目指せ地獄の門 ~改訂版~

黒山羊

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2章・スタートライン

第7話 凄いスキル

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~宿【冒険者の集い】~

3人は、宿に戻ってきた。
しかし、部屋に戻ってみても、エイトの姿が見えない。


レヴィアは、何食わぬ顔で独り言を言い始めた。

「置いていったから、怒って出て行ったのか?部屋の中は好きだと思ってたのに。」

「・・・レヴィアさん、何も言わずに出てきたんですか!?」

「なにか?」

あきれるアルルに、気にせずに質問で返すレヴィア。
その様子を見て、ミザリも話に参加する。

「いや、レヴィア姉さん、さすがに怒るでしょ。商品の鑑定だけさせて、勝手に持ち逃げしたら・・・。」

「大丈夫、私とエイトの絆は、大海原にある大海溝より深いから!」

「・・・。」


ミザリもアルルと一緒に、あきれているようだ。
そんな2人の様子を気にせずに、レヴィアは、部屋の奥の方に進んでいく。
そのまま、入り口付近の2人の方を見て声をかける。

「汗をかいたから、お風呂に入ってきてから、凄いのを見せよう!」

「凄いの凄いのって、何が凄いんですか?」

アルルが不思議そうに質問する。


「すっごいのだ!」

自信満々の笑顔で答えるレヴィア。
そのままレヴィアは、部屋の中で服を脱ぎ始める。
アルルは、慌てて入り口を閉める。
ミザリは、レヴィアの自由奔放さに呆れているようだ。

「レヴィア姉さん、お風呂場で脱いでよ。」


レヴィアは、無視して服を脱ぎ全裸になり、風呂場へ行く。


「「ドタドタ、バターン!」」



風呂場の方から大きな音がする。
部屋の入り口で待っていた2人も顔を見合わせ、レヴィアのいる風呂場の方に駆けつける。


「どうしたんですか!」

「大丈夫!?」



驚いた拍子に滑ったのか、洗い場に座り込むレヴィア、頭を流してる途中だったのか、泡だらけの頭のエイト。
その様子に、無言になり固まる駆け付けた2人。


「・・・。」


アルルは、恥ずかしそうに、顔を背けている。


「あの、お風呂使用中なんだけど・・・。」

エイトは、とりあえず手で前を隠している状態だった。


ミザリは、最後尾から この惨劇を呆れて見ながら つぶやいた。

「ああ、すっごいのってこれか・・・。」











~宿【冒険者の集い】~

エイトは、部屋の外で待つ。
扉越しに、女子の嬉しそうに騒ぐ声が聞こえてくる。


1時間ほど、壁を見つめながら待っていると、部屋のドアが開き、アルルが顔を出す。

「ごめんなさい、エイトさん。」



エイトも部屋に入る。

部屋の中は洋服で散らかり、レヴィア、アルル、ミザリの服装が変わっている。




「あーあ。こんなに散らかして。誰が片付けると思ってるの?」

3人とも、一斉にエイトを見る。




「・・・だよね。僕・・・だよね。うん、それは分かってるよ。」

エイトが落ちている服を拾い始める。
両手いっぱいになっていく服を見ながら、ミザリが何か閃いた。


「そうだ!この服を着ないときは、小さくまとめたりは出来ないのかな?」

「いや、錬金術は、あくまで等価交換、大きさを変えたりはできなかったんだよね。」

レヴィアは、既に挑戦済みのようで、冷静にミザリの閃きに回答する。



「いくら、魔装具の四次元ポシェットがあるとはいえ、いちいち出し入れが面倒ですね。」

「そうなんだよね。もっといい方法があればいいんだけど。」

アルルも、魔装具の四次元ポシェットの中をのぞきながら、何かいい案がないか考えているようだ。




3人を横目に 洋服を集めながら、エイトが言う。

「そのままの等価で、小さく濃縮したらいいんじゃない?」

エイトの助言に3人は、「はっ!」と、気づかされた表情になる。



「それだ!」

レヴィアは、洋服の山をエイトから奪い、錬金術を発動させる。

洋服の山は、はがきサイズに収縮された。
ミザリが、床に転がるように落ちた、はがきサイズの布を拾う。

「結構重いね!」



そういって、レヴィアに渡す。

「ほんとうだ!これは、まるで、狂える海龍王の鱗レヴィアタンスケイルってとこだな!」


呆れた顔でエイトが、レヴィアを見つめる。

「あーあ。また、やっちゃった。」



「!!!」

何かに気づくレヴィア・・・。
そのまま、落ち込むように視線を落とす。


その様子に、アルルがミザリに小声で話しかける。

「どうしたの?」


アルルの声が聞こえたのか、エイトがアルルに声を掛ける。

「命名したんだよ。」




 ~ to be continued





【補足】

・宿【冒険者の集い】

冒険者が愛用している宿。
宿、酒場、預かり所など経営しており、冒険者からの評価は高い。飯は旨いが、保存食は干し肉と酒のみで、まったく売れてない。



狂える海龍王の鱗レヴィアタンスケイル

強化されたハガキくらいの大きさの布の塊。
使い道はない。
この後、なぜかハロルド商会に飾られることとなる。



・命名

物を者に変えることによって、錬金術の効果を打ち消すことができる。
錬金術の大前提の定義は、物を等価交換で置き換える能力だからです。命ある者は、置き換えることなんてできない。一流の冒険者は、装備だけでなく、錬金されては困るものにも命名をしている。
ちなみに、世の中の命名士(命名する人)のセンスが反映されている。
例「暗闇を照らす慈愛の炎(ランプ)、渇きを潤す女神の器(水筒)」




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