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しおりを挟む「ふぇぇ行っちゃヤダァァ」
兄二人に盛大に泣いて我儘を言っている。いやいやと首を振る。
「泣かないで~」
ルーにぃの尻尾にしがみつき、必死に離さないようにしている。クーにぃがヨシヨシと頭を撫でてくれた。
「フィーリィー、今は行かないから落ちついて」
今はと言われて悪化した。
「いや!置いて行かないで、ふぇぇ」
クーにぃの尻尾も必死に胸に抱き込む。いつもなら嬉しいもふもふも今は離してなるものかとしがみつく。
「リカルド兄上」
クーにぃが困ったようにルーにぃに声を掛ける。ヒックヒックと涙をポロポロ落としながら二人を見上げる。
「フィも一緒に行く?」
兄たちは町に視察に行く。父の代わりに2日ほど町長と話し合い、治安や領民の不自由や町の不備などを確認する。
「町にはたくさん人がいるんだよ~。怖くない?」
正直、めっちゃ怖い。町って事は大人がたくさんいる。今、想像しただけで青ざめてプルプルしてしまう。
「アレクは残れたらと思ったけど、町の規模と滞在日数を考えると別行動で視察しなければいけない」
「僕が抱っこするから一緒に町を周る~? それとも兄上と一緒に町長と話す~?」
残る、町に一緒に行ってルーにぃと町長の話し合いに同席、クーにぃに抱っこされて町を見て回る。3択。
「一緒、一緒がいい」
残る選択はない。一人で家にいるのは怖い。また暴れて誰かを傷付けるかもしれない。兄達といれないと不安で我を忘れる。
「なら一緒に行こう」
「三人で出掛けるのは初めてだね」
コクリと頷いた。一週間後、町に向かう。たくさんの人を見ることになるだろうと今から覚悟し頑張ると決意する。
兄達に耳と尻尾を撫でてと甘え、今すでにプルプルしている身体をヨシヨシと慰めて貰っていた。
突然コンコンとドアがノックされ、ビックリして毛が逆立つ。お茶とお菓子を食事ワゴンに乗せた侍女が入ってきた。
「あっ、リズ」
ルーにぃの後ろに隠れ小声で言うとリズがニコッと笑った。前に傷付けてしまったのに笑いかけてくれる。
『私が悪いのです。泣いていても近付いてはいけないと言われていましたのに、私の妹と重なって……申し訳ありません』
触れてこようとした大人の手が怖くて爪を立てて振り払ってしまった。リズの手から血が流れていたのに固まって何も出来なかった。
『ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい』
離れていたら怖くない。兄達もいる。ぴったりくっついたまま、震え声でリズにたずねた。
「リ……ズ。傷は……痛くない?」
目線を下げて顔も見れず、なのにリズは怒った様子もなく嬉しそうに返事をしてくれた。
「はい、私は丈夫なのが取り柄なので、もう治りました。大丈夫です。フィーリィー様」
リズの尻尾が揺れている。嘘じゃないのにホッとする。
「ごめん……なさい、リズ」
「たくさん謝って貰いましたわ。それに近付いた私も悪いです」
視界にションボリするリズの姿にオロオロしていると、クーにぃが耳を撫でてくれた。
「フィが思い詰めるとリズも悲しいよ~。お互いごめんなさいで仲直り、ねっ?」
チラッとリズを見ると何度も頷かれた。
「仲直り?」
首を傾げてきくとリズの尻尾がパタパタ揺れた。
「はいっ!フィーリィー様」
良かったとへにょと笑うとリズの顔が真っ赤になった。不思議に思って左右の兄を見ると、ルーにぃは頭を撫でクーにぃは分かる分かると頷いていた。
はてなと思いながらリズが用意してくれたお茶とお菓子を美味しく食べた。
「視察楽しみだね~」
忘れていた視察にまたプルプルと震えた。
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