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84.

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「あいつなら、水の中に沈んでいったぜ。」

君は周囲の人たちに支えられながら上体を起こす。
君の視界には、深い水に沈む建物の残骸と、その深い水の中、動くことを諦めた、重装のネットの姿が見えた。

「あいつ、さっきまで起き上がろうとしてたけど、いまは動くのも諦めたみたいだぜ。
 でも、何で地下に大きな水たまりが、あるって分かったんだ?」

君はリノの質問に、優しい笑顔で答えた。

「さあ、何故だろうな。
 そんな気がした...からかな。」

「なんだよ、それ。」

君もリノも、街の人たちも、君の優しい笑顔につられ、自然と笑顔を見せる。


「でも、悪魔は死んだら魂になって逃げるんだろ?
 無風のムジョルみたいに。
 そしたら、いつかは...。」

君が疑問を口にしようとした時、君の頭に声が響き渡る。

(アンシン シテヨ。
 コノ悪魔ハ聖域デ アバレスギタ。
 モウスグ、モウスグ。
 水辺カラハナレルンダヨ。
 カノジョハ タンキダカラネ。)

(水辺から離れる?)

君は何度も救ってくれた頭の中の声にしたがい、周囲の人たちに指示を出す。

「みんな、急いで水辺から離れるんだ!」

水辺を取り囲んでいた人たちは、君の言葉に従い、全員が距離をとった。

「リュート兄ちゃん、何が起きるのさ?」
「バベル王、説明していただけませ、」

ダガガガーン!

突如、激しい雷音と共に、周囲を閃光が包み込む。


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