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しおりを挟むこの世界の美醜はかわっている。
「フィちゃん、こちらにいらっしゃい」
目の前に、見掛けを悪く言ってはいけないけれどブタさんに似ている二人がいる。僕の父と母。
ふっくらした頬に瞼。指も太い。
ちなみに僕は平凡。前世の自分にそっくり。黒髪、黒耳と黒尻尾、瞳だけ青。
「フィ、こちらに来い」
父と母に呼ばれるがルーにぃの足にしがみつき、クーにぃの手を握り締めて動かなかった。
兄二人が困っているが身体が震えて無理。大人は怖い。
「父上、母上」
ルーにぃが父と母に声を掛けると二人が残念そうに息をついた。
「寝ている時しか可愛い顔が見れないなんて、抱っこもできないなんて」
母がさめざめと泣いている。横の父が肩を抱いて慰めている。
父と母は美男美女らしい。
それでいて美少年の兄達が醜いと言われている。不思議世界に生まれてしまって未だに慣れない。
「せめて名前だけでも呼んで、フィちゃん」
この父と母は悪くない。何も怖いことはされたことがない。クーにぃの手を強く握り締める。
「とぅさま、かぁさま」
か細い声で言うとそれだけで父と母は嬉しそうだった。ごめんなさい。
特に親が怖くて会うと暫くは震えが止まらない。今日はクーにぃが傍にいて部屋で抱っこしてくれている。
「大丈夫だよ~。フィ」
あちこち撫でられ、ヨシヨシとされる。兄達は慰めてくれる時は毎回、耳や尻尾を触ってくれる。気持ちいい。
「クーにぃ、尻尾もっと撫でて」
「いいよ~。でも兄上と僕にしか言っちゃダメだよ。約束~」
指切りをして約束をする。なんでと思ったけど兄達以外に触る人はいないだろうと問わなかった。
「約束するの」
「良い子良い子」
尻尾をモフモフされて気分がよくなる。震えも止まって来た。
「フィは大人が怖い?」
「ごめんなさい」
途端に耳がへにょりと垂れる。
「それはいいんだけど、僕と兄上に成長期が来て大きくなったら嫌われちゃうかな~って心配」
兄達もいずれは大人になる。
「にぃたちは怖くない。ずっと一緒。ねっ?」
そうだよねと不安になってしがみつくとギュッと抱き締められた。
「勿論。死ぬまでずっとね」
その言葉に安心する。震えていた身体も完全に止まった。
「にぃ大好き。にぃは?」
「大好きだよ~。何よりも大切。だからフィも僕達を一番にしてね」
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