2 / 2
もう一度
しおりを挟む
今日はいつもより早く登校した。教室に着いたら、一葉さんはもう席に着いて窓の外を眺めていた。サラサラのロングヘア、少し目にかかる長めの前髪。着席しているだけでもサマになる。
「ねぇ、昨日のさ……」
自分の席に荷物を置いたあと、私は彼女に声をかけた。
「ごめん、ちょっと」
「待ってよ」
席を立って教室を出ていく彼女の後を追いかける。今追いかけないと、もう二度と話すことはないと思ったから。
人気のない特別棟に彼女は早足で向かっていった。その少し後ろを私は無言でついて行く。
「なんで逃げるの?」
「逃げてないよ。私が向かってる先にりの……小野寺さんがついてきてるだけじゃん」
「なんで嘘つくの?」
完全に無視された。そのまま階段を降りていく。
「私なにかした?」
私がそう聞くと、彼女は足を止めた。そして俯きながら口を開いた。
「なにもしてない。本当に、私が悪いから、お願いだから放っておいて……」
段々と声が小さくなっていく。そして彼女は階段をかけおりていった。彼女の前髪の間からのぞく瞳には涙が光っていた。私そんなきつい言い方したかな。もう追いかける気にはならなかった。そこまでして彼女を追い詰めたいわけじゃないから。
結局嘘をつかれた理由はわからないし、逃げられた理由もわからなかった。私が悪いからってのもどういう意味だろう?
これ以上本人に聞くのは違うと思った。どうせ答えてくれないだろうし。
階段をあがって教室に戻った。席に着いて荷物を机の中に移す。そうしていると、一部始終を見ていた前の席の上田が振り返って話しかけてきた。彼は中学から同じ学校で、今も席が近いからよく話す。
「お前よく一葉さんに話しかけられるなー?すげぇわ」
「え?」
「なんていうか、雰囲気独特だろ。俺、一葉さんが休み時間に人と話してるところ初めて見たもん」
「そこまで話さないの?」
「うん。つーか、知らねぇの?一葉灯総シカト事件」
なによそれと私が聞くと、彼はそのことについて最初から教えてくれた。
私たちが入学したばかりの頃、2組に超絶美女がいるって話題になったらしい。それが一葉さんで、なんとか彼女と連絡先を交換しようと努力する男が数人いたけど、結局話すことすら叶わなかったんだとか。
アカリンは小学生のときからモテてたと思う。けれど男女関係なく仲良くするタイプだったから、付き合ってるとかは聞いたことないな。
「結構有名だと思うけどなこの話」
「そうなの?全然知らなかった」
「まークラス違うと知らないかもしんねぇな。てなわけで、一葉さんに話しかける人はいないんだよ。いじめとかじゃなくて、多分ひとりが好きなタイプなんだろうな」
あのときのアカリンがこうなるなんて誰が予想しただろう。同級生も今の彼女を見たら別人だと思うに違いない。
「さっき廊下行ってたの見たけど、普通に喋れた?」
「んー、まぁ、うん」
さっきの一連の会話(?)を思い出しながらそう返した。
「微妙な感じだった?だとしても小野寺は多分悪くないと思うから、気にするだけ無駄だぞ」
予鈴が鳴り、一葉さんは教室に戻ってきた。あのまま帰ってこなかったら絶対私のせいだから、どうしようかと心配していたけど杞憂だった。
「ねぇ誠、小学校のとき一緒だったアカリンって覚えてる?」
家に帰って、ソファに寝転んでいる双子の兄にアカリンの話を振ってみた。私たちは別々の高校に通っている。
「あぁ一葉な。よく家に遊びに来てたじゃん。お前仲良かったよな?」
「この間知ったんだけど、高校同じだったんだ」
「マジ?引越しとか?」
寝転んでいた誠が起き上がった。やはり人気者アカリンの今は気になるものらしい。
「普通に電車で通ってるらしい。聞いた話だから本当かはわかんないけど」
「へー、あっちならもっと綺麗な高校いっぱいあんのになー。てかまず一葉って良いとこの子じゃねーの?てっきり中学受験でもしたのかと思ってた」
「だよね?やっぱそこ気になるよね。しかもさ、めっちゃ雰囲気変わってて」
「ギャルとか?」
「いや、めっちゃ大人しくなってて。誰とも喋らないとかそんなレベル」
「マジ!?想像つかねー。あーでも、ちょっと聞いたことあるかも。中学時代の一葉の噂」
「ねぇ、昨日のさ……」
自分の席に荷物を置いたあと、私は彼女に声をかけた。
「ごめん、ちょっと」
「待ってよ」
席を立って教室を出ていく彼女の後を追いかける。今追いかけないと、もう二度と話すことはないと思ったから。
人気のない特別棟に彼女は早足で向かっていった。その少し後ろを私は無言でついて行く。
「なんで逃げるの?」
「逃げてないよ。私が向かってる先にりの……小野寺さんがついてきてるだけじゃん」
「なんで嘘つくの?」
完全に無視された。そのまま階段を降りていく。
「私なにかした?」
私がそう聞くと、彼女は足を止めた。そして俯きながら口を開いた。
「なにもしてない。本当に、私が悪いから、お願いだから放っておいて……」
段々と声が小さくなっていく。そして彼女は階段をかけおりていった。彼女の前髪の間からのぞく瞳には涙が光っていた。私そんなきつい言い方したかな。もう追いかける気にはならなかった。そこまでして彼女を追い詰めたいわけじゃないから。
結局嘘をつかれた理由はわからないし、逃げられた理由もわからなかった。私が悪いからってのもどういう意味だろう?
