目指せ地獄の門 ~改訂版~

黒山羊

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7章・再会の喜び

合流1日目 再会の喜び

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~秘密の決起から、3年後~

集合場所の広場には、レヴィア、ミザリ、リリアスが集合していた。
レヴィアは、久しぶりに会ったミザリに楽しそうに声をかけている。

「ミザリは、どんな成長をしたんだ?」

「へへ、僕は短剣が使えるようになったよ。投げナイフとかも覚えたんだ。」

ミザリも久しぶりのレヴィアとの会話を楽しんでいる様子だ。
そんなミザリにリリアスも笑顔で声をかける。

「ウィンター会長に師事を仰いだんでしょ。会長が楽しそうに話してたわよ。」

「なーんだ。知ってたのか。でも話で聞くより素早くて、ビックリしちゃうかもよ!」

そういってミザリは、ナイフ裁きの動くフリをやって見せる。
手にナイフを持っていないから実感は沸きにくいが、動きに無駄がなく、洗礼されているようにも見える。
レヴィアは、ミザリの成長を素直に喜んでいるようだ。

「そうだな。では、迷宮に入ったら戦闘はミザリに任せようかな。」

「うん。任せてよ!」

冗談のつもりで話したレヴィアだったが、ミザリの自信に満ちた返事に笑顔になる。
ミザリは、レヴィアやリリアスの修業の成果が気になったのか、レヴィアに質問をした。

「レヴィア姉さんたちは、どんな修行をしたの?」

レヴィアが、リリアスに先に説明するように促す。
それに気づいたリリアスが修業の成果を話し始めた。

「ええ、私は錬金術と魔法を融合したのよ。」

そういって、魔法石の塊をとりだした。塊は ソフトボールくらいの大きさで重さもありそうだ。
リリアスが魔法石の塊に念じると、塊は蛇のように動き始めた。

「短い時間なら 私の手を離れていても動かせるようになったの。
 この魔法石を敵の体内にねじ込んで魔法をかければ、敵を内部から魔法で攻撃できるのよ♪」

リリアスは笑顔で楽しそうに錬金魔法の説明をしている。
ミザリは、リリアスの楽しそうな反応に、完全に引いているようだ。

「うえ、可愛い顔して考えることが、きついね。」

リリアスが修業の成果を説明し終えたのを確認し、レヴィアは 自分の習得した技を説明しようと、手ごろな椅子の上に立つ。
すると、背後から声をかけられる。

「レヴィアさん、そんな所に登ったらダメじゃないですか!」

声の方を見ると、そこには一段と綺麗になったアルルがいる。

「ああ、アルルか。」

「ああ、じゃありませんよ。いつまでも子供みたいなことは辞めて下さいよ。」

レヴィアは すこし不服そうな顔をしたが、久しぶりに会えて嬉しかったのだろう、笑顔で椅子から飛び降りた。
ミザリもアルルに駆け寄り声をかけた。

「アルル、騎士団長、おめでとう!」

「いえ、もう少し先の話ですよ。」

少し照れながら返事をするアルルに不思議そうにレヴィアが話しかける。

「アルル、そんなに早く騎士団長になれそうなの?」

レヴィアの反応にリリアスが、軽くため息をつき答える。


「・・・レヴィアは、何にも知らないのね。アルルは、第8騎士団の団長を辞退して、このパーティに戻ってきたのよ。」

「そ、それは、知ってたかもよ。」

明らかに動揺しているレヴィアの横で、ミザリはアルルに質問を続ける。


「ところで、アルルは騎士団長になったくらいだから、凄い剣術を身に着けたとかなの?」

「いえ、まだまだ勉強中ですけど、祖父が残してくれた剣術の基礎は習得しました。他には、盾を使った技とかですね。」

