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ニートのち魔界王
036・永遠の祈り(前編)
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永遠の祈り
それは 天界に咲く美しい花であり、天使たちの死後の姿でもある。
その花の蜜は甘く、その蜜を薄めた飲み物を発酵させ酒を造り、年に1度 使者を敬うという天使の風習もあった。
名前の由来は、花の特徴から名付けられていて、亡くなった天使たちを想う気持ちから つけられたものである。
この花は、どこにでも咲き、天使の間では日常的な親しみのある花であった。
女神ディーテが世界樹へと姿を変えてから、魔王城では いくつかの変化が起きていた。
エイルシッドとディーテの子、マリーは 体調は良くなったのだが、母を失った悲しみから 笑わなくなり部屋に閉じこもり、最低限の用事以外、部屋から出ることがなくなった。
女神ディーテを慕っていた悪魔や使い魔たちも、どことなく暗く落ち込んでいるのが目に見えて分かった。
もちろん、エイルシッドも落ち込んでいる人物の一人であった・・・。
~魔王城の廊下~
ザイルが廊下を歩いている。
ふと1つの扉の前で立ち止まると、部屋をノックする。
コンコン!
ノックをした ザイルが扉越しに声をかける。
「マリー、ちょっといいかな?」
「・・・お兄様?」
「うん。そうだよ。
マリーと話をしようと思ってね。」
カチャ。
使い魔のハンがザイルを部屋の中へと通す。
部屋の中には ベッドの上にパジャマのまま ひどく落ち込んでいるマリーの姿と、心配して見守りを続けている使い魔のハンの姿があった。
ザイルがマリーに近づくと、使い魔のハンは ザイルと入れ替わるように外に出ていく。
ザイルは、ゆっくりとマリーの座るベッドに近づき、優しく声をかける。
「マリー、マリーが落ち込んでいると神界で休養している ディーテお母さんも悲しんでしまうよ。
マリーが元気を・・・。」
ザイルの言葉を遮るように、マリーが答える。
「私、知ってる。」
「何を?」
「お母様が 死んでしまったこと。」
「マリー、いったい何を・・・。」
「・・・この世界から お母様の魂を感じることが出来ない。
お父様には内緒にしていたけれど、私には魂を感じる力があるの。」
「そうなんだ。
・
・
・
マリーの感じているとおり、ディーテお母さんは もう天魔界には居ない。」
「・・・なんで?」
「ディーテお母さんは、マリーを・・・天魔界の未来を守る為に・・・。」
「違う!!!
私が怒ってるのは、そうじゃない!
なんで、みんな隠そうとするの!
私が知らないと思ってるから?
話さなかったらバレないと思ってるから?
私は、お父様のように周囲を見渡す力がある。
私は、お母様のように世界の魂を感じ取れる。
私だって家族なんだよ!
なんで・・・。
なんで 私には話してくれなかったの?」
マリーは 手のひらにエイルシッドと同じように炎を作り出す。
その炎は エイルシッドの作り出す炎より明るく光を放っている。
「マリー、その炎は・・・。」
「全てを見通す力、全てを繋ぐ炎。
周囲に存在する 全ての炎と繋ぐことが出来る能力。
私の場合は、お母様の力を使って、この世界に存在する全ての炎と繋ぐことができる。
・
・
・
神界にも お母様の姿を見つけることはできない・・・。」
「マリー、隠しててごめん。
でも、みんなマリーを傷つけたくなかったから・・・。
・
・
・
お母さんに会いに行かないか。
お母さんは 世界樹に生まれ変わったんだ。
きっと、マリーが会いに行けば喜んでくれると思う。
僕と一緒に会いに行ってくれないか?」
「・・・はい。
お兄様、準備したら部屋から出ます。
魔王城の外で待っていて下さい。」
マリーは 義兄ザイルの提案を受け入れたようで 力なく返事をすると準備を始める。
