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4章・冒険者の休息
第7泊 思い出の本
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朝からウィンター商会の使いが来て、レヴィアは、宿を出ていく。
その様子を見ていたレイザーが、エイトに話しかける。
「出発は明日か。」
「でも、おかげで出発までにはできそうだよ。」
エイトとレイザーは楽しそうに話している。
そんなやり取りを見ていて、2人が急に仲良くなった感じを受けたアルルが、2人に質問する。
「二人とも、いったいどうしたんですか?」
「いや実は、エイトに魔法を教えてもらっていたんだ。」
そう言って、レイザーは、【めざせ!初級魔法使い】の本を取り出した。
「ああ、それ私も授業でならったんですけど、まったく意味が分からなくって。」
「そうだろうね。この本、間違えて解説してあるから、それで魔法を使える人が少ないんだと思うよ。」
「・・・間違えて解説ですか?」
「そう、間違えて。
そうだ!アルルもよかったら、一緒に出掛けようよ。」
「はい!」
騎士養成所でも魔法の授業があったのだが、魔法が使えるようになる騎士は、数パーセント程度しかいない。
魔法が使えるようになれば、アルルの騎士団長への夢も、1歩前進できると考えたのか、アルルは テンションが上がる。
「じゃあ、舞踏会に出るような、おしゃれな服装で外に集合ね!」
「舞踏会?おしゃれな?」
~20分後~
アルルは、少し胸元の強調された、スマートなドレスを着てくる。
エイト、レイザーは、燕尾服を着てくる。
「燕尾服ですか・・・。結構、がっつり正装なんですね。」
「まあ、こうでもしないと、冒険者は入れてもらえないからね。」
3人は 宿の前に待機していた豪華な馬車に乗り、目的の場所へと移動する。
移動中は、エイトが魔法の講義をしてくれる。
3人が到着したのは、大きな屋敷の前だった。
屋敷の前に降ろされたアルルが、何かに気づき驚いた表情をする。
「こ、このお屋敷は、まさか!?」
「知ってるの?」
「メイガス様のお屋敷ですよね!」
「ああ、そうだよ。ここで魔法を教えると、お金をもらえるんだ。」
「しかも、エイトが講義に使う魔法道具類は、使い放題だからな。」
エイトたちが、豪華な馬車から降り玄関に近づくと、3人の娘が飛び出してきた。
真っ先に駆け寄った長女(10歳)が、エイトの腕にしがみ付きながら、口をとがらせる。
「あー!先生、彼女いないって言ったじゃないですか!」
次に駆け寄ってきた次女(8歳)が姉と反対の腕にしがみ付き、姉に文句を言う。
「ちょっと、先生から、離れてよ!」
最後に遅れてやってきた三女(4歳)が、エイトに質問した。
「先生、この人も魔法を習うの?」
「そうだよ。魔法は、競争環境の中で学んだ方が、早く上達するんだ。みんな一緒に練習しようね。」
三姉妹は、声をそろえて返事をする。
「「「はーい。エイト先生♪」」」
今日が初めての参加になるアルルは、自己紹介をして、お辞儀をする。
「宜しくお願いします。」
アルルの自己紹介に答える三姉妹。
「・・・ドーラよ。」
「次女のマリアです・・・よろしく。」
「はい。三女のラーナです。おねがいします。」
あっけにとられるアルルに、レイザーが小声で話しかける。
「この長女は、こんなもんだから 気にするな。」
3人は屋敷の中に作られた、かなり広めの魔法練習用の広間に通される。
エイトは 5人の前に立ち、いまから行う授業の説明をしていく。
「では、大人と子供で、二人一組になって魔法を練習していこうかな。」
そう言い終わると同時に、エイトの周りに 三姉妹が一斉に並ぶ。
「ちょっと!こういうのは、姉にゆずるのが妹たちってもんでしょ!」
「はあ?ドーラ姉さんは、昨日も独占してたじゃない!」
「わたし、先生に習いたーい。」
エイトを取り合っている三姉妹に、優しく声をかけるアルル。
「あの、誰か私と組もっか。」
「・・・ほら、」
長女は、次女を肘で押す。
「・・・ほら、」
次女は、三女を肘で押す。
