伝説の六勇者(従者リュートの物語)

53.

53.

湿地と草原の境目までくると、リノは腰につけた袋から、見たこともない不思議な木の実を取り出した。


「リュート兄ちゃん、馬を逃しといてくれよ。いまから大牛を連れてくるからさ。」

「大牛を連れてくる？」


リノは手に持った 不思議な木の実を見せながら説明する。

「こいつで大牛を懐かせるのさ、まあ楽しみに待ってなって！」

リノは馬車の上から周囲を見渡すと 何かを見つけ、一目散に駆け出した。



暫くすると、遠くの方から巨大な牛の背に乗ったリノが君に手を降っていた。
巨大な牛は 近くで見ると迫力がある大きさで、大人のアフリカゾウほどの大きさがあり、その体毛は地面につくほど長く硬い。
リノは器用に牛から滑り降りると、牛の角に紐をかけながら自慢げに君を見上げた。

「リュート兄ちゃん、コイツに馬車を引いてもらうんだぜ！
　コイツと一緒なら、カバもワニも襲ってこないからさ。」

「そだな...ん？
　ワニ？」


君の不思議そうな表情に、リノが呆れながらもワニについて答える。


「リュート兄ちゃん、ワニも知らないのかよ。
　ワニってのは、全身を硬い皮で守ってて、細長い口に並んだ鋭い歯で噛み付いてくる、湿地帯の捕食者だよ。ちなみに数が多いから 湿地で泳ごうとか考えるなよ！」

（あ、あれ？
　フカワって、いったい何なんだ？）