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5章・英雄の誕生
洞窟15階 最適な隊列
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パーティたちは、襲ってきたイノシシ程の大きさがあるウサギを撃退した。
レヴィアが、魔物の死骸を観察しながら言う。
「この付近の魔物は、氷耐性が凄いね。」
ランタンを持ったまま、下を向くアルル。
レイザーも悪気はないのだろうが、連戦で疲れてきたのだろうか、思ったことを言ってしまう。
「ああ、人手が減るとやっかいだな。何かいい案があればいいんだけれど。」
「・・・。」
「僕とレイザーが魔法主体の陣形に組み替えるのはどうかな?」
「・・・。」
アルルの持っているランタンが、かなり低い位置まで下がってきている。
そんなアルルを心配するエイト。
「あの、アルル、大丈夫?」
「あ、はい。」
アルルは、気を取り直し、ランタンを高く掲げる。
レヴィアもアルルの様子を気にしたのだろうか、アルルに声をかける。
「アルル、気にすることはない。私のミスなんだから。」
「・・・レヴィア姉さんは、凄いよね。ブレないっていうか。」
ミザリは、レヴィアの態度に感心しているようだ。
とは言っても、攻撃力を欠いた状態のまま 戦闘を繰り返す事も、パーティにとってメリットはない。
レヴィアの案で、パーティは 隊列を見直すこととなった。
最近は、隊列通りに進むことができるようになっていたので、意味がある会議になるだろう。
そのように、エイトは思っていた・・・。
いつものように、レヴィアが仕切って話し始める。
「では、隊列の案を出していこうか。まずリーダーから。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
沈黙が続くので、アルルが意を決して質問しようと手を挙げる。
「あの、」
「よし、リーダーアルル!」
「え?」
「隊列を組むとなると、リーダーが必要だと思う。
そこで、率先して声を上げたアルルがリーダーになった。ちょうど騎士団長を目指して勉強していた人物だし、問題ないと思う。
・・・ちなみに、辞退は許可しない。」
レヴィア理論に、妙に納得するメンバーたち。
無事に沈黙が終わり、安心したように、エイトとミザリが話し始めた。
「そういう沈黙だったんだ。」
「よかった、つっこまなくて。」
アルルは、緊張した表情で立ち上がり声をあげる。
「はい。そうですね。まったく考えてないわけでは ないんですけど・・・。」
「私は 恋の私情を挟まなければ、大筋賛成するから。アルルが気楽に隊列を決めてよ。」
アルルは レヴィアを睨む。
いちいち言うが、アルルの睨む姿も可愛い。
「はい、私の考える隊列は、
前衛に、レヴィアさんと、レイザーさん。
中衛に、ミザリちゃん。
後衛は、私とエイトさん
この陣形で行こうと思ってます。」
戦闘力の一番高いであろうエイトと三番目に高いアルルが後衛に行くことに疑問を覚えるミザリ。
もちろん、別の感情もあるかもしれないが・・・。
そのことで、ミザリが質問をする。
「エイトを後衛に据えるの?」
「はい。この付近は 明るく前方の敵を発見するのは 容易です。そのため余裕を持って魔法の詠唱ができたり、戦うことができます。
しかし、隠れた敵や、追いかけるように襲ってくる後方からのバックアタックは、あたりまえですが、注意していないと、気づきにくいのです。
そこで、エイトさんの魔装具(隠密の指輪)を使い、私が手を引きながら誘導し、エイトさんには、後方の注意を任せて、バックアタックを警戒していく戦法です。」
アルルの意見に、レヴィアもレイザーも賛成のようだ。
「たしかに、最近、バックアタックが増えてる気がするね。」
「この前も、追いかけるように走ってきた、雪の巨人がいたからな。」
レヴィアは、ニヤつく。
「しかし・・・。」
「どうしました?」
「アルルとエイトで後方だと、何をやってるのか、ちょっと・・・。」
レヴィアは、楽しそうにアルルを からかうように、意見を言う。
「うん。そうだよね。隠密の指輪を使えば、僕たちが直視しないと声も聞こえないようだったし、もし、注意力散漫になるようなことをしてる最中に、襲われたら。」
ミザリもレヴィアの意見に便乗する。
「そ、そんなことしません。」
「いや、私は アルルを信用しているんだけど、アルルが動揺しているからね。」
