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5章・英雄の誕生
洞窟18階 忘れた言霊
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ワンワン!
迷宮を進むと、犬の鳴き声がする。
この階層では、狼型の魔物が集団で襲ってくるので、しっかりと対処していかなければ、ミザリがやられてしまう。
パーティは、犬の鳴き声に警戒しながら先を急ぐことにした。
ワンワン!
ワンワン!
アルルは、犬の鳴き声が気になって仕方ないようで、何度も振り返っている。
「狼型の魔物ですかね?」
「ああ、犬系か。・・・集団で来るから面倒なんだよね。」
レヴィアも、露骨に面倒そうな顔をする。
ミザリもレヴィアの話に便乗してくる。
「しかもなぜか、エイトと僕ばっかり狙うよね。」
「言われてみれば、群れで行動する犬系の魔物には、狙われたことがないな。」
レヴィアの感想に、アルルが何かを思い出したように話し出す。
「そういえば、群れで行動している獣の魔物は、傷ついた者や、子供や老人を優先で狙うって習ったことがありますよ。」
「僕やエイトを狙うのは、狩りの本能なんだね。」
「しかし、エイトを狙うのは、見た目で判断してるんだろうな。魔物の防衛本能が欠如している証拠だよね。」
レヴィアは、エイトに同意を求める。
「いや、見た目じゃなくって、僕の場合は、魔物たちが餌をもらいに来てるんじゃないかな。」
「・・・ああ、そうだね、そういうことにしておこう。」
~40分後~
ワンワン!
犬の鳴き声に、レヴィア、アルル、ミザリの注意がそれてしまい、ずっと気になっている様子だ。
「あの犬の鳴き声、なかなか近づいてこないね。」
「そうですね。近くもなく、遠くもなくって位置をキープしてるみたいですね。」
「レヴィア姉さん、きっと仲間を集めてるんじゃないかな?」
「それは面倒ですね、早く階段を目指しましょうよ!」
~更に30分後・階段前~
ワンワン!
「レヴィアさん、結局 襲ってこなかったですね。」
「ねえ、ちょっと様子を見て行かない?
もしかすると、飼い主の冒険者が倒れていて、そこに案内したいとかかもよ。」
「さすが、レヴィア姉さんだね。確かに、距離を取りながらついてくるのは、そういう意味かもしれないね。」
ミザリがレヴィアの意見に同意したことに、エイトが警戒し意見をだす。
「えー。辞めておこうよ。だって、つい最近、ウィンター商会のパーティが全員無事に戻ったばかりでしょ。
いままでの最下層記録だって、16階なんだから、18階では考えられないよ。魔物の罠だって。」
「エイトさん、魔物だとしたら、襲ってこないのも変ですよね。」
アルルも、レヴィアの意見に賛成しているようだ。
メンバーたちは、反対しているエイトを見る。
エイトは、メンバーの様子が少しおかしいことに気づきながらも、メンバーに従うことに決めた。
「・・・わかった。みんなに合わせるよ。」
パーティは、犬の鳴き声の方に進み始める。
犬は、案内するように、先に進みながら、鳴いて知らせている。
「レヴィアさんの言った通りだったみたいですね。」
「先を急ごう。怪我をした冒険者なら大変だからね。」
パーティは先を急ぐ。
犬の鳴き声は、部屋の中から聞こえてくるようだ。
部屋のドアにはカギが、かかっている。
「よし、私がカギを開けるね!」
ミザリがドアの前に しゃがみ込み、ドアのカギの開錠を試みえる。
「いや、おかしいでしょ!犬はカギを開け閉めしないって!」
ガチャ!
エイトの意見も空しく、ミザリは開錠を成功させた。
パーティは、エイトの忠告を聞かず、扉をあける。
中には、血まみれの冒険者が背を向けて倒れていた。
「大丈夫ですか!? 」
アルルは、血まみれの冒険者に近寄り、固まる。
アルルの すぐ後を歩いていたレヴィアも身動きが取れなくなる。
「しまった!罠だったようだ。」
部屋に入っていたパーティ全体に、束縛の呪いがかけられた。
血まみれの冒険者は、音もなくゆっくりと立ち上がる。
「亡霊!!?」
血まみれの冒険者は、パーティの方を、ゆっくりと振り向く。
その顔は、犬のように、鋭い・・・。
ボン!
