新世界 ~龍慶日記~

黒山羊

文字の大きさ
4 / 9
第一章

第2話 期待

しおりを挟む
~パナの家・食卓~

パナの家はこじんまりしている。部屋は3つ、玄関、台所、食卓の合わさった6畳ほどの大部屋と、2階に2畳程の部屋が2つある。

パナ「ねぇ、兄ちゃん。うち部屋が2つもあるんだよ!凄いでしょ!」

青年「すげ!2階まであるじゃん!」


パナ「でしょ!」
パナはとても嬉しそうにしがみついてくる。

バナン「パナ、お湯を沸かしてきてくれ。」

パナ「はーい!兄ちゃん、また後でね!」
そういうとパナは水を汲みに行ったのか、外に出て行った。

バナン「で、君の名前は?」

青年「さあ、すみません。記憶がなくて。何も分からないまま、パナに連れてきてもらったから。」

バナン「そんな無警戒で、よく生きてこれたな。・・・まあ、あれだけの実力があれば、問題ないかもしれんが。」

ふと、バナンが青年の首飾りに目をやる。



バナン「君の持っている首飾りにタグが付いてるな。それは何だ?」
青年が胸元に手をやると、IDタグがあった。

青年「ほんとだ!気が付かなかった。」

バナン「どれ、見せてみろ。」

ちょうど、パナが水を汲み終えて戻ってきた。



バナン「・・・。」

パナものぞき込むように、タグをみる。
パナ「・・・古代文字だ!」

青年もパナと同じようにのぞき込む。
青年「バベル」

パナ「すごい!お兄ちゃん、古代文字が読めるんだ!」

青年「え!そうなの、やべ!すげ!」

バナンは、疑っているようだ。
バナン「では、バベルくん。ちょうど町の博物館で、古文書の展示が行われ始めたんだ。いまから行ってみよう。」

パナ「やった!やっと連れて行ってくれるんだね!」
パナは、大喜びしている。


バベルという名の青年「いや、でも・・・・」

バナン「どうかしたのか。」
バナンが疑いの目を向けている。


バベル「いや、博物館とか好きだから行きたいけど、この格好はちょっと・・・。」
バベルが、はにかむように笑うと、バナンも笑った。


バナン「そりゃそうだ!」

パナ「お父さんの服を着ていったら?」
パナも笑っている。


バベル「ありがとうございます。」


渡された服は、古代ローマの映画で見るような簡単な服で、いままでの腰巻とそう変わらない気もするが・・・。


とにかく、渡された服に着替え、3人は博物館を目指した。







~博物館~

博物館に入ると、いろんなものが展示されている。現代美術のコーナーを足早に抜け、目的の古代資料のコーナーにたどり着いた。



古代資料コーナーにつくと、パナは目を輝かせている。

パナ「すごいや!コレ、何に使ったんだろう!」

バベル「それは、スイッチを押すと、部屋を掃除してくれる機械だよ。段差は苦手だけど。」

バナン「説明文は、そう書いてないぞ。古代の探索用の機械だと書いてある。」




パナ「じゃあ、コレは!」

バベル「中に入れた物を冷やしておく道具だよ。下の段は引き出し上になってて野菜や冷凍食品を入れるんだ。」

バナン「説明文は、古代の拷問器具だと書いてあるようだが。」

3人は笑いながら展示物の中を進む。






パナ「じゃあ、コレは!」

バベル「コレは・・・。」


パナ「どうしたの!?」
バベルは子供によく似たアンドロイドを見たとき、激しい頭痛に襲われた。

バナン「おい、大丈夫か?顔色が悪いが・・・。」


バベル「はい・・・。大丈夫。ごめん心配かけて。」
バベルは一瞬、何かを思い出したようだが、その何かを思い出せない。



少し休み、目当ての古文書にたどり着いた。
古文書のコーナーは、他のコーナーより人が多い。

バナン「バベル、君が古代文字を読めるなら、この古文書を読むこともできるはずだ。」

バベルは、人ごみをかき分け、古文書に近づいた。




バベル「えっと。・・・D細胞における人体融合実験の経過報告書、【被験者20代男性】被験者にD細胞の組織注入を開始、適合率を高め、80%到達時、意識を失う。100%を超えた時点で、ドラゴン化が進行スタート。今回の実験では、さらに適合率を高める。120%に達した時点で、完全にドラゴンへと変化し意識を取り戻し暴走する。過去の実験の結果より、被験者の感情の起伏に左右され、30%前後の適合率の変動が見られるため、兵士に細胞を移植する場合は、50%程度が望ましい。50%適合時の身体能力の向上は・・・。」

バベルは、開いてあるページをどんどん読み上げていく。



パナ「バベル、すごいや!」

人だかりが増えてきた。



と、そこへ、人ごみをかき分けながら、バベルに近づく人物がいた。

髭の長い老人「そこのあなた、詳しく話を聞かせて下さい。」

髭の長い老人「私は、この施設の館長をしております。あなた様の古代文字解読は素晴らしい力量です。ぜひ、古文書の解読に力を貸していただきたい。」



館長「おーい!」

館長が声を上げると、警備員が駆け付けた。

館長「展示物の回収と、この方を館長室へ丁重にお招きするように!」

館長「ささ、どうぞこちらへ。」




男の声「お待ちください。」

声の方を見ると、黒いローブに身をまとった男性が立っていた。
黒いローブの男は、館長に近づき、袋から何かを取り出し、館長に見せ、耳打ちしている。




館長「仕方ありませんな。」
そういうと、館長はバベルの元に近づいてきた。

館長「また機会があれば、是非お立ち寄りください。いつでも歓迎しますぞ。」
館長の残念そうな顔が目に焼き付く。


黒いローブの男「あまり目立った行動は慎んでくれ。」

そういうと、男は人ごみに消えていった。




バナン「家に戻ろう。」







~パナの家・食卓~

パナ「ちぇっ!せっかく古代資料を見れたのに!」

バナン「仕方ないだろ。あの黒いローブの男、只者じゃない。しばらくは家でおとなしくしていよう。」

パナ「え~!しばらくって、いつまで!そんな退屈で死んじゃうよ!」

バナン「本当に殺されるより、マシだろ。我慢しなさい!」


パナは、あきらかに不満たっぷりに口をとがらせている。


バベル「パナ、古代のことに興味があるの?」

パナ「うん。そうだよ。」

バベル「だったら、コレをあげよう。」
バベルは、持っていたIDタグをパナの首にかける。
とたんに、パナが笑顔になる。

パナ「本当に!ありがとう!」

バナン「すまない、バベル。でも本当にいいのか?」

バベル「ああ。僕が持っていても意味がなさそうだし、それに古文書のコーナーに僕の記述を見つけたんだ。バベル計画って書いてあった。」





バベル「・・・だから。」


バナン「・・・。」

バナン「バベル、君さえ良ければ、パナの兄として、一緒に暮らさないか。」

パナ「そうしなよ!バベル兄ちゃん!」

バベル「でも、」

バナン「心配するな、スモーの試合で、あと3勝すれば私もカザン市民になることができる。そうすれば食事や住む場所の心配はなくなるから。」

バベル「ありがとう。バナンさん、パナ。」



バナン「よし!明日の試合に勝てば、あと2勝だ!今日はさっさと飯くって寝るぞ!」

バベル・パナ「おおー!」


バベルは、パナと一緒に眠りにつく。
それは、長い夜の始まりだった・・・。












ギリギリ!
ギリギリ!

ギリギリギリギリ!



  ~ to be coninued













しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

転生先はご近所さん?

フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが… そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。 でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

【完結】義姉上が悪役令嬢だと!?ふざけるな!姉を貶めたお前達を絶対に許さない!!

つくも茄子
ファンタジー
義姉は王家とこの国に殺された。 冤罪に末に毒杯だ。公爵令嬢である義姉上に対してこの仕打ち。笑顔の王太子夫妻が憎い。嘘の供述をした連中を許さない。我が子可愛さに隠蔽した国王。実の娘を信じなかった義父。 全ての復讐を終えたミゲルは義姉の墓前で報告をした直後に世界が歪む。目を覚ますとそこには亡くなった義姉の姿があった。過去に巻き戻った事を知ったミゲルは今度こそ義姉を守るために行動する。 巻き戻った世界は同じようで違う。その違いは吉とでるか凶とでるか……。

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

処理中です...