目指せ地獄の門 ~改訂版~

黒山羊

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3章・迷宮探索!

第4階 迷宮の悪魔(再)

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~迷宮・4階層~

完全に陣形は崩壊している。

前衛  レヴィア、レイザー、アルル、ミザリ
中衛  
後衛


~近寄れない壁~


超後衛 エイト



パーティは、そのまま エイトと距離をおいて進んでいく。

「呪われてんだから、近づかないでよ!」

レヴィアが、超後衛のエイトに 大きな声で注意する。
どうやら、エイトとパーティの距離が狭まったことが気に食わなかったようだ。
レヴィアの注意に便乗する ミザリ。

「呪いなんて可愛いもんじゃないよね。」

「自業自得ですよ。気持ち悪い。」

アルルも軽蔑の眼差しで、超後衛のエイトを見下す。



・・・事の発端は、エイトの問題行動からだった。











・・・それは、遡ること 1時間前の出来事。


パーティは、比較的 陣形を保ったまま、迷宮内を進む。

「エイト、この前のう○こは、何に使うの?」

レヴィアが、気になっていた質問をする。
エイトは、当たり前のように回答をする。

「あれは、赤黄色火薬セキオウショクカヤクの原料になるんだよ。」

「赤黄色火薬ですか?」

アルルも会話に参加してきた。

「そう、レヴィアも一緒に勉強したはずなんだけどね・・・。」

エイトは、レヴィアを見る。
目があった瞬間、レヴィアは、顔を背ける。
たぶん、完全に記憶にないことなのだろう。

ミザリもエイトに質問する。

「で、その赤黄色火薬は 何に使うの?」

「火薬って名前だけど、着火材も作れるんだ。」

「着火材も?」

「うん。あとは、土と木屑を混ぜると懐炉カイロになるんだよ。」

レイザーも感心した表情で会話に参加する。

「便利な物だな。」


全員、エイトに注目している。
エイトの知識は、物珍しく興味を引くには十分だった。
その光景を見ていた レヴィアが、思い出した表情をして会話に合流する。

「ああ、思い出した。それだよそれ!」

レヴィアは、完全に知ったかぶりをしているが、エイトは気づかないフリをしておいた。

「ちょっと完成品を見てみたいね!なんだか面白そう♪」

ミザリは、商売に転用できればと 考えているのだろう。笑顔でエイトに近寄っていく。
愛嬌いっぱいのミザリに、エイトは笑いながら答える。

「さすがに材料が揃わないとできないよ。」

残念そうに元の位置に戻るミザリ。
パーティーは、そのまま敵を倒しながら先に進む。



20分ほど進むと、アルルが 恥ずかしそうに提案してくる。

「あの・・・。少し休憩しませんか?」

「なぜ?」

前衛に来ていた レヴィアは、アルルの方を向き 会話する。

「えっと、ちょっと休みたいなーって。」

「なぜ?」

こういう反応の時は、レヴィアはしつこい。納得する回答を得られるまで質問を繰り返す。

「ほら、ね!ミザリちゃんも休みたくない?」

アルルが、足を もじもじ させ始める。

「そうかな?・・・ミザリも休みたい?」

「ううん、全然。」

アルルの、お尻がキュッとあがり、耳を真っ赤にして言う。

「その、あの、おし・・・。」

「ほら、先を急ぐぞ。」




頬も紅くなる。



「あの、おしっこに行きたいんです!」

「・・・どうぞ、別に恥ずかしがる事じゃないのに。」

レヴィアの了承を無事に得ることができ、アルルは 慌てて隊列から出る。
急いで後を追うエイト。
エイトが、皮袋を取り出しながら、アルルに言う。

「ちょうど良かった。おしっこに行くなら、この袋に おしっこを頂戴。」

「・・・。」

「・・・。」

「・・・。」


メンバーは、白い目でエイトをみる・・・。




顔を真っ赤にしながら、アルルが怒鳴る。

「はぁ?入れるわけないじゃないですか!!」

アルルは、岩陰に隠れる。




レヴィアたちは、エイトと距離をとる。

「流石に気持ち悪いな。」

「僕もそう思うよ。ちょっと近くを歩くのは危険かもね。」

レヴィアとミザリが、エイトに聞こえるように、大きな声で こそこそ話をする。
誤解を解こうと、エイトが弁解する。

「いや、誤解だって。さっきの赤黄色火薬の材料は、人の尿なんだよ。レヴィアも習ったでしょ!」




悩むレヴィア。ミザリが のぞき込むようにレヴィアの顔を見ながら質問する。

「ホントに?」

更に悩むレヴィア。

「あ、ああ、思い出した!本当・・・。」

完全に記憶に無いことのようだが、レヴィアは エイトを信用しているのだろう。
エイトの弁解に 同意する。