ザイルは パジャマを脱ぎ始めたマリーに気を使い、急いで部屋を出ることにした。
(マリーは 無神経な部分があるな・・・。
きっと、エイルシッド王に似た部分なんだろうな。)
その後、魔王城の正門で マリーと合流したザイルは、マリーを抱きかかえて世界樹の方へと飛び去って行った。
世界樹で何かを感じることが出来たのだろうか、帰り道、マリーは久しぶりに 笑顔を見せていた。
それから、4000年の間、魔界は平穏な日々が流れていた。
魔界王エイルシッドが統治する魔界では、魔王同士の領土を奪い合う争いは行われず、魔界の住人たちの生活水準も 安心して暮らせる水準まで向上していった。
エイルシッドは、世代の変わってしまった天界に住む天使たちとも停戦協定を結んでいた。
ごくまれに、魔王同士の争いや、一部の過激な天使からの攻撃といった戦闘は起きていたが、悪魔たちは 気にすることもなかったという。
しかし、4000年たったある日、事件が起きる。
~魔王城・王座の間~
いつものように王座に座り、炎を眺めながら時間を潰すエイルシッドの元に、使い魔のエンマが駆け寄って来た。
「エイルシッド王、いますぐ全ての魔王に連絡をしてほしいニャン。
天界からの貢ぎ物の酒に、毒が盛られていたみたいニャン!」
「毒?」
「おそらく 永遠の祈りという、魔界に咲く猛毒の花だと思うニャン。
その毒を口にすれば、深い眠りに落ちてしまう危険な毒なんだニャン!」
「深い眠りって・・・。
酒を飲めば眠くなるだろ。」
エイルシッドの横で話を聞いていた リッチモンドがエイルシッドに声をかける。
「エイルシッド王、永遠の祈りは、猛毒で間違いございません。
一度 口にすれば、2度と目覚めないと言われております。」
「・・・分かった。
リッチモンド、全ての魔王に伝令を飛ばせ。
魔王城にある天界からの貢ぎ物は全て確認後廃棄せよ。
俺はロロノアの城に行ってくる。」
「畏まりました。」
「了解ニャン!」
エイルシッドは、王座の間を飛び出し、隣領土の友人ロロノアの元へ急いだ。
~大魔王ロロノアの城~
エイルシッドがロロノアの城に入ると、ロロノアが駆け寄ってくる。
「おお!
エイルシッド王、ちょうどよかった!
実は、天界からの・・・。」
「やはり・・・。
実は、俺も猛毒の件をロロノアに伝えに来たんだ。」
「おお!
我が主の心遣い、冥界の谷よりも深き慈悲深さ!」
「・・・しかし、天界の連中は わざわざ争いを起こすような真似をしたんだ?」
「我々への挑戦でしょう!
我が軍勢は、天界へ攻撃を開始する準備ができております。
あとは、エイルシッド王の命令を待つばかりです。」
「・・・攻撃は待ってくれ。
俺が天界に行って、事実を確認してくる。
天使ではない、他の誰かが貢物に毒を盛った可能性もあるからな。」
「畏まりました。」
ロロノアは、配下の悪魔に命令をだす。
エイルシッドは、天界に向けて再び飛び立っていった。
~天界・神殿跡~
神殿跡とは、何千年も前に天界に住んでいた神々が建てた建物の跡地である。
いまは その神殿の横に別の建物を建て、そこで天使たちは天界の管理をしている。
エイルシッドが神殿跡に降り立つと、武装した天使兵たちがエイルシッドに近寄り声をかけてきた。
エイルシッドは、武装した天使兵に声をかける。
「武器を下ろしてくれ。
魔界王エイルシッドが 天界の代表者に会いに来た。
贈り物の礼を述べに来たのだ。」
「・・・長官に確認してきます。
しばらく こちらでお待ちください。」
天使兵の隊長らしき人物は エイルシッドに武器を構え見張ったまま、使いの天使を走らせた。
数分後、使いの天使が戻ってきて天使の隊長らしき人物に声をかける。
隊長らしき人物は 武器を下ろし、エイルシッドに声をかけた。
「エイルシッドよ、ベルゼブイ長官がお会いになるそうだ。」
エイルシッドは 天使の案内で新しく建てられた神殿へと入っていく。
案内されながら、エイルシッドは考えていたことがあった。
(ベルゼブイ長官・・・?
