目指せ地獄の門 ~改訂版~

黒山羊

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4章・冒険者の休息

第6泊 夢の魔装具

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「ねぇねぇ!ビックニュースだよ!」

宿で出発前の食事をとっていた4人の元へ、実家から通っているミザリが新聞を持ってくる。
ちょうど食事を終えたエイトが、ミザリに質問する。

「どうしたの?」

「実は、ウィンター商会のパーティが、20階までたどり着いて、魔法陣を起動して帰ってきたんだよ。」

レヴィアが、頬張っていたパンを牛乳で流し込み、会話に参加する。

「なるほど。次の目標は、20階でいいってことか。」

「実は、それだけじゃなくって、ウィンター商会のパーティが使わない魔装具をオークションにかけるんだって!」

「魔装具をですか!レヴィアさん!ぜひ見に行きましょう!」

魔装具に興味があるアルルが、ミザリの持ってきた新聞を見ながら、レヴィアを誘う。
そんなアルルを後押しするように、ミザリもレヴィアを誘う。

「レヴィア姉さん、冒険に役に立つような 魔装具もオークションに出てくるかもよ!」

必死に誘うアルルとミザリに冷静に対処するエイトとレイザー。

「いや、それはないと思うよ。だって、冒険に役に立つような物なら、自分たちで使うんじゃない?」

「たしかにな。私もエイトの意見に賛成だ。」

冷静なエイトとレイザーに反論し、レヴィアの同意を求めるミザリ。

「でも、組み合わせ次第だと役に立つ者もあるかもよ!」

「・・・。」

レヴィアも、あまり乗り気ではなさそうだ。

「そうですよ! レヴィアさん、行った方がいいですよ!
 もしかすると、冒険には役に立たないけど、おしゃれな髪形を演出してくれる帽子とかがあるかもしれませんよ!」

「おしゃれな髪形・・・。」

レヴィアの心がアルルの一言になびいたようだ。
レヴィアの反応に気づくエイト。

「ああ、これダメな奴だ。」

「エイト、出発は明日の午前中にして、今日は準備をしよう。」



レヴィアは、残りの食事を牛乳で流し込み、勢いよく立ち上がる。

「いい!いいよオーション!」

「レヴィア姉さん、オークションだよ!」


レヴィアは、ミザリ、アルルと手をつなぎ、エイトたちを背に盛り上がっている。

「反対意見のエイトとレイザーは、宿で休むとして、ガールズパーティは、オーションで、おしゃれ帽子をゲットしに行こう!」

「「「おおー!!」」」

ガールズパーティは、足早にオークション会場へと移動していった。










~オークション会場~

ガールズパーティは、オークション会場で困惑していた。
レヴィアが、受付の男性と話をしている。

「入場料・・・?」

「ええ、入場料に金貨100枚かかります。」

「3人で?」

「3人で金貨300枚です。」


アルルとミザリは、受付の男性の雰囲気から何かを察している様子だ。

「レヴィアさん、私たち ちょっと場違いじゃないですか?」

「冒険者らしき人物は、僕たち3人だけだよ・・・。」


「・・・。」


レヴィアは、少し考えたあと、受付の男性に再度、声をかけた。

「受付くん。私の友人のウィンター君を呼んでくれたまえ。」

「会長をですか!?そんなこと出来ませんよ!」

「では、新商品の相談があると、言って取りついてくれればいい。エイトの名前を出してね。」

「は、はい。しばらくお待ちください。」

受付の男性は、レヴィアの態度に何か特別なオーラを感じたのか、別の係員に会場整理を任せ、奥へと入っていった。
ミザリは、そんなレヴィアの様子をみて、レヴィアに声をかける。

「ねえ、新商品の案なんてあるの?」

「いや。無いから、売り込む。」

「・・・?」

質問したミザリも、話を傍観していたアルルも、不思議そうな顔のまま立ち尽くしている。



~15分後~

受付の男性が息を切らしながら戻ってきた。

「エイト様、お待たせしてしまい申し訳ございません。会長室に案内いたします。」

「うむ。」

レヴィアは、返事をすると案内されるまま、奥へと進んでいく。
そんなレヴィアに、おどおどしながら付いていくミザリとアルル。




~豪華な会長室~

3人が通されたのは、豪華絢爛な会長室だった。
床は天然大理石が敷き詰められ、壁は黄金に輝いている。
奥の椅子に座っていたウィンター会長は、レヴィアを見て、楽しそうに話しかけてくる。

「おお、レヴィアくんじゃないか!」

「ああ、会長。今日は面白い話を持ってきた。」

ウィンターは、ミザリを見つけるが、まずは話を聞くことにした。

「実は、私たちもここから迷宮を目指し、20階まで行く間に、新商品を開発することにしたんだ。
 そこで、会長にはスポンサーになってもらい、新商品ができれば独占販売の提携を約束しようと思ってる。
 もちろん、その都度、権利を買い取ってもらう予定なんだが、どうだろうか?」

