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5章・英雄の誕生
洞窟19階 我慢の限界
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19階に降りると、ウィンター商会のベース基地が設置してあった。
レヴィアは、興味本位から、ウィンター商会の動きが気になるようだ。
「いったい、前の階層に何のようがあるんだろうね。」
「さあ?忘れ物でも取りに行くんじゃない?」
あまり興味がないエイト。
何かに気づくアルル。
「もしかして、あの宝箱の回収にいくつもりじゃないですか。」
「ああ、ありえるね。私だったら準備して取りにいくだろうからね。」
「レヴィア姉さん、一応、伝えた方がいいかもよ。レヴィア商会の事もあるし・・・。」
レヴィアは、ミザリの意見を聞き入れ、ウィンター商会の冒険者を捕まえて、宝箱の事を伝える。
そうすると、思ってもいない答えが返ってきた。
「いえ、いまから下の階に向かい、冒険者を探しに行くところです。
たぶん、16階付近にいると思いますから。」
「そうなんだ。何かあったの?」
「実は、22階で全滅しそうになった際に、副隊長のリリアス様が防御魔法をかけ、パーティを上の階に逃がしてくれたんですけど、副隊長は、その後 脱出してきてないんです。」
話に参加してきたミザリとアルルが不思議そうに質問する。
「下の階に、別の部隊を増援で入れてるってこと?」
「増援を下の階に入れるんですかね?」
ミザリは自分で言っておいてなんだが、よく考えると理解できたようだ。
「・・・あ、そうか。アルル、僕は分かっちゃったよ。
だって、魔法陣は 到達階までしか移動できないんだったよね。
10階層まで行ってる冒険者は多いけど、20階層まで行ってる冒険者は、ウィンター商会の部隊だけだからだよ。増援をするにも、10階層から移動させないとダメなんだよ。」
レヴィアは、冷静に考えている。
「しかし、いまから移動なら間に合わないだろうね。」
「最悪、魔物に死体を荒らされる前に回収したいんじゃないかな。」
近くのテントの中から、数名の冒険者が出てくる。
冒険者の一人は、赤髪ショートの女戦士。どうやらアレン隊長のようだ。
アレン隊長は、エイトを見つけると、声をかけてきた。
「そうだ。できれば、死亡する前に助けたいのだが、我々では、救助不可能の状況だ。
そこで、エイトを迎えに行くところだったんだよ。ケルベロスを倒した英雄だそうだからね。」
「あっ、アレン隊長。」
「エイト、力を貸してもらえないかな。他のメンバーは責任をもって、ウィンター商会が20階まで案内しておくから。」
アレン隊長は、つい先日まで無名の冒険者だったエイトに、深く頭を下げている。
レヴィアは、エイトの横に立ち、エイトを後押しする。
「エイト、助けに行ってあげなよ。私たちは、大丈夫だから。」
「分かった。みんな、地上で会おう。レヴィア、みんなを宜しく頼んだよ。」
この一言に、アレン隊長は エイトとレヴィア以外の限界をみた気がした。
アレン隊長は、エイトの申し出に、さらに深く頭を下げると、視線を戻し、ウィンター商会の冒険者を何名か指揮して同行させる。
「では、急ごう。必要であれば、道中、回復薬を準備させる。」
「はい。すぐに向かいましょう!」
エイトは、襲われた敵の情報を聞き出し、リリアスの私物を貸してもらう。
エイトとアレン隊長は、複数の冒険者を引き連れて先を目指していった。
同行する冒険者は、大きなバックパックを背負っている。
走り去っていくエイトたちを見送りながら、レヴィアたちは何かに気づく。
「道中の回復薬って、走り続けますよって意味だよね。」
「贅沢な使い方だよね。」
「あの冒険者たちの大きな荷物は、全部ポーションなんでしょうか。」
「走りながら飲むと吐きそうになるのに、大丈夫かな?」
「レヴィア姉さん、エイトだけど、アレン隊長に嘔吐物をかけて、怒られなければいいね。」
「エイトさんなら、やっちゃいそうですね。」
レヴィア、ミザリ、アルルは、エイトの心配をしているのだが・・・。
レイザーは、つい心の声が漏れてしまう。
「いや、もっと心配することがあると思うんだが・・・。」
~40時間後・21階、階段付近~
短い睡眠時間とトイレ休憩以外は、ポーションを飲み続け一直線に走り続けた。
「もうすぐ22階につくはずだ!」
「はぁはぁ、ウップ・・・。」
アレンは、まだまだ胃袋の容量に余裕があるようだが、
小柄なエイトの胃袋は、完全にポーションで満たされていた。
~22階~