まさか、大魔王ベルゼブイなのか?
もしかして、俺への復讐?
いや、記憶を無くしているみたいだったから、やはり事故なのか?
それとも、思い出して復讐を始めたのか?
・
・
・
まずは、ベルゼブイに会ってみて判断しよう。)
エイルシッドは 案内されるまま、神殿の奥にある長官室へと通される。
長官室の中に入ると、そこには 悪魔から邪神の瞳を使い天使へと変わったベルゼブイの姿があった。
ベルゼブイは 案内してきた天使に、持ち場へと戻るように指示し、エイルシッドに話しかける。
「初めまして。
わしが天界の長官をさせてもらっているベルゼブイだ。
魔界王エイルシッド殿、今回は どういった用件でいらっしゃったのですかな?」
「何かの手違いかもしれないが、天界からの贈り物の酒に 毒が含まれていたんだ。
俺の所に送られた酒以外でも毒を確認できた。天使たちが直接 魔王城に持ってきたから魔界で入れられた物だとは考えにくい。
そこで、もしかすると天界で毒が混入されたんじゃないかと考えたんだ。」
「なるほど、悪魔に恨みを持つ者も少なくはありませんからな。
念のために 調べさせましょう。
ちなみに毒の種類などは分かりましたかな?」
「ああ、永遠の祈りだそうだ。」
「永遠の祈り・・・?
天使が生まれ変わった姿の花ですな。
どうして、その花が猛毒を含んでいるのでしょうか。」
「魔界に咲く永遠の祈りには 毒が含まれているようなんだ。」
「なるほど。
悪魔への恨みが猛毒へ進化するのでしょう。
やはり・・・。
いえ、なんでもありませんぞ。
さっそく天界でも真相を調べてみましょう。」
エイルシッドは、天使長ベルゼブイと約束をし魔界へと帰還した。
~魔王城~
「ただいまー!」
「あ、エイルシッド王ニャン!」
「「「おかえりなさいニャーン!」」」
「エイルシッド王、魔界は大変なことになっているニャン。
ロロノア以外の大魔王が、永遠の祈りの毒で眠りに落ちてしまっているニャン。」
「しかも、永遠の祈りの毒を治療するという名目で、大魔王を始め 眠りについた悪魔たちを天界に連れ帰っているらしいニャン。」
「やはりな・・・。
みんな、聞いてくれ。
今後、天界との交流は断絶させる。
しかし天使を虐げるようなことがあってはならない。
おそらく、天界の誰かが仕込んだ罠だろうからな。
・
・
・
それと、マダム・オカミに伝令を送り、魔王城に招集してくれ。
ベルの件で大事な話があると伝えればいい。」
「「「了解ニャン。」」」
エイルシッドが命令を出し終えたとき、エイルシッドの元に一匹の使い魔が駆け込んできた。
「エイルシッド王、大変ッス!
マリー様が永遠の祈りを口にしたみたいッス!」
「「「!!?」」」
エイルシッドは 使い魔のハンの言葉を聞くと、マリーの寝室へと一直線に駆けていった。
(そんな!
・・・まさか!
でも、いったいなぜ!?)
エイルシッドがマリーの寝室に着くと、そこには泣き崩れるザイルの姿があった。
ザイルは、エイルシッドを見ると、床に頭をつけながら何度も何度も泣きながら詫び続ける。
「ごめんなさい。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
ごめんなさい。」
「ザイル、何があったんだ?
いったい何が・・・。」
エイルシッドの問いに、泣きながら謝り続けるザイルに代わり、遅れて駆け込んできたハンが答える。
「ザイル様が持ち帰ってきた薬が、永遠の祈りだったッス。」
「永遠の祈り!?
ザイル!!!
