたの役に立てるように、剣の腕を磨きます。」
このやり取りをみていた、奴隷区の住民から、行動も発言も素晴らしく、英雄と呼ばれるようになったと言われています。
~ END
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる