目指せ地獄の門 ~改訂版~

黒山羊

文字の大きさ
41 / 89
4章・冒険者の休息

第8泊 秘密の能力

しおりを挟む
~宿【冒険者の集い】~

レヴィア達のパーティも、いよいよ冒険を再開するようだ。
次の目標は20階層になる。
レヴィア達は、ウィンター商会の調査団の進み具合などから、20階層まで1か月程かかるであろうと想定している。

気力も準備も万端のレヴィアが、パーティに声をかける。
レヴィアの装備は 動きやすいようになのだろうか、武器は持たず、可愛らしい普段着に四次元ポシェットを装備し、背中にはいつも背負っている大きな書物、ベルトには栓をしてある水差しといった、冒険者に見えないスタイルだ。
武器の魔装具のハンマーは、上着の右ポケットにしまってあるようだ。

「もう準備はできたかな?」


「大丈夫だよ。食料は、2か月分も入れてあるからね。」

そう答えるエイトの装備も、深い迷宮に入るような装備に見えない。
エイトも普段着を着用し、心臓だけを守るような軽装の胸当てに、革のブーツ。左腕には棍棒に変化する、魔装具のブレスレットを装備している。
見た目に分かる武器は、腰から下げた 魔装具でもある刀だけである。


「金貨も銀行に預けたよ!」

ミザリも元気いっぱいにレヴィアの腕にしがみ付くように近寄り答える。
ミザリの装備は、レヴィア達と同じく普段着の上から、革製のポケットがついた前掛けと、厚手の革のマントを羽織っている。マントの下には、わずかな食料やポーションがはいった小さめのバックパックを装備している。
ミザリも武器は持たず、手にランタンを所持しているだけだ。


「はい!装備も万全です!」

アルルも一通り装備の再確認を終え、そう答えた。
アルルの装備は、軽装の革鎧に、革のブーツに、腕には革のガントレット、更に左腕には魔装具であるルビーの腕輪も装備している。アルルの防具は、重くなりすぎない程度に鉄で補強が施してあるので、軽装だが防御力もあり、パーティの中では一番 冒険者らしい装備だろう。
武器は、柄の部分に革の袋を被せた片手剣だけだが、刃は手入れが行き届いており、薄い石板程度であれば、貫いてしまう業物である。


「体調も良好!」

レイザーもパーティの顔色を確認し、そう答える。
レイザーの装備は、鉄の胸当てに、警備隊長をしていた頃の 鎖が織り込まれた上着を羽織っている。
背中にはバックパックを背負い、数日分の食料を所持している。
武器は腰に下げた、彫刻の美しい2本の細剣である。

パーティの様子を最終確認し、レヴィアが号令をかける。

「よし!では、迷宮に向かうとしよう!」












~転送の魔法陣付近~

転送の魔法陣の前に人だかりができている。
その様子に先頭を歩いていて、早くに気づいたレヴィアがパーティに声をかける。

「なにか事件でも起きたのかな?」

「あっ!今日は、ウィンター商会の偵察部隊の出発日だよ!」

何かを思い出したように、ミザリがレヴィアに声をかけた。
ミザリの回答にアルルが質問する。

「偵察部隊って?」

「うん。ウィンター商会の部隊の本体は、20人の精鋭部隊なんだけど、50人の偵察部隊が先に入って、進めるところまで食料を運び込むんだよ。」

「すごい人数で冒険するんですね。」

「ああ、それなら冒険中も楽しいだろうね。」


ミザリの説明を受けながら、魔法陣に近づくレヴィア達。
レヴィア達を遠くから見つけ、ウィンター会長が寄ってくる。

「おお、レヴィア、さっそく20階層を目指すんだね!」

「ああ、さっさと戻ってきて商品を納品するから待っててよ。」

「凄い自信だね。しかし、まだ人が揃ってないようだけど・・・。」

「いや。これで全部だよ。」

ウィンター会長は、レヴィア達の人数の少なさに困惑した表情を見せる。
ウィンター会長を護衛していた女戦士と女魔法使いが、口を挟んできた。

女戦士は 赤髪のショートヘアのムキムキ女性で、ビキニアーマーを装着しており大きな胸が刺激的だ。
武器は、腰に下げている2丁の片手斧だろう。
女魔法使いは、対照的な、淡い青髪のセミロングの細身の美女で、髪と帽子で特徴的な耳を隠しているが、透き通るような白い肌、言葉のアクセントの違い、どうやらハイエルフのようである。