「えー。お姉ちゃんたちばっかりずるい!」
三女は泣きそうになる。
エイトは、そんな三女を抱きかかえて、優しく話しかける。
「今日は 先生と一緒に練習しようね。」
「やったー!」
嬉しそうな顔をする、三女ラーナ
悔しそうな顔をする、長女ドーラと次女マリア
その後の話し合いの結果、長女ドーラとアルル。次女マリアとレイザー。三女ラーナとエイトがペアを組むことになった。
それぞれがペアになり別れると、エイトが説明を続ける。
「では最初に、お互い手をつないで、二人の中央に魔法玉を置き、浮かぶように念じてみよう。」
「魔法玉?」
初めてのアルルは、聞き覚えのない単語に困惑している。
その様子を、ペアの長女ドーラは、あきれた顔で説明する。
「魔力に過剰に反応する玉よ。そんなことも知らないの?」
「あ、はい。すいません。」
アルルと長女の魔法玉は、高速で回転しながら、二人の中央に浮かぶ。
それを見ていたエイトがアドバイスをする。
「回転してしまうのは、二人のバランスがあってないからなんだよ。」
「でも、アルル様の魔力が低すぎるみたいで・・・。」
ドーラは、自分の魔力が高いことを自慢したいのか、アルルを見下している。
そんなことに気づかない 鈍感なエイトは、2人の間で高速で回転する魔法玉を制御し回転を止め 回収し、アルルと自分の前に置く。
「この練習は、魔力の放出を抑える練習なんだ。見ててごらん。」
エイトは、長女と変わり アルルと手をつなぎ、アルルの目を見つめる。
顔が赤くなるアルル。
最初はアルルが集中できなかったのか、なかなか魔宝玉は浮かび上がらなかったが、次第に 二人の間の魔法玉は、回転することなく浮かびだす。
「ね。こうやって相手の魔力に協調させることが大事なんだよ。」
そういって長女とアルルの間に魔宝玉を置き、レイザーたちのもとへ向かう。
長女ドーラは、アルルを冷ややかな目で見つめる。
「アルル、なに顔を赤くしてるの。」
「あ、いえ。次は協調できるように、頑張ろうね。」
しかし、エイトと2人でやった時のように、なかなか上手くできない。
「なかなか難しいね。」
「・・・アルルが、先生を誘惑しようと、胸を強調してるのが問題なんじゃないの?」
どうやら、長女ドーラはアルルにライバル心を抱いて協調出来ない様子だ。
~夕暮れ時~
「今日も頑張ったね。今回の授業は、終了。あとは、各自練習しててね。」
終了の時間が来たため、エイトが三姉妹に声をかける。
三姉妹は、声を合わせて返事をする。
「「「はーい、エイト先生♪」」」
アルルは、なんとか一日を耐え切った。
なんとか練習の結果、長女ドーラとの魔法玉も回転せずに浮かべることに成功したし、アルルにとっては、十分な成果を上げることができただろう。
レイザーが、そんなアルルに小声で声をかける。
「アルル、凄いな。私は長女だけは、ダメだったよ。
他の召使いにも、かなり嫌われてるみたいだし、大変だっただろ。」
「いえ、その、なんとなく・・・。」
アルルは、悲しい目をする。
館を出て、馬車に乗ろうとするアルルを 長女ドーラが呼び止める。
「アルル、これを持っていきなさい。」
そういうと、真っ赤に光るルビーの腕輪を差し出した。
ルビーの腕輪は、魔力を放出しているタイプの品で、魔法の原理が分かったアルルには、魔装具であることが一目で分かった。
「これ、魔装具じゃないですか!」
「そう、魔法の力場盾よ。ルビーの部分から、小型の見えない盾を召喚する魔装具よ。」
「いえ、でも・・・。」
「いいのよ。次の冒険で死なれたら、私の練習相手は誰がするのよ!
これは譲渡だけど、私が使う時は、また譲渡してもらうんだから、必ず帰ってきなさいよ!」
そういって、腕輪を突き出す長女ドーラ。
態度では乱暴な印象を受けるが、不平不満を言わず、真剣に自分と向き合ってくれたアルルを心から認めたようだ。
アルルは、そんなドーラの気持ちを察し、ルビーの腕輪を受け取る。
「ええ、ドーラちゃん。また一緒に練習しましょうね。」
3人は、馬車に乗り、宿に帰る。
アルルは、心の中がポカポカと温かかった。
~宿【冒険者の集い】の前~
宿の入り口では、レヴィアが帰りを待っていた。
「ちょっとエイト!
部屋のカギを持っていったら入れないでしょ!」
「ごめんごめん。」
「な、なに、その格好は!?」
3人の着飾った服装に想像を膨らませるレヴィア。
そんなレヴィアは、アルルの手にある【めざせ!初級魔法使い】を見つける。
本を見つめていることに気づいたアルルが説明する。
「エイトさんから、おさがりをもらったんですよ。」
「その服装に、おさがりの本・・・。
私を待たせておいて、楽しそうなイベントに参加してたのか・・・。」
レヴィアは、エイトを睨んでいる。
~ to be continued
【補足】
・めざせ!初級魔法使い
エイトが育った館にも、同じ表紙の本があった。
魔導書ではないので、魔法までは乗っていないが、魔法とは、魔法の考え方、物体を動かしてみよう。といった初歩的な記述が並んでいる。
・魔法を使える人が少ない
魔法を習う場所は、多く存在している。
しかし、魔法を使える人間は、100人に1人といった具合で極端に少ない。
魔法を使える親だと、子も魔法を使えるのは、間違った教育をしていないおかげだと思われる。
・メイガス様のお屋敷
地方領主メイガスの屋敷、この町を収めている君主でもある。
ウィンター商会の会長でも、アポイントなしでは、面会を断られてしまう。
・三姉妹「はーい。エイト先生♪」
エイトが市場で困っていた老人を助けたところ、ちょうど魔法講師が腹痛で、しばらくの期間 休むことになり、魔法を教えてくれる講師を緊急で探していたと聞き、出発までの間だけと快く引き受けた。
エイトの魔法の実力を、君主メイガスの前で披露したところ、君主メイガスが大変気に入り、1日の講師代(金貨3枚)の10倍の金貨30枚に、必要な魔道具まで提供することで特別講師となった。
ちなみに授業に同行していたレイザーいわく、「講師の腹痛の原因は、長女だと思う。」とのこと。
・魔法玉
魔力を感知し、空に浮かび上がる玉。
浮かび上がる効率は悪いが上手く使えば空を飛ぶこともできるかもしれない。
過去の事件だが、魔法玉を鎧に大量に埋め込んだ魔法使いが空に飛びあがっていった後、行方不明になったことから、装備品に使う者はいない。
・楽しそうなイベント
レヴィアは、おさがりの【めざせ!初級魔法使い】と、3人の服装を見て、勘違いしているようだ。
※ 理由は、過去の話を見ていただければ、分かるとおもいます。
その様子を見ていたレイザーが、エイトに話しかける。
「出発は明日か。」
「でも、おかげで出発までにはできそうだよ。」
エイトとレイザーは楽しそうに話している。
そんなやり取りを見ていて、2人が急に仲良くなった感じを受けたアルルが、2人に質問する。
「二人とも、いったいどうしたんですか?」
「いや実は、エイトに魔法を教えてもらっていたんだ。」
そう言って、レイザーは、【めざせ!初級魔法使い】の本を取り出した。
「ああ、それ私も授業でならったんですけど、まったく意味が分からなくって。」
「そうだろうね。この本、間違えて解説してあるから、それで魔法を使える人が少ないんだと思うよ。」
「・・・間違えて解説ですか?」
「そう、間違えて。
そうだ!アルルもよかったら、一緒に出掛けようよ。」
「はい!」
騎士養成所でも魔法の授業があったのだが、魔法が使えるようになる騎士は、数パーセント程度しかいない。
魔法が使えるようになれば、アルルの騎士団長への夢も、1歩前進できると考えたのか、アルルは テンションが上がる。
「じゃあ、舞踏会に出るような、おしゃれな服装で外に集合ね!」
「舞踏会?おしゃれな?」
~20分後~
アルルは、少し胸元の強調された、スマートなドレスを着てくる。
エイト、レイザーは、燕尾服を着てくる。
「燕尾服ですか・・・。結構、がっつり正装なんですね。」
「まあ、こうでもしないと、冒険者は入れてもらえないからね。」
3人は 宿の前に待機していた豪華な馬車に乗り、目的の場所へと移動する。
移動中は、エイトが魔法の講義をしてくれる。
3人が到着したのは、大きな屋敷の前だった。
屋敷の前に降ろされたアルルが、何かに気づき驚いた表情をする。
「こ、このお屋敷は、まさか!?」
「知ってるの?」
「メイガス様のお屋敷ですよね!」
「ああ、そうだよ。ここで魔法を教えると、お金をもらえるんだ。」
