目指せ地獄の門 ~改訂版~

黒山羊

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3章・迷宮探索!

第5階 迷宮の台所

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レヴィアが、四次元ポシェットを持ったまま、パーティの最前列に移動してくる。

「すまない。問題が発生したようだ。」


「「「・・・。」」」



「今回は、どうしたんですか?」

「レヴィア姉さんの問題は問題じゃないからね。で、どうしたの。」

アルルもミザリも、あまり気にしていないようだ。
その言葉を待ってましたと言わんばかりに笑顔で話を続けるレヴィア。

「よかった。問題でないと言ってくれて。実は、食料が底を尽きた。」

「なーんだ、そんなこ・・・と?」

食料が尽きたということの重大さを理解しているパーティの動きが止まる。

「どうして食料が底をつきるの?そんなにつまみ食いしながら歩いてた!?」

驚いた表情で、レヴィアに詰め寄るエイト。
レヴィアは、冷静に事態の理由を説明する。

「いや、食料から変な臭いがするから捨てておいた。藁に包まれた豆だが、腐っていたようだ。」

レヴィアの説明を聞き終え理解したのか、レイザーがレヴィアに反論する。

「いや、それは納豆っていう異国の食料だぞ。
 確かに 匂いや見た目に癖があるが、慣れると単品で食べることもできるし、
 栄養価も高い万能食材だったのに!」


「・・・。」

「・・・まさか、レイザーから解説を受けるとは、いままでで一番の衝撃だね。」

「それは確かに感じるけど、レヴィアが勝手に食料を捨てたのが問題でしょ!」


エイトもレヴィアに注意する。
レヴィアも申し訳なく思っているのか、あまり言い訳をせず、黙って聞いている。
アルルが、ここぞとばかりに本を取り出し、手を挙げて発言する!

「仕方ありませんね。次、魔物が出たときは、私が調理してみましょう。」

「嫌だよ。魔物を食べるなんて!」

「確かにね。猪とか鳥みたいな魔物なら、まだ我慢できるけど、ちょっとそれ以外はね・・・。」

エイトが全力でアルルの発言に反対する。ミザリもエイトの反対意見に頷くように同意している。
2人の反対意見を無視するように、笑顔で対応するアルル。

「大丈夫です。今の猪や鶏などは、もともと野生の動物から飼いならされ家畜となりました。
 逆に言えば、野生のままでも 食べれる美味しさがあるということです!」

アルルの笑顔に照れてしまい、あまり強く反論できないエイト。
しかも、アルルの意見は正論でもある。

「まあ、確かにそうなんだけど・・・。」

ミザリも食料がないという危機的状況もあり、アルルに妥協案をだす。

「最初は、猪みたいな魔物からにしない?」

「二人とも、わがままだな。・・・仕方ない。猪系の魔物を倒したときは、アルルに解体を頼もう!」

事態の原因を作ったレヴィアが、当たり前のようにパーティを まとめる。
妥協案だとしても、メンバーの同意が得られたことが嬉しかったのか、アルルも満面の笑みを見せる。

「はい!任せて下さい!
 私、良き妻、良き母親になれるよう、花嫁修業だと思って、魔物料理を頑張りますから!!!」


やる気まんまんのアルルを横目で警戒を解き切れない エイトとミザリ・・・。

「エイト、お母さんって魔物料理を作る人の事だったのかな?」

「さあ? 僕の認識だと、普通の料理を出すもんだと思ってたよ。」





しばらく迷宮を進むと、レヴィアが魔物を発見したようだ。

「お、リビングデットを発見!」

※(リビングデット) 動く死体。腐ってる。生存時の本能が強く作用する。

「さすがに、おなか壊しちゃうよ。もうちょっと新鮮な肉にしない?」

「・・・いや、そこじゃないかな。」


ミザリの反対意見に、反射的に つっこみをいれるエイト。
そんな2人のやり取りを よそに、アルルが別の魔物を見つける。


「あそこにいるのは、フライングキャットじゃないですか!」

※(フライングキャット) 羽の生えた猫。

レヴィアは、悩んだ表情でミザリに質問する。

「あの羽、鳥に分類されるかな?」

「いや、どうみても猫でしょ。」


レヴィアの質問に つっこみを入れたミザリが、何かに気づく。

「あっ!」

その様子に気づいたアルル。

「どうしたの?」

「いや、僕の見間違いかもしれないけど、向こうの方に豚みたいな魔物が見えた気がしたんだけど。」

ミザリの指す方向は、いま歩いてきた道を引き返すことになる。

「よし、私が責任を取って、狩りをしてこよう。」

レヴィアは、食料を処分したことに責任を感じていたようだ。
率先して いま来た道を引き返していった。
エイトは、残ったパーティメンバーをまとめる。

「そうだな。じゃあ、ここで調理の準備をして待ってようか。」

「「「さんせーい!」」」

「レヴィア姉さんと アルルの おかげで、今日は新鮮な焼肉だね!」

食料が尽きた悲壮感から解放されたパーティに笑顔が戻る。






~10分後~

ズルズル!


ズルズル!


ズルズル!




レヴィアの歩いて行った方から何かを引きずる音が聞こえてくる。



ズルズル!


ズルズル!




「ただいまー!向こうにいたのは、ミザリの言う通り豚だったよ。」



ズルズル!


ズルズル!



徐々に明かりの届く範囲に、レヴィアが映る。
手には豚の頭を掴んで引きずっているようだ・・・。



ズルズル!


ズルズル!


ズルズル!



血まみれのレヴィアと共に、次第に豚の正体が見えてくる。
その正体に気づいたミザリとエイトが口を開く。

「・・・ぼ、僕は遠慮しとくよ。」

「ああ、お腹がいっぱいになってきた。」

レヴィアが手に持った豚の頭の正体は、豚の頭に、人間の体。90%以上が人間である・・・オーク!

「重かったから内臓は少し捨ててきた。あとはアルルに頼もうかな。」




ドサ!



「イヤァーーーーーー!」







 ~ to be continued





【補足】


・食料が底をつきる問題

迷宮の冒険者にとって、恐ろしい人為的事故のひとつ。
飲料水、食料、明かり。このどれかが無くなると、体調万全なパーティでも全滅の恐れがある。



・リビングデット

下級魔物(冒険者1人で戦えるレベル)
動く死体。腐ってる。生存時の本能が強く作用する。
迷宮内で死んでしまった冒険者が、回収されないまま放置されたものに悪霊が憑依した結果。
こうなってしまうと、手遅れで復活は出来ない。



・フライングキャット

下級魔物(冒険者1人で戦えるレベル)
羽の生えた猫。というより、二本足で歩き、前足は羽になってるので、鳥のような姿でもある。冒険者や他の生物の血を舐め、栄養を摂取している。集団で襲われると、結構危険である。



・オーク

下級魔物(冒険者1人で戦えるレベル)
豚の頭に、人間の体。顔以外は人間である。
主に人間の捨てて行った装備品(接近武器)を装備して攻撃してくる。
知能は低く、剣の鞘を装備して中身を捨てていたりする。
普通に武器を装備している個体は、結構やっかいでもある。

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