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悪魔召喚士

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「ハンなのか?」


エイルの問いかけに、巨大な青い狼が頷く。


「使い魔の姿じゃないってことは、転生して死んだのか?」

再び、巨大な青い狼は頷く。
その表情は悲しそうな表情をしていた。


「・・・マリーを残して死んでしまったんだな。」

エイルの問いかけに、巨大な青い狼は尻尾を巻いて、耳を垂れながら頷く。


「ハン、俺の徳を使って転生しろ。
 ・
 ・
 ・
 俺は契約を破ってしまったから、徳を持っていても無駄になる。
 お前は大切な人を守る為に犠牲になったんだろ?
 それなら、徳を使い転生する権利がある。
 俺の・・・お前の大切な マリーを守ってやるんだ。」

巨大な青い狼は 首を激しく横に振っていたが、エイルの言葉を聞き終え 小さく頷いた。
エイルは そんな巨大な青い狼に笑顔を見せた。
そして振り返ると、千紘に声をかける。

「なあ、ハンをこのまま魔界に帰してくれないか?」

「あ、うん。
 でも 私は帰し方をしらないから、神官に帰す方法を・・・。」


千紘の話を遮り、康孝と神官が広場に入ってくる。


「お前ら何を勝手に俺の悪魔を還すとか言ってんだ!
 俺は、こいつと契約して魔王を倒すんだぜ!」

「そうですよ。
 いま、この悪魔の名前も分かりました。
 これで無事に召喚の儀が完結できます。
 さあ、康孝さん、強力な悪魔ハンを従えましょう!」

千紘は 悲しそうな表情を見せるエイルと 狼の悪魔ハンを見つめ、小さな拳を握ると振り返り、康孝と神官に言い放つ。

「絶対にダメ!
 契約させないわ!」

「千紘さん、何を血迷っているんですか!
 この悪魔を召喚すれば、魔王なんて怖くないんですよ!」

「おい!
 千紘、俺が魔王を倒して褒美を手に入れるのが悔しいんだろ。
 残念だったな、お前の召喚した悪魔は最弱で、俺の召喚した悪魔は最強なんだもんな!」


「違う!
 そんなんじゃない!
 悪魔だからって・・・。」

「千紘さん、いま悪魔を使途し魔王を討たなければ、私たちが絶滅してしまいます。
 魔王を討伐するか、私たちが絶滅するかの選択なんです!」



千紘は、考えがまとまらないのか、俯きながら答える。

「みんな!
 違う、違うんだよ。」


「千紘、何が違うんだよ!」

康孝が、制止する千紘を振り切り、召喚した悪魔ハンに近づこうとしたとき、千紘の横に立っていたエイルが声をあげる。


「本当に、それが最善か?」



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