レヴィアの一言に、アルルが頑張って否定する。
「ど、・・・動揺とか、してにゃいです!」
ミザリも さすがにアルルに突っ込みを入れる。
「いやいや。アルル、かなり怪しいよ。してにゃいって。」
顔を真っ赤にして恥ずかしがるアルル。
それを庇うようにエイトがフォローを入れる。
「ほら、もういいじゃん。バックアタックに警戒のアルルの作戦で。」
そんなエイトのフォローを無視するように、レヴィアが意見する。
「いや、これは重要な問題だよ!」
「うん。レヴィア姉さんの言う通りだね!」
「だってほら、ミザリもエイトの事、好きなのにね!」
「そう、レヴィア姉さんの・・・。」
・・・。
「ちょ、ちょっと、レヴィア姉さん、バ、バカな冗談はよしてよ。」
「ミザリちゃんだって、動揺してて怪しいですよ。」
アルルは、動揺するミザリに突っ込みを入れる。
レヴィアは、楽しそうにミザリに質問する。
「ごめん、ミザリ。内緒の話だった?」
「いや、その言い方だと誤解されちゃうじゃん。僕は全然そんなこと言ったことないからね。」
アルルが何か思い出したように、ミザリに言う。
「ミザリちゃん、そういえば、このまえ抱き着いた後、キスしようとしてませんでした?」
頬を赤く染めながら、ミザリも反論する。
「レヴィア姉さんだって、町に帰ると、当たり前のようにエイトの部屋で寝泊まりしてるでしょ!」
「いや、私の場合は、姉弟のような関係だから。アルルこそ、エイトと手をつないでるとき、恋する乙女の目をしてるぞ。」
ガールズパーティは、盛り上がっている。
そんな中、武器を構えるエイトとレイザー。
「あの、お取込み中、申し訳ないんだけど、向こうから、雪の巨人の群れが走ってくるんだけど・・・。」
「エイト、二人で警戒しながら進む作戦がいいな。」
「うん。結局、隊列は適当で収まりそうだね。」
~ to be continued
【補足】
・魔法主体の陣形
魔法使いを後衛に据え、前衛の戦士が肉壁となり、魔法使いを守る陣形。
前衛の肉壁役は基本的に防御に徹して、後衛の魔法使いに戦闘を任せる。
・雪の巨人
体長2m程の雪猿で、3~5匹の群れで生活をしているようで、集団で攻撃をしかけてくる。
・注意力散漫になるようなこと
イチャイチャ。
・(レヴィア)内緒の話だった?
ミザリは、そういった話をしていなさそうだ。レヴィアの冗談だと思われる。
レヴィアが、魔物の死骸を観察しながら言う。
「この付近の魔物は、氷耐性が凄いね。」
ランタンを持ったまま、下を向くアルル。
レイザーも悪気はないのだろうが、連戦で疲れてきたのだろうか、思ったことを言ってしまう。
「ああ、人手が減るとやっかいだな。何かいい案があればいいんだけれど。」
「・・・。」
「僕とレイザーが魔法主体の陣形に組み替えるのはどうかな?」
「・・・。」
アルルの持っているランタンが、かなり低い位置まで下がってきている。
そんなアルルを心配するエイト。
「あの、アルル、大丈夫?」
「あ、はい。」
アルルは、気を取り直し、ランタンを高く掲げる。
レヴィアもアルルの様子を気にしたのだろうか、アルルに声をかける。
「アルル、気にすることはない。私のミスなんだから。」
「・・・レヴィア姉さんは、凄いよね。ブレないっていうか。」
ミザリは、レヴィアの態度に感心しているようだ。
とは言っても、攻撃力を欠いた状態のまま 戦闘を繰り返す事も、パーティにとってメリットはない。
レヴィアの案で、パーティは 隊列を見直すこととなった。
最近は、隊列通りに進むことができるようになっていたので、意味がある会議になるだろう。
そのように、エイトは思っていた・・・。
いつものように、レヴィアが仕切って話し始める。
「では、隊列の案を出していこうか。まずリーダーから。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」
沈黙が続くので、アルルが意を決して質問しようと手を挙げる。
「あの、」
「よし、リーダーアルル!」
「え?」
「隊列を組むとなると、リーダーが必要だと思う。
そこで、率先して声を上げたアルルがリーダーになった。ちょうど騎士団長を目指して勉強していた人物だし、問題ないと思う。
・・・ちなみに、辞退は許可しない。」
レヴィア理論に、妙に納得するメンバーたち。
無事に沈黙が終わり、安心したように、エイトとミザリが話し始めた。
「そういう沈黙だったんだ。」
「よかった、つっこまなくて。」