レヴィア達を品定めするようにみるなり、女戦士が口を開く。

「君たち、そんな貧相な装備に、頼りないメンバー、20階に行くのは無理だ。あきらめた方がいいよ。」

「アレンの言う通りよ。悪いことは言わないから、ちゃんと冒険者を募集して行きなさい。」

女魔法使いも、女戦士に便乗し忠告する。
その忠告に、少し不安になるアルル。

「レヴィアさん、どうします?」

レヴィアは 声をかけてきたアルルを見るが、アルルには笑顔を見せ、すぐにウィンター会長の方を向きなおし、ウィンター会長に質問する。

「会長。この二人は?」

「うちの専属部隊の隊長と副隊長だよ。」

「なるほど・・・。」

レヴィアは、エイトを見る。
エイトは、前に進み出てレヴィアに話しかける。

「ああ、この二人が言うなら、並みの冒険者は目指さない方がいいかもね。」

レヴィアは エイトの言葉を聞き、安心したように軽く頷く。
忠告を無視されたことに腹を立てたのだろうか、表情には出さなかったが、女魔法使いは エイトの肩に手を置き、囁くように再度忠告する。

「強がってもダ・・・。」

忠告の途中で話すことを辞め、女魔法使いは エイトの目を見つめる。
女魔法使いの、いつもと違う様子に、アレンと呼ばれた女戦士が声をかける。

「ん?リリアス、どうした?」

「あ、あの、いえ、なんでもないです・・・。」

顔を真っ赤にしてリリアスは、エイトの肩から手を離す。
慌てた表情で、アルルは エイトとリリアスの間に割り込み、毅然とした態度で女魔法使いのリリアスに答える。

「心配していただき、ありがとうございます。でも、私たちも進む理由がありますから。」

「ええ、そうですよね。私たちが心配することではなかったですね。」

「・・・どうしたんだ、いったい?」

忠告を取り下げ、納得するリリアスと、不思議そうな顔のアレン。
レヴィア達パーティは、ウィンター会長の好意で、先に転送魔法陣を使わせてもらう。
パーティが移動した後、ウィンター商会の残りの偵察部隊も移動を開始し始める。

その様子を見つめながら、ウィンター会長が リリアスに声をかけた。

「リリアス、あの少年は何か特別な力でもあるのか?」

「ええ、私たちが束になっても、彼に触ることもできないほど、強力な戦士ですよ。」

リリアスの言葉に、アレンも反応する。

「小さかったし、そうは見えなかったけどな・・・。」

リリアスの言葉を聞き、ウィンター会長は、満面の笑みを浮かべていた。













~迷宮10階層~

レヴィア達パーティが10階層にたどり着くと、先の階段付近でパーティ同士が、もめているようだ。
そのパーティに近づくと、目がいいレヴィアが一番に気付いた。

「あれは、マーチャンだったかな?」

「レヴィア姉、おもらしナイトだよ。」

レイザーは、絡まれているパーティを助けるように、覚えたばかりの魔法を詠唱して威嚇する。

炎の矢ファイアーアロー(LV1)」

レイザーの詠唱した魔法で、マートンたちは エイトに気づき、迷宮の奥へと逃げるように去っていった。
絡まれていたパーティは、女性2人だけのパーティだったようだ。
女性たちは、リーダーらしい身なりのアルルに声をかけてきた。

「助けてくれてありがとうございます。」

「あの、いったいどうしたんですか?」

「はい。実は 町でパーティ募集の張り紙を見て、さっきのパーティと合同で先に進むことになったんですけど、迷宮に入ったとたん 襲われそうになったんです。」

「・・・。」

アルルは 暗い表情になり、言葉を失う。
そんなアルルに代わり、ミザリが代わって話をする。

「2人とも、大丈夫だった?」

「ええ、助けてくれてありがとうございます。
 あの3人組の事は、町に戻って警備隊に届け出ようと思います。」

女冒険者たちは、転送の水晶で迷宮から脱出する。
暗く落ち込むアルル。同じ騎士見習いが起こした事件だからだろうか、それとも、過去の恐怖を思い出してだろうか、明らかに動揺している。

「あの、わたし・・。」

そんなアルルに、エイトが声をかける。

「大丈夫。僕が守るよ。アルルが嫌じゃなければだけどね。」

アルルは耳を赤くして、笑顔で頷いている。


「エイトは、強いけど変態だからな。
 そうだ!レヴィア姉さん、エイトのスキルも占ってもらおうよ。変なスキルのオンパレードかもよ。」

「そうだね、変態博士とかのスキルが発動してるかも!」

レヴィアとミザリは、大笑いしている。
そんなレヴィアに、冷静に声をかけるエイト。

「レヴィアは、知ってるでしょ。僕のスキル。」


「・・・。 」


レヴィアが何かを思い出し、冷めた表情になる。

「ああ、誰かさんと対照的で、有意義なスキルのオンパレードだった気がする。」





 ~ to be continued



【第8泊】


・偵察部隊

通常は、本体(輸送部隊)が 迷宮に入る前に先行して進み、安全を確保する部隊。
もちろん 偵察だけでなく、戦闘も第一線で行う。
ウィンター商会の場合は 他の冒険者達とは少し違う。ウィンター商会の偵察部隊は 先に先行で迷宮に入り、進めるところまで進み陣地を築く。その陣地に食料などを搬送しながら、本体の到着を待ち、到着後、本体に同行し先を目指し、そこでも陣地を築く。要は 工作部隊も兼ねているのだ。
陣地を築き、食料を搬入していくには、多くの資金と人材が必要になる。
それが集まるウィンター商会ならではの 戦術でもある。



・冒険者を募集

先を目指す場合、いくつかのパーティで連合パーティを組み人数を多くして冒険に向かうこともある。もちろん、採取目的だったり、先を目指さない場合は、連合パーティを組むことは、あまりないが、逆に、迷宮内で意見が合えば 連合パーティを組んだりする場合もある。
基本的に、冒険者を募集するのは、宿での募集が多い。





おまけ(現ステータス)
エイト=アテラティッツ=タイタン

レア装備:愛情一本(カタナ)
     ・魔装具ランク☆
    :偉大なる父の愛(棍棒)
     ・魔装具ランク☆☆☆☆

得意武器:棍棒・槍・カタナ

通常技能:超高位魔法使用
    :超高位魔法解除
    :高位変身術
特殊技能:呪い耐性 100%
    :猛毒察知
    :危険察知
    :裏調合神
    :



レヴィア(レヴィアタン)

レア装備:タンタンハンマー
     ・魔装具ランク☆☆☆☆☆☆

得意武器:素手・ハンマー

通常技能:全状態異常耐性 1000%
特殊技能:錬金術
    :命名士
    :変質者
    :恋する乙女
    :



アルメディシア=ハンニバル

レア装備:魔法の力場盾フォースシールド
     ・魔装具ランク☆☆☆

得意武器:片手剣、片手盾

通常技能:女神の美貌(誘惑成功率UP)
特殊技能:不屈の精神
    :
    :
    :
    :



レイザー=フォックス

レア装備:
得意武器:細剣(2刀流)
 「愛しのエリー・愛しのマリー」

通常技能:下位魔法使用(LV1~3)
    :捕縛術
特殊技能:傍観者
    :交渉術
    :恋する乙女
    :
    :



ミザリィ=ローレンス=ゼタ=ハロルド

レア装備:
得意武器:そろばん

通常技能:下位魔法使用(LV1~3)
    :証書作成
    :査定眼
特殊技能:特殊開錠
    :鑑定眼
    :大幸運
    :
    :

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~

ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。 休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。 啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。 異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。 これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

サラリーマン、少女になる。

あさき のぞみ
ファンタジー
目が覚めたら、俺は見知らぬ10歳の少女になっていた。 頼れるのは、唯一の理解者であるはずの同僚「まい」だけ。彼女はなぜか僕を**「娘」として扱い始め、僕の失われた体を巡る24時間の戦い**が幕を開ける。 手がかりは、謎の製薬会社と、10年前の空白の記憶。 時間がない。焦るほどに、この幼い体が僕の理性と尊厳を蝕んでいく。そして、僕は知る。最も近くで微笑んでいた人物こそが、この絶望的な運命の**「設計者」**であったことを。 あなたは、その愛から逃れられますか?

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

処理中です...