これ以上本人に聞くのは違うと思った。どうせ答えてくれないだろうし。
階段をあがって教室に戻った。席に着いて荷物を机の中に移す。そうしていると、一部始終を見ていた前の席の上田が振り返って話しかけてきた。彼は中学から同じ学校で、今も席が近いからよく話す。
「お前よく一葉さんに話しかけられるなー?すげぇわ」
「え?」
「なんていうか、雰囲気独特だろ。俺、一葉さんが休み時間に人と話してるところ初めて見たもん」
「そこまで話さないの?」
「うん。つーか、知らねぇの?一葉灯総シカト事件」
なによそれと私が聞くと、彼はそのことについて最初から教えてくれた。
私たちが入学したばかりの頃、2組に超絶美女がいるって話題になったらしい。それが一葉さんで、なんとか彼女と連絡先を交換しようと努力する男が数人いたけど、結局話すことすら叶わなかったんだとか。
アカリンは小学生のときからモテてたと思う。けれど男女関係なく仲良くするタイプだったから、付き合ってるとかは聞いたことないな。
「結構有名だと思うけどなこの話」
「そうなの?全然知らなかった」
「まークラス違うと知らないかもしんねぇな。てなわけで、一葉さんに話しかける人はいないんだよ。いじめとかじゃなくて、多分ひとりが好きなタイプなんだろうな」
あのときのアカリンがこうなるなんて誰が予想しただろう。同級生も今の彼女を見たら別人だと思うに違いない。
「さっき廊下行ってたの見たけど、普通に喋れた?」
「んー、まぁ、うん」
さっきの一連の会話(?)を思い出しながらそう返した。
「微妙な感じだった?だとしても小野寺は多分悪くないと思うから、気にするだけ無駄だぞ」
予鈴が鳴り、一葉さんは教室に戻ってきた。あのまま帰ってこなかったら絶対私のせいだから、どうしようかと心配していたけど杞憂だった。
「ねぇ誠、小学校のとき一緒だったアカリンって覚えてる?」
家に帰って、ソファに寝転んでいる双子の兄にアカリンの話を振ってみた。私たちは別々の高校に通っている。
「あぁ一葉な。よく家に遊びに来てたじゃん。お前仲良かったよな?」
「この間知ったんだけど、高校同じだったんだ」
「マジ?引越しとか?」
寝転んでいた誠が起き上がった。やはり人気者アカリンの今は気になるものらしい。
「普通に電車で通ってるらしい。聞いた話だから本当かはわかんないけど」
「へー、あっちならもっと綺麗な高校いっぱいあんのになー。てかまず一葉って良いとこの子じゃねーの?てっきり中学受験でもしたのかと思ってた」
「だよね?やっぱそこ気になるよね。しかもさ、めっちゃ雰囲気変わってて」
「ギャルとか?」
「いや、めっちゃ大人しくなってて。誰とも喋らないとかそんなレベル」
「マジ!?想像つかねー。あーでも、ちょっと聞いたことあるかも。中学時代の一葉の噂」
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻が通う邸の中に
月山 歩
恋愛
最近妻の様子がおかしい。昼間一人で出掛けているようだ。二人に子供はできなかったけれども、妻と愛し合っていると思っている。僕は妻を誰にも奪われたくない。だから僕は、妻の向かう先を調べることににした。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる