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第一章
第4話 神話
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~神殿前~
パナ「うわぁー!凄い大きいね!お父さん、バベル兄ちゃん!早くー!!」
パナは、大はしゃぎで神殿の方に走っていく。
バナン「パナ!また迷子になるぞ!」
バベル「追いかけましょうか?」
ガレアス「いや、大丈夫だ。それより、君に聞きたいことがある。」
そういってガレアスは、馬を降りてバベルと並んで歩く。
ガレアス「君は古代文字が読めるようだが、どこで習ったんだ?」
バベル「いや、どこって言われても・・・。正直、自分の名前も覚えてなかったんです。」
バベルは困った顔をした。
ガレアス「そうか、オーランドの名に聞き覚えは?」
バベル「いまさっき、言ってた教祖さまですよね?」
後ろから、バナンも会話に参加する。
バナン「ガレアス殿、それ以上、バベルに質問しても何も出てこないですよ。本当に記憶喪失のようですし。」
ガレアス「そうか。悪かったな。」
パナが走り寄ってくる。
パナ「バベル兄ちゃん!こっちみてよ!この綺麗な女の人、誰だか知ってる?」
パナの指さす神殿の壁画には、青い羽根の生えた戦士と、美しい女神が描かれている。
バベル「さあ?いったい誰なんだい?」
パナ「へへーん!この青い羽根の生えた戦士は、人々をドラゴンから救った神様で、その名もなんと!!!」
バベル「なんと!!!」
パナ「・・・!!!」
パナ「・・・!!!!」
パナ「・・・!!!!!」
ガレアス「バベル王だ。」
パナは、溜めに溜めた回答を先に言われて、泣きそうな目をしていて可愛い。
ガレアスは、気まずそうに神殿の奥に逃げるように進む。
バナンも、その後を追う。
バナン「ほら、二人とも先を急ぐぞ。」
バベル「はーい!・・・行こうパナ。」
パナは、あきらめない!
パナ「じゃあ、女神様の名前は、なーんでしょ?」
バベル「パオだろ、髪の色的に。」
パナ「!!!」
パナが肩を落とす。
パナ「知ってたんだね。」
バベル「ああ、なぜ急に名前が分かったんだろう?」
パナ「まあ、有名な神話だからね。バベル兄ちゃん。パオ様は、おっぱい大きかったんだね。」
バベル「ほんとだ。パナ、そんなとこばっかり見てると・・・。」
パナの耳が赤くなる。
バナン「ほら!二人とも、早く来なさい!」
バナンに怒られる前に、先を急ぐことにした。
神殿奥の廊下に入ると、壁一面に美しい絵が描かれている。
廊下の絵は、柱を区切りに、神話の世界を描いているようだ。
1・広間に書かれていた、戦士と女神が描かれている。
2・戦士がドラゴンと戦う姿が描かれる。
3・戦士が仲間たちと機械と戦う場面だ。
4・戦士の背中に羽が生えてる。女神が力を与えたのだろうか?