どこで その薬を手に入れたんだ!!!」
エイルシッドの怒鳴り声で我に返ったザイルが、泣きながら答える。
「エンジェル横丁の露店を見て回っていた時に、天使から声をかけられたんです。
その天使は、昔 エイルシッド王に助けられた恩を返したいと言って、夢の中で会いたい人に会える薬を渡してきました。
僕は天使からエイルシッド王に渡すように頼まれたのですが、マリーがお母さまに会いたがっていたのを知っていたから・・・。
最初に僕が一口だけ毒見をして何もなかったから、マリーに残りを渡しました。」
「ザイル様は 嘘をついてるニャン。
永遠の祈りは、悪魔が飲めば わずか一口でも数百年の眠りにつくと書かれていたニャン。」
「そうだニャン。
エンマの言ったとおりニャン。
魔界劇毒百科事典は 俺も見たニャン。
その本に書かれていたニャン。」
「お前は、正当な王位継承者のマリー様が邪魔になったから殺そうとしたんだニャン!
俺も人間だった頃、王位継承で揉めたから分かるニャン。」
「絶対に違う!
僕は マリーを傷つけたりしない!」
使い魔たちの言葉に強く反論するザイルに味方するように、ハンが使い魔たちの前に立ち声をあげる。
「エイルシッド王、俺もザイル様は何も知らなかったと思うッス。
マリー様とザイル様は兄妹以上にお互いを認め合っていたッス。
・
・
・
ザイル様は成人したら独立し、自分の力で立派な魔王になり、マリー様を迎えに来る約束をしていたッス。
このことは、マダム・オカミも知っているッス。
ザイル様にマリー様を傷つける理由がないッス。」
「・・・ザイル。」
「エイルシッド王・・・。」
「お前は追放だ。
マリーに永遠の祈りを与えたのは、事故だったのかもしれん。
しかし・・・。」
「エイルシッド王、マリーは・・・。
マリー様は必ず目を覚まします。
おそらく僕に永遠の祈りの毒が効きにくかったのは天使の血が多く流れていたからかもしれません。
マリー様の場合、悪魔の血が強く いまは眠りについているだけだと思います。
・
・
・
エイルシッド王、6鬼神の皆さん、何があってもマリー様を守り続けると約そ・・・。
何があってもマリー様を守り続けると契約してください。
そうすれば、僕も安心して追放を受け入れます。」
「・
・
・
分かった。
俺は何があってもマリーを守り続けると、マリーに誓い契約しよう。」
「俺も何があってもマリー様を守り続けると契約するッス。」
「「「俺らもマリー様を守り続けると契約するニャン!」」」
エイルシッドや使い魔たちに、マリーの紋章である、ピラミッドの上に天使の輪が入った紋章が光り輝き刻まれていく。
マリーの紋章を確認したザイルは、深々と頭を下げた。
「エイルシッド王、ありがとうございます。」
ザイルは エイルシッドに礼をすると、静かにマリーの寝室から出ていった。
「エイルシッド王、本当によかったんスか?」
「・・・。」
「涙を流すくらいなら、引き止めればいいニャン。」
「俺も、ザイル様に言い過ぎたかもしれないニャン。」
「もっと冷静にならなくちゃダメだったニャン。」
後を追おうとする使い魔をエイルシッドが止める。
「ザイルを追わなくていい。
・・・追ってはならない。」
「「「・・・了解ニャン。」」」
~見晴らしの丘~
ザイルは、義母ディーテだった世界樹の前に立っていた。
黙とうを捧げるザイルの背後に、人影が現れる。
「ザイル。」
ザイルは慌てたように振り返り、頭を下げる。
「エイルシッド王、すみません。
すぐに旅立ちます。」
「・・・いや、母との別れだ気にすることはない。」
「・・・ありがとうございます。
しかし、もう別れも済みました。」
「そうか・・・。
ザイル、立派な魔王になり 魔王城に戻って来いよ。
マリーが目を覚まして お前が居なかったら俺が殺されてしまうからな。」
笑顔でザイルに声をかけるエイルシッドに、ザイルも笑顔で答える。
「次に魔王ザイルとして 魔王城に戻ってくるときは マリー様を妻として迎え入れる時ですよ。
エイルシッド王、覚悟を決めておいて下さいね。」
「ああ、お前の成長を楽しみに待っているよ。
・
・
・
ザイル・・・息子よ、必ず戻って来いよ。」
「おと・・・。
はい、エイルシッド王。
短い間でしたが、お世話になりました。」
ザイルは涙を流しながらエイルシッドに別れを告げた。
→後編へ
それは 天界に咲く美しい花であり、天使たちの死後の姿でもある。
その花の蜜は甘く、その蜜を薄めた飲み物を発酵させ酒を造り、年に1度 使者を敬うという天使の風習もあった。
名前の由来は、花の特徴から名付けられていて、亡くなった天使たちを想う気持ちから つけられたものである。
この花は、どこにでも咲き、天使の間では日常的な親しみのある花であった。
女神ディーテが世界樹へと姿を変えてから、魔王城では いくつかの変化が起きていた。
エイルシッドとディーテの子、マリーは 体調は良くなったのだが、母を失った悲しみから 笑わなくなり部屋に閉じこもり、最低限の用事以外、部屋から出ることがなくなった。
女神ディーテを慕っていた悪魔や使い魔たちも、どことなく暗く落ち込んでいるのが目に見えて分かった。
もちろん、エイルシッドも落ち込んでいる人物の一人であった・・・。
~魔王城の廊下~
ザイルが廊下を歩いている。
ふと1つの扉の前で立ち止まると、部屋をノックする。
コンコン!
