目指せ地獄の門 ~改訂版~

黒山羊

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6章・変革の時

第8話 ミザリィ=ローレンス=ゼタ=ハロルド

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アルルと別れたあと、ミザリは ウィンター商会を訪れていた。

「すみません。ウィンター会長にお会いしたいんですけど。」

「アポイントのないお客様は、お通しすることができません。それにあなた、ハロルド商会のミザリさんですよね。」


「・・・。」

ミザリが無言で頷くと、店員も無表情のまま首を横に振った。

「どうぞ、お引き取り下さい。」

「帰りません。どうしてもウィンター会長に会わなければいけないんです。」

店員の言葉を遮るように、ミザリが真剣な表情で訴える。
その真剣な眼差しに、店員が折れたようだ。

「では、確認してきますが、難しいと思いますよ。」

そう言い残すと店員は接客を別の店員に任せて、店の奥へと引き上げていく。
・・・しばらくして、少し暗い顔の店長が戻ってきた。

「すみません。また明日にでも出直して下さい。今日は忙しいそうです。」

「はい。また明日、出直します。」

ミザリも、せっかく会長に確認してくれたのにも関わらず、このまま居座るのも迷惑になると考え、日を改めることにした。
翌日も、その翌日も、またその翌日も、何日もの間、ミザリは ウィンター商会を訪れた。
・・・ある日、ミザリが店を訪れると、ウィンター会長が待っていた。

「ミザリ、レヴィアからの手紙で、エイトの話を聞いた。3年後に向けて修行するんだな。」

「はい、ウィンター会長に師事を仰ぎたくて、お伺いしていました。」

ウィンターは、ミザリを品定めするように、じっくり見る。
彼の表情は難しく、時には頷き、時には首を傾げるようにしながら、ミザリの周囲を見て回る。
そして、ウィンターは口元を緩ませながらミザリの肩を叩く。

「ミザリには、私と同じく短剣の才能があるだろう。しかも私にない、魔法の才能も持っている。」

「どうしてそれを・・・。」

ミザリの質問に少し驚いた表情を見せた後、ウィンターは 優しい笑顔で答える。

「君の母親は、最高クラスの魔法を唱えるエルフだったからね。」

「も、もしかして・・・。」

もしかすると、ウィンターが実の父親なのかも知れない・・・。
そう思ったのだが、ミザリは口にすることができなかった。
それは、口喧嘩をすることもあるのだが、優しく頼れる父、ハロルドの顔が頭をよぎったからだった。
ウィンターは、何かを察したのだろうか、ミザリに声をかける。

「ちゃんとハロルド会長にも話をしてきなさい。準備ができ次第、迷宮と店での修行を続けるからね。」

「はい。」


ミザリは、家に戻る。
そして、父ハロルドを見たとき、ふと先ほどのウィンターの言葉を思い出し、心の中でつぶやいた。
(もしかして、ウィンター会長は・・・。)
無言で顔を見つめてくるミザリにハロルドが声をかける。

「ミザリ、いったいどうしたんだ。まだ冒険に出ないんだったら、店番をやってくれないか、ちゃんと賃金を渡すから。」

「あ、ごめん、考え事してた・・・。」

「ねえ、お父さん。ちょっといいかな?」

・・・ミザリは、ハロルドに会い、ウィンター会長に師事することを伝えた。
ハロルドは、何かを決心したように、ミザリに話しかける。

「勘のいいミザリなら、もう察してるかもしれないが、ウィンター会長と冒険に出る前に伝えておかなければいけないことがある。」

ミザリは、ハロルドの雰囲気に何かを察する。
やはり、ミザリの本当の父親は・・・。

「う、うん。なんとなく予想してたけど・・・。」

ハロルドの顔を見れないのか、下を向き目を合わせないようにするミザリ。
そんなミザリに、ハロルドが続けて話す。

「エイトくんから、聞いたぞ!」

「エイト?」

「そう!ミザリも既に落ちたらしいが、うちの家系は落とし穴に落ちるようだ。
 もし、ウィンター会長の目の前で穴に落ちてしまえば、莫大な救助費用を取られてしまうから、気を付けるんだぞ。」

そういうと、ハロルドは箱に入った眼鏡をミザリに手渡した。

「・・・それだけ?」

「・・・そう、それだけ。」

「あ、あの、いや何でもない。眼鏡ありがとう。」

ミザリは、ハロルドに別れを告げて、ウィンター会長の元へ向かう。















~3年後~


レヴィア商会は、ウィンター商会に次ぐ、大きな商会になっていた。
物品の売買だけでなく、きめ細やかなサービス、商品のアフターフォロー。
注文と配達費用さえ払えば、10階層以下の迷宮内に手荷物を届けるサービスも開始している。
中でも人気なのは 一般人向けに開始されたツアーで、1階層を気軽に冒険することができる内容だ。
このツアーは、ウィンター商会とレヴィア商会でしか取り扱いがない特別なツアーとして手掛けている。
冒険者でもあり商人でもある ミザリ店長の功績は評判で、子供店長と呼ばれている。

「僕は、子供店長じゃないからね!」

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