5・他の戦士たちも羽が生え、ドラゴンと戦っている。
6・戦士が魔女と戦う姿が描かれている。
7・最後の一枚は、魔女の返り血を浴びた戦士がドラゴンに変わっていく姿の絵だ。
絵に見とれてしまい、他の3人から置いて行かれているのに、バベルは気づかない。
絵に見とれるバベルに、若い男性が、後ろから声をかける。
若い男「気に入りましたか?その絵は、リュウケイジッキと呼ばれる古文書を解読して描かれた絵なんですよ。」
バベル「最後は可哀想なラストなんですね。」
若い男「ええ、最後は愛していた女性を殺し、自分自身が破滅していく話です。まあ、神話ですし、解読に曖昧な表現もあり、相違点があっても仕方ないんですけどね。大筋はあってると思いますよ。」
バベル「へぇ、そうなんだ。」
若い男「バベルさんは、どこまで記憶に残ってますか?」
バベルは、とっさに身構え振り返る。
若い男「初めましてかな。オーランドと申します。」
そういうと、オーランドと名乗る男性は、握手を求めてきた。
彼は、肌が白く、整った顔をしている。
警戒しながらも、オーランドと握手をするバベル。
バベル「バベルです。」
オーランド「さあ、立ち話もなんですから、奥に行きましょう。」
奥の部屋に入ると、扉が閉められた。
ガレアスが、バベルたちの所に引き返してくる。
ガレアス「オーランド卿、そちらからおいででしたか。」
オーランド「ああ、バベルとは話をさせてもらったよ。」
バナン「お久しぶりです。オーランド卿、その後、お変わりないですか。」
オーランド「ああ、おかげさまでね。最後に会ったのは、10年前だったかな?」
バナン「ええ、そうなります。」
バナンは、オーランドと知り合いのようだが、それ以前に、オーランドの年齢が気になる。
バナン「オーランド卿、ガレアス殿から聞いてるかもしれませんが、パナの件です。」
オーランド「聞いているんだが、私にも時間がないんだ。バナン、最後まで頼めないか?」
バナン「それは、もちろん大丈夫なんですが・・・。」
ガレアス「分かってくれ、バナン。領主が動かないように、根回しはしておくから。」
バナン「分かりました。ありがとうございます。」
そういうとバナンは深く頭を下げる。
オーランドは、ガレアスを呼び、耳打ちをしている。
ガレアスは、部屋を出てどこかへ行ってしまった。
オーランド「バベル、君との出会いに、贈り物をしよう。パナをよろしく頼む。」
バベル「ええ、もちろん。パナは大事な弟ですから。」
パナ「そうだね!兄弟だもんね!」
オーランド「兄弟か・・・。」
部屋にガレアスが戻ってきた。手には、一振りの日本刀を持っている。
オーランド「これは、大業物の名刀だ、君に渡そう。」
バベルは、ガレアスから、日本刀を受け取る。
バベル「オーランド卿、ありがとうございます。」
パオ「すごい!これ、古代のカタナだよ!」
バナン「よかったな。バベル。では、オーランド卿、ガレアス殿、これで失礼します。」
オーランドは、軽く手を上げる。
ガレアス「表まで送ろう。」
そういってガレアスは、神殿の入り口まで送ってくれた。
入り口を出た所で、戻ってきたばかりの、騎士オクトとすれ違う。
騎士オクトは、すれ違う時に、深々と頭を下げて3人を送り出した。
神殿入り口に続く長い階段を下りると、馬車が止まっている。
その近くに、馬に乗った騎士アルテミス達、神殿騎士が数名、待機している。
3人が階段を下りると、アルテミスが下馬して、近づいてくる。
アルテミス「ガレアス様より、護衛を兼ねて、家までお送りするように言われています。この辺りは、領主の息のかかった死角が多いですからね。さあ、馬車に乗って下さい。」
3人は、何の疑いもなく、馬車に乗り込んだ。
パナ「わーい!馬車なんて初めてのるよ!バベル兄ちゃんがきてから、天国にいるみたいだ!」
バベル「俺も初めてかも!覚えてないだけかもしれないけど・・・。」
3人を乗せた馬車は、走り出す。
~20分後~
馬車が揺れ始める。道が険しくなっているようだが、バベルの記憶している限り、整備されていない道はなかったようなのだが・・・。
バナンが異変に気付く。
バナン「おかしい、窓もドアも開かない。」
バベル「本当だ!」
バベルもドアを押してみる。
バナン「くそ!罠だった。オクトが神殿を裏切っている地点で気づくべきだった。」
バナンは、バベルとパナの肩を組み、小声で話す。
バナン「バベル、パナ、落ち着いて聞くんだ。いま手元にある武器は、バベルの剣だけ。それだけでは、戦って生き延びることも、逃げ出すことも難しい。そこで、この中で一番強いだろう、この私が囮になる。扉が開いたら、私が飛び出し、武器を奪う。そのまま暴れるから、隙を見て二人は逃げ出してくれ。神殿のオーランド卿とガレアス殿は仲間だと思うが、そこにたどり着くのも難しいだろう。どこか身を隠し、生き延びてくれ。」
パナが泣いている。
パナ「いやだよ。お父さんも逃げようよ。」
バナン「泣くな、パナ。お前たちが逃げてくれれば、私も戦いやすくなる。そうなれば生き延びれる!」
バナンは、バベルを見る。その眼は、死を覚悟した目だ。
バベル「パナ、バナン父さんなら大丈夫だよ。二人が逃げれば、一瞬で敵を蹴散らして、追いかけてくるはずさ。だって父さんは、闘技場の英雄でしょ。」
パナは黙って頷き、涙を拭いている。
しばらく走った後、馬車が止まる。
馬車の扉が開く!外の風景は見慣れない風景だ!
とっさに、バナンが、扉を開けた騎士の剣を引き抜き、鎧ごと叩き潰す!
外から声が聞こえる。
騎士「囲め!囲め!」
バベルは、バナンの方に騎士が集中している間に、反対側の扉を切って、パナを連れだした。
バナン「ウォォォォォ!」
騎士アルテミス「槍だ!剣の間合いに入ると一撃で殺されるぞ!槍を使え!」
バベルは、パナを引き連れ走った。
二人が逃げるのを、騎士アルテミスは見逃さなかった。
アルテミス「そこの二人は馬に乗り、逃げたネズミを追い込め!」
指示を受けた騎士が馬に乗り、二人を追いかける!
バベルは、体中に槍を突き立てられるバナンを見た。
しかし、バナンの声は聞こえない。
パナは、悔しいんだろう。唇から血がにじむ程、噛みしめて声を殺して走る。
二人は、湖のほとりに追い込まれた。
バベルは、パナを後ろにやり、日本刀を引き抜き警戒する。
騎士A「まったく、なんて速さだ!」
騎士B「くそ!こんなのに手こずってたら、オクトさんから殺されるぞ!」
馬を降り、そういいながら、近づいてくる。
間合いが縮まる。その距離、10mくらいだろう。
騎士二人は、剣を引き抜き構える。
騎士A「そんな、おもちゃみたいな細い剣でどうするつもりだ。もうあきらめろよ。」
騎士B「はは、一思いに殺してやるよ。」
バベルは、日本刀を鞘に納めた。
パオ「何してんの!バベル兄ちゃん、あきらめないでよ!僕らが逃げて、お父さんを助けに行こうよ!」
バベルは、右足を前に出し、腰を低く構える。
左手は、鞘を持ち、右手は刀の柄を軽く握る。
騎士の間合いが近づく。8m
騎士A「お前の父ちゃんは、もう死んでるよ。体中に槍を受けてて、ハリネズミ見たいだったな。」
騎士B「ああ、闘技場の異名そのものだな。音速のハリネズミ、自分の最後がハリネ・・・。」
バベル「俺の間合いだ。」
目の前にいたはずの、細い剣を持った男が、次の瞬間、騎士Bの左斜め前に立っていた。
しかも、仲間の騎士Bは、鎧が切れている。何か魔法を使ったのか、いや、詠唱は見られなかった。
騎士Aは、動けない。
騎士Bの腰から上がずり落ちる。
騎士A「え、あ、い、ま、あ・・・。死にたくない。」
バベルの放つ突きが、騎士Aの鎧を貫く。
パオ「バベル兄ちゃん?その眼・・・。」
バベル「・・・、逃げて。」
バベルは騎士に止めを刺すと、意識を失う。
倒れたバベルの目から、涙が流れている。
パオ「バベル兄ちゃん、バベル兄ちゃん!」
~ to be continued
パナ「うわぁー!凄い大きいね!お父さん、バベル兄ちゃん!早くー!!」
パナは、大はしゃぎで神殿の方に走っていく。
バナン「パナ!また迷子になるぞ!」
バベル「追いかけましょうか?」
ガレアス「いや、大丈夫だ。それより、君に聞きたいことがある。」
そういってガレアスは、馬を降りてバベルと並んで歩く。
ガレアス「君は古代文字が読めるようだが、どこで習ったんだ?」
バベル「いや、どこって言われても・・・。正直、自分の名前も覚えてなかったんです。」
バベルは困った顔をした。
ガレアス「そうか、オーランドの名に聞き覚えは?」
バベル「いまさっき、言ってた教祖さまですよね?」
後ろから、バナンも会話に参加する。
バナン「ガレアス殿、それ以上、バベルに質問しても何も出てこないですよ。本当に記憶喪失のようですし。」
ガレアス「そうか。悪かったな。」
パナが走り寄ってくる。
パナ「バベル兄ちゃん!こっちみてよ!この綺麗な女の人、誰だか知ってる?」
パナの指さす神殿の壁画には、青い羽根の生えた戦士と、美しい女神が描かれている。
バベル「さあ?いったい誰なんだい?」
パナ「へへーん!この青い羽根の生えた戦士は、人々をドラゴンから救った神様で、その名もなんと!!!」
バベル「なんと!!!」
パナ「・・・!!!」
パナ「・・・!!!!」
パナ「・・・!!!!!」
ガレアス「バベル王だ。」
パナは、溜めに溜めた回答を先に言われて、泣きそうな目をしていて可愛い。
ガレアスは、気まずそうに神殿の奥に逃げるように進む。
バナンも、その後を追う。
バナン「ほら、二人とも先を急ぐぞ。」
バベル「はーい!・・・行こうパナ。」
パナは、あきらめない!
パナ「じゃあ、女神様の名前は、なーんでしょ?」
バベル「パオだろ、髪の色的に。」
パナ「!!!」
パナが肩を落とす。
パナ「知ってたんだね。」
バベル「ああ、なぜ急に名前が分かったんだろう?」
パナ「まあ、有名な神話だからね。バベル兄ちゃん。パオ様は、おっぱい大きかったんだね。」
バベル「ほんとだ。パナ、そんなとこばっかり見てると・・・。」
パナの耳が赤くなる。
バナン「ほら!二人とも、早く来なさい!」
バナンに怒られる前に、先を急ぐことにした。
神殿奥の廊下に入ると、壁一面に美しい絵が描かれている。
廊下の絵は、柱を区切りに、神話の世界を描いているようだ。
1・広間に書かれていた、戦士と女神が描かれている。
2・戦士がドラゴンと戦う姿が描かれる。
3・戦士が仲間たちと機械と戦う場面だ。
4・戦士の背中に羽が生えてる。女神が力を与えたのだろうか?