「しかも、エイトが講義に使う魔法道具類は、使い放題だからな。」
エイトたちが、豪華な馬車から降り玄関に近づくと、3人の娘が飛び出してきた。
真っ先に駆け寄った長女(10歳)が、エイトの腕にしがみ付きながら、口をとがらせる。
「あー!先生、彼女いないって言ったじゃないですか!」
次に駆け寄ってきた次女(8歳)が姉と反対の腕にしがみ付き、姉に文句を言う。
「ちょっと、先生から、離れてよ!」
最後に遅れてやってきた三女(4歳)が、エイトに質問した。
「先生、この人も魔法を習うの?」
「そうだよ。魔法は、競争環境の中で学んだ方が、早く上達するんだ。みんな一緒に練習しようね。」
三姉妹は、声をそろえて返事をする。
「「「はーい。エイト先生♪」」」
今日が初めての参加になるアルルは、自己紹介をして、お辞儀をする。
「宜しくお願いします。」
アルルの自己紹介に答える三姉妹。
「・・・ドーラよ。」
「次女のマリアです・・・よろしく。」
「はい。三女のラーナです。おねがいします。」
あっけにとられるアルルに、レイザーが小声で話しかける。
「この長女は、こんなもんだから 気にするな。」
3人は屋敷の中に作られた、かなり広めの魔法練習用の広間に通される。
エイトは 5人の前に立ち、いまから行う授業の説明をしていく。
「では、大人と子供で、二人一組になって魔法を練習していこうかな。」
そう言い終わると同時に、エイトの周りに 三姉妹が一斉に並ぶ。
「ちょっと!こういうのは、姉にゆずるのが妹たちってもんでしょ!」
「はあ?ドーラ姉さんは、昨日も独占してたじゃない!」
「わたし、先生に習いたーい。」
エイトを取り合っている三姉妹に、優しく声をかけるアルル。
「あの、誰か私と組もっか。」
「・・・ほら、」
長女は、次女を肘で押す。
「・・・ほら、」
次女は、三女を肘で押す。
「えー。お姉ちゃんたちばっかりずるい!」
三女は泣きそうになる。
エイトは、そんな三女を抱きかかえて、優しく話しかける。
「今日は 先生と一緒に練習しようね。」
「やったー!」
嬉しそうな顔をする、三女ラーナ
悔しそうな顔をする、長女ドーラと次女マリア
その後の話し合いの結果、長女ドーラとアルル。次女マリアとレイザー。三女ラーナとエイトがペアを組むことになった。
それぞれがペアになり別れると、エイトが説明を続ける。
「では最初に、お互い手をつないで、二人の中央に魔法玉を置き、浮かぶように念じてみよう。」
「魔法玉?」
初めてのアルルは、聞き覚えのない単語に困惑している。
その様子を、ペアの長女ドーラは、あきれた顔で説明する。
「魔力に過剰に反応する玉よ。そんなことも知らないの?」
「あ、はい。すいません。」
アルルと長女の魔法玉は、高速で回転しながら、二人の中央に浮かぶ。
それを見ていたエイトがアドバイスをする。
「回転してしまうのは、二人のバランスがあってないからなんだよ。」
「でも、アルル様の魔力が低すぎるみたいで・・・。」
ドーラは、自分の魔力が高いことを自慢したいのか、アルルを見下している。
そんなことに気づかない 鈍感なエイトは、2人の間で高速で回転する魔法玉を制御し回転を止め 回収し、アルルと自分の前に置く。
「この練習は、魔力の放出を抑える練習なんだ。見ててごらん。」
エイトは、長女と変わり アルルと手をつなぎ、アルルの目を見つめる。
顔が赤くなるアルル。
最初はアルルが集中できなかったのか、なかなか魔宝玉は浮かび上がらなかったが、次第に 二人の間の魔法玉は、回転することなく浮かびだす。
「ね。こうやって相手の魔力に協調させることが大事なんだよ。」
そういって長女とアルルの間に魔宝玉を置き、レイザーたちのもとへ向かう。
長女ドーラは、アルルを冷ややかな目で見つめる。
「アルル、なに顔を赤くしてるの。」
「あ、いえ。次は協調できるように、頑張ろうね。」
しかし、エイトと2人でやった時のように、なかなか上手くできない。
「なかなか難しいね。」
「・・・アルルが、先生を誘惑しようと、胸を強調してるのが問題なんじゃないの?」
どうやら、長女ドーラはアルルにライバル心を抱いて協調出来ない様子だ。
~夕暮れ時~
「今日も頑張ったね。今回の授業は、終了。あとは、各自練習しててね。」
