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+Cow[牛]
3-3.空から牛が降ってきた?
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演習にはいくつかの種類があるが、今回は剣技演習ということもあり、来ている観客の大半は十三剣士隊が目当てだった。
開始から一時間が経過したあたりで、年代物の銅鑼が打ち鳴らされる。
それまで演習をしていた軍人達が足を揃えて退場し、それと入れ替わりに十三人の剣士達が登場する。
ラッパの音も高らかに響く中で、隊の紋章を染め抜いた赤い旗が、雲一つない青空に翻った。先頭で旗を持つのはカレードで、見た目からして重いそれを平然とした表情で構えている。
演習場を一周した後、剣士たちは中央で立ち止まった。
一人の壮年の男が前に進み出て黒い刀身を持つ剣を抜く。青い空に新たに加えられた黒を、アリトラは興奮気味に眺めていた。
「これより、十三剣士隊による特別演習を開始する。本訓練は一対多数の戦闘を想定したものである」
先日までの悪天候の余韻により吹く強い風に、掲げられた刀身も旗も揺らぐことはない。それが剣士達の腕力と集中力を物語っている。
「ミソギ・クレキ中尉は北に位置を取り、他十一名は南に位置を取れ!」
「イエス・サー!」
声の揃った返事と共に、剣士たちが準備を始める。
カレードは観客席側にある旗を立てる囲いへと向かったために遅れたが、それでも隊列を乱すには至らない。
「総員構え!」
その声に従い、多種多様の剣が抜かれる。
観客全員が息を飲み、開始の銅鑼が鳴らされるのを待ちわびた。
しかし、その張り詰めた空気を破ったのは銅鑼でもなければ剣士の声でもなかった。空から降ってきた牛の鳴き声だった。
「は?」
ミソギが剣を構えたまま、どこか間の抜けた声を出す。
他の剣士も似たり寄ったり反応で動けずにいる中、唐突に中空に現れた牛は、背中から地面に落ちて憤りの声を出した。
黒光りする毛並みに、雄々しき角を怒りに震わせながら牛は立ち上がる。
その次の行動を、全員が悟る前に牛は暴れ始めた。
決して狭いとは言えない演習場の中を、雄牛独特の力強い脚力と速度で駆け回る。
アリトラは集中していた分、しばし呆然としていたが、牛が自分の方に走ってくるのを見ると我に返った。
「何でアタシ!?」
夢は綺麗な花嫁さんであるアリトラは、牛に殺されるなんて願い下げだった。百歩譲って美しい幻獣なら兎に角、目の前に迫るのは鼻息の荒い牛である。
突進する脅威に、アリトラはしかし直ぐには避けなかった。ソファーの背もたれの部分に飛び乗ると、牛が接近する寸前までその場で踏みとどまる。
そして残り一メートルとなった時、足元を力いっぱい蹴り飛ばして右に飛びのいた。
空と地面が一瞬入れ替わり、その景色の中でソファーに激突する牛と、それを追いかけて剣を振り上げる金髪の剣士の姿が見えた。
開始から一時間が経過したあたりで、年代物の銅鑼が打ち鳴らされる。
それまで演習をしていた軍人達が足を揃えて退場し、それと入れ替わりに十三人の剣士達が登場する。
ラッパの音も高らかに響く中で、隊の紋章を染め抜いた赤い旗が、雲一つない青空に翻った。先頭で旗を持つのはカレードで、見た目からして重いそれを平然とした表情で構えている。
演習場を一周した後、剣士たちは中央で立ち止まった。
一人の壮年の男が前に進み出て黒い刀身を持つ剣を抜く。青い空に新たに加えられた黒を、アリトラは興奮気味に眺めていた。
「これより、十三剣士隊による特別演習を開始する。本訓練は一対多数の戦闘を想定したものである」
先日までの悪天候の余韻により吹く強い風に、掲げられた刀身も旗も揺らぐことはない。それが剣士達の腕力と集中力を物語っている。
「ミソギ・クレキ中尉は北に位置を取り、他十一名は南に位置を取れ!」
「イエス・サー!」
声の揃った返事と共に、剣士たちが準備を始める。
カレードは観客席側にある旗を立てる囲いへと向かったために遅れたが、それでも隊列を乱すには至らない。
「総員構え!」
その声に従い、多種多様の剣が抜かれる。
観客全員が息を飲み、開始の銅鑼が鳴らされるのを待ちわびた。
しかし、その張り詰めた空気を破ったのは銅鑼でもなければ剣士の声でもなかった。空から降ってきた牛の鳴き声だった。
「は?」
ミソギが剣を構えたまま、どこか間の抜けた声を出す。
他の剣士も似たり寄ったり反応で動けずにいる中、唐突に中空に現れた牛は、背中から地面に落ちて憤りの声を出した。
黒光りする毛並みに、雄々しき角を怒りに震わせながら牛は立ち上がる。
その次の行動を、全員が悟る前に牛は暴れ始めた。
決して狭いとは言えない演習場の中を、雄牛独特の力強い脚力と速度で駆け回る。
アリトラは集中していた分、しばし呆然としていたが、牛が自分の方に走ってくるのを見ると我に返った。
「何でアタシ!?」
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突進する脅威に、アリトラはしかし直ぐには避けなかった。ソファーの背もたれの部分に飛び乗ると、牛が接近する寸前までその場で踏みとどまる。
そして残り一メートルとなった時、足元を力いっぱい蹴り飛ばして右に飛びのいた。
空と地面が一瞬入れ替わり、その景色の中でソファーに激突する牛と、それを追いかけて剣を振り上げる金髪の剣士の姿が見えた。
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