22階層の階段を下りた場所が、大きなフロアになっている。
周囲は、冷鱗石の岩盤が重なり、大小いくつもの岩陰もあり、身を隠すには最適な場所だろう。
22階層に下りてきてすぐに、武器を構えたアレンが周囲を見渡している。
「この先に、いるはずなんだが・・・。」
アレンは、エイトの方を見ると合図を送るように顔を動かし、リリアスが最後に立っていた場所を指さす。
それは距離にして、200m程先の岩場付近だ。
エイトは、呼吸を整え、警戒するように注意深く周囲を見渡す。
襲ってきたという魔物の姿は見えていない。リリアスと長期戦を交えている最中なのだろうか、魔物は気配すら消しているようだ。
一見すると、この場所を去ったかのようにも思えるのだが、エイトの危険察知のスキルが発動し、胸騒ぎを感じる。
「ここからは、一人で行くよ。みんなは、21階で待機しててほしい。」
「しかし!」
「広範囲魔法を使って、探すから、アレン隊長がいると・・・。」
エイトは、アレンたちに上の階に引き返すように依頼する。
それは 正直なところ、アレンたちでは 役不足だと感じたからだ。
そんなエイトの表情から、アレンは エイトの本音を見抜いた。
本当は、このまま一緒にリリアスを救出したいのだが、いまのレベルでは、完全に足手まといになってしまうのは、自分自身が よく分かっていた。
アレンは、一緒についてきたメンバーをまとめ、上の階に引き上げる。
「エイト。リリアスを宜しくお願いします。」
エイトは力強く頷く。
そして、アレンたちが上の階に移動するのを見送ったあと、周囲を確認し、リリアスの私物を持ち 呪いの言葉を呟く。
周囲が何とも言えない重たい空気にかわり、魔法を詠唱する。
「悪魔の魔瞳(LV1)」
エイトの詠唱した魔法は、殺したい人間の魂を確認する魔法だ。
術者の見る映像に、物体を透過して、明るい色で光が映れば、元気な状態の魂。逆に暗い色で光が映れば、瀕死の状態の魂。死亡していれば、周囲の光を巻き込むように黒く渦巻いて映る。
高いレベルで詠唱すれば、呪うこともできる魔法でもある。
冷鱗石がある為、洞窟内は薄暗く、リリアスの魂を見つけることはできなかった。
リリアスは 傷ついて瀕死の状態なのだろうか。
エイトは、続けて魔法を詠唱する。
「獄炎の台所(LV1)」
エイトは 魔法を詠唱し、床の温度を上昇させる。
床の温度の上昇に伴い、冷鱗石が反応し、明るく光り輝き始める。
エイトを中心に、周囲は昼間のように明るくなった。
「見つけた。この先の岩の窪みに隠れてるみたいだ・・・。」
エイトの瞳には、暗く光る魂が映っている。
「まだ死んでないな。」
エイトは、魔法を解除して、周囲を見渡した。
リリアスが隠れる岩陰の先に、ドラゴンが潜んでいるのも分かった。
獄炎の台所が発動した瞬間、警戒してあげた頭の一部が見えた。
ドラゴンの位置から死角になっている様で、周囲を警戒した後、リリアスに動きがないので 再び休むようだが、気配が近づけば、さすがにドラゴンも気がつくだろう。
「あのドラゴンに触手があるのかな? それとも、また別の敵なのかな?」
エイトは道中 アレンに聞いていた敵の情報を思い出す。
アレンの情報では、何本もの触手を持つ魔物と、巨大な爪を持つ獣に襲われたと言っていた。
巨大な爪は、間違いなくドラゴンだと思われるのだが、触手を持った生物は見当たらない。
もし、触手を持つドラゴンだとすると、極悪な、魔界の触手竜かもしれない。もしそうだとすると、強力な魔法で応戦しなければ戦えないだろう。
エイトは 隠密の指輪を発動し、ドラゴンの動向に気を配りながら、リリアスの元に向かう。
さいわい、ドラゴンは目を閉じて休息していたので、目視による確認で 存在を気づかれることもなさそうだ。
エイトは、そのままドラゴンの目の前を通りすぎ、リリアスのいる岩の割れ目に入り、リリアスに触れる。
リリアスは 疲労から目を閉じ、魔力の回復を優先していたようで、エイトの出現に驚いている。
「ごめん。驚かせて。」
「いえ、でもなぜ、あなたがここに?」
「アレン隊長に頼まれて救出にきました。外には ドラゴンが一匹みたいだけど 他の魔物は?」
「敵は 最初からドラゴン一匹だけよ。
触手による攻撃は ドラゴンの尻尾から無数の触手が生えていて、ドラゴンとは 別の攻撃をしてくるわ。」
エイトの最悪な予想は当たったようだ。
ドラゴンの正体は、魔界の触手竜で間違いないだろう。
「分かりました。いまから僕が外に出て、ドラゴンの注意を引くから、その隙に ここから逃げれそうですか?」
「・・・ごめんなさい。この割れ目に逃げ込む前に、足を折っていて 早く走ることはできないみたいなの。」
