美醜逆転獣世界

ノラ

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「待って、にぃ」


 今にも帰ろうとする兄をひき止める。離れた所に院長先生と多分さっき声をかけられた男の人がいる。


「お菓子、食べるの」


 迷惑かけてお菓子って思われるだろうけど大事なことをまだ言ってない。


 クーにぃは顔を険しくさせている。綺麗な顔なのにと暢気に思ってしまう。


「……すぐ帰らなくて大丈夫ー?」


「クーにぃも一緒。大丈夫」


 カイとカリンとみんなの方に顔を向ける。


「また、遊んでね」


「あぁ!またな!」


「またいらして下さい」


 他の子達にも手を振り別れた。遠巻きにしていた院長先生と応接室に向かう。


「あのっ」


「フィが作ったお菓子。レイラにも食べて欲しいってー」


 目の前にはすでに用意されているプリン。まずは作った自分が味見。


「にぃ、食べさせて」


 スプーンですくうとプルッとしていた。見掛けは成功。口元に運ばれパクッと食べる。


「美味しい」


 プリンだ。味も成功だと喜ぶ。


「にぃと院長先生も食べて」


 二人にススメると食べてくれた。


「甘くて美味しい。今まで食べたことないよー。フィーリィーすごい!」


 褒められて嬉しい。院長先生も感動してくれた。


「院長先生……このお菓子を……お祭りで売りませんか?」


「これを?」


 院長先生の戸惑った声。


「孤児院を出る子達のために……少しでも多く……資金を持たせてあげて欲しいの。13歳以上の子達と大人一人で出来ると……思います」


 16歳までの3年間で結構、貯めれると思う。院長先生はオロオロしながらクーにぃを見ている。


「クーにぃ……ダメ?」


 兄の眉間にシワが寄っている。撫でて伸ばしたいけど身体がまだ動かせない。


「……父上はフィーリィーが望むなら許すと思う。でも……どうかなー」


 曖昧な返事に顔がうつ向く。大人の事情がきっと絡んでいるんだと思う。


「孤児院だけで売るとやっかまれる可能性があるよねー。売るのは子供たちだしー。危険とかー」


 成る程。営業妨害されたりとか。


「とうさまが孤児院に販売の依頼して一部の売り上げ貰ってもダメ?」


 領主様の後ろ楯があれば手を出す人も少ないと思う。多分。


「あぁ、それだと大丈夫かなー。んーでももうちょっと詰めて考えなきゃいけないかなー」


 クーにぃもプリンを一つ食べきった。口どけなめらかでフィーリィーで作るのは初めてだったけど合格点だと思う。



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