ノックをした ザイルが扉越しに声をかける。
「マリー、ちょっといいかな?」
「・・・お兄様?」
「うん。そうだよ。
マリーと話をしようと思ってね。」
カチャ。
使い魔のハンがザイルを部屋の中へと通す。
部屋の中には ベッドの上にパジャマのまま ひどく落ち込んでいるマリーの姿と、心配して見守りを続けている使い魔のハンの姿があった。
ザイルがマリーに近づくと、使い魔のハンは ザイルと入れ替わるように外に出ていく。
ザイルは、ゆっくりとマリーの座るベッドに近づき、優しく声をかける。
「マリー、マリーが落ち込んでいると神界で休養している ディーテお母さんも悲しんでしまうよ。
マリーが元気を・・・。」
ザイルの言葉を遮るように、マリーが答える。
「私、知ってる。」
「何を?」
「お母様が 死んでしまったこと。」
「マリー、いったい何を・・・。」
「・・・この世界から お母様の魂を感じることが出来ない。
お父様には内緒にしていたけれど、私には魂を感じる力があるの。」
「そうなんだ。
・
・
・
マリーの感じているとおり、ディーテお母さんは もう天魔界には居ない。」
「・・・なんで?」
「ディーテお母さんは、マリーを・・・天魔界の未来を守る為に・・・。」
「違う!!!
私が怒ってるのは、そうじゃない!
なんで、みんな隠そうとするの!
私が知らないと思ってるから?
話さなかったらバレないと思ってるから?
私は、お父様のように周囲を見渡す力がある。
私は、お母様のように世界の魂を感じ取れる。
私だって家族なんだよ!
なんで・・・。
なんで 私には話してくれなかったの?」
マリーは 手のひらにエイルシッドと同じように炎を作り出す。
その炎は エイルシッドの作り出す炎より明るく光を放っている。
「マリー、その炎は・・・。」
「全てを見通す力、全てを繋ぐ炎。
周囲に存在する 全ての炎と繋ぐことが出来る能力。
私の場合は、お母様の力を使って、この世界に存在する全ての炎と繋ぐことができる。
・
・
・
神界にも お母様の姿を見つけることはできない・・・。」
「マリー、隠しててごめん。
でも、みんなマリーを傷つけたくなかったから・・・。
・
・
・
お母さんに会いに行かないか。
お母さんは 世界樹に生まれ変わったんだ。
きっと、マリーが会いに行けば喜んでくれると思う。
僕と一緒に会いに行ってくれないか?」
「・・・はい。
お兄様、準備したら部屋から出ます。
魔王城の外で待っていて下さい。」
マリーは 義兄ザイルの提案を受け入れたようで 力なく返事をすると準備を始める。
ザイルは パジャマを脱ぎ始めたマリーに気を使い、急いで部屋を出ることにした。
(マリーは 無神経な部分があるな・・・。
きっと、エイルシッド王に似た部分なんだろうな。)
その後、魔王城の正門で マリーと合流したザイルは、マリーを抱きかかえて世界樹の方へと飛び去って行った。
世界樹で何かを感じることが出来たのだろうか、帰り道、マリーは久しぶりに 笑顔を見せていた。
それから、4000年の間、魔界は平穏な日々が流れていた。
魔界王エイルシッドが統治する魔界では、魔王同士の領土を奪い合う争いは行われず、魔界の住人たちの生活水準も 安心して暮らせる水準まで向上していった。