エイトは アレンが薬を準備すると言っていたので、フルポーションの持ち合わせがない。
フルポーションであれば、骨折や瀕死の重傷も完全回復できるのだが、ポーション程度では、血を止め、体力を回復する程度しか見込めない。自分の準備不足を痛感する。
「・・・まいったな。」
「私に構わず、逃げてちょうだい。私なら大丈夫だから・・・。」
強がって返事をしているけれど、リリアスの顔は笑えていない。
「いや、必ず助けるよ。」
そういって、エイトは笑顔を見せ、リリアスを元気づける。
「いまから僕が外に出て魔法でドラゴンを倒すから、リリアスは 自分自身を防御魔法で防御してよ。それならできる?」
「ええ、もう少し体力が戻れば自分の分くらいなら。」
リリアスの体力が回復するまでの間、エイトも胃袋の中身を整理するように 休むことにした。
もちろん、安全の為に 隠密の指輪を発動しながら。
~1時間後~
「エイト、エイト、起きて。」
エイトは、疲れからか寝ていたようだ。
「ドラゴンの姿が見えないのよ。気配を感じなくなったから、移動していったんじゃないかな?」
「・・・それはないと思うよ。ドラゴンは、わがままで、よくばりだから。
リリアスの魔力を食い尽くすまでは、絶対に動かないよ。見えない位置に移動して、監視を続けてるんだよ。」
そういって、エイトが近くに落ちていた小石を、穴の外に投げる。
コン!コロコロコ、ドス!
ドラゴンの触手だろうか、音だけでは 判断しにくいが、何かが石を突きさすように、攻撃したような音だった。
エイトは思った。さっきドラゴンが目を閉じてる隙に、隠密の指輪を発動させたままリリアスに譲渡し、リリアスだけでも逃がせばよかったと・・・。
「相変わらず、危険な状態なのね。
・・・エイト、防御魔法を唱えるくらいには魔力も回復したわ。」
それを聞いたエイトは、リリアスのレベルに応じて作戦を考えようと思い、リリアスに質問する。
「どのくらいの魔法なら耐えれそう?」
「あなたの作戦を聞いて、魔法を変更します。相性の問題もあるからね。」
自信満々に答えるリリアス。よほど魔法に自信があるのだろう。
その表情を見て、エイトは安心し、いま思いつく最善の作戦をリリアスに伝える。
「それもそうだね。
僕の作戦は、岩の表面についている傷から、そこまで太い触手じゃないと考えられるから、滅炎の光の矢で攻撃の連鎖の道を作って、そこを獄炎龍の息吹で連鎖させて灰にしようと考えてるんだ。
だから、リリアスは 熱が伝わらないように、獄炎龍の息吹の詠唱の前に、暴風雨の大障壁を発動してくれればいいよ。」
「・・・。」
「ごめん。暴風雨の大障壁を使うんなら、もう2~3時間は、休んでもいいかな・・・。」
「あ、う、うん。こっちこそ、ごめん。」
「いや、その、エイトって何者?
君の身体能力は、この前 君に触れたときに分かったけど、魔法までエルフ以上とか、聞いたことないよ。」
「僕は普通の冒険者だよ。レヴィアたちと一緒に地獄の門を目指してる。
・・・ところで、エルフって、魔法のスペシャリストって本で読んでたけど、どの程度まで魔法を使える?
もし、暴風雨の大障壁が成功率の低い魔法なら、作戦を変えるんだけど・・・。」
リリアスがエイトを睨む。
「エルフをバカにしないでよ。あと1時間で発動させますから。」
どうやら、リリアスを怒らせてしまったようだ。
~1時間後~
「準備はいいよ!」
エイトは頷き、身体強化の魔法をかけ、外に飛び出す!
ドラゴンは、リリアス以外の人物が飛び出してきたことに驚くが、すぐにエイトに攻撃を仕掛ける!
エイトも身体強化で強化されているので、ドラゴンの攻撃を余裕をもってかわし、反撃の魔法を詠唱する。
「滅炎の光の矢(LV2)」
エイトは、攻撃をかわしながら、連鎖の範囲に、滅炎の光の矢を打ち込み続ける。
滅炎の光の矢は、着火から、数十分は燃焼する炎の魔法だ。
エイトの放った魔法をドラゴンも回避するが、複数は命中する。
しかし、今回の滅炎の光の矢は 囮であり、連鎖の道具にすぎない。
ドラゴンも、多少ダメージを受けているが、致命傷にならないと分かると、尻尾の触手で防御しつつ、エイトとの距離を縮め、突進してきた。
エイトは、紙一重でかわし、再びドラゴンと距離をとり、リリアスの隠れている岩陰の近くに移動する。
「リリアス!防御魔法だ!」
「はい!暴風雨の大障壁(LV15)」
「獄炎龍の息吹(LV24)」
獄炎龍の息吹は、エイトの打ち込んだ 滅炎の光の矢の炎を吸収しながら、巨大な火球になっていく。
ドラゴンも、獄炎龍の息吹の火球を打ち消すために、口から炎を吐き相殺を狙う!!!
