目指せ地獄の門 ~改訂版~

黒山羊

文字の大きさ
48 / 89
5章・英雄の誕生

洞窟16階 宝箱の中身

しおりを挟む
エイトが、見慣れない豪華な箱の前に座って、何かをしている。
パーティが進む道の真ん中に、豪華な宝箱が放置してあったようだ。

「まだかな?」

「レヴィアさん、ダメですよ。集中してるのに。」

「ああ、この後は僕の番なんだね。緊張するね。」

どうやら、パーティが発見した宝箱には、高度な魔法の結界が張ってあるようで、触れる者の命を奪うようにできている。
そのため、ウィンター商会のパーティも、あきらめたのだろう。

「レヴィア、あと10分は待ってほしい。」

「そんなに!?
 かなり高度な魔法なの?」

「ああ、久しぶりに高難易度の解除だよ。」

レヴィアとエイトのやり取りを見ていたミザリが、アルルに話しかける。

「そんなに難易度が高い魔法なのかな?」

「まあ、道の真ん中にあるのに ウィンター商会が手を付けてないから、相当な魔法なんでしょうけどね。」








~20分後~

「解けた。」

「もう触ってもいいのかな?」

「箱に触れる分には、問題ないよ。でもまだ魔法を解除しただけだから注意してね。
 ここからは、ミザリに罠を解除して開けてもらわないと。」


「・・・また待つのか。」

「レヴィア姉さん、なるべく早く終わらせるから、待っててね。」











~30分後~

「ミザリ、まだ?」

「うん。いまカギを開けて、1つ目の罠を外したところだよ。あと2つは罠があるみたいだね。」








~20分後~

「ふー。たぶん大丈夫だと思うけど。」

「たぶん?」

「そうとう入念に罠が掛けられてますね。」

レヴィアは、エイトに目で合図を送る。
エイトは、宝箱に手をかけてみる。

「ああ、これで大丈夫そうだ。危険を感じないよ。」

パーティは、楽しみにしていた宝箱を開ける。
宝箱の中には、刃渡り50cm程の古代の剣、水差し、それに、羊用紙の巻物が入っていた。
エイトが、それぞれの品を手に取ってみる。

「どれも危険はないみたいだね。」

ミザリは、エイトから受け取り、鑑定する。

「古代の剣と水差しは、同じ時期に入れられた古代の宝みたいだね。
羊用紙の巻物は、文字は古代神言文字だけど、最近、書かれたものみたいだよ。」

レヴィアは、巻物を見て、エイトに渡し小声で言う。

主父あるじ様の筆跡だ。」

「ああ、確認してみよう。」

エイトは、巻物を開く。
すると、アルル、ミザリ、レイザーの動きが止まる。

「エイト、何か大変な事件が起きてるんじゃないの?」


「・・・。」


レヴィアも横から除くように内容を確認する。
巻物の内容は、主父あるじ様の館で起きた事件のことや、貢物で食べた美味しい物の紹介など、とくに注意して読むようなものではなかったようだ。
二人が内容を確認し終わると、羊用紙の巻物は、燃え上がり灰になった。
その後、アルル、ミザリ、レイザーも動き出す。

