目指せ地獄の門 ~改訂版~

黒山羊

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4章・冒険者の休息

第5話 仲間の秘密

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冒険の準備を終え、荷物をまとめる。
エイトは、昨日の疲れからか、まだ寝ている。

まだ興奮の冷めないミザリが身振り手振りで、昨夜の出来事を話し始める。

「でも、昨日は駆けつけて正解だったね。」

「ああ、素手で騎士鎧を へこませるなんて初めてみたよ。」

「あれ凄かったよね!
 アルルもスカっとしたんじゃない?」

「え、ええ。・・・とても嬉しかったです。」

頬を赤くしながら、アルルが答える。


「だよね!私も戦士に転職しようかなー。」

ミザリの思いつきに アルルが助言する。

「エイトさんのレベルの戦士になるには、かなりの修行がいりますよ。」

その助言を聞いていたレヴィアが、不思議そうな顔をする。

「エイトは、純粋な魔法使いだよ。」


・・・。


「「「えーーー!」」」



「た、確かに・・・。しかし、強力な魔法を詠唱するから、かなり やり手の魔法戦士かと思っていたんだが。」

「魔法使いって・・・。並みの戦士以上の身体能力じゃん!」

驚きを隠せないレイザーとミザリに、レヴィアが淡々と説明する。


「ああ、普段のエイトは、弱いよ。魔法なしだと、アルルにも負けるくらいじゃないかな。」

「・・・信じられませんね。でも身体強化の魔法を詠唱しているような姿を、あまり見たことありませんけど。」

アルルは、レヴィアの悪い冗談だと思っているようだ。
ミザリは、ヒーローに憧れる子供のように、目をキラキラさせながら、レヴィアに質問する。

「まさか無詠唱で魔法まで使えるの?」

「いや、重ね掛けしている時には、詠唱してるはずだよ。
 まあ、いまの階層の魔物なら重ね掛けする必要も なさそうだけどね。」

その言葉に、何かを思い出すレイザー。

「確かに、身体強化の魔法は、1度使ってるのを見たな。」


レヴィアは、レイザーの発言に不思議そうな顔をする。

「エイトが?反動が大きいって言って絶対に使わないのに?」

「あの、ほら・・・。」

レイザーは、レヴィアに秘密だと言われた事を思い出し、言葉に詰まる。
すかさず、アルルがフォローを入れる。

「樽運びの時ですよね。重労働だったから!」

「ああ、なるほど。それで疲れたのかな?」

アルルは、「あれは数が多すぎたからですよ!」と突っ込みたかったが、辞めておいた。

「でも実際に 自動で常時発動させるなんてこと、本当にできるの?」

ミザリの質問に、レヴィアが答える。

「ほら、アルルとミザリは、エイトのお風呂を覗いてたでしょ。
 その時に、みぞおち付近に魔法円を見なかった?」

「覗いたんじゃありません!けど・・・。」

「言われてみれば、確かに あったかも・・・。」


「エイトが死なないように、守護神が刻み込んだ神級魔法円だよ。」

「神級って、誰がそんな魔法円を描くんですか!?」

「それは、エイ・・・。」

レヴィアが詳しく話をしようとしたとき、突然 外が暗くなり、周囲の音を かき消すように大粒の雨が大量に降り注ぎ いくつもの稲妻が鳴り響く。


「・・・。」



「どうしたの レヴィア姉さん?」

レヴィアの顔色が悪い・・・。


「まずい、話したらダメなやつだったかも・・・。」





 ~ to be continued





【補足】


・素手で騎士鎧をへこませる

衝撃に強い構造で、魔法合金を使っている鎧をへこませるには、相当の力が必要。
例えば、削岩用のハンマーで、高い所から飛び降りて加速し、全力で叩けば、可能かもしれない。
優れた熟練の戦士でも素手では無理である。



・無詠唱で魔法

現在の地上では 存在しません。



・身体強化の反動が大きい

エイトの唱える身体強化は、火の属性で、体温を上げ 身体能力を大幅に向上させるものである。
そのため、能力の上昇は大きいが、使用後の反動も大きい。


・お風呂を覗いてた

過去の話を参照にしてください。
「凄いスキル」



・魔法円

魔法陣とは違い、円の外の世界に影響を及ぼす魔法。
エイトに刻まれた魔法円の場合、円の外はエイトの肉体となる。



・神級

神級、ようするに人類の常識を超えたレベルの魔法。



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