しかし、獄炎龍の息吹は、連鎖の効果により 神級の炎となり、ドラゴンの炎を巻き込み、ドラゴンに襲い掛かる!
エイトも 防御魔法を張ろうとしたとき、リリアスの隠れている岩の割れ目で、まだ魔法が発動されていないことに気づく。
「嘘でしょ・・・。」
術者といえども、連鎖で大きくなった魔法の熱で燃え尽きることもある。
しかも、ドラゴンが炎を吐いたため、獄炎龍の息吹の炎は、極限まで高まっている。防御魔法を張らなければ、灰すらも残らないだろう。
エイトは、とっさに、割れ目に滑り込む。
リリアスは、呪文をまだ発動できていない!
「暴風雨の大障壁(LV24)」
エイトの発動した魔法が、二人を包む!
強化された獄炎龍の息吹の炎と熱は、暴風雨の大障壁の雨や風で、相殺されていく。
しかし発動が遅く、水の威力が足りない。しかも、二人分の範囲で詠唱している為、その効果も薄い。
徐々にエイトの詠唱した、暴風雨の大障壁の威力が弱まる。
それに気づいたエイトは、暴風雨の大障壁の範囲を絞り、リリアスを集中して守る。
エイトの背中や手足は、強化された獄炎龍の息吹に焼かれ始める。
~5分後~
暴風雨の大障壁が解け、周囲の岩盤は熱で溶けている。
熱を吸収し光に変えるはずの冷鱗石も、今回の熱に耐えることが出来ず光を失い、周囲は完全な暗闇と静寂に包まれる。
「リリアス、大丈夫だった?」
「ご・・・ごめんなさい・・・。」
「・・・ちょっと二人とも動けそうにないね。」
エイトは、優しく笑いながらリリアスを励ます。
「・・・。」
「・・・。」
「ねえ、エイトのパーティは、もうメンバーの募集をしてないのかな。」
「どうしたの、いきなり?」
「ううん。なんでもないわ。いまの言葉は忘れて。」
しばらくすると、異変を感じた、アレン隊長たちが救出に来た。
エイトは、応急的にポーションを飲んだ後、アレンの背中に揺られながら、地上を目指す。
ユッサユッサ、ユッサユッサ、ユッサ・・・。
アレンの背中で揺られる振動が、背負られることで圧迫している胃袋に伝わり、気持ちが悪い。
ユッサユッサ、ユッサユッサ、ユッサ・・・。
オェ、げろげろ・・・。
~ to be continued
【補足】
・ウィンター商会のベース基地
ウィンター商会は、ベース基地を拠点に冒険を行う。このベース基地には、食料や人材が多く配備されている。
・魔物に死体を荒らされる前
死体がなくなれば、当たり前だが復活できない。
また、損傷がひどくなれば、復活をした直後に回復が間に合わなければ、死亡してしまう。
迷宮の外で死亡した場合は、豊穣の神の恩恵も受けれなくなるので、死体は完全な状態が好ましい。
・ケルベロスを倒した英雄
エイトが助けた冒険者達が噂をしたのだろう。
・ポーションで満たされ
当たり前だが、飲み物なので、お腹がタポタポになる。
ちなみに薬の必要効果量は、薬によって違う。
ポーション
・500ml/1回
ハイポーション
・200ml/1回
フルポーション
・200ml/1回
解呪薬
・2000ml/1回
解毒薬
・1000ml/1回
・魔界の触手竜
中級悪魔クラスのドラゴンで、尻尾には、無数の触手があり、敵を麻痺させる毒液も含まれている。
大きさは、乗用車程度だが、尻尾の触手は、更に2~3mは伸びる。
魔界の触手竜の外皮は、斬撃に強く、風や雷の魔法に抵抗があり、冷気の魔法を無効化する。
炎の魔法ならダメージを与えることもできるが、魔界の触手竜の吐く炎より強力な魔法を詠唱する必要がある。
生半可な魔法では、魔界の触手竜の炎に吸収され、カウンターで焼け死んでしまうからだ。
・ドラゴンは、わがままで…。
ドラゴンは、わがままで、よくばりな者が多い。
エイトの経験もあるが、悪魔以上の力があり、地上に留まるのも、己の欲望を満たす為だと言われている。ちなみに、ドラゴンは、魔力を食べると言われているが、実際は肉も野菜も魔力でも、何でも食べる。
レヴィアは、興味本位から、ウィンター商会の動きが気になるようだ。
「いったい、前の階層に何のようがあるんだろうね。」
「さあ?忘れ物でも取りに行くんじゃない?」
あまり興味がないエイト。
何かに気づくアルル。
「もしかして、あの宝箱の回収にいくつもりじゃないですか。」
「ああ、ありえるね。私だったら準備して取りにいくだろうからね。」
「レヴィア姉さん、一応、伝えた方がいいかもよ。レヴィア商会の事もあるし・・・。」
レヴィアは、ミザリの意見を聞き入れ、ウィンター商会の冒険者を捕まえて、宝箱の事を伝える。
そうすると、思ってもいない答えが返ってきた。
「いえ、いまから下の階に向かい、冒険者を探しに行くところです。
たぶん、16階付近にいると思いますから。」
「そうなんだ。何かあったの?」
「実は、22階で全滅しそうになった際に、副隊長のリリアス様が防御魔法をかけ、パーティを上の階に逃がしてくれたんですけど、副隊長は、その後 脱出してきてないんです。」
話に参加してきたミザリとアルルが不思議そうに質問する。
「下の階に、別の部隊を増援で入れてるってこと?」
「増援を下の階に入れるんですかね?」
ミザリは自分で言っておいてなんだが、よく考えると理解できたようだ。
「・・・あ、そうか。アルル、僕は分かっちゃったよ。
だって、魔法陣は 到達階までしか移動できないんだったよね。
10階層まで行ってる冒険者は多いけど、20階層まで行ってる冒険者は、ウィンター商会の部隊だけだからだよ。増援をするにも、10階層から移動させないとダメなんだよ。」
レヴィアは、冷静に考えている。
「しかし、いまから移動なら間に合わないだろうね。」
「最悪、魔物に死体を荒らされる前に回収したいんじゃないかな。」
近くのテントの中から、数名の冒険者が出てくる。
冒険者の一人は、赤髪ショートの女戦士。どうやらアレン隊長のようだ。
アレン隊長は、エイトを見つけると、声をかけてきた。
「そうだ。できれば、死亡する前に助けたいのだが、我々では、救助不可能の状況だ。
そこで、エイトを迎えに行くところだったんだよ。ケルベロスを倒した英雄だそうだからね。」
「あっ、アレン隊長。」
「エイト、力を貸してもらえないかな。他のメンバーは責任をもって、ウィンター商会が20階まで案内しておくから。」
アレン隊長は、つい先日まで無名の冒険者だったエイトに、深く頭を下げている。
レヴィアは、エイトの横に立ち、エイトを後押しする。
「エイト、助けに行ってあげなよ。私たちは、大丈夫だから。」
「分かった。みんな、地上で会おう。レヴィア、みんなを宜しく頼んだよ。」
この一言に、アレン隊長は エイトとレヴィア以外の限界をみた気がした。
アレン隊長は、エイトの申し出に、さらに深く頭を下げると、視線を戻し、ウィンター商会の冒険者を何名か指揮して同行させる。
「では、急ごう。必要であれば、道中、回復薬を準備させる。」
「はい。すぐに向かいましょう!」
エイトは、襲われた敵の情報を聞き出し、リリアスの私物を貸してもらう。
エイトとアレン隊長は、複数の冒険者を引き連れて先を目指していった。
同行する冒険者は、大きなバックパックを背負っている。
走り去っていくエイトたちを見送りながら、レヴィアたちは何かに気づく。
「道中の回復薬って、走り続けますよって意味だよね。」
「贅沢な使い方だよね。」
「あの冒険者たちの大きな荷物は、全部ポーションなんでしょうか。」
「走りながら飲むと吐きそうになるのに、大丈夫かな?」
「レヴィア姉さん、エイトだけど、アレン隊長に嘔吐物をかけて、怒られなければいいね。」
「エイトさんなら、やっちゃいそうですね。」
レヴィア、ミザリ、アルルは、エイトの心配をしているのだが・・・。
レイザーは、つい心の声が漏れてしまう。
「いや、もっと心配することがあると思うんだが・・・。」
~40時間後・21階、階段付近~
短い睡眠時間とトイレ休憩以外は、ポーションを飲み続け一直線に走り続けた。
「もうすぐ22階につくはずだ!」
「はぁはぁ、ウップ・・・。」
アレンは、まだまだ胃袋の容量に余裕があるようだが、
小柄なエイトの胃袋は、完全にポーションで満たされていた。
~22階~
22階層の階段を下りた場所が、大きなフロアになっている。
周囲は、冷鱗石の岩盤が重なり、大小いくつもの岩陰もあり、身を隠すには最適な場所だろう。
22階層に下りてきてすぐに、武器を構えたアレンが周囲を見渡している。
「この先に、いるはずなんだが・・・。」
アレンは、エイトの方を見ると合図を送るように顔を動かし、リリアスが最後に立っていた場所を指さす。
それは距離にして、200m程先の岩場付近だ。
エイトは、呼吸を整え、警戒するように注意深く周囲を見渡す。
