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しおりを挟むオモチャ商品も順調で、生産が追い付かないほどらしい。遊具の注文もあって職人さんは大忙し。
機械がないから全部手作業。
「簡単な作業なら初心者でもすぐに出来るから仕事につける人も増えたよ。噂が広がって他領からも注文が来ている」
「避難所も出来て領民がものすっごく感謝してる。保護した後は事情をきいて、住み込みの仕事紹介や頼れる人がいれば送ったり、和解したいなら警備兵が立ち会って誓約書を書かせて暫くは見回りの時に確認によるとかしてるよー」
にぃ達はすごい。短い期間で僕の願いを実現してくれた。
「ルーにぃ、クーにぃ、ありがとう」
嬉しい、大好きと飛び付いて甘えた。耳と尻尾も撫でて貰って大満足。ずっと兄二人といれると思っていた。
「ふぇえぇぇ―――!! ヤダヤダヤダ―――!! 行かないでルーにぃぃぃ―――――!!」
来年13歳になるルーにぃは王都の学園に三年間、行く事が決定している。次代領主が行かない選択肢はない。
王都の周りを10の領地に分け、それぞれの領土に領主と家族がいる。
ルーにぃは将来、アース領・領主リカルドになる。他領の次代領主との交流も必要。王子様もいるらしい。
ルーにぃの尻尾に顔を埋めて、しゃくり上げながら泣きつく。前にも同じことをして全く成長してない自覚はある。
「ひっく、ふぇ、ルーにぃぃ」
寂しい、分かってる、困らせる、だけど嫌なものはイヤー。
「フィーリィー……」
「クーにぃも……行くの?」
隣にいるクーにぃを見上げる。涙がポタポタ落ちる。クーにぃはルーにぃの一つ下。
「そー……なるね」
年齢的に、それ以外も問題あるけど一人ぼっち確定に目の前が真っ暗になる。
一人は嫌、一人は怖い、また一人。
「はっ……はっ」
息ができない。喉を押さえて必死に呼吸しようともがく。
「フィ!?」
置いて行かないで、もう怖いのは嫌だ。二人がいないなら、こんな世界にいたくない。
このまま、息が止まってもいいかもしれない。そう思った。
「――んっっ」
唇がふさがって暖かい空気が身体に吹き込まれた。うっすら目を開けるとルーにぃの顔が間近にあった。
「大丈夫、ゆっくり息をして、フィ」
抱き締められ背中を優しく撫でられ、大丈夫、フィーリィーと呼び掛けてくれる。
「ルーにぃ……クーにぃ……行かないで」
苦しさに意識が遠ざかっていった。
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