新世界 ~龍慶日記~

黒山羊

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第一章

第3話 策略

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~翌朝~


「おはよ~!!!」



パナの元気な声が響き渡る。




バベルは寝不足なのか眠そうに目をこすりながら起きてきた。




バナン「さっそく洗礼にあったな。」

バベル「はい。永遠に続くかと思いました。今日はパナより先に眠りにつきます。」

バナン「それがいい、あの歯ぎしりは強力だからな!」


そういうとバナンは、大笑いしながら階段を下りて行った。

バベルも慌てて後を追う。






下につくとパナが朝ごはんの準備をしていた。

パナ「おはよ!今日はスモーの日ですよ。」

いつになく、上機嫌だ。



バナン「何を言っても闘技場へは連れていかないからな。」

パナ「えー!そんなー!」

バナン「ダメだ!」


パナ「せめて控室までは?じゃないと退屈で退屈で死んじゃうよ。だって悪い人も家の周りにいるんでしょ。それなら控室の方が安心なんじゃない?」


バナン「・・・。」


パナ「お願い、お父さん。おとなしくするから。」

バナン「仕方ない、今回だけだぞ。そのかわり、控室を出ることは絶対に許さないからな!」




三人は簡単な朝食を終えると、スモーの行われている闘技場へと向かった。



















~闘技場~

スモーという競技は、神々に捧げる神事のようなもので、敵の命を奪い捧げるものだという。
バベルの知識にある相撲とは、まったく違う競技で、どちらかといえば、コロッセオの剣闘のようだ。




バナンは、闘士の手続きをしている。


バナン「すみません、今日は控室の見学をさせたいのですが。」


受付「・・・あんたも変わってるな、もうすぐ市民になれるのに、息子に控室を見学させるなんて。」

バナン「ダメですか?お願いします。」


受付「別に構わんよ。あんたとは長い付き合いだし。息子が2人?パナ以外の息子もいたのか?」

バナン「ええ、まあ訳ありで・・・。」

受付の老人はニヤニヤした目で、バベルを見た。




バナンが手招きをしている。どうやら、3人とも中にはいれるようだ。






パナは、初めてのスモー競技場に感動しているようで、キョロキョロしている。

控室の奥に入っていく戦士は、傷だらけで戻ってくる者と、戻ることのない者といる。




バベル「人間同士の、命のやりとりか・・・。なぜ・・・。」


バナン「みんな、いまを生きるために必死なんだよ。さて、俺も行ってくるかな。」



そういうとバナンは控室の奥に消えていった。







しばらくすると、控室まで響く大きな声援が聞こえた。

パナ「なに!なにがあったの!」
パナは動揺している。


仮面の男「ああ、バナンさんの戦いが始まったんだろ、あの人の人気は凄いからな。」

角兜の男「まったくだよ。バナンと対戦する戦士が可哀想になるくらいだよ。」

仮面の男「でも倒せれば人気は独り占めだぜ。」

角兜の男「おいおい、そんなこと無理だろ。ほら、」



角兜の男が奥を指さすと、血だらけのバナンが帰ってきた。

仮面の男「すげぇ!瞬殺かよ!」


よくみると、バナンに怪我はなく、相手の返り血を浴びているようだ。

バナンの表情は険しく、バベルもパナも声をかけることができなかった。


そのままバナンは、浴場へと移動していく。


パナ「あれ?いまの、お父さん?」

バベル「パナ、お父さんが連れて来たくなかった理由はコレなんじゃないかな。」


パナ「・・・。」


バベル「次から家で待ってよ。」



パナ「・・・うん。」













~闘技場の前~

バナン「さて、賞金も稼いだし、旨いものを食って帰るとするか。」



パナ「・・・うん。」

バナン「パナ、お前には戦いを知って欲しくなかった。だが、あと2勝で市民になれる。市民になれば、戦う必要もなくなるんだ。」

パナ「わかってる。お父さん、」


バナン「・・・。」


バベル「よし!あと2勝、怪我なく勝てるように、二人で応援しよう!お父さんなら大丈夫だから!」

パナ「うん。バベル兄ちゃん、そうだよね、お父さんなら大丈夫だよね!」

少しパナの顔に笑顔が戻る。



バナン「よーし!じゃあ飯屋に行くぞー!」

バベル・パナ「おおー!」


3人で行った飯屋は、最高に楽しく、幸せな時間を過ごした。


バナン「少し飲みに行ってくるから、二人で帰っておきなさい。」


パナ「はーい。 バベル兄ちゃん、競争しよ!」

バベル「あっ!ちょっと待ってよ、道わかんないよ!」


バナンは、二人を見送ると、町の中に消えていった。













~次の日~

「おはよ~!!!」


パナの元気な声が響き渡る。
バベルも昨日はパナより先に寝ることができ、歯ぎしりに気づくことなく朝を迎えていた。



バベル「おはよう、パナ!」

パナ「おはよう、バベル兄ちゃん!」

バナンは、まだ起きていないようだ。




バベル「パナ、スモーの闘技はどれくらいの頻度であるの?」

パナ「時期にもよるけど、今の時期は、3日に1回のペースだよ。」

バベル「えっ!そんなに何回も?」

パナ「うん。人間同士の決闘や、猛獣を相手にしての決闘もあるんだって。」

料理を作りながら、パナが答える。



バベル「そんなにあるんだ。そりゃ、体もつかれるよね。」

パナ「うん。だからかな、闘技の翌日は、昼まで起きてこないよ。」



そんな話をしていると、玄関の扉をノックする音が聞こえた。


パナ「はーい!」


パナが扉に近づく、バベルはとっさに、何とも言えない不気味な感覚を感じ取った。

とっさに、パナの手を引く!



と、手を引くタイミングと同時に、扉が開き、黒いローブを纏った男たちが乱入してきた。




バベル「何の用だ!」

騒ぎを聞きつけて、2階からバナンが飛び降りてきた。


ドン!


飛び降りてきたのと同時に、バナンは、入り口にいた二人に襲い掛かる。


バベルもとっさに乱入してきた男を、床にねじ伏せる。






黒いローブの男たちも手練れだろうが、一瞬で勝負はついた。


バナンが襲い掛かった二人は、一目散にどこかへ走り去った。
バベルが床にねじ伏せた男は、逃げられないと判断したのか、舌を噛み切って自害している。



バナン「コレはいったい?」



すると、部屋に騎士がやってきた。
それは、初日、騒ぎに駆け付けた騎士だった。

騎士オクト「バナン、バベル、貴様らを殺人の罪で捕縛する!」


パナ「ちょっと待ってよ!」
パナが抗議するために、前に進み出ようとする。


バナン「パナ!動くな。大丈夫、きちんと説明すればわかってもらえるから。バベルも抵抗してはいけない。私が何とか話をつけてくるから。」




騎士オクト「早く捕縛せよ!」

兵士は、バナンの気迫に恐れている。


バナン「騎士様、準備がよろしいようですが、肝心の詰めが甘いですな。まだまだ書物をお読みになったほうがいいのでは。」

騎士オクト「なんだと!貴様、奴隷戦士の分際で!」

騎士オクトが剣の柄に手をかけたとき、入り口の方から、低い声が響く。





白髪の騎士「オクト!これは何のまねだ!」

入り口には、今まで会った騎士より断然に立派な甲冑を纏った、白髪の騎士が立っていた。
見た目には、しわも多く、歳を重ねた顔つきだが、体格は若者にも負けない立派な体つきだ。


騎士オクト「!!! ガ、ガレアス様!いったい何故ここに!」

騎士ガレアス「わしの行動を何故、貴様に伝える必要があるのだ!」


騎士オクト「・・・申し訳ございません。出過ぎた真似でした。」




騎士ガレアス「3人の身柄を私に預けよ!」

騎士オクト「しかし、」



騎士ガレアス「どうせ領主の汚い策だろ、それとも貴様、神殿騎士でありながら、教祖オーランド卿の意向に歯向かうのか!」


騎士オクト「いえ、まさか、」

騎士オクトは、教祖の名が出たとたん、下を向き始めた。そして振り返り兵士に2人を解放するように身振りで伝えている。


騎士ガレアス「では、3人とも神殿までついてきてもらおう。」

そういうと、騎士ガレアスは馬に乗り進み始めた。



バナン「さて、言われた通りついて行こう。」

3人は、騎士ガレアスについて神殿まで向かうことになった。






  ~ to be continued














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