「うむ。面白そうな話だが・・・。」

ウィンターは、レヴィアを見る。
どうも、レヴィアの出す条件が気になるようだ。

「ああ、私たちの条件は、会長の管理する施設への立ち入りの自由化。もちろん、一般公開している場所まででいい。それから、レヴィア商会ブランドの立ち上げの全面バックアップを協力してもらいたい。」

「なるほど・・・。
 入場許可証は、すぐにでも発行させよう。しかし、商会の立ち上げは、明日の昼まで待っていてくれ。」

ウィンター会長の感触はいいようだ。
レヴィアは、何か企んでいるような笑みを浮かべ、ウィンター会長に歩み寄り、握手を求める。

「ウィンター会長、いいビジネスパートナーになりそうだね。」

「そうだな。レヴィア会長、今後ともいい商売ができるように、協力していこう!」

レヴィアは、ウィンター会長と握手を交わし、明日の昼まで待つことになった。









~オークション会場内~

貴族たちの間に、場違いな冒険者の3人組がいる。

「さすが、レヴィア姉さんだね!」

ミザリは、目を輝かせながらレヴィアを見る。
アルルは、そんなミザリに質問する。

「新しい商会ブランドの立ち上げって、結構、簡単にできるんですか。」

驚いた顔をするミザリ。

「アルルー、なに言ってるの!?
 新しい商会ブランドは、商人協会に5,000枚の金貨を収めて審査をしてもらった後に、、王国に50,000枚の登録費用を払って商会の設立になるんだよ!」

「えー!そんなにかかるんですか!?」

思いのほか 高額な金額に、開いた口が塞がらないアルル。

「うん。しかも新規で商人協会に承認してもらうには、かなりの実績が必要だからね。
 それに過半数の役員の可決も必要だから、なかなか承認すらしてもらえないんだよ。メンバーからすれば、ライバルが増えるだけだからね。」

ミザリは、説明した後、レヴィアにウィンクをしている。
レヴィアは、ミザリたちと視線を合わせないように答える。

「あ、ああ。知っていたよ。も、もちろん。」

・・・レヴィアは、まったく知らなかったようだ。






そんな話をしていると、周囲の照明が少し落ち、いよいよオークションが始まる。
最初の品は、魔装具【演説の首飾り】
この魔装具を身に着けたものは、どんな場所でも落ち着いて練習通りに話をすることができるそうだ。
楽しそうに笑いながら、ミザリが話しかける。

「アルル、必要なんじゃない?」

「いや、さすがに要らないですよ。騎士団長になるのは、ずっと先の話ですから。」

「・・・そうだね。夢は大事だよね、レヴィア姉さん。」

「う、うん。否定しないところはアルルのいいところだな。」

そんな話をしている間に、【演説の首飾り】は、47,000で落札された。
3人の前に座っていた貴婦人たちは、レヴィアたちとは対照的に、この価格に驚いた表情を見せず話し続けている。


「奥様、最初の品にしては 安く買えたみたいですね。」

「ええ、今回の目玉商品の為に、皆さま控えてるんじゃありませんこと?」



予想以上の金額に、レヴィアは ミザリを見る。

「ミザリ、パーティの予算は?」

「今後の事も考えると、40,000枚が限度だね。」

「レヴィアさん、いきなり限度オーバーですね。」


その後も順調に、冒険には仕えそうにない魔装具が売られていく。
途中欲しい物もあったが、最後まで手を挙げる機会がなかったようだ。





 ~ to be continued



【補足】


・オークション

ウィンター商会が主催する、競売のこと。
とはいっても、ウィンター商会以外の、オークションは存在しない。
オークションには、ウィンター会長のコネで多くの王族や貴族が集まってくる。
高額な入場料の為、下位の貴族や、一般人、冒険者は、会場に入ることもできない。
一般人は、同じ方式で、市場でセリ(簡易競売)をしている。



・ウィンター会長の入場許可証

ウィンター商会の30の店舗、120の施設を無料で出入りできる許可証。
いままで発行の前例がないのだが、特例で発行してもらっている。



・そうだな。レヴィア会長

ウィンターは、他の商会長にも根回しをできる実力がある。もし逆らってしまうと、破産に追い込まれ、その後釜にレヴィアを据えることができるほどの実力があるからだ。レヴィア会長と呼んだのは、ウィンターが商会を立ち上るバックアップをする。という意味でもある。





もちろん、商人協会に5,000枚の金貨を収めて審査をしてもらった後に、承認不可となる場合もある。その場合でも、審査費用は10%しか戻ってこない。
承認さえもらえれば、王国に50,000枚の登録費用を払うことで、商会として、活動することができる。



・騎士団長

王国を守る騎士団の団長。下級騎士の家柄のアルルは、候補に挙がることもない。
それこそ、国を守る役目を果たすとか、騎士として英雄になるとか、そういった手柄をいくつも上げる必要がある。


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