「剣術に盾の技か、かなり騎士っぽくなったね。」

「ふふっ、そうですね。以前は剣術も盾術も未熟でしたから、かなり成長できたと実感してます。
 ・・・ここだけの話、魔装具の英雄の軍剣の力も借りてたんですけどね。」

メンバーは楽しそうに笑いながら会話を続けている。
そんな中、レヴィアは 自分の習得した技術を披露しようと、タイミングを見計らっている。

「あっ、そういえば!」

レヴィアの顔を見たアルルが何かを思い出したかのような表情で声を上げた。
レヴィアは 自分の番だと意識した。

「レヴィアさん、さっきレイザーさんと アレンさんに会いましたよ。
 ちょっと買い物をしてくるって言ったので、もうそろそろ来るんじゃないでしょうか。」

「あ、あの・・・。」

自分の番だと意識していたレヴィアは、返事が遅れる。
そんなレヴィアを気にすることもなく、リリアスがアルルに質問する。

「フラウは、まだアレンを名乗ってるのかしら?」

「ふらう?」

「ええ、アレンは姉の名前で、彼女の本名は フラウ=ロンリアスだったはずだけど。」



「ふーん・・・そうなんだ。」

レヴィアが完全に拗ねている。
他のメンバーも久しぶりの再会で、レヴィアが拗ねていることに気づかないまま会話が止まらないようだ。

「いえ、私はレイザーさんとしか話してなかったから、名前までは聞いてないです。」

「そうなの。じゃあ二人に直接 聞いてみましょうか。」

そういって、リリアスが手を振ると、広場の反対側から レイザーとフラウが歩いてくる。
近寄ってきたレイザーが笑顔で話しかける。

「みんな、ひさしぶりじゃな。わしもこの年になって、こんなに はしゃげると思っとらんかったぞ。」

レヴィアは、レイザーの話し方に喰いつく!

「レイザー、急に老けたね。
 ・・・どうしたの喋り方。」

レヴィアの指摘に、フラウがレイザーを肘で押しながら声をかける。

「ほら、やっぱり言われただろ。だから、うちが直した方がいいって言ったのに。」

「ああ、言われてしまったな。」

レイザーとフラウは、2人で笑っている。
その後、しゃべり方の経緯を話してくれた。

「わしらは暫く冒険したあと、フラウの実家に行っておったんじゃ。ああ、フラウは、彼女のことじゃよ。」

レイザーは、フラウの紹介をする。

「へへ、フラウのことは 知ってるよね。レヴィア姉さん。」

レヴィアたちは頷く。
レイザーとフラウも、メンバーにリリアスが合流していることで察していたようだ。

「それが、長老たちと魔法について 毎日話し合っておったら、話し方が変わってしまってな。」

「彼の話し方は、気にしないであげてよ。」

豪快に笑いながらフラウがフォローする。
そんな2人を見ながら、アルルが思ったことを話し始める。

「そ、そうですよね。話し方が違うせいかな?
 なんだか・・・。」

「急に老けたってこと?」

ミザリが言いにくいことを平気で言う、少し慌てたアルルとレヴィアが無難なフォローをいれる。

「い、いえ、その明るくなったっていうか・・・。」

「あ、ああ、そうだね。アルルの言う通り、なんだか明るくなったね。」


レヴィアとアルルの無難なフォロー?にフラウが答える。

「明るくなったのは、子供ができたからだろ。」



「「「・・・。」」」



沈黙を破り、レヴィアが口を開く。

「えっと、フラウの子?」

「ああ、うちとレイザーの子だよ。乳離れもして、村に預けてきたから問題ない。」

困惑するメンバーにフラウは、何食わぬ顔で答える。
あまりに急な展開、思いもよらなかった展開に、言葉を失うメンバーたち。
そんな中、レヴィアは満面の笑みで祝辞をいう。