5・他の戦士たちも羽が生え、ドラゴンと戦っている。
6・戦士が魔女と戦う姿が描かれている。
7・最後の一枚は、魔女の返り血を浴びた戦士がドラゴンに変わっていく姿の絵だ。
絵に見とれてしまい、他の3人から置いて行かれているのに、バベルは気づかない。
絵に見とれるバベルに、若い男性が、後ろから声をかける。
若い男「気に入りましたか?その絵は、リュウケイジッキと呼ばれる古文書を解読して描かれた絵なんですよ。」
バベル「最後は可哀想なラストなんですね。」
若い男「ええ、最後は愛していた女性を殺し、自分自身が破滅していく話です。まあ、神話ですし、解読に曖昧な表現もあり、相違点があっても仕方ないんですけどね。大筋はあってると思いますよ。」
バベル「へぇ、そうなんだ。」
若い男「バベルさんは、どこまで記憶に残ってますか?」
バベルは、とっさに身構え振り返る。
若い男「初めましてかな。オーランドと申します。」
そういうと、オーランドと名乗る男性は、握手を求めてきた。
彼は、肌が白く、整った顔をしている。
警戒しながらも、オーランドと握手をするバベル。
バベル「バベルです。」
オーランド「さあ、立ち話もなんですから、奥に行きましょう。」
奥の部屋に入ると、扉が閉められた。
ガレアスが、バベルたちの所に引き返してくる。
ガレアス「オーランド卿、そちらからおいででしたか。」
オーランド「ああ、バベルとは話をさせてもらったよ。」
バナン「お久しぶりです。オーランド卿、その後、お変わりないですか。」
オーランド「ああ、おかげさまでね。最後に会ったのは、10年前だったかな?」
バナン「ええ、そうなります。」
バナンは、オーランドと知り合いのようだが、それ以前に、オーランドの年齢が気になる。
バナン「オーランド卿、ガレアス殿から聞いてるかもしれませんが、パナの件です。」
オーランド「聞いているんだが、私にも時間がないんだ。バナン、最後まで頼めないか?」
バナン「それは、もちろん大丈夫なんですが・・・。」
ガレアス「分かってくれ、バナン。領主が動かないように、根回しはしておくから。」
バナン「分かりました。ありがとうございます。」
そういうとバナンは深く頭を下げる。
オーランドは、ガレアスを呼び、耳打ちをしている。
ガレアスは、部屋を出てどこかへ行ってしまった。
オーランド「バベル、君との出会いに、贈り物をしよう。パナをよろしく頼む。」
バベル「ええ、もちろん。パナは大事な弟ですから。」
パナ「そうだね!兄弟だもんね!」
オーランド「兄弟か・・・。」
部屋にガレアスが戻ってきた。手には、一振りの日本刀を持っている。
オーランド「これは、大業物の名刀だ、君に渡そう。」
