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7章・再会の喜び
合流2日目 運命の恋?
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~アルル、ミザリの部屋・再会の夜~
ベットに入り、明かりの消えた部屋で2人は話を始める。
「ねえ、アルル。」
「何ですか?」
「アルルは、まだエイトの事が好きなの?」
「な、何を言ってるんですか!?」
「いや、エイトが来る前に聞いておこうと思って。」
「ええ、その、エイトさんには、憧れみたいなものも有ったんだと思います。でも・・・。」
「いまは?」
「ええ、よく分からないんです。近衛兵の訓練所でも、何度か告白をされたりしたけれど・・・。
その・・・本当は誰が好きとか、愛してるとか、よく分からなくなって。
ミザリさんは、どうなんですか?」
「ああ、私は諦めたよ。種族が違うから、ちょっとね。
・・・でもいいんだ。きっとハーフエルフの男性と素敵な恋に落ちるんだから。
まあ、アルルも若いんだから、たくさんの男性と付き合ってもいいんじゃない?」
「ちょっと誤解しているようですけど、私、誰とも付き合ってないですからね!」
「ほんと?」
「はい!」
「いいなーって人は、まったくいなかった?」
「え、それは・・・。」
「内緒にするから教えてよ!」
「絶対に内緒ですよ!」
「うん。絶対に内緒にするよ!」
「実は メイガス様のお屋敷で、研究員の男性に会ったんですけど、その・・・。」
「どんな人?」
「ええ、いつも仮面を被っているんですけど、背が高くて、優しくて、私がメイガス様のお屋敷に行くと、よろこんで出てきてくれて・・・。」
「一目ぼれ?」
「あの、それは・・・。はい。」
「その男性に何か魅力があったんだろうね。
明日にでも、レヴィア姉さんを誘って、一緒に見に行こうよ!」
「その・・・用がないのに、行けませんよ。」
「用なんて作ればいいんだよ!
アルルの恋を応援しちゃおっかな!」
~翌日~
ミザリは、レヴィアを誘い、3人でアルルの恋の応援をすることに決めた。
レイザー、フラウ、リリアスの3人は、エイトが来るまでに出発の準備をするそうだ。
~メイガスの館の前~
メイガスの館の前に着いた3人は、玄関の外で城のような扉を見上げている。
「なかなか立派な建物だね。」
「うん。ウィンター会長でも、メイガス様に会うことはできないらしいよ。」
「ほら、辞めて帰りませんか?」
レヴィアは、アルルの静止を無視して、扉をノックする。
中から、執事が顔を出す。
「どういったご用件でしょうか。」
「ああ、こちらの研究員と話がしたくて訪ねたんだけど。」
執事は アルルを見つけて何かを察した。
「畏まりました。しばらく、お待ちください。」
しばらく待っていいると、中から先ほどの執事と、目や鼻を隠すような漆黒に輝く仮面を被った背の高い男性が、荷物を担いで出てきた。
アルルの表情から察するに、この仮面の男性が例の研究員のようだ。
仮面の男性は、執事と握手をしながら話している。
「ちょうどよかった。お嬢様たちは、王宮に行ってるからね。いまのうちに逃げ出そう。」
「そうでございますね。お嬢様がいると、一緒に冒険に行きたがりますからね。」
仮面の男性を見たレヴィアは不思議そうな顔をして、小声でアルルに確認する。
「アルル、この仮面?」
「は、はい。」
アルルは顔を赤くして、下を向いている。
そんなアルルとは対照的に冷静な表情のミザリも何かに気づいたようで、レヴィアの服を引っ張り レヴィアの耳元で小声で声をかける。
「レヴィア姉さん、あのさ、もしかして・・・。」
レヴィアは、視線をミザリに向けると、ちょうど仮面の男がレヴィアに近づき質問する。
レヴィアは、ミザリの質問に答える間もなく仮面の男と会話を始めた。
「いつから迷宮に入るの?」
「ああ、2~3日中には入ろうと思ってるよ。」
ミザリは、二人のやり取りを見て確信した。
仮面の男は、レヴィアに確認をとったあと、再度、執事と別れの握手をしている。
「レタスさん、お世話になりました。しばらく町にいるので、何か必要があれば呼んで下さい。」
「こちらこそ、ありがとうごさいました。先生も、お体にお気を付け下さい。」
ミザリは、レヴィアに耳打ちする。
「アルルは、エイトだって気づいてないんじゃないかな?」
「そうだね。いつ気がつくか、観察してみるとしよう。」
レヴィアとミザリはニヤける。
そのままレヴィアは、わざとらしい会話を仮面の男性(エイト)と始める。
「ああ、私はレヴィアで、こっちはミザリ。アルルは知ってるよね。」
「もちろん。いきなりどうしたの?」
アルルに気づかれる前に、ミザリが大きな声で誤魔化す。
「さあ、みんなで宿に向かおうよ!
そこで話をすればいいじゃん。僕も疲れちゃったよ。」
ミザリの一言に激しく動揺するアルル。
「そ、その、えっと、一緒に宿に向かうんですか!?」
「え?別行動にするの?」
わざとらしい会話が続いていたが、緊張しているアルルや、感の鈍い仮面の男(エイト)には気づかれていないようだ。
そこで、レヴィアがアルルの一言に対して機転をきかせる。
「いい!いい案だね。アルルの言う通り、2人で宿に向かえばいいよ。」
「そうだね!レヴィア姉さんと僕は買い物をして帰ることにするからさ。」
レヴィアとミザリは、笑いたいのを我慢して反対方向に急ぎ足で去っていった。
去っていく2人に、激しく動揺していたアルルがさらに顔を赤くして困っている。
「あ、そんな、2人とも置いていかないで下さいよ。」
「まあ、買い物に一緒に行ってもね・・・。
アルル、先に宿に移動しようか。」
「は、はい!」
アルルは、ずっと下を向いたまま、顔を赤くしている。
レヴィアとミザリは、レヴィアが借りたままにしていた、魔装具(隠密の指輪)を発動し、堂々と後をつける。
アルルたちは、無言のまま宿へと歩いていく。
「ミザリ、2人の会話が全然ないな。」
「ちょっと手伝おうか。」
ミザリは、近くに落ちていた小石を拾い、アルルの前を歩く冒険者に投げつける。
コツン!
「いて!
なにすん・・・。」
冒険者は、後ろを振り向くが、騎士団長アルルが有名で絡んでこない。
「浅はかな作戦だったね。」
「ごめん。失敗だった。
レヴィア姉さん、もうすぐ町の入り口だよ。何か作戦はない?」
「・・・そうだな。
先回りして、宿の前で準備しよう!」
2人は、楽しそうに先回りを始める。
アルルたちは、町の広場を歩いている。
町の雰囲気も、この3年間で大きく変わり、住んでいる住人もかなり多くなった。
仮面の男は、研究所に籠りっ放しだったのか、変わった町の雰囲気を感じながら楽しそうに歩いている。
もちろん、歩幅はアルルに合わせながら。
アルルは、そんな優しさを感じ、一緒に歩いているだけなのに、心地よささえ感じていた。
そんな雰囲気も手伝ってか、アルルは 意を決して質問する。
「あの、質問してもいいですか?」
「なに?」
「どうして、私に優しくしてくれるんですか。
・・・いつも不思議だったんです。」
「なぜって、初めて出会った時から好きだったからだよ。
初めて出会ったときから、君にずっと支えられてる。」
仮面の男は、アルルの方を見る。
アルルは、仮面の中の瞳を見つめる。
優しい黒い瞳に吸い込まれそうになる感じがした。
「・・・でも、そんなに私たち、」
2人が話をしていたとき、女性の悲鳴のような声がきこえる。
町の外から、衣服の乱れた貴族の女性が、叫びながら走ってくる。
そんな女性の元に、周囲の冒険者たちが駆けつける。
「だれか、だれか助けて下さい。町の外で子供が誘拐されたんです!」
「落ち着いて、いったい何が?」
「マ、マムシ山賊団と名乗っていました。どうか、どうか子供を助けて下さい。
おねがい、お願いします・・・。」
「マムシっていえば・・・。」
周囲の冒険者は、貴族の女性から目を背けだす。
マムシ山賊団といえば、この2~3年で規模を大きくしている山賊団で、団員数が200~300はいるという。
資金源は不明だが、装備の質もよく、騎士団も手を焼いている山賊だ。
「おねがい、誰か、誰か助けてください。
お願い、お願いします、、誰か・・・。」
しかし、誰も助けようとしない。
「アルル、すぐに騎士団に知らせてくれ。」
そういうと、仮面の男は貴族の女性の元に走り寄った。
仮面の男は場所を確認すると、他の冒険者から馬を借り、町の外へ走り去った。
アルルは、騎士団の詰所に行き事情を説明し、騎士隊を編成し共に行動する。
アルルたち騎士隊が、襲われた場所にたどり着くと、近くの森の中で黒い煙が上がっていいる。