襲ってきたという魔物の姿は見えていない。リリアスと長期戦を交えている最中なのだろうか、魔物は気配すら消しているようだ。
一見すると、この場所を去ったかのようにも思えるのだが、エイトの危険察知のスキルが発動し、胸騒ぎを感じる。
「ここからは、一人で行くよ。みんなは、21階で待機しててほしい。」
「しかし!」
「広範囲魔法を使って、探すから、アレン隊長がいると・・・。」
エイトは、アレンたちに上の階に引き返すように依頼する。
それは 正直なところ、アレンたちでは 役不足だと感じたからだ。
そんなエイトの表情から、アレンは エイトの本音を見抜いた。
本当は、このまま一緒にリリアスを救出したいのだが、いまのレベルでは、完全に足手まといになってしまうのは、自分自身が よく分かっていた。
アレンは、一緒についてきたメンバーをまとめ、上の階に引き上げる。
「エイト。リリアスを宜しくお願いします。」
エイトは力強く頷く。
そして、アレンたちが上の階に移動するのを見送ったあと、周囲を確認し、リリアスの私物を持ち 呪いの言葉を呟く。
周囲が何とも言えない重たい空気にかわり、魔法を詠唱する。
「悪魔の魔瞳(LV1)」
エイトの詠唱した魔法は、殺したい人間の魂を確認する魔法だ。
術者の見る映像に、物体を透過して、明るい色で光が映れば、元気な状態の魂。逆に暗い色で光が映れば、瀕死の状態の魂。死亡していれば、周囲の光を巻き込むように黒く渦巻いて映る。
高いレベルで詠唱すれば、呪うこともできる魔法でもある。
冷鱗石がある為、洞窟内は薄暗く、リリアスの魂を見つけることはできなかった。
リリアスは 傷ついて瀕死の状態なのだろうか。
エイトは、続けて魔法を詠唱する。
「獄炎の台所(LV1)」
エイトは 魔法を詠唱し、床の温度を上昇させる。
床の温度の上昇に伴い、冷鱗石が反応し、明るく光り輝き始める。
エイトを中心に、周囲は昼間のように明るくなった。
「見つけた。この先の岩の窪みに隠れてるみたいだ・・・。」
エイトの瞳には、暗く光る魂が映っている。
「まだ死んでないな。」
エイトは、魔法を解除して、周囲を見渡した。
リリアスが隠れる岩陰の先に、ドラゴンが潜んでいるのも分かった。
獄炎の台所が発動した瞬間、警戒してあげた頭の一部が見えた。
ドラゴンの位置から死角になっている様で、周囲を警戒した後、リリアスに動きがないので 再び休むようだが、気配が近づけば、さすがにドラゴンも気がつくだろう。
「あのドラゴンに触手があるのかな? それとも、また別の敵なのかな?」
エイトは道中 アレンに聞いていた敵の情報を思い出す。
アレンの情報では、何本もの触手を持つ魔物と、巨大な爪を持つ獣に襲われたと言っていた。
巨大な爪は、間違いなくドラゴンだと思われるのだが、触手を持った生物は見当たらない。
もし、触手を持つドラゴンだとすると、極悪な、魔界の触手竜かもしれない。もしそうだとすると、強力な魔法で応戦しなければ戦えないだろう。
エイトは 隠密の指輪を発動し、ドラゴンの動向に気を配りながら、リリアスの元に向かう。
さいわい、ドラゴンは目を閉じて休息していたので、目視による確認で 存在を気づかれることもなさそうだ。
エイトは、そのままドラゴンの目の前を通りすぎ、リリアスのいる岩の割れ目に入り、リリアスに触れる。
リリアスは 疲労から目を閉じ、魔力の回復を優先していたようで、エイトの出現に驚いている。
「ごめん。驚かせて。」
「いえ、でもなぜ、あなたがここに?」
「アレン隊長に頼まれて救出にきました。外には ドラゴンが一匹みたいだけど 他の魔物は?」
「敵は 最初からドラゴン一匹だけよ。
触手による攻撃は ドラゴンの尻尾から無数の触手が生えていて、ドラゴンとは 別の攻撃をしてくるわ。」
エイトの最悪な予想は当たったようだ。
ドラゴンの正体は、魔界の触手竜で間違いないだろう。
「分かりました。いまから僕が外に出て、ドラゴンの注意を引くから、その隙に ここから逃げれそうですか?」
「・・・ごめんなさい。この割れ目に逃げ込む前に、足を折っていて 早く走ることはできないみたいなの。」
エイトは アレンが薬を準備すると言っていたので、フルポーションの持ち合わせがない。
フルポーションであれば、骨折や瀕死の重傷も完全回復できるのだが、ポーション程度では、血を止め、体力を回復する程度しか見込めない。自分の準備不足を痛感する。
