美醜逆転獣世界

ノラ

文字の大きさ
4 / 31

4

しおりを挟む


 美男美女の親から生まれた醜い子供。父と母はそんな事は思わないし言わなかったけど周りには散々と蔑まれた。


 まぁ自分でも鏡を見たらそう思うから仕方ないんだけど、だから嫌な気分にはならないって訳じゃない。


 尊敬する兄がいるからグレずにすんでいる。可愛い弟が生まれた時に、正直、嫌われるかなと思った。


 でも逆だった。世界一可愛い弟は醜いと嘲笑われる僕達にしか心を開かない。


「フィ。おいで~」


 呼ぶと嬉しそうに尻尾をパタパタさせて小さな手足で駆け寄って来る。


 可愛い。可愛くて仕方ない。


「クーにぃ」


 戸惑うことなく抱きついてくるのはフィーリィーだけだろうな。


「大好き、にぃ」


 毎日、好意を伝えられる。それだけで周りの反応なんて気にならなくなる。


「僕も大好きだよ~」


 ギュッと抱き締め、好きだと言うと安心したように笑む。このままずっと一緒にいたい。


「クーにぃ、尻尾さわっていい?」


 サラサラしてなくフワフワしている耳と尻尾も嘲笑われるのに、触りたいと言うのはフィーリィーだけ。


「いいよ~」


 抱っこして椅子に座って尻尾をフィーリィーの頬にあてると喜ぶ。弟はとっても可愛い。


ルーにぃはカスタードクリーム色の耳と尻尾。クーにぃは生クリーム色の耳と尻尾。兄達と同じなのは青い瞳だけ。

 
見掛けは全く似てない。自分の地味な黒い耳と尻尾を鏡の前でツンツンしていた。


「フィ、どうかした?」


 相変わらずの美少年のルーにぃ。耳と尻尾をへにょと垂れさせ、抱き付いて兄の顔を見上げる。


「色がにぃたちと違うの」


 ルーにぃが困ったように笑い頭を撫でて宥めてくれた。


「フィーリィーの色は綺麗だよ。黒は一番美しいとされている」


「や、にぃ達と一緒がいいの」


 グリグリ頭を押し付け、いやいやと我儘を言う。


「寂しいの」


 だから兄達と一緒がいいと涙目で言うと、ルーにぃが黒耳に触れた。


「寂しくないよ。フィの色が同じじゃなくても一生ずっと一緒」


「ほんとう?」


「勿論、私とアレクの大切な弟」


 毎日不安でたまらない。この世界で怖いことはまだ一度もない。でも兄二人以外は信じられない。


 殴らないで、もう止めて、痛いよ。大人を見るとあの時の事を思い出す。


「ルーにぃ、大好きって言って」


「フィ、大好きだよ。私達の大切な弟。フィーリィー愛してる」


 兄達がいるから大丈夫。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

たとえば、俺が幸せになってもいいのなら

夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語――― 父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。 弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。 助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

とある美醜逆転世界の王子様

狼蝶
BL
とある美醜逆転世界には一風変わった王子がいた。容姿が悪くとも誰でも可愛がる様子にB専だという認識を持たれていた彼だが、実際のところは――??

ある少年の体調不良について

雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。 BLもしくはブロマンス小説。 体調不良描写があります。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

処理中です...