黒い煙を見つけた騎士隊隊長がアルルに報告する。
「アルル様、あちらの煙の方ではないでしょうか。」
「ええ、すぐに進みましょう!」
アルルたち騎士隊が森の中に進行しようとすると、森の道から馬車が現れる。
仮面の男の率いる馬車には、誘拐された子供や若い女性が救出されていた。
仮面の男は、アルルたち騎士隊を見つけると、誘拐されていた子供や女性たちに声をかける。
「みんな、もう大丈夫だよ。」
そんな仮面の男に騎士隊隊長が駆け寄り、敬礼し声をかける。
「エイト様、ご協力感謝いたします!」
「え、い、と?」
騎士隊隊長の声が聞こえたアルルは、首を傾げている。
「隊長、この先に山賊の根城がある。
いまは気を失っているが、起きると厄介だろう。今のうちに捕らえてもらいたいのだけど。」
「はい、直ちに向かいます!」
騎士隊長は、馬車の護衛と輸送に数名の騎士を残し、森の奥へと移動した。
仮面の男は、馬車を騎士に預け、アルルの元に駆け寄った。
アルルも馬を降り、仮面の男に近づく。
「あの、あなたは?」
仮面の男は、漆黒の仮面を取る。
そこには、エイトと雰囲気のよく似た男性の姿がある。
その優しい目や澄んだ黒い瞳は、エイトと同じだが、顔は整い大人の魅力の中に、笑うと あどけなさが残る。
アルルは、エイトを見上げる自分の顔が、熱くなっていくのに気づく。
「もしかして、背が伸びたから気づかなかった?」
「え、ええ、少しだけ。エイトさん、その・・・。」
アルルは、仮面の男(エイト)が話していた、「初めて出会った時から好きだった・・・。」の言葉を思い出し、思考が停止する。
「どうしたの? アルル、宿に戻ろうか。」
「!!! はい!」
アルルは、最高の笑顔で返事をし、エイトと手をつなぐ。
馬を引き、いままでの事を話しながら、ゆっくり歩き、宿を目指す。
~宿(冒険者の集い)の前~
外に置かれた樽の陰に隠れる2つの人影があった。
「へっくしゅん!」
「レヴィア姉さん、2人とも遅くない?」
「ああ、まさかとは思うが、違う種類の宿に直行していったんじゃないだろうか・・・。」
ベットに入り、明かりの消えた部屋で2人は話を始める。
「ねえ、アルル。」
「何ですか?」
「アルルは、まだエイトの事が好きなの?」
「な、何を言ってるんですか!?」
「いや、エイトが来る前に聞いておこうと思って。」
「ええ、その、エイトさんには、憧れみたいなものも有ったんだと思います。でも・・・。」
「いまは?」
「ええ、よく分からないんです。近衛兵の訓練所でも、何度か告白をされたりしたけれど・・・。
その・・・本当は誰が好きとか、愛してるとか、よく分からなくなって。
ミザリさんは、どうなんですか?」
「ああ、私は諦めたよ。種族が違うから、ちょっとね。
・・・でもいいんだ。きっとハーフエルフの男性と素敵な恋に落ちるんだから。
まあ、アルルも若いんだから、たくさんの男性と付き合ってもいいんじゃない?」
「ちょっと誤解しているようですけど、私、誰とも付き合ってないですからね!」
「ほんと?」
「はい!」
「いいなーって人は、まったくいなかった?」
「え、それは・・・。」
「内緒にするから教えてよ!」
「絶対に内緒ですよ!」
「うん。絶対に内緒にするよ!」
「実は メイガス様のお屋敷で、研究員の男性に会ったんですけど、その・・・。」
「どんな人?」
「ええ、いつも仮面を被っているんですけど、背が高くて、優しくて、私がメイガス様のお屋敷に行くと、よろこんで出てきてくれて・・・。」
「一目ぼれ?」
「あの、それは・・・。はい。」
「その男性に何か魅力があったんだろうね。
明日にでも、レヴィア姉さんを誘って、一緒に見に行こうよ!」
「その・・・用がないのに、行けませんよ。」
「用なんて作ればいいんだよ!
