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しおりを挟む「眠ったね」
フィが眠ると寝室からソッと出た。
足音を抑えて、ソファーに座り、今日の視察の報告を仕事口調でアレクが話す。
「今日は農場と街を視察して回りました。天候も問題なく、無事に収穫できたそうです。害獣の被害もなく、今回は集団の盗人もいなかったと」
「そう、街の裏通りは?」
「はい、ガラの悪い密売人を数人、捕らえました。後は無許可の商売女性を保護、然るべく処罰と事情聴取の後に必要なら職業斡旋をします」
リカルドが頷くとため息をもらす。
「すまない。嫌な仕事を任せて」
「いいえ、兄上が気にして下さる程、嫌だとは思っていません。馬鹿の罵りにもなれました。それに――」
犯罪者を捕らえると必ず容姿の罵詈雑言を吐かれる。昔はムカついて殴り飛ばして気絶させていたけど、今はそんな事はしない。
「フィがいるので、感情の揺れも落ち着いてます」
前なら腹立つ態度も言葉も、フィーリィーが生まれてから受け流せるようになった。
「そうだね。フィは私達の心を癒してくれる。でも私達はフィの心をまだ癒せていない」
大人に過剰に怯える弟。原因が全く分からないまま五歳になった。
「私も報告がある」
そう言いリカルドは、アレクにスケッチブックを渡した。中を開き、ページを確認する。絵がいくつか書かれていた。
「これは?」
「フィーリィーが書いた。遊び、フィはゲームと言っていた。どれも全く知らないものばかりで、簡単に作製できそうな楽しそうなものばかりだよ」
アレクは驚き目を見開き、絵に目線を落とす。しっかりした線に文字が書かれている。
ゲームは遊びと言う意味で、それぞれゲーム名が決まっているみたいだった。
「フィが考えたのならすごいですね」
「……そう。町長もきいていたから誤魔化す事が出来なかった」
アレクが首を傾げる。誤魔化す必要があるのだろうか。
「あの見た目だけでも注目される。それでいて、今までにない事を発案する賢さがあると知られてしまった。あの子は護衛を恐がる。一番側にいる私達が守らないといけない」
リカルドが渋い顔をしていた理由がようやく理解できたアレクも顔を歪ませる。
「家にいてくれれば安全ですが、今回みたいに僕たちについてくるとなると」
「父上に相談して早急に対策をとるよ。明日はアレクと孤児院だね。気を付けて」
「はい」
必ず守る。
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