しばらく待っていると、顔を真っ赤にしたアルルが戻ってくる。
手には、革袋を持って・・・。


「冒険者ですから・・・。その、これどうぞ。」




アルルは、エイトに革袋を渡す。
エイトは、不思議そうな顔をして革袋を受け取る。
液体の入った革袋を受け取ったエイトは、中身を確認する為、匂いを・・・。

「おしっこです!わざわざ確認しないで下さい!!」

「あああ、ごめんなさい!」


ドン引きした表情で、レヴィアとミザリが会話する。

「確信犯だな。美女の聖水。マニアには価値がありそうだもんね。」

「僕もそう思うよ。ざっと見積もって、銀貨80枚ってとこだね。それを無料で入手するとは、流石だよね。」

二人は、聞こえるように、大きな声で、こそこそ話をしている。
エイトには聞こえていないのだろうか?
エイトは、レヴィアの近くに駆け寄り、尿入りの革袋をどうやって 四次元ポシェットに しまおうか悩んでいる。
その様子を見ていたレヴィアは、嫌そうな顔をしてエイトに言う。

「四次元ポシェットを汚さないでほしいんだけど・・・。
 いまから、調合すればいいじゃないか。待っとくから、作ってよ。」

「確かに、そうだね!」

エイトは、調合を始める。



【赤黄色火薬の調合方法】

1・ファイヤーリザードの排泄物を革袋にいれ、もみ崩し、粉状にする。

2・粉状のファイヤーリザードの排泄物に、人間の尿を少しずつ加え、よくもむ。
  ※ 熱を帯び始めるので、直接触らないこと。

3・粉状の排泄物に粘り気が出れば、最後に緑光苔を少量まぜて、よくもむ。
  ※ 緑光苔を一度に入れないこと。大量にいれると危険。

4・固くなってきたら、乾燥させて完成!



エイトは、1番目の作業を無難にこなす。

「緑光苔って何?」

商品化を狙っているミザリは、エイトに質問する。

「ああ、洞窟に自生する苔だよ。動物のフンを分解して光るんだ。真っ暗闇のダンジョンでも、たまに足元が明るいことがあるでしょ。あれは、緑光苔のおかげなんだよ。」

レヴィアは、その話を聞いて、苔の上から足をどかす・・・。
エイトは、黙々と作業を続ける。
・・・作業を見ていたアルルが気づく。

「エイトさん、ちょっと水っぽくありませんか?」

「そうかな?初めて作るから分からないけど、大丈夫だと思うよ。」


作業を見ていたミザリも気づく。

「ちょっと雑なんじゃない。いま緑光苔を、一握り入れてたでしょ。」

「そうかな?初めて作るから分からないけど、大丈夫だと思うよ。」


楽しそうに、無我夢中で調合をするエイト。
何かを察知した、レヴィアとレイザーが距離をとる。
それを見ていた、アルルとミザリーも距離をとる。


「思い出した。エイトは、知識はあるが、師匠譲りの不器用少年だった。」


レヴィアが、迷宮の奥に駆けて行き、調合中のエイトと距離をとる。
それをみた3人も避難を始める。





バーン!!!!





迷宮内に爆発音がこだまする。






「死んだか?」

「まさか・・・。そんな・・・。」

「レヴィア姉さん、あれ見て!」



エイトは、どろどろの赤黄色に怪しく光る糞尿にまみれ、異臭を放ちながら寄ってくる。
その姿には、恐怖を感じる。

いままで戦ってきた、魔物すらも可愛く見えるほど、おぞましい姿をしている。


爆発音を確認する為、他のパーティーが集まってくる。


別の冒険者A
 「なんの匂いだ?」

別の冒険者B
 「あれみて、、、うわぁぁー!悪魔がいるぞー!」


爆発音を聞き、確認しに来た別のパーティーが、悲鳴を上げながら逃げていく。
エイトは、第4階層全体に パニックを発動させる。




レヴィアが、アルルの背中を押しながら言う。

「アルルの尿だから、責任とって解放して来い。」

アルルは、ミザリの方を見ながら言う。

「絶対に嫌です。元はミザリちゃんが完成品を見たいって言ってたからですよ。」

ミザリは、レヴィアを指さしながら言う。

「僕のせいにしないでよ。レヴィア姉さんが、いまから作れなんて言うからじゃない?」





エイトは、徐々に近づいてくる。

「くさぁーーーーいぃぃぃーーー。」




「「「イヤー!こっちこないでー!」」」







レイザーは、距離を置き、パーティメンバーを傍観している。

「いや、そもそも エイトが適当だったのが問題なんじゃないかな。」



 ~ to be continued



【補足】

赤黄色火薬セキオウショクカヤク

着火剤や、懐炉の原料になる。
このことを知らない冒険者ばかりで、うまく調合すれば いい商品になる。



・緑光苔

洞窟に自生する苔。
動物のフンを分解して光り、繁殖速度は、かなり早い。
明るさは、月明かり程度。



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