一気に亡霊が燃え上がり苦しみだす。
「ほら、言ったじゃん。呪いを解除するから、動かないでよ。」
エイトは、解呪の神言を唱える。
「ヨース、マーレク。テシュル、ユガミ、カイロ、ノーノ。タ、ナハ。」
燃え上がる亡霊は、冒険者と犬に分離した。
その後、幸せそうな笑みを浮かべて、光の粒となり、どこかへ消えて行った。
亡霊が消えてしまうと、パーティの呪いが解除される。
パーティの呪いを解いたエイトに、アルルとミザリが駆け寄る。
「エイトさん!! 神言も使えるんですか!?」
「呪いの解除ができるなら、いつでも特級神官に転職できるじゃん!」
「剣に魔法に神言に王国の血筋、まさに万能。・・・まるで勇者だな。」
レイザーも万能に行動するだけではなく、全てにおいてトップクラスのエイトの才能に驚きを隠せない。
エイトは、照れることもなく、レイザーの方を見ながら答える。
「ありがと。でも、神言なら、レヴィアも一緒に習ったから できるよね。」
エイトはレヴィアをみる。
「あ、ああ。知っていたよ。も、もちろん。」
「レヴィア姉さん、今度、神言を教えてよ!」
「あ、ああ、私より、エイトの方がいいと思うけどな。
その、ほら、発音、発音がいいから。」
エイトは、心の中で こう呟いた・・・。
「・・・ああ、もう神言も 言霊のことも 忘れてるんだろうね。」
~ to be continued
【補足】
・神言
分類として言えば呪いに分類される。
魔法とは違い、言霊を詠唱することで効果を発揮できる能力。
少しでも言霊を間違えて唱えれば、効果がない。
・冒険者と犬に分離した
過去に、犬と一緒に死んでしまった冒険者の魂。
エイトの解呪の神言で魂が天に召されたのだろう。
・特級神官
大神官を除いて、神官の最高位。
神官でも神言が使える者は、数が少なく、両手で数えるほどしかいない。
迷宮を進むと、犬の鳴き声がする。
この階層では、狼型の魔物が集団で襲ってくるので、しっかりと対処していかなければ、ミザリがやられてしまう。
パーティは、犬の鳴き声に警戒しながら先を急ぐことにした。
ワンワン!
ワンワン!
アルルは、犬の鳴き声が気になって仕方ないようで、何度も振り返っている。
「狼型の魔物ですかね?」
「ああ、犬系か。・・・集団で来るから面倒なんだよね。」
レヴィアも、露骨に面倒そうな顔をする。
ミザリもレヴィアの話に便乗してくる。
「しかもなぜか、エイトと僕ばっかり狙うよね。」
「言われてみれば、群れで行動する犬系の魔物には、狙われたことがないな。」
レヴィアの感想に、アルルが何かを思い出したように話し出す。
「そういえば、群れで行動している獣の魔物は、傷ついた者や、子供や老人を優先で狙うって習ったことがありますよ。」
「僕やエイトを狙うのは、狩りの本能なんだね。」
「しかし、エイトを狙うのは、見た目で判断してるんだろうな。魔物の防衛本能が欠如している証拠だよね。」
レヴィアは、エイトに同意を求める。
「いや、見た目じゃなくって、僕の場合は、魔物たちが餌をもらいに来てるんじゃないかな。」
「・・・ああ、そうだね、そういうことにしておこう。」
~40分後~
ワンワン!
犬の鳴き声に、レヴィア、アルル、ミザリの注意がそれてしまい、ずっと気になっている様子だ。
「あの犬の鳴き声、なかなか近づいてこないね。」
「そうですね。近くもなく、遠くもなくって位置をキープしてるみたいですね。」
「レヴィア姉さん、きっと仲間を集めてるんじゃないかな?」
「それは面倒ですね、早く階段を目指しましょうよ!」
~更に30分後・階段前~
ワンワン!
「レヴィアさん、結局 襲ってこなかったですね。」
「ねえ、ちょっと様子を見て行かない?