エイルシッドは、世代の変わってしまった天界に住む天使たちとも停戦協定を結んでいた。
ごくまれに、魔王同士の争いや、一部の過激な天使からの攻撃といった戦闘は起きていたが、悪魔たちは 気にすることもなかったという。
しかし、4000年たったある日、事件が起きる。
~魔王城・王座の間~
いつものように王座に座り、炎を眺めながら時間を潰すエイルシッドの元に、使い魔のエンマが駆け寄って来た。
「エイルシッド王、いますぐ全ての魔王に連絡をしてほしいニャン。
天界からの貢ぎ物の酒に、毒が盛られていたみたいニャン!」
「毒?」
「おそらく 永遠の祈りという、魔界に咲く猛毒の花だと思うニャン。
その毒を口にすれば、深い眠りに落ちてしまう危険な毒なんだニャン!」
「深い眠りって・・・。
酒を飲めば眠くなるだろ。」
エイルシッドの横で話を聞いていた リッチモンドがエイルシッドに声をかける。
「エイルシッド王、永遠の祈りは、猛毒で間違いございません。
一度 口にすれば、2度と目覚めないと言われております。」
「・・・分かった。
リッチモンド、全ての魔王に伝令を飛ばせ。
魔王城にある天界からの貢ぎ物は全て確認後廃棄せよ。
俺はロロノアの城に行ってくる。」
「畏まりました。」
「了解ニャン!」
エイルシッドは、王座の間を飛び出し、隣領土の友人ロロノアの元へ急いだ。
~大魔王ロロノアの城~
エイルシッドがロロノアの城に入ると、ロロノアが駆け寄ってくる。
「おお!
エイルシッド王、ちょうどよかった!
実は、天界からの・・・。」
「やはり・・・。
実は、俺も猛毒の件をロロノアに伝えに来たんだ。」
「おお!
我が主の心遣い、冥界の谷よりも深き慈悲深さ!」
「・・・しかし、天界の連中は わざわざ争いを起こすような真似をしたんだ?」
「我々への挑戦でしょう!
我が軍勢は、天界へ攻撃を開始する準備ができております。
あとは、エイルシッド王の命令を待つばかりです。」
「・・・攻撃は待ってくれ。
俺が天界に行って、事実を確認してくる。
天使ではない、他の誰かが貢物に毒を盛った可能性もあるからな。」
「畏まりました。」
ロロノアは、配下の悪魔に命令をだす。
エイルシッドは、天界に向けて再び飛び立っていった。
~天界・神殿跡~
神殿跡とは、何千年も前に天界に住んでいた神々が建てた建物の跡地である。
いまは その神殿の横に別の建物を建て、そこで天使たちは天界の管理をしている。
エイルシッドが神殿跡に降り立つと、武装した天使兵たちがエイルシッドに近寄り声をかけてきた。
エイルシッドは、武装した天使兵に声をかける。
「武器を下ろしてくれ。
魔界王エイルシッドが 天界の代表者に会いに来た。
贈り物の礼を述べに来たのだ。」
「・・・長官に確認してきます。
しばらく こちらでお待ちください。」
天使兵の隊長らしき人物は エイルシッドに武器を構え見張ったまま、使いの天使を走らせた。
数分後、使いの天使が戻ってきて天使の隊長らしき人物に声をかける。
隊長らしき人物は 武器を下ろし、エイルシッドに声をかけた。
「エイルシッドよ、ベルゼブイ長官がお会いになるそうだ。」
エイルシッドは 天使の案内で新しく建てられた神殿へと入っていく。
案内されながら、エイルシッドは考えていたことがあった。
(ベルゼブイ長官・・・?