「・・・まいったな。」
「私に構わず、逃げてちょうだい。私なら大丈夫だから・・・。」
強がって返事をしているけれど、リリアスの顔は笑えていない。
「いや、必ず助けるよ。」
そういって、エイトは笑顔を見せ、リリアスを元気づける。
「いまから僕が外に出て魔法でドラゴンを倒すから、リリアスは 自分自身を防御魔法で防御してよ。それならできる?」
「ええ、もう少し体力が戻れば自分の分くらいなら。」
リリアスの体力が回復するまでの間、エイトも胃袋の中身を整理するように 休むことにした。
もちろん、安全の為に 隠密の指輪を発動しながら。
~1時間後~
「エイト、エイト、起きて。」
エイトは、疲れからか寝ていたようだ。
「ドラゴンの姿が見えないのよ。気配を感じなくなったから、移動していったんじゃないかな?」
「・・・それはないと思うよ。ドラゴンは、わがままで、よくばりだから。
リリアスの魔力を食い尽くすまでは、絶対に動かないよ。見えない位置に移動して、監視を続けてるんだよ。」
そういって、エイトが近くに落ちていた小石を、穴の外に投げる。
コン!コロコロコ、ドス!
ドラゴンの触手だろうか、音だけでは 判断しにくいが、何かが石を突きさすように、攻撃したような音だった。
エイトは思った。さっきドラゴンが目を閉じてる隙に、隠密の指輪を発動させたままリリアスに譲渡し、リリアスだけでも逃がせばよかったと・・・。
「相変わらず、危険な状態なのね。
・・・エイト、防御魔法を唱えるくらいには魔力も回復したわ。」
それを聞いたエイトは、リリアスのレベルに応じて作戦を考えようと思い、リリアスに質問する。
「どのくらいの魔法なら耐えれそう?」
「あなたの作戦を聞いて、魔法を変更します。相性の問題もあるからね。」
自信満々に答えるリリアス。よほど魔法に自信があるのだろう。
その表情を見て、エイトは安心し、いま思いつく最善の作戦をリリアスに伝える。
「それもそうだね。
僕の作戦は、岩の表面についている傷から、そこまで太い触手じゃないと考えられるから、滅炎の光の矢で攻撃の連鎖の道を作って、そこを獄炎龍の息吹で連鎖させて灰にしようと考えてるんだ。
だから、リリアスは 熱が伝わらないように、獄炎龍の息吹の詠唱の前に、暴風雨の大障壁を発動してくれればいいよ。」
「・・・。」
「ごめん。暴風雨の大障壁を使うんなら、もう2~3時間は、休んでもいいかな・・・。」
「あ、う、うん。こっちこそ、ごめん。」
「いや、その、エイトって何者?
君の身体能力は、この前 君に触れたときに分かったけど、魔法までエルフ以上とか、聞いたことないよ。」
「僕は普通の冒険者だよ。レヴィアたちと一緒に地獄の門を目指してる。
・・・ところで、エルフって、魔法のスペシャリストって本で読んでたけど、どの程度まで魔法を使える?
もし、暴風雨の大障壁が成功率の低い魔法なら、作戦を変えるんだけど・・・。」
リリアスがエイトを睨む。
「エルフをバカにしないでよ。あと1時間で発動させますから。」
どうやら、リリアスを怒らせてしまったようだ。
~1時間後~
「準備はいいよ!」
エイトは頷き、身体強化の魔法をかけ、外に飛び出す!
ドラゴンは、リリアス以外の人物が飛び出してきたことに驚くが、すぐにエイトに攻撃を仕掛ける!
エイトも身体強化で強化されているので、ドラゴンの攻撃を余裕をもってかわし、反撃の魔法を詠唱する。
「滅炎の光の矢(LV2)」
エイトは、攻撃をかわしながら、連鎖の範囲に、滅炎の光の矢を打ち込み続ける。
滅炎の光の矢は、着火から、数十分は燃焼する炎の魔法だ。
エイトの放った魔法をドラゴンも回避するが、複数は命中する。
しかし、今回の滅炎の光の矢は 囮であり、連鎖の道具にすぎない。
ドラゴンも、多少ダメージを受けているが、致命傷にならないと分かると、尻尾の触手で防御しつつ、エイトとの距離を縮め、突進してきた。
エイトは、紙一重でかわし、再びドラゴンと距離をとり、リリアスの隠れている岩陰の近くに移動する。
「リリアス!防御魔法だ!」
「はい!暴風雨の大障壁(LV15)」
「獄炎龍の息吹(LV24)」
獄炎龍の息吹は、エイトの打ち込んだ 滅炎の光の矢の炎を吸収しながら、巨大な火球になっていく。
ドラゴンも、獄炎龍の息吹の火球を打ち消すために、口から炎を吐き相殺を狙う!!!