アルルは、緊張した表情で立ち上がり声をあげる。
「はい。そうですね。まったく考えてないわけでは ないんですけど・・・。」
「私は 恋の私情を挟まなければ、大筋賛成するから。アルルが気楽に隊列を決めてよ。」
アルルは レヴィアを睨む。
いちいち言うが、アルルの睨む姿も可愛い。
「はい、私の考える隊列は、
前衛に、レヴィアさんと、レイザーさん。
中衛に、ミザリちゃん。
後衛は、私とエイトさん
この陣形で行こうと思ってます。」
戦闘力の一番高いであろうエイトと三番目に高いアルルが後衛に行くことに疑問を覚えるミザリ。
もちろん、別の感情もあるかもしれないが・・・。
そのことで、ミザリが質問をする。
「エイトを後衛に据えるの?」
「はい。この付近は 明るく前方の敵を発見するのは 容易です。そのため余裕を持って魔法の詠唱ができたり、戦うことができます。
しかし、隠れた敵や、追いかけるように襲ってくる後方からのバックアタックは、あたりまえですが、注意していないと、気づきにくいのです。
そこで、エイトさんの魔装具(隠密の指輪)を使い、私が手を引きながら誘導し、エイトさんには、後方の注意を任せて、バックアタックを警戒していく戦法です。」
アルルの意見に、レヴィアもレイザーも賛成のようだ。
「たしかに、最近、バックアタックが増えてる気がするね。」
「この前も、追いかけるように走ってきた、雪の巨人がいたからな。」
レヴィアは、ニヤつく。
「しかし・・・。」
「どうしました?」
「アルルとエイトで後方だと、何をやってるのか、ちょっと・・・。」
レヴィアは、楽しそうにアルルを からかうように、意見を言う。
「うん。そうだよね。隠密の指輪を使えば、僕たちが直視しないと声も聞こえないようだったし、もし、注意力散漫になるようなことをしてる最中に、襲われたら。」
ミザリもレヴィアの意見に便乗する。
「そ、そんなことしません。」
「いや、私は アルルを信用しているんだけど、アルルが動揺しているからね。」
レヴィアの一言に、アルルが頑張って否定する。
「ど、・・・動揺とか、してにゃいです!」
ミザリも さすがにアルルに突っ込みを入れる。
「いやいや。アルル、かなり怪しいよ。してにゃいって。」
顔を真っ赤にして恥ずかしがるアルル。
それを庇うようにエイトがフォローを入れる。
「ほら、もういいじゃん。バックアタックに警戒のアルルの作戦で。」
そんなエイトのフォローを無視するように、レヴィアが意見する。
「いや、これは重要な問題だよ!」
「うん。レヴィア姉さんの言う通りだね!」
「だってほら、ミザリもエイトの事、好きなのにね!」
「そう、レヴィア姉さんの・・・。」
・・・。
「ちょ、ちょっと、レヴィア姉さん、バ、バカな冗談はよしてよ。」
「ミザリちゃんだって、動揺してて怪しいですよ。」
アルルは、動揺するミザリに突っ込みを入れる。
レヴィアは、楽しそうにミザリに質問する。
「ごめん、ミザリ。内緒の話だった?」
「いや、その言い方だと誤解されちゃうじゃん。僕は全然そんなこと言ったことないからね。」
アルルが何か思い出したように、ミザリに言う。
「ミザリちゃん、そういえば、このまえ抱き着いた後、キスしようとしてませんでした?」
頬を赤く染めながら、ミザリも反論する。
「レヴィア姉さんだって、町に帰ると、当たり前のようにエイトの部屋で寝泊まりしてるでしょ!」
「いや、私の場合は、姉弟のような関係だから。アルルこそ、エイトと手をつないでるとき、恋する乙女の目をしてるぞ。」
ガールズパーティは、盛り上がっている。
そんな中、武器を構えるエイトとレイザー。
「あの、お取込み中、申し訳ないんだけど、向こうから、雪の巨人の群れが走ってくるんだけど・・・。」
「エイト、二人で警戒しながら進む作戦がいいな。」
「うん。結局、隊列は適当で収まりそうだね。」
~ to be continued
【補足】
・魔法主体の陣形
魔法使いを後衛に据え、前衛の戦士が肉壁となり、魔法使いを守る陣形。
前衛の肉壁役は基本的に防御に徹して、後衛の魔法使いに戦闘を任せる。
・雪の巨人
体長2m程の雪猿で、3~5匹の群れで生活をしているようで、集団で攻撃をしかけてくる。
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イチャイチャ。
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