まさか、大魔王ベルゼブイなのか?
もしかして、俺への復讐?
いや、記憶を無くしているみたいだったから、やはり事故なのか?
それとも、思い出して復讐を始めたのか?
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まずは、ベルゼブイに会ってみて判断しよう。)
エイルシッドは 案内されるまま、神殿の奥にある長官室へと通される。
長官室の中に入ると、そこには 悪魔から邪神の瞳を使い天使へと変わったベルゼブイの姿があった。
ベルゼブイは 案内してきた天使に、持ち場へと戻るように指示し、エイルシッドに話しかける。
「初めまして。
わしが天界の長官をさせてもらっているベルゼブイだ。
魔界王エイルシッド殿、今回は どういった用件でいらっしゃったのですかな?」
「何かの手違いかもしれないが、天界からの贈り物の酒に 毒が含まれていたんだ。
俺の所に送られた酒以外でも毒を確認できた。天使たちが直接 魔王城に持ってきたから魔界で入れられた物だとは考えにくい。
そこで、もしかすると天界で毒が混入されたんじゃないかと考えたんだ。」
「なるほど、悪魔に恨みを持つ者も少なくはありませんからな。
念のために 調べさせましょう。
ちなみに毒の種類などは分かりましたかな?」
「ああ、永遠の祈りだそうだ。」
「永遠の祈り・・・?
天使が生まれ変わった姿の花ですな。
どうして、その花が猛毒を含んでいるのでしょうか。」
「魔界に咲く永遠の祈りには 毒が含まれているようなんだ。」
「なるほど。
悪魔への恨みが猛毒へ進化するのでしょう。
やはり・・・。
いえ、なんでもありませんぞ。
さっそく天界でも真相を調べてみましょう。」
エイルシッドは、天使長ベルゼブイと約束をし魔界へと帰還した。
~魔王城~
「ただいまー!」
「あ、エイルシッド王ニャン!」
「「「おかえりなさいニャーン!」」」
「エイルシッド王、魔界は大変なことになっているニャン。
ロロノア以外の大魔王が、永遠の祈りの毒で眠りに落ちてしまっているニャン。」
「しかも、永遠の祈りの毒を治療するという名目で、大魔王を始め 眠りについた悪魔たちを天界に連れ帰っているらしいニャン。」
「やはりな・・・。
みんな、聞いてくれ。
今後、天界との交流は断絶させる。
しかし天使を虐げるようなことがあってはならない。
おそらく、天界の誰かが仕込んだ罠だろうからな。
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それと、マダム・オカミに伝令を送り、魔王城に招集してくれ。
ベルの件で大事な話があると伝えればいい。」
「「「了解ニャン。」」」
エイルシッドが命令を出し終えたとき、エイルシッドの元に一匹の使い魔が駆け込んできた。
「エイルシッド王、大変ッス!
マリー様が永遠の祈りを口にしたみたいッス!」
「「「!!?」」」
エイルシッドは 使い魔のハンの言葉を聞くと、マリーの寝室へと一直線に駆けていった。
(そんな!
・・・まさか!
でも、いったいなぜ!?)
エイルシッドがマリーの寝室に着くと、そこには泣き崩れるザイルの姿があった。
ザイルは、エイルシッドを見ると、床に頭をつけながら何度も何度も泣きながら詫び続ける。
「ごめんなさい。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
ごめんなさい。」
「ザイル、何があったんだ?
いったい何が・・・。」
エイルシッドの問いに、泣きながら謝り続けるザイルに代わり、遅れて駆け込んできたハンが答える。
「ザイル様が持ち帰ってきた薬が、永遠の祈りだったッス。」
「永遠の祈り!?
ザイル!!!
