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+Graffiti[落書き]
2-5.友情
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数日後、リコリーはマニ・エルカラムのカウンターで新聞を読んでいた。
一面の見出しには、アカデミー所属の高名な学者が部下達の論文を不正に使用したことが書かれていた。
「リコリー、何読んでるの?」
ココアを持って来たアリトラが話しかける。
「この人、有名な学者なんだよ」
「あぁ、そういえばお昼もその話題で持ち切りだったよ。まぁ論文に嘘が書いてなかっただけよかったよね。理論そのものは正しいんだし」
「でも考えたのは別の人だからね。そこはしっかりしないと」
「リコリーよく専門書読んでるじゃない。この人のも読んだことあるの?」
「数冊読んだかなぁ」
「ふーん。……いらっしゃいませー」
アリトラが店の出入り口に目を向ける。そこには仏頂面のサリルが立っていた。
「あ、サリル。此処に来るなんて珍しいね」
「あ、あの、す、すぐに出ていきます」
話しかけられた途端に仏頂面から慌てた表情になったサリルは、それを隠すかのように早足でリコリーの元に近づいた。
「詳しいことはその新聞に書かれた通りです」
「結構早かったね」
「はい。あの本を見せたところすぐに口を割った方がいたそうですから。器物破損なのでそれなりに処分はあるでしょうが、軽く済ませるようにとアカデミー内で運動が起きているようです」
サリルは抱えていた箱をカウンターの上に置いた。
両手で抱えるほどの大きなそれに、リコリーは青い目を見開く。
「これ」
「つまらないものですが、どうぞ」
「え、何これ」
アリトラがきょとんとするのに、サリルは聞こえていない振りをして踵を返す。
そして入ってきたときの倍の速度で、逃げるように出て行った。
「リコリー、サリルと何かあったの?」
「別に、何でもないよ」
「それにしても相変わらずサリルって不可解。アタシのこと嫌いなのかな」
「どうだろうね」
大きな箱を開いたリコリーは、中を覗き込むと嬉しそうな声を出した。
「プリンだ」
「プリン?」
「しかも高いプリンだよ。アリトラも食べる?」
「ねぇ、なんでサリルがプリン持ってくるの?」
事情を知らないアリトラが不思議そうな顔をして、リコリーの袖を掴む。
「リコリー、隠し事はよくない」
「隠し事じゃないよ」
「じゃあ何?」
「友情とかそのあたりかな。男の友情」
「友情って…リコリーとサリルってそんなに仲良かったっけ?」
「僕は友達だと思ってるよ。サリルは嘘をつかないからね」
しっかりと本を抱えて階段を下りて行った凛々しい顔を思い出しながら、リコリーは満足そうに笑った。
END
一面の見出しには、アカデミー所属の高名な学者が部下達の論文を不正に使用したことが書かれていた。
「リコリー、何読んでるの?」
ココアを持って来たアリトラが話しかける。
「この人、有名な学者なんだよ」
「あぁ、そういえばお昼もその話題で持ち切りだったよ。まぁ論文に嘘が書いてなかっただけよかったよね。理論そのものは正しいんだし」
「でも考えたのは別の人だからね。そこはしっかりしないと」
「リコリーよく専門書読んでるじゃない。この人のも読んだことあるの?」
「数冊読んだかなぁ」
「ふーん。……いらっしゃいませー」
アリトラが店の出入り口に目を向ける。そこには仏頂面のサリルが立っていた。
「あ、サリル。此処に来るなんて珍しいね」
「あ、あの、す、すぐに出ていきます」
話しかけられた途端に仏頂面から慌てた表情になったサリルは、それを隠すかのように早足でリコリーの元に近づいた。
「詳しいことはその新聞に書かれた通りです」
「結構早かったね」
「はい。あの本を見せたところすぐに口を割った方がいたそうですから。器物破損なのでそれなりに処分はあるでしょうが、軽く済ませるようにとアカデミー内で運動が起きているようです」
サリルは抱えていた箱をカウンターの上に置いた。
両手で抱えるほどの大きなそれに、リコリーは青い目を見開く。
「これ」
「つまらないものですが、どうぞ」
「え、何これ」
アリトラがきょとんとするのに、サリルは聞こえていない振りをして踵を返す。
そして入ってきたときの倍の速度で、逃げるように出て行った。
「リコリー、サリルと何かあったの?」
「別に、何でもないよ」
「それにしても相変わらずサリルって不可解。アタシのこと嫌いなのかな」
「どうだろうね」
大きな箱を開いたリコリーは、中を覗き込むと嬉しそうな声を出した。
「プリンだ」
「プリン?」
「しかも高いプリンだよ。アリトラも食べる?」
「ねぇ、なんでサリルがプリン持ってくるの?」
事情を知らないアリトラが不思議そうな顔をして、リコリーの袖を掴む。
「リコリー、隠し事はよくない」
「隠し事じゃないよ」
「じゃあ何?」
「友情とかそのあたりかな。男の友情」
「友情って…リコリーとサリルってそんなに仲良かったっけ?」
「僕は友達だと思ってるよ。サリルは嘘をつかないからね」
しっかりと本を抱えて階段を下りて行った凛々しい顔を思い出しながら、リコリーは満足そうに笑った。
END
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