バベルは、ガレアスから、日本刀を受け取る。
バベル「オーランド卿、ありがとうございます。」
パオ「すごい!これ、古代のカタナだよ!」
バナン「よかったな。バベル。では、オーランド卿、ガレアス殿、これで失礼します。」
オーランドは、軽く手を上げる。
ガレアス「表まで送ろう。」
そういってガレアスは、神殿の入り口まで送ってくれた。
入り口を出た所で、戻ってきたばかりの、騎士オクトとすれ違う。
騎士オクトは、すれ違う時に、深々と頭を下げて3人を送り出した。
神殿入り口に続く長い階段を下りると、馬車が止まっている。
その近くに、馬に乗った騎士アルテミス達、神殿騎士が数名、待機している。
3人が階段を下りると、アルテミスが下馬して、近づいてくる。
アルテミス「ガレアス様より、護衛を兼ねて、家までお送りするように言われています。この辺りは、領主の息のかかった死角が多いですからね。さあ、馬車に乗って下さい。」
3人は、何の疑いもなく、馬車に乗り込んだ。
パナ「わーい!馬車なんて初めてのるよ!バベル兄ちゃんがきてから、天国にいるみたいだ!」
バベル「俺も初めてかも!覚えてないだけかもしれないけど・・・。」
3人を乗せた馬車は、走り出す。
~20分後~
馬車が揺れ始める。道が険しくなっているようだが、バベルの記憶している限り、整備されていない道はなかったようなのだが・・・。
バナンが異変に気付く。
バナン「おかしい、窓もドアも開かない。」
バベル「本当だ!」
バベルもドアを押してみる。
バナン「くそ!罠だった。オクトが神殿を裏切っている地点で気づくべきだった。」
バナンは、バベルとパナの肩を組み、小声で話す。
バナン「バベル、パナ、落ち着いて聞くんだ。いま手元にある武器は、バベルの剣だけ。それだけでは、戦って生き延びることも、逃げ出すことも難しい。そこで、この中で一番強いだろう、この私が囮になる。扉が開いたら、私が飛び出し、武器を奪う。そのまま暴れるから、隙を見て二人は逃げ出してくれ。神殿のオーランド卿とガレアス殿は仲間だと思うが、そこにたどり着くのも難しいだろう。どこか身を隠し、生き延びてくれ。」
パナが泣いている。
パナ「いやだよ。お父さんも逃げようよ。」
バナン「泣くな、パナ。お前たちが逃げてくれれば、私も戦いやすくなる。そうなれば生き延びれる!」
バナンは、バベルを見る。その眼は、死を覚悟した目だ。
バベル「パナ、バナン父さんなら大丈夫だよ。二人が逃げれば、一瞬で敵を蹴散らして、追いかけてくるはずさ。だって父さんは、闘技場の英雄でしょ。」
パナは黙って頷き、涙を拭いている。
しばらく走った後、馬車が止まる。
馬車の扉が開く!外の風景は見慣れない風景だ!