どこで その薬を手に入れたんだ!!!」
エイルシッドの怒鳴り声で我に返ったザイルが、泣きながら答える。
「エンジェル横丁の露店を見て回っていた時に、天使から声をかけられたんです。
その天使は、昔 エイルシッド王に助けられた恩を返したいと言って、夢の中で会いたい人に会える薬を渡してきました。
僕は天使からエイルシッド王に渡すように頼まれたのですが、マリーがお母さまに会いたがっていたのを知っていたから・・・。
最初に僕が一口だけ毒見をして何もなかったから、マリーに残りを渡しました。」
「ザイル様は 嘘をついてるニャン。
永遠の祈りは、悪魔が飲めば わずか一口でも数百年の眠りにつくと書かれていたニャン。」
「そうだニャン。
エンマの言ったとおりニャン。
魔界劇毒百科事典は 俺も見たニャン。
その本に書かれていたニャン。」
「お前は、正当な王位継承者のマリー様が邪魔になったから殺そうとしたんだニャン!
俺も人間だった頃、王位継承で揉めたから分かるニャン。」
「絶対に違う!
僕は マリーを傷つけたりしない!」
使い魔たちの言葉に強く反論するザイルに味方するように、ハンが使い魔たちの前に立ち声をあげる。
「エイルシッド王、俺もザイル様は何も知らなかったと思うッス。
マリー様とザイル様は兄妹以上にお互いを認め合っていたッス。
・
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ザイル様は成人したら独立し、自分の力で立派な魔王になり、マリー様を迎えに来る約束をしていたッス。
このことは、マダム・オカミも知っているッス。
ザイル様にマリー様を傷つける理由がないッス。」
「・・・ザイル。」
「エイルシッド王・・・。」
「お前は追放だ。
マリーに永遠の祈りを与えたのは、事故だったのかもしれん。
しかし・・・。」
「エイルシッド王、マリーは・・・。
マリー様は必ず目を覚まします。
おそらく僕に永遠の祈りの毒が効きにくかったのは天使の血が多く流れていたからかもしれません。
マリー様の場合、悪魔の血が強く いまは眠りについているだけだと思います。
・
・
・
エイルシッド王、6鬼神の皆さん、何があってもマリー様を守り続けると約そ・・・。
何があってもマリー様を守り続けると契約してください。
そうすれば、僕も安心して追放を受け入れます。」
「・
・
・
分かった。
俺は何があってもマリーを守り続けると、マリーに誓い契約しよう。」
「俺も何があってもマリー様を守り続けると契約するッス。」
「「「俺らもマリー様を守り続けると契約するニャン!」」」
エイルシッドや使い魔たちに、マリーの紋章である、ピラミッドの上に天使の輪が入った紋章が光り輝き刻まれていく。
マリーの紋章を確認したザイルは、深々と頭を下げた。
「エイルシッド王、ありがとうございます。」
ザイルは エイルシッドに礼をすると、静かにマリーの寝室から出ていった。
「エイルシッド王、本当によかったんスか?」
「・・・。」
「涙を流すくらいなら、引き止めればいいニャン。」
「俺も、ザイル様に言い過ぎたかもしれないニャン。」
「もっと冷静にならなくちゃダメだったニャン。」
後を追おうとする使い魔をエイルシッドが止める。
「ザイルを追わなくていい。
・・・追ってはならない。」
「「「・・・了解ニャン。」」」
~見晴らしの丘~
ザイルは、義母ディーテだった世界樹の前に立っていた。
黙とうを捧げるザイルの背後に、人影が現れる。
「ザイル。」
ザイルは慌てたように振り返り、頭を下げる。
「エイルシッド王、すみません。
すぐに旅立ちます。」
「・・・いや、母との別れだ気にすることはない。」
「・・・ありがとうございます。
しかし、もう別れも済みました。」
「そうか・・・。
ザイル、立派な魔王になり 魔王城に戻って来いよ。
マリーが目を覚まして お前が居なかったら俺が殺されてしまうからな。」
笑顔でザイルに声をかけるエイルシッドに、ザイルも笑顔で答える。
「次に魔王ザイルとして 魔王城に戻ってくるときは マリー様を妻として迎え入れる時ですよ。
エイルシッド王、覚悟を決めておいて下さいね。」
「ああ、お前の成長を楽しみに待っているよ。
・
・
・
ザイル・・・息子よ、必ず戻って来いよ。」
「おと・・・。
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短い間でしたが、お世話になりました。」
ザイルは涙を流しながらエイルシッドに別れを告げた。
→後編へ
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