アルルの恋を応援しちゃおっかな!」
~翌日~
ミザリは、レヴィアを誘い、3人でアルルの恋の応援をすることに決めた。
レイザー、フラウ、リリアスの3人は、エイトが来るまでに出発の準備をするそうだ。
~メイガスの館の前~
メイガスの館の前に着いた3人は、玄関の外で城のような扉を見上げている。
「なかなか立派な建物だね。」
「うん。ウィンター会長でも、メイガス様に会うことはできないらしいよ。」
「ほら、辞めて帰りませんか?」
レヴィアは、アルルの静止を無視して、扉をノックする。
中から、執事が顔を出す。
「どういったご用件でしょうか。」
「ああ、こちらの研究員と話がしたくて訪ねたんだけど。」
執事は アルルを見つけて何かを察した。
「畏まりました。しばらく、お待ちください。」
しばらく待っていいると、中から先ほどの執事と、目や鼻を隠すような漆黒に輝く仮面を被った背の高い男性が、荷物を担いで出てきた。
アルルの表情から察するに、この仮面の男性が例の研究員のようだ。
仮面の男性は、執事と握手をしながら話している。
「ちょうどよかった。お嬢様たちは、王宮に行ってるからね。いまのうちに逃げ出そう。」
「そうでございますね。お嬢様がいると、一緒に冒険に行きたがりますからね。」
仮面の男性を見たレヴィアは不思議そうな顔をして、小声でアルルに確認する。
「アルル、この仮面?」
「は、はい。」
アルルは顔を赤くして、下を向いている。
そんなアルルとは対照的に冷静な表情のミザリも何かに気づいたようで、レヴィアの服を引っ張り レヴィアの耳元で小声で声をかける。
「レヴィア姉さん、あのさ、もしかして・・・。」
レヴィアは、視線をミザリに向けると、ちょうど仮面の男がレヴィアに近づき質問する。
レヴィアは、ミザリの質問に答える間もなく仮面の男と会話を始めた。
「いつから迷宮に入るの?」
「ああ、2~3日中には入ろうと思ってるよ。」
ミザリは、二人のやり取りを見て確信した。
仮面の男は、レヴィアに確認をとったあと、再度、執事と別れの握手をしている。
「レタスさん、お世話になりました。しばらく町にいるので、何か必要があれば呼んで下さい。」
「こちらこそ、ありがとうごさいました。先生も、お体にお気を付け下さい。」
ミザリは、レヴィアに耳打ちする。
「アルルは、エイトだって気づいてないんじゃないかな?」
「そうだね。いつ気がつくか、観察してみるとしよう。」
レヴィアとミザリはニヤける。
そのままレヴィアは、わざとらしい会話を仮面の男性(エイト)と始める。
「ああ、私はレヴィアで、こっちはミザリ。アルルは知ってるよね。」
「もちろん。いきなりどうしたの?」
アルルに気づかれる前に、ミザリが大きな声で誤魔化す。
「さあ、みんなで宿に向かおうよ!
そこで話をすればいいじゃん。僕も疲れちゃったよ。」
ミザリの一言に激しく動揺するアルル。
「そ、その、えっと、一緒に宿に向かうんですか!?」
「え?別行動にするの?」
わざとらしい会話が続いていたが、緊張しているアルルや、感の鈍い仮面の男(エイト)には気づかれていないようだ。
そこで、レヴィアがアルルの一言に対して機転をきかせる。
「いい!いい案だね。アルルの言う通り、2人で宿に向かえばいいよ。」
「そうだね!レヴィア姉さんと僕は買い物をして帰ることにするからさ。」
レヴィアとミザリは、笑いたいのを我慢して反対方向に急ぎ足で去っていった。
去っていく2人に、激しく動揺していたアルルがさらに顔を赤くして困っている。
「あ、そんな、2人とも置いていかないで下さいよ。」
「まあ、買い物に一緒に行ってもね・・・。
アルル、先に宿に移動しようか。」
「は、はい!」
アルルは、ずっと下を向いたまま、顔を赤くしている。
レヴィアとミザリは、レヴィアが借りたままにしていた、魔装具(隠密の指輪)を発動し、堂々と後をつける。
アルルたちは、無言のまま宿へと歩いていく。
「ミザリ、2人の会話が全然ないな。」
「ちょっと手伝おうか。」
ミザリは、近くに落ちていた小石を拾い、アルルの前を歩く冒険者に投げつける。
コツン!
「いて!
なにすん・・・。」
冒険者は、後ろを振り向くが、騎士団長アルルが有名で絡んでこない。
「浅はかな作戦だったね。」
「ごめん。失敗だった。
レヴィア姉さん、もうすぐ町の入り口だよ。何か作戦はない?」
「・・・そうだな。
先回りして、宿の前で準備しよう!」
2人は、楽しそうに先回りを始める。
アルルたちは、町の広場を歩いている。
町の雰囲気も、この3年間で大きく変わり、住んでいる住人もかなり多くなった。
仮面の男は、研究所に籠りっ放しだったのか、変わった町の雰囲気を感じながら楽しそうに歩いている。
もちろん、歩幅はアルルに合わせながら。
アルルは、そんな優しさを感じ、一緒に歩いているだけなのに、心地よささえ感じていた。
そんな雰囲気も手伝ってか、アルルは 意を決して質問する。
「あの、質問してもいいですか?」
「なに?」
「どうして、私に優しくしてくれるんですか。
・・・いつも不思議だったんです。」
「なぜって、初めて出会った時から好きだったからだよ。
初めて出会ったときから、君にずっと支えられてる。」
仮面の男は、アルルの方を見る。
アルルは、仮面の中の瞳を見つめる。
優しい黒い瞳に吸い込まれそうになる感じがした。
「・・・でも、そんなに私たち、」
2人が話をしていたとき、女性の悲鳴のような声がきこえる。
町の外から、衣服の乱れた貴族の女性が、叫びながら走ってくる。
そんな女性の元に、周囲の冒険者たちが駆けつける。
「だれか、だれか助けて下さい。町の外で子供が誘拐されたんです!」
「落ち着いて、いったい何が?」
「マ、マムシ山賊団と名乗っていました。どうか、どうか子供を助けて下さい。
おねがい、お願いします・・・。」
「マムシっていえば・・・。」
周囲の冒険者は、貴族の女性から目を背けだす。
マムシ山賊団といえば、この2~3年で規模を大きくしている山賊団で、団員数が200~300はいるという。
資金源は不明だが、装備の質もよく、騎士団も手を焼いている山賊だ。
「おねがい、誰か、誰か助けてください。
お願い、お願いします、、誰か・・・。」
しかし、誰も助けようとしない。
「アルル、すぐに騎士団に知らせてくれ。」
そういうと、仮面の男は貴族の女性の元に走り寄った。
仮面の男は場所を確認すると、他の冒険者から馬を借り、町の外へ走り去った。
アルルは、騎士団の詰所に行き事情を説明し、騎士隊を編成し共に行動する。
アルルたち騎士隊が、襲われた場所にたどり着くと、近くの森の中で黒い煙が上がっていいる。
黒い煙を見つけた騎士隊隊長がアルルに報告する。
「アルル様、あちらの煙の方ではないでしょうか。」
「ええ、すぐに進みましょう!」
アルルたち騎士隊が森の中に進行しようとすると、森の道から馬車が現れる。
仮面の男の率いる馬車には、誘拐された子供や若い女性が救出されていた。
仮面の男は、アルルたち騎士隊を見つけると、誘拐されていた子供や女性たちに声をかける。
「みんな、もう大丈夫だよ。」
そんな仮面の男に騎士隊隊長が駆け寄り、敬礼し声をかける。
「エイト様、ご協力感謝いたします!」
「え、い、と?」
騎士隊隊長の声が聞こえたアルルは、首を傾げている。
「隊長、この先に山賊の根城がある。
いまは気を失っているが、起きると厄介だろう。今のうちに捕らえてもらいたいのだけど。」
「はい、直ちに向かいます!」
騎士隊長は、馬車の護衛と輸送に数名の騎士を残し、森の奥へと移動した。
仮面の男は、馬車を騎士に預け、アルルの元に駆け寄った。
アルルも馬を降り、仮面の男に近づく。
「あの、あなたは?」
仮面の男は、漆黒の仮面を取る。
そこには、エイトと雰囲気のよく似た男性の姿がある。
その優しい目や澄んだ黒い瞳は、エイトと同じだが、顔は整い大人の魅力の中に、笑うと あどけなさが残る。
アルルは、エイトを見上げる自分の顔が、熱くなっていくのに気づく。
「もしかして、背が伸びたから気づかなかった?」
「え、ええ、少しだけ。エイトさん、その・・・。」
アルルは、仮面の男(エイト)が話していた、「初めて出会った時から好きだった・・・。」の言葉を思い出し、思考が停止する。
「どうしたの? アルル、宿に戻ろうか。」
「!!! はい!」
アルルは、最高の笑顔で返事をし、エイトと手をつなぐ。
馬を引き、いままでの事を話しながら、ゆっくり歩き、宿を目指す。
~宿(冒険者の集い)の前~
外に置かれた樽の陰に隠れる2つの人影があった。
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