「あれ?さっきの巻物は?」

エイトの手の中にあったはずの巻物が消えていて、不思議そうな顔をするミザリ。
それを笑いながら説明するエイト。

「あれは、僕たちへの手紙だったよ。先生の堕天の事くらいしか書いてなかったかな。」

「先制の打点ですか?」

アルルも不思議そうな顔をする。
レヴィアも、当たり障りのない範囲で内容を説明した。

「ああ、知り合いのルシファーが、階段から落ちたんだってさ。」

「階段から落ちたことを書いて、豪華な宝箱にいれるなんて、魔法の才能の無駄遣いだね。」

ミザリが呆れたような表情を見せる。
アルルも笑いながらエイトに言う。

「エイトさんの先生は、やることが豪快ですね。」

「そうだね。でも、なぜ落ちたのか気になるところだけどね。」

「薬の失敗なんじゃない?」

レヴィアの一言に、言った本人のレヴィアとエイトは、声を殺して笑っている。
しばらく笑った後、レヴィアが魔装具の処理について質問してきた。

「ところで魔装具は どうする?」

「そうだね。四次元ポシェットに入れることもできないから、持っていくしかないよね。」

「じゃあ、僕が持つよ。」

魔法による補助以外で、戦闘に参加することがなくなったミザリが、率先して手を挙げる。

「でも、呪われてるかも知れませんよ。」

「装備しなければ問題ないんでしょ。」

レヴィアが何かに気づき、エイトを見る。
エイトも、レヴィアの視線に気づく。

「絶対にイヤだからね。」

「でも魔装具は、装備すれば使い方が頭の中に入ってくるんでしょ。
 それなら、装備してみた方が早いんじゃないかな。」

そんな、レヴィアとエイトのやり取りをみていたレイザーが、2人を止める。

「やめておけ!呪いの効果は死んでも解放されないこともあるらしいぞ!」

「そうですよ。きちんと鑑定してもらってからじゃないと、危険ですよ!」

アルルもレイザーの意見に同意しているようだ。
しかし、レヴィアはブレない。

「呪いならね。」

「でも、呪いがかかる瞬間は、激痛が走るんだよ。」

レヴィアは、フルポーションを取り出す。

「分かった。じゃあ 今日は1個だけね。」

エイトは納得するが、ミザリが心配して止めに入る。

「ダメだよ、危ないから!」

「大丈夫。呪いはかからないから。」

そう言うと、エイトは古代の剣を鑑定した
結局、呪いはなく、エイトは 鑑定を終わらせた。




【英雄の軍剣】

・装備者は、魔法を使えなくなる代わりに、魔力を力に変換することができる。
・変換率がわるく、身体強化の魔法が使えるのであれば、そちらが効率がよい。
・そのかわり、装備車の肉体の成長の度合いは、向上する。



【魔法の水差し】

・傾けると、聖水が出続ける水差し。
・水差しの中身が空になることはない。


レヴィアが、魔法の水差しの性能に好感を示す。

「魔法の水差しは使えそうだね。飲み水として。」

「聖水だって飲めるんだから、飲み水の心配がなくなるな。」

「かなり有能な性能だよね。この水差しは!」

レイザーやミザリも、レヴィアの意見に激しく同意している。
もちろん、飲み水としてだが・・・。
アルルは、英雄の軍剣について考えているようだ。

「英雄の軍剣は、誰に渡しましょうか?エイトさんが装備すると、デメリットでしかないですよね。」

メンバーは、アルルを見る。

「ええ、そうなると思ってました。氷の片手剣アイスソードも魔法も使えないままですから。」

「これで鍛えれば、アレン隊長を目指せるな。」
※ ウィンター商会に所属する赤髪ショートヘアのムキムキ女戦士

レヴィアが ニコニコしながら、アルルに英雄の軍剣を手渡す。

「あはは、ちょっと使えないかも・・・。」

アルルの目は、まったく笑っていなかった。





 ~ to be continued



【補足】


・(エイト)これで大丈夫そうだ

エイトのスキル、危険察知で判断している。



・羊用紙の巻物

羊の皮で作られた巻物。



主父あるじ様の館で起きた事件

ルシファーの堕天。落ちたのは、ルシファーだった。
理由までは乗っていなかったが、大天使の堕天だとすれば、大変な事件で、何か大失態を犯したのだろう。
先制の打点は、アルルの勘違いで、物語と関係ない。



・エイトに呪い

呪いの耐性があるので、呪いにかかることはない。
超高位防御魔法を収め、毎日、無意識の内に 呪いに耐える修行を続けたからこその技能。



・聖水

オシッコではない。
聖水をかけると、一時的に魔法に対する防御力が上がる。もちろん飲み水としても使えるが、200mlで、金貨1枚の価値なので、正直もったいない。
・・・マニアからすれば、美女のオシッコと同額。聖水の由来かもしれない。



・(アルル)ちょっと使えないかも

ムキムキになるのに、抵抗があるようだ。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~

ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。 休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。 啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。 異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。 これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

サラリーマン、少女になる。

あさき のぞみ
ファンタジー
目が覚めたら、俺は見知らぬ10歳の少女になっていた。 頼れるのは、唯一の理解者であるはずの同僚「まい」だけ。彼女はなぜか僕を**「娘」として扱い始め、僕の失われた体を巡る24時間の戦い**が幕を開ける。 手がかりは、謎の製薬会社と、10年前の空白の記憶。 時間がない。焦るほどに、この幼い体が僕の理性と尊厳を蝕んでいく。そして、僕は知る。最も近くで微笑んでいた人物こそが、この絶望的な運命の**「設計者」**であったことを。 あなたは、その愛から逃れられますか?

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

処理中です...