目指せ地獄の門 ~改訂版~

黒山羊

文字の大きさ
52 / 89
6章・変革の時

第1話 破格の金額

しおりを挟む
エイト達が地上に戻ると、レヴィア達も魔法陣付近で待っていたようで、無事に合流した。
メンバーは、エイトの傷を見て、驚いている。
それは、エイトが今までにないくらいに ダメージを負い、手足の火傷は かなり深い。
アルルは、アレンに背負われていた エイトを引き受け、優しく抱きかかえ、フルポーションを飲ませる。

「エイトさん、大丈夫ですか?」

ポーションなどは、切り傷や骨折、体力まで回復できるのだが、なぜか魔法で受けた傷の治りは遅い。
自然回復より断然に速いのだが、フルポーションの回復速度を知っているパーティには、かなり遅く感じる。

「フルポーション、効かないね・・・。念の為に、包帯も巻いておこうよ。」

そういって、ミザリは自分の小物入れから、包帯と痛み止めの薬草を取り出し、火傷の跡に巻く。

「ありがとう。もう大丈夫だよ。
 レヴィア、アレン隊長の装備の弁償を・・・。」

「装備の弁償?」

レヴィアは、アレン隊長に近づき、装備の確認をする。
と、すぐに距離をとった。

「アレン隊長、少し匂うようだが・・・。」

レヴィアの反応に、反応するミザリとアルル。

「まさか!?」

「恐れていたことが起きましたね。」


3人の表情を見て、豪快に笑いながらアレンが言う。

「いや、確かに嘔吐物をかけられたけど、リリアスの命を救ってもらったんだ。
 装備の匂いとか問題ではないよ。」

潔癖気味のレヴィアは、露骨に嫌な顔をする。

「しかし、その匂い・・・。」

リリアスが、そんな反応を見せるレヴィアとエイトに話しかける。

「いえ、私が迷惑をかけたので、もし弁償するとすれば、私が払います。」

「そうだよ。こちらは逆に、治療に使っているフルポーション代を払う立場だよ。」

そういって、アレンは、ガントレットなどの装備を外し付き人に渡し、代わりに受け取った袋をレヴィアに渡す。
・・・さすがに、ビキニアーマーは脱がないようだ。

「もし他に請求するものがあるなら、ウィンター商会のアレン宛で請求しておいてくれ。」

アレン隊長は、そう言い残すと、馬に乗り どこかへ行ってしまった。
リリアスも、馬車に乗る前に立ち止まり、エイトにウィンクをする。

「エイト。しばらくは町に滞在するつもりだから、いつでも遊びに来て、また楽しませてね♪」

リリアスも馬車に乗り、どこかへ去って行った。
馬車に手を振るエイト、それを冷めた目で見ている、アルルとミザリ。

「エイトさん。あんな美女と、何をして楽しんだんですか。」

「ほんと、僕たちの心配は何だったんだろうね。」


「・・・。」

「いや、誤解だって、本当に何もないんだよ!」

「アルル、ミザリ、エイトが全力で否定する所が怪しいんじゃない?」

レヴィアは、楽しんで2人を挑発する。
その言葉に大きく頷くアルルとミザリ。

「たしかに、レヴィアさんの言う通りですね。怪しいです。」

「そうだね、あまり全力で否定するエイトを見たことないよね。」

「えっ!ちょっと待って、本当に誤解なんだって、タスケテー。」














~宿【冒険者の集い】~

エイトは レイザーに背負われたまま、宿にたどり着いた。
フルポーションの効果なのか、ミザリの薬草や包帯の効果なのか、魔法で焼けた手足や背中の痛みは 驚くほど引いている。
宿につくと、レヴィアが宿の女将に親し気に話しかける。

「女将、よかったらエイトの分の食事を運んでもらいたいんだけど。
 いまは手が自由に使えないから、パンに野菜や肉を挟んでくれれば助かるな。」

「お安い御用さ!お嬢たちは 何を食べるんだい?」

「ああ、女将に任せるよ。」

フレンドリーな会話をするレヴィアと女将。しかも、女将はレヴィアの事を お嬢と呼んでいた。
そのことにエイトが驚いた表情でレヴィアに質問する。

「レヴィアと女将さんって、そんなに仲が良かったっけ?」


それに答えるため、エイトの視界に入ってくるアルル。

「ええ、この宿(冒険者の集い)ですが、レヴィア商会の拠点ってことになってて、減税の対象になったそうなんですよ。」

「・・・ごめん。意味が分からないんだけど。」


ミザリもエイトの視界に入って答えようとするが、背が低くて視界に入っていない。

「普通の組合と、商人協会では、税金が全然違うんだよ。
 そこで、レヴィア商会の本拠地として傘下に入ったことになっている宿(冒険者の集い)は、減税の対象になってるんだ。」

「・・・そもそも、レヴィア商会って何?」


エイトの質問に、驚くアルルとミザリ。

「え、そこからですか?」

「レヴィア姉さん、エイトに説明してないの?」


・・・レヴィアは、考えている。そして、何かを思い出すような顔をして答えを導き出した。

「ああ、エイトは、お小遣い制だから、話す必要はないと思ってた。」

「そうなんですね。エイトさん、お小遣いって、いくらなんですか?」

「1日、銀貨3枚だよ。」


ミザリが憐みの目でエイトを見る。

「月に、金貨1枚にも満たないなんて・・・。ほんとに、お小遣いだよね。」


アルルも憐みの目でエイトを見ている。

「それで、メイガス様の館にアルバイトに行ってるんですね。」


周囲の冒険者も飲み食いを忘れ、憐みの目でエイトを見ていた。





 ~ to be continued


【補足】


・レヴィア商会の本拠地として傘下

拠点となる店舗を持たないレヴィア商会は、ウィンター会長から商会の登録にあたって、拠点を決めるように言われ、女将と相談した結果、宿(冒険者の集い)を拠点に指名した。
宿はレヴィア商会の所有物ではないため、レヴィア商会の傘下として登録してある。



・1日、銀貨3枚

金貨 1枚 = 銀貨 100枚
銀貨 1枚 = 銅貨  10枚
銅貨 1枚 = 木貨  10枚
現代の日本において、
 金貨1枚は、約1万円相当
 銀貨1枚は、100円相当
 銅貨1枚は、 10円相当
 木貨1枚は、  1円相当
要するに、銀貨3枚=300円相当である。
ちなみに、一般的な冒険者を雇用しようとすれば、1回の冒険で、契約金として金貨20~50枚程度は稼げる。
エイトのクラス(ケルベロスを単身撃破)になれば、雇われるとしたら、2000~3000枚程度なら契約金として簡単に受け取れるだろう。
もちろん上記の契約金は、迷宮で得た宝石などは別で計算されている。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~

ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。 休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。 啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。 異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。 これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

サラリーマン、少女になる。

あさき のぞみ
ファンタジー
目が覚めたら、俺は見知らぬ10歳の少女になっていた。 頼れるのは、唯一の理解者であるはずの同僚「まい」だけ。彼女はなぜか僕を**「娘」として扱い始め、僕の失われた体を巡る24時間の戦い**が幕を開ける。 手がかりは、謎の製薬会社と、10年前の空白の記憶。 時間がない。焦るほどに、この幼い体が僕の理性と尊厳を蝕んでいく。そして、僕は知る。最も近くで微笑んでいた人物こそが、この絶望的な運命の**「設計者」**であったことを。 あなたは、その愛から逃れられますか?

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

処理中です...