しかし、獄炎龍の息吹は、連鎖の効果により 神級の炎となり、ドラゴンの炎を巻き込み、ドラゴンに襲い掛かる!
エイトも 防御魔法を張ろうとしたとき、リリアスの隠れている岩の割れ目で、まだ魔法が発動されていないことに気づく。
「嘘でしょ・・・。」
術者といえども、連鎖で大きくなった魔法の熱で燃え尽きることもある。
しかも、ドラゴンが炎を吐いたため、獄炎龍の息吹の炎は、極限まで高まっている。防御魔法を張らなければ、灰すらも残らないだろう。
エイトは、とっさに、割れ目に滑り込む。
リリアスは、呪文をまだ発動できていない!
「暴風雨の大障壁(LV24)」
エイトの発動した魔法が、二人を包む!
強化された獄炎龍の息吹の炎と熱は、暴風雨の大障壁の雨や風で、相殺されていく。
しかし発動が遅く、水の威力が足りない。しかも、二人分の範囲で詠唱している為、その効果も薄い。
徐々にエイトの詠唱した、暴風雨の大障壁の威力が弱まる。
それに気づいたエイトは、暴風雨の大障壁の範囲を絞り、リリアスを集中して守る。
エイトの背中や手足は、強化された獄炎龍の息吹に焼かれ始める。
~5分後~
暴風雨の大障壁が解け、周囲の岩盤は熱で溶けている。
熱を吸収し光に変えるはずの冷鱗石も、今回の熱に耐えることが出来ず光を失い、周囲は完全な暗闇と静寂に包まれる。
「リリアス、大丈夫だった?」
「ご・・・ごめんなさい・・・。」
「・・・ちょっと二人とも動けそうにないね。」
エイトは、優しく笑いながらリリアスを励ます。
「・・・。」
「・・・。」
「ねえ、エイトのパーティは、もうメンバーの募集をしてないのかな。」
「どうしたの、いきなり?」
「ううん。なんでもないわ。いまの言葉は忘れて。」
しばらくすると、異変を感じた、アレン隊長たちが救出に来た。
エイトは、応急的にポーションを飲んだ後、アレンの背中に揺られながら、地上を目指す。
ユッサユッサ、ユッサユッサ、ユッサ・・・。
アレンの背中で揺られる振動が、背負られることで圧迫している胃袋に伝わり、気持ちが悪い。
ユッサユッサ、ユッサユッサ、ユッサ・・・。
オェ、げろげろ・・・。
~ to be continued
【補足】
・ウィンター商会のベース基地
ウィンター商会は、ベース基地を拠点に冒険を行う。このベース基地には、食料や人材が多く配備されている。
・魔物に死体を荒らされる前
死体がなくなれば、当たり前だが復活できない。
また、損傷がひどくなれば、復活をした直後に回復が間に合わなければ、死亡してしまう。
迷宮の外で死亡した場合は、豊穣の神の恩恵も受けれなくなるので、死体は完全な状態が好ましい。
・ケルベロスを倒した英雄
エイトが助けた冒険者達が噂をしたのだろう。
・ポーションで満たされ
当たり前だが、飲み物なので、お腹がタポタポになる。
ちなみに薬の必要効果量は、薬によって違う。
ポーション
・500ml/1回
ハイポーション
・200ml/1回
フルポーション
・200ml/1回
解呪薬
・2000ml/1回
解毒薬
・1000ml/1回
・魔界の触手竜
中級悪魔クラスのドラゴンで、尻尾には、無数の触手があり、敵を麻痺させる毒液も含まれている。
大きさは、乗用車程度だが、尻尾の触手は、更に2~3mは伸びる。
魔界の触手竜の外皮は、斬撃に強く、風や雷の魔法に抵抗があり、冷気の魔法を無効化する。
炎の魔法ならダメージを与えることもできるが、魔界の触手竜の吐く炎より強力な魔法を詠唱する必要がある。
生半可な魔法では、魔界の触手竜の炎に吸収され、カウンターで焼け死んでしまうからだ。
・ドラゴンは、わがままで…。
ドラゴンは、わがままで、よくばりな者が多い。
エイトの経験もあるが、悪魔以上の力があり、地上に留まるのも、己の欲望を満たす為だと言われている。ちなみに、ドラゴンは、魔力を食べると言われているが、実際は肉も野菜も魔力でも、何でも食べる。
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