もしかすると、飼い主の冒険者が倒れていて、そこに案内したいとかかもよ。」
「さすが、レヴィア姉さんだね。確かに、距離を取りながらついてくるのは、そういう意味かもしれないね。」
ミザリがレヴィアの意見に同意したことに、エイトが警戒し意見をだす。
「えー。辞めておこうよ。だって、つい最近、ウィンター商会のパーティが全員無事に戻ったばかりでしょ。
いままでの最下層記録だって、16階なんだから、18階では考えられないよ。魔物の罠だって。」
「エイトさん、魔物だとしたら、襲ってこないのも変ですよね。」
アルルも、レヴィアの意見に賛成しているようだ。
メンバーたちは、反対しているエイトを見る。
エイトは、メンバーの様子が少しおかしいことに気づきながらも、メンバーに従うことに決めた。
「・・・わかった。みんなに合わせるよ。」
パーティは、犬の鳴き声の方に進み始める。
犬は、案内するように、先に進みながら、鳴いて知らせている。
「レヴィアさんの言った通りだったみたいですね。」
「先を急ごう。怪我をした冒険者なら大変だからね。」
パーティは先を急ぐ。
犬の鳴き声は、部屋の中から聞こえてくるようだ。
部屋のドアにはカギが、かかっている。
「よし、私がカギを開けるね!」
ミザリがドアの前に しゃがみ込み、ドアのカギの開錠を試みえる。
「いや、おかしいでしょ!犬はカギを開け閉めしないって!」
ガチャ!
エイトの意見も空しく、ミザリは開錠を成功させた。
パーティは、エイトの忠告を聞かず、扉をあける。
中には、血まみれの冒険者が背を向けて倒れていた。
「大丈夫ですか!? 」
アルルは、血まみれの冒険者に近寄り、固まる。
アルルの すぐ後を歩いていたレヴィアも身動きが取れなくなる。
「しまった!罠だったようだ。」
部屋に入っていたパーティ全体に、束縛の呪いがかけられた。
血まみれの冒険者は、音もなくゆっくりと立ち上がる。
「亡霊!!?」
血まみれの冒険者は、パーティの方を、ゆっくりと振り向く。
その顔は、犬のように、鋭い・・・。
ボン!
一気に亡霊が燃え上がり苦しみだす。
「ほら、言ったじゃん。呪いを解除するから、動かないでよ。」
エイトは、解呪の神言を唱える。
「ヨース、マーレク。テシュル、ユガミ、カイロ、ノーノ。タ、ナハ。」
燃え上がる亡霊は、冒険者と犬に分離した。
その後、幸せそうな笑みを浮かべて、光の粒となり、どこかへ消えて行った。
亡霊が消えてしまうと、パーティの呪いが解除される。
パーティの呪いを解いたエイトに、アルルとミザリが駆け寄る。
「エイトさん!! 神言も使えるんですか!?」
「呪いの解除ができるなら、いつでも特級神官に転職できるじゃん!」
「剣に魔法に神言に王国の血筋、まさに万能。・・・まるで勇者だな。」
レイザーも万能に行動するだけではなく、全てにおいてトップクラスのエイトの才能に驚きを隠せない。
エイトは、照れることもなく、レイザーの方を見ながら答える。
「ありがと。でも、神言なら、レヴィアも一緒に習ったから できるよね。」
エイトはレヴィアをみる。
「あ、ああ。知っていたよ。も、もちろん。」
「レヴィア姉さん、今度、神言を教えてよ!」
「あ、ああ、私より、エイトの方がいいと思うけどな。
その、ほら、発音、発音がいいから。」
エイトは、心の中で こう呟いた・・・。
「・・・ああ、もう神言も 言霊のことも 忘れてるんだろうね。」
~ to be continued
【補足】
・神言
分類として言えば呪いに分類される。
魔法とは違い、言霊を詠唱することで効果を発揮できる能力。
少しでも言霊を間違えて唱えれば、効果がない。
・冒険者と犬に分離した
過去に、犬と一緒に死んでしまった冒険者の魂。
エイトの解呪の神言で魂が天に召されたのだろう。
・特級神官
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神官でも神言が使える者は、数が少なく、両手で数えるほどしかいない。
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