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思い出巡り
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石段を駆け上がった。廃れた鳥居の向こう側は、違う世界のような気がした──
高校3年生、夏休み最終日。来年の春、俺は就職でこの町を出ていく。中学、高校は隣町まで通ったし、遊べるような場所もない。どんどん過疎化が進んでいく。不便な町だった。でもこの地元を嫌いにはなれなかった。
ガキの頃の夏休み、昼過ぎにこの鳥居の向こうに行くと、いつも誰かがいた。約束をするわけじゃない。木の影で涼しいこの寂れた神社は、小学生の溜まり場だった。男女も学年も関係なし。かくれんぼやら、鬼ごっこやら、やったっけな。
あの頃とは違って、誰もいない。数年で少子化が進んだのか、最終日だから課題にでも追われてんのか。蝉の鳴き声だけが響き渡る。
「えっ、カズキ?久しぶりじゃんー!」
暫く思い出に浸っていたら、懐かしい声がした。
「おー!ソラか!なんでこんなとこにいんの」
「お前こそ」
「思い出巡り……的な?」
「らしくねー」
「だよな」
「……そしたらソラがあっちから走ってきてさ」
「あー、あったあった、懐かしいね」
町内会のスピーカから音楽が流れる。6時の合図だ。暫く話し込んでいる間に日が傾いていた。
「帰らなきゃって気分になるよなー、この曲聴いたらさ」
「わかる。でも、別にもう俺ら小学生じゃねぇしな」
「来年にはもうこっちにいないんだもんねー」
「時間経つの早いよなぁ」
「何だかんだこういう時間好きだよ。また何年か経ったらさ、今日のことも懐かしいねって言うんだろうな」
「そうだな。まさかお前に会えるとは思ってなかったわ」
「こっちこそだよ」
きっとそれも思い出って呼ぶんだな。
高校3年生、夏休み最終日。来年の春、俺は就職でこの町を出ていく。中学、高校は隣町まで通ったし、遊べるような場所もない。どんどん過疎化が進んでいく。不便な町だった。でもこの地元を嫌いにはなれなかった。
ガキの頃の夏休み、昼過ぎにこの鳥居の向こうに行くと、いつも誰かがいた。約束をするわけじゃない。木の影で涼しいこの寂れた神社は、小学生の溜まり場だった。男女も学年も関係なし。かくれんぼやら、鬼ごっこやら、やったっけな。
あの頃とは違って、誰もいない。数年で少子化が進んだのか、最終日だから課題にでも追われてんのか。蝉の鳴き声だけが響き渡る。
「えっ、カズキ?久しぶりじゃんー!」
暫く思い出に浸っていたら、懐かしい声がした。
「おー!ソラか!なんでこんなとこにいんの」
「お前こそ」
「思い出巡り……的な?」
「らしくねー」
「だよな」
「……そしたらソラがあっちから走ってきてさ」
「あー、あったあった、懐かしいね」
町内会のスピーカから音楽が流れる。6時の合図だ。暫く話し込んでいる間に日が傾いていた。
「帰らなきゃって気分になるよなー、この曲聴いたらさ」
「わかる。でも、別にもう俺ら小学生じゃねぇしな」
「来年にはもうこっちにいないんだもんねー」
「時間経つの早いよなぁ」
「何だかんだこういう時間好きだよ。また何年か経ったらさ、今日のことも懐かしいねって言うんだろうな」
「そうだな。まさかお前に会えるとは思ってなかったわ」
「こっちこそだよ」
きっとそれも思い出って呼ぶんだな。
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