終了の時間が来たため、エイトが三姉妹に声をかける。
三姉妹は、声を合わせて返事をする。
「「「はーい、エイト先生♪」」」
アルルは、なんとか一日を耐え切った。
なんとか練習の結果、長女ドーラとの魔法玉も回転せずに浮かべることに成功したし、アルルにとっては、十分な成果を上げることができただろう。
レイザーが、そんなアルルに小声で声をかける。
「アルル、凄いな。私は長女だけは、ダメだったよ。
他の召使いにも、かなり嫌われてるみたいだし、大変だっただろ。」
「いえ、その、なんとなく・・・。」
アルルは、悲しい目をする。
館を出て、馬車に乗ろうとするアルルを 長女ドーラが呼び止める。
「アルル、これを持っていきなさい。」
そういうと、真っ赤に光るルビーの腕輪を差し出した。
ルビーの腕輪は、魔力を放出しているタイプの品で、魔法の原理が分かったアルルには、魔装具であることが一目で分かった。
「これ、魔装具じゃないですか!」
「そう、魔法の力場盾よ。ルビーの部分から、小型の見えない盾を召喚する魔装具よ。」
「いえ、でも・・・。」
「いいのよ。次の冒険で死なれたら、私の練習相手は誰がするのよ!
これは譲渡だけど、私が使う時は、また譲渡してもらうんだから、必ず帰ってきなさいよ!」
そういって、腕輪を突き出す長女ドーラ。
態度では乱暴な印象を受けるが、不平不満を言わず、真剣に自分と向き合ってくれたアルルを心から認めたようだ。
アルルは、そんなドーラの気持ちを察し、ルビーの腕輪を受け取る。
「ええ、ドーラちゃん。また一緒に練習しましょうね。」
3人は、馬車に乗り、宿に帰る。
アルルは、心の中がポカポカと温かかった。
~宿【冒険者の集い】の前~
宿の入り口では、レヴィアが帰りを待っていた。
「ちょっとエイト!
部屋のカギを持っていったら入れないでしょ!」
「ごめんごめん。」
「な、なに、その格好は!?」
3人の着飾った服装に想像を膨らませるレヴィア。
そんなレヴィアは、アルルの手にある【めざせ!初級魔法使い】を見つける。
本を見つめていることに気づいたアルルが説明する。
「エイトさんから、おさがりをもらったんですよ。」
「その服装に、おさがりの本・・・。
私を待たせておいて、楽しそうなイベントに参加してたのか・・・。」
レヴィアは、エイトを睨んでいる。
~ to be continued
【補足】
・めざせ!初級魔法使い
エイトが育った館にも、同じ表紙の本があった。
魔導書ではないので、魔法までは乗っていないが、魔法とは、魔法の考え方、物体を動かしてみよう。といった初歩的な記述が並んでいる。
・魔法を使える人が少ない
魔法を習う場所は、多く存在している。
しかし、魔法を使える人間は、100人に1人といった具合で極端に少ない。
魔法を使える親だと、子も魔法を使えるのは、間違った教育をしていないおかげだと思われる。
・メイガス様のお屋敷
地方領主メイガスの屋敷、この町を収めている君主でもある。
ウィンター商会の会長でも、アポイントなしでは、面会を断られてしまう。
・三姉妹「はーい。エイト先生♪」
エイトが市場で困っていた老人を助けたところ、ちょうど魔法講師が腹痛で、しばらくの期間 休むことになり、魔法を教えてくれる講師を緊急で探していたと聞き、出発までの間だけと快く引き受けた。
エイトの魔法の実力を、君主メイガスの前で披露したところ、君主メイガスが大変気に入り、1日の講師代(金貨3枚)の10倍の金貨30枚に、必要な魔道具まで提供することで特別講師となった。
ちなみに授業に同行していたレイザーいわく、「講師の腹痛の原因は、長女だと思う。」とのこと。
・魔法玉
魔力を感知し、空に浮かび上がる玉。
浮かび上がる効率は悪いが上手く使えば空を飛ぶこともできるかもしれない。
過去の事件だが、魔法玉を鎧に大量に埋め込んだ魔法使いが空に飛びあがっていった後、行方不明になったことから、装備品に使う者はいない。
・楽しそうなイベント
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※ 理由は、過去の話を見ていただければ、分かるとおもいます。
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