「驚きの連続だね!
 2人とも、結婚おめでとう!
 子供は、男の子?女の子?」

「「ありがとう!」」

レイザーとフラウの子供は、女の子で 名前をアリスと言うそうだ。
2人の子供の話で盛り上がったあと、ミザリが何かを思い出したかのように、声を出す。

「ねえ、そういえば・・・。」

次こそは、自分の番だと、レヴィアは意識した。

「2人には二つ名があったよね。どういう経緯で付いたの?」

「ええ、気になりますね。確か、月夜と狂戦士でしたよね。」

アルルも、レイザーとフラウの二つ名を聞いたことがあるようで、ミザリの質問に参加する。

「あの二つ名か。月夜は 日中は子守をしながら魔法の練習で、夜間しか外で修業をしなかったからじゃろうな。」

「狂戦士は、うちのスキルからだろ。」

「いやいや、戦闘が始まると かなり狂暴だからじゃろ。」

2人は楽しそうに笑っている。
その笑いにつられるように、みんな笑顔になる。
リリアスが、周囲を見渡しながらレヴィアに声をかける。

「そういえば、まだエイトさんの姿が見えないわね。」

「ああ、確かに遅いね。」



「・・・。」



「・・・。」



「・・・。」



アルル、ミザリ、レイザーは、何かに気づく。

「おい、3人とも、いったいどうしたんだ?」

フラウが レイザーに話を聞く。
レイザーは不安そうな表情で口を開く。

「いや、まさか・・・。」

不安そうなアルルも、レヴィアに質問する。

「・・・レヴィアさん、エイトさんには集合場所とか、日にちとか、時間とか、ちゃんと伝えてくれましたか?」

「レヴィア姉さん、まさかと思うけど、3年後としか伝えてないんじゃないの?」

レヴィアは、3年前の事を思い出す。







「ああ、エイトには 何も伝えてなかったかも知れない。」

「レヴィア、ちょっと酷いでしょ。エイト どっかで泣いてるんじゃないかしら?」

リリアスは、レヴィアの適当さに呆れている。
メンバーは悲しい表情になっているが、レヴィアの一言で笑顔を取り戻す。

「まあ、エイトだからね。
 いざとなったら魔法で検索して合流するんじゃないかな。」

「それもそうだよね。エイトだもんね。」

ミザリもレヴィアの一言に便乗する。
エイトだから、レヴィアの一言で問題が解決?した、エイトを除くパーティは、宿(冒険者の集い)の酒場に移動した。








~宿(冒険者の集い)の酒場~

「レヴィアちゃん、おかえり!」

「ただいま、女将。いつもの料理を頼むよ。」

女将が先客を別の場所に移動させる。
レヴィアは、いつもの席のいつもの場所に座る。
その光景に、アルルとミザリが笑顔で話をしている。

「なんだか懐かしいですね。」

「ほんと。いまから冒険って思うとワクワクするね。」

パーティは、エイトの事を忘れて食事をとり、酒を飲み、宿で休むことにした。
女将が宿帳を持ってレヴィアの横に立つ。

「レヴィアちゃん、部屋割りは どうするんだい?」

「ああ、部屋割りか。
 レイザー、フラウ。
 アルル、ミザリ。
 私、リリアス。
 みんなは、これでいいかな?」

リリアスが、慌てて反論する。

「レヴィアとだけは、絶対に嫌よ。」

「なぜ?」

「なぜって、私のお気に入りの服を錬金でサイズを変えたり、勝手に化粧道具を使ったり、部屋の掃除までさせるでしょ。」

「いいじゃん。減るもんじゃないし。エイトは笑顔で掃除してたはずだけどな?」

リリアスは、絶対にレヴィアと一緒の部屋にはなりたくないようだ。
いままでにないほど必死なリリアスに全員が笑いだした。
そんなリリアスを、ミザリとアルルがフォローする。

「リリアス、全力で拒否しすぎだよ。
 でも、レヴィア姉さんの相部屋は、エイトで決まりそうだね。」

「ええ、レヴィアさんの相部屋は、エイトさん以外に考えられそうにないですね。」

「・・・あれ?」

「急にどうしたのレヴィア姉さん?」

「いや、一人で部屋を使ったことがなくって・・・。」

「たしか、レヴィアさんと初めて会ったときもエイトさんと一緒でしたよね。」

「ああ、この姿に転生してからエイトかリリアスと相部屋しかない気がする。
 と、いうことは・・・エイトが合流するまでの間、誰が部屋を片付けるんだ?」


(自分でやってよ・・・。)
全員が心の中で呟いたそうだ。



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