とっさに、バナンが、扉を開けた騎士の剣を引き抜き、鎧ごと叩き潰す!
外から声が聞こえる。
騎士「囲め!囲め!」
バベルは、バナンの方に騎士が集中している間に、反対側の扉を切って、パナを連れだした。
バナン「ウォォォォォ!」
騎士アルテミス「槍だ!剣の間合いに入ると一撃で殺されるぞ!槍を使え!」
バベルは、パナを引き連れ走った。
二人が逃げるのを、騎士アルテミスは見逃さなかった。
アルテミス「そこの二人は馬に乗り、逃げたネズミを追い込め!」
指示を受けた騎士が馬に乗り、二人を追いかける!
バベルは、体中に槍を突き立てられるバナンを見た。
しかし、バナンの声は聞こえない。
パナは、悔しいんだろう。唇から血がにじむ程、噛みしめて声を殺して走る。
二人は、湖のほとりに追い込まれた。
バベルは、パナを後ろにやり、日本刀を引き抜き警戒する。
騎士A「まったく、なんて速さだ!」
騎士B「くそ!こんなのに手こずってたら、オクトさんから殺されるぞ!」
馬を降り、そういいながら、近づいてくる。
間合いが縮まる。その距離、10mくらいだろう。
騎士二人は、剣を引き抜き構える。
騎士A「そんな、おもちゃみたいな細い剣でどうするつもりだ。もうあきらめろよ。」
騎士B「はは、一思いに殺してやるよ。」
バベルは、日本刀を鞘に納めた。
パオ「何してんの!バベル兄ちゃん、あきらめないでよ!僕らが逃げて、お父さんを助けに行こうよ!」
バベルは、右足を前に出し、腰を低く構える。
左手は、鞘を持ち、右手は刀の柄を軽く握る。
騎士の間合いが近づく。8m
騎士A「お前の父ちゃんは、もう死んでるよ。体中に槍を受けてて、ハリネズミ見たいだったな。」
騎士B「ああ、闘技場の異名そのものだな。音速のハリネズミ、自分の最後がハリネ・・・。」
バベル「俺の間合いだ。」
目の前にいたはずの、細い剣を持った男が、次の瞬間、騎士Bの左斜め前に立っていた。
しかも、仲間の騎士Bは、鎧が切れている。何か魔法を使ったのか、いや、詠唱は見られなかった。
騎士Aは、動けない。
騎士Bの腰から上がずり落ちる。
騎士A「え、あ、い、ま、あ・・・。死にたくない。」
バベルの放つ突きが、騎士Aの鎧を貫く。
パオ「バベル兄ちゃん?その眼・・・。」
バベル「・・・、逃げて。」
バベルは騎士に止めを刺すと、意識を失う。
倒れたバベルの目から、涙が流れている。
パオ「バベル兄ちゃん、バベル兄ちゃん!」
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