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54.

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54.

リノは巨大な大牛の毛を掴みながら大牛の背に登ると、角にロープを結んだ。

「リュート兄ちゃん、準備OK!」

リノはスルスルと大牛の背からロープを使い降りてくると、ロープの反対側を馬車の先端に結びつけた。
そして、大牛に進むように号令をかけると、リノの言葉を理解したのだろうか、大牛は 湿地を目指し進み始めた。馬車を引く大牛が湿地に生える、人の背丈ほどある背の高い草の中に入っていく。

「これなら湿地も楽に移動でき...リノ!
 この湿地、思ったよりも深そうだぞ!!!」

前を進んでいた大牛の高さは5~6mはあるだろう。しかし、その大牛も湿地を進んでいくと背の高い草から背中がかろうじて見えるくらいまで沈んでいる。
ざっと考えても、水深3mはありそうだ。

「大丈夫だよ、リュート兄ちゃん。だって馬車だぜ。」

リノの安心しきった根拠が分からない。馬車は大牛に引きづられながら、湿地の ぬかるみを前に前にと進んで行く。すると!

ザッパーン!
ザブ、ザブ、ザブ。

馬車は舟のように水に浮かび、大牛に引かれながら水面を移動していく。
これは偶然なのだろうか。
いや、馬車の構造をよく思い返せば流線型の構造だった気もする。
おそらく、馬車は舟の代わりにもなるのだろうか?
そんな事を考える君に、リノがイタズラっぽく声をかけてきた。

「驚いただろ?
 この馬車は高級品だから湿地では舟になるんだぜ。
